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掲載日:2022年3月30日
Q 渡辺 大 議員(自民)
106兆円の国家予算のうち、36兆円が社会保障費です。2010年時点から給料は3%しか伸びていないにもかかわらず、社会保障費は26%も上昇しています。現役世代への給付が少なく、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心となっており、バランスが大きく崩れています。
そこで、負担を負っている現役世代に対し、予防医療に対するインセンティブとして給付を行えばリバランスでき、かつ将来の社会保障費を抑えることもできると考えます。
ちなみに、予防医療は単に疾病のり患を先送りしているだけで医療費の抑制につながらないのではないかという指摘もありますが、実際のところは寿命自体は大きく延びず、健康な期間が延び、病気にかかっている期間自体が短縮され、結果として医療費が抑制されるという研究結果が出ています。予防医療を単に啓発するにとどまるのではなく、力強いインセンティブ、行動経済学の理論などを駆使し、県民を予防医療に向かって誘導する必要があると考えます。糖尿病、ニコチン依存症、認知症、鬱病、高血圧、運動不足、肥満、筋力低下による骨折などの予防領域について、強いインセンティブのある施策を打つべきと考えます。
健診を受診してくださいなど、やる気に訴えるだけでは人は動きません。本人がそのメリットを獲得したいと思えるほどに、具体的なメリットを提示する。若しくは、その行為を選択することが自然となるような仕組みやインセンティブを組み立てること、そこにエネルギーを割いてほしいと思います。
生活習慣からメタボリックシンドロームになり、一気に病気がドミノ倒しのように進んでいきます。これをメタボリックドミノと言いますが、このメタボリックドミノの最上流には歯周病や虫歯もあります。歯周病により肝臓に脂肪が沈着し、肥満に結び付きます。例えば、その最上流で対策を打つ意味でも、歯科医院での定期健診、クリーニングも効果は大きいです。歯間ブラシ、フロスの使用も歯周病予防に効果があります。歯科定期健診、クリーニング、歯間ブラシ、フロスの使用に対してインセンティブを与えるなども有効でしょう。
ほかにも、ニートと呼ばれる日常生活の動きをする際に発生するエネルギーのことを言いますが、これは1日の消費エネルギーの3分の1程度ですが、1日を通じて意識すれば、相当の成果が出ることが知られています。例として、通勤車中では空席があっても座らない、ごろ寝でテレビは見ない、食事は一口ずつよくかむ、かんでいるときは安定時よりエネルギー消費量が20%アップするそうです。新聞、郵便物などを自分で取りに行く、小さな掃除は毎日する、電気器具のスイッチ操作にリモコンは使わない、駅や歩道橋などは積極的に階段を使う、これ全部、自分はできていないですけれども。こうした行動をとることを評価して県としてインセンティブを与えること、これがとても大事です。
既に埼玉県でも、埼玉県コバトン健康マイレージや糖尿病重症化予防対策に取り組まれています。例えば、糖尿病から人工透析が必要な状態になれば、年間500万円もの医療費がかかります。保険者努力支援制度として市町村の取組についてもインセンティブを与えていますが、もう数段ギアを上げての取組が欠かせません。効果的なインセンティブの設計をすることで健康寿命を延伸し、医療費、介護費の削減、介護職の不足を緩やかにするなど、複合的な効果が期待できます。病気になった後はニーズが顕在化するため、医療にアクセスしてマネタイズがされやすいですが、予防段階ではニーズが顕在化されておらず、なかなかマネタイズがされづらい分野です。このような予防分野こそ、行政が推進しなければなりません。
そこで、保健医療部長に伺います。今後、実施していくべきと考えている予防医療事業について御見解をお聞かせください。
A 関本建二 保健医療部長
今後実施すべき予防医療事業の方向性としては、データヘルスと言われる健康データの活用が重要と考えております。
例えば理想形ではございますが、まず、レセプトデータ、健診データや、歩数、食事、血圧などの本人のバイタルデータなどからなるデータベースを構築いたします。
このデータベースをもとに本人の健診データ等の推移から、例えば「3年後に心筋梗塞の発症リスクが30%高まります」といったAIによる予測をしたうえで、「これを予防するため、1日8,000歩以上歩くことと、緑黄色野菜を多めに摂ることです」といった目標を設定いたします。
こうしたデータに基づいて今後の予測を伝えることは、予防医療事業として行動変容の強いインセンティブになると考えます。
また、目標達成した方には、例えば、コバトン健康マイレージのポイントなどのインセンティブを付与いたします。
こうしたICTを活用した予防のための取組について研究してまいります。
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