建築物の液状化対策について
大地震の発生などにより地盤が液状化すると、建物の不同沈下や設備配管の破損など、建物やその周辺に様々な被害を及ぼします。
ここでは、液状化のおそれのある土地に住宅を建てる際の留意点や液状化対策工法について紹介します。
なお、実際に対策工事を行う場合には、複数の業者に相談し費用について見積もりを取るなど、事前に十分な検討をされることをお勧めします。
- 敷地を決定する前に
- 住宅を建てる前に
- 住宅を建てた後に
- もし被害にあってしまったら
(1)役所や図書館にある既存の資料を確認する(ボーリング調査結果、地形図など)
ボーリング調査結果(ボーリング柱状図)
ボーリング調査とは、掘削機を用いて地盤に孔をあけ、その孔から採取した土質試料などをもとに地質を調査することです。建設工事に伴う地盤調査に用いられ、その結果はボーリング柱状図として表されます。ボーリング柱状図から土質(砂層、粘土層)や土の硬さ(硬い、軟らかい、締まっている、緩い)、土層の厚さ、地下水位などが分かります。緩い砂層の地盤が厚く堆積し、地下水位が高い場合には注意が必要です。
次のサイトにて県内の過去のボーリング柱状図を紹介しています。
(ボーリング柱状図)地図で見る埼玉の環境 Atlas Eco Saitama(埼玉県環境科学国際センター 温暖化対策担当)
地形図、土地条件図、古地図
土地の歴史を確認することは、液状化の可能性を予測する方法の1つです。地形図、土地条件図、古地図などを見比べることで、その土地の利用状況の履歴が分かります。
- 地形図・・・地表面の起伏、土地の利用状況が記載されている。
- 土地条件図・・・地形や土地の高さが表されている。
- 古地図・・・古い時代に作られた地図。例えば、迅速測図は明治時代初期から中期の簡易な地図。
東日本大震災では、埋め立て地での液状化被害が多く報告されています。過去に河川や田んぼであった土地は液状化被害が比較的発生しやすいと言われているため、注意が必要です。
地形図は市役所、町役場などで販売しているほか、図書館で閲覧できます。
(地形図) 埼玉県立図書館の所蔵している地形図
土地条件図と迅速測図は次のホームページから御覧いただけます。
(2)市町村が公開している地震ハザードマップを確認する
地震による建物倒壊や液状化の危険度を地図上に表したものを地震ハザードマップといいます。
敷地を決定する前に、その市町村の地震ハザードマップを確認しましょう。
県内市町村の地震ハザードマップ掲載ページへのリンク集
- 住宅を建てる敷地の地盤調査などを実施し、液状化判定を行う
住宅を建てる際には、その土地で過去に行われた地盤調査結果の確認や現地を目視で調査し、必要に応じてスウェーデン式サウンディング試験などの地盤調査を実施します。スウェーデン式サウンディング試験は、深さ5m~10m程度の浅い地層を対象とした簡易な地盤調査であり、比較的安価(約5万円)に実施できる調査方法です。
液状化判定は、スウェーデン式サウンディング試験に加え、土質試料を採取し、その土質試験の結果から液状化の可能性を判定するものです。スウェーデン式サウンディング試験、試料採取、土質試験を行うため、スウェーデン式サウンディング試験のみの場合より高価(約10万円)になります。
さらに調査精度の高い調査方法として、ボーリング調査(約30万円)があります。
このような地盤調査と液状化判定は、主に地質調査会社が実施しています。
- 地震保険への加入を検討する
地震保険について
- 建物をバランスの良い形状としたり、屋根に軽い材料を用いるなど、建物の重量を軽くする
- 住宅の建つ地盤を改良する(柱状改良工法、表層改良工法など)
- 堅固な地盤まで杭を打つ(小口径鋼管杭、鉄筋コンクリート製杭など)
地盤改良の例
総2階建ての戸建て住宅(建築面積50~70平方メートル、延床面積100~140平方メートル)を想定して各種工法を紹介します。
(1)柱状改良工法
- 水で溶いたセメント系固化材を地中で撹拌し、柱状の改良体を作る工法。
- 工期:2~3日
- 工事費の目安:100~200万円程度
- 工法のイメージ図:
(2)表層改良工法
- 粉体のセメント系固化材を地盤の土と混合撹拌し、面的に地盤改良する工法。
- 工期:1~2日
- 工事費の目安:80~150万円程度
- 工法のイメージ図:
杭工法の例
小口径杭工法
- 鋼管杭を堅固な地盤まで回転貫入又は圧入する工法。
- 工期:2~3日
- 工事費の目安:150~250万円程度
- 工法のイメージ図:
- 維持管理を定期的かつ適切に行う(不同沈下の有無や劣化状況の確認)
- 地震保険への加入を検討する(住宅の引き渡し前から検討するとより良い)
地震保険について
既存建築物のための対策の例
(1)圧入締固め工法
- 建物直下の地盤に層状にモルタルを圧入し、地盤を圧縮して密度増大を図り液状化を防止する。
- 工期:1~2週間程度
- 工事費の目安:400~600万円程度
- 工法のイメージ図
(2)薬液注入工法
- 薬液注入等で地盤を固化することで液状化を抑制し、剛性により建物のめり込み沈下を軽減する。
- 工期:3ヶ月程度
- 工事費の目安:800~1,200万円程度
- 工法のイメージ図
(3)格子状改良工法
- 地盤の格子状に囲み、液状化時の地盤のせん断変形を抑制して、液状化の発生を防ぐ。
- 工期:6~8週間程度
- 400~800万円程度
- 工法のイメージ図
(4)地下水位低下
- 井戸を掘って水をくみ上げることにより、地下水位を低下させて表層の非液状化層を厚くし、建物のめり込み沈下を軽減する。
- 2~3日程度
- 100万円程度(直接工事費)
- 工法のイメージ図
※既存建築物のための対策の工期や工事費については、建築物の状況により異なります。
液状化による戸建て住宅の沈下や傾斜に対しては、次のような修復工法が考えられます。
修復工法の例
総2階建ての戸建て住宅(建築面積50~70平方メートル、延床面積100~140平方メートル)を想定して各種工法を紹介します。
(1)注入工法
- 基礎下へ薬液を注入し、その注入圧や膨張圧により建築物の沈下を修復する。
- 工期:1~2週間
- 工事費の目安:300~600万円
- 工法のイメージ図:
(2)アンダーピニング工法(鋼管圧入工法)
- 基礎下にジャッキを用いて鋼管を圧入し、鋼管の反力により建築物の沈下を修復する。
- 工期:3~6週間
- 工事費の目安:600~1,000万円
- 工法のイメージ図:
(3)耐圧版工法
- 基礎下に耐圧版を敷設し、ジャッキを用いて地盤の反力により建築物の沈下を修復する。
- 工期:3~5週間
- 工事費の目安:500~700万円
- 工法のイメージ図:
(4)ポイントジャッキ工法
- 基礎の一部をはつり、土台下に爪付きジャッキを挿入して建築物の傾斜を修復する。
- 工期:3~5週間
- 工事費の目安:200~300万円
- 工法のイメージ図:
参考
- 一般社団法人日本建築学会 住まいづくり支援建築会議 情報事業部会 復旧・復興支援WG「液状化被害の基礎知識」
- 社団法人地盤工学会 「造成宅地の耐震対策に関する研究委員会報告書 ― 液状化から戸建て住宅を守るための手引き ― 」
工期や工事費は一般的な場合における目安の値であり、建物の規模や工事内容により異なります。
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