『第4回くぬぎ山自然再生計画検討委員会』が開催されました。
平成15年3月14日、県民健康センターにおいて、16名の委員の出席のもと、第4回の検討委員会が開催されました。最終回となる今回の委員会では、自然再生事業がくぬぎ山全域で及ぶように、計画対象区域を拡大し、「緑地保全地区」や「都市公園」の指定など4つの基本方針を柱とする「くぬぎ山自然再生計画検討委員会報告書」をまとめることとし、まとめを委員長に一任しました。
具体的施策として、雑木林保全のための基金創設や産業廃棄物施設等の移転の誘導、市民参加による雑木林の再生、伐採木の木質バイオマスの活用などの提言が盛り込まれています。
また、保全管理体制としては、里山文化などを体験的に学ぶ「(仮称)くぬぎ山自然再生スクール」や拠点の設置、連携・協働組織の設置などが提言されています。
さらに、補助制度の拡充や公的資金を集中的に投入することなどを特別に行う、国の「環境保全特区」として位置づけることを提案しています。
福岡委員長
日時
平成15年3月14日(金曜日)14時30分~16時30分
会場
県民健康センターC会議室
出席者
福岡委員長、足立委員、飯田委員、犬井委員、梅原委員、大河原委員、落合委員、金子委員、神田委員、小谷委員、島村委員、高田委員、平岡委員、別府委員、安田委員、横山委員(五十音順)以上16名
オブザーバー:環境省自然環境計画課、国土交通省緑地環境推進室、国土交通省関東地方整備局建政部、農林水産省関東農政局生産経営部農産課
議事内容
1.はじめに
委員長挨拶
2.議事
くぬぎ山自然再生計画検討委員会報告書(案)について
3.その他
~委員からの主な意見~
- 地権者が、くぬぎ山の土地を自ら維持・継続できるような方策が大切。
- 「環境保全特区」が制約が強まり、地権者の一方的な負担になるようなものでないことが必要。
- 「緑地保全地区」の適用までに、先行的に土地を行政が買い取る当面の開発抑止の仕組みづくりが必要。
- 計画区域が拡大したことで事業が遅れることのないように、計画を早々に着工してほしい。
- 産廃施設は必要な施設で、追い出せば済むものではない。自発的に移転を希望する場合にその適切な方法を検討すべき。
- 産廃施設は、許可を受けたから良いというものではなく、よりよい処理方法を研究開発していくことが必要。
- 公害防止の徹底を目標に、循環型社会を実現するシステムが必要である。
- くぬぎ山では、やはり「産廃処理施設とは共存できない」ということを明記していただきたい。
- 「都市公園」等の適用に関して、全ての対象となる施設の移転・誘導を前提とすることを明記すべき。
- ゴミがいやだと言うのであれば、自分の町で条例等による規制をかければよい。
- 農用林的な利用とそれ以外の新しい利用をする場所とを区分して、管理活用して行く必要がある。
- 木質バイオマスの循環原理を新しい利用に活かせると考える。
- 農家に平地林を昔の状態に戻すだけの生活のゆとりがなくできないのが現状。
- NPOやボランティアで責任を持ってヤマを管理できるのか。相当の覚悟が必要なのではないか。
- 農業体験をしながら地域を理解する場として、地域外に発信していきたい。
- 一般県民のレクリエーションによる利用の話をもっと含めた方がいい。
- 社会行動、自然行動、経済行動を総合的に進め、里山の保全を図っていくことが、くぬぎ山自然再生計画の全体的なイメージである。
- 「(仮称)くぬぎ山自然再生スクール」では、「技・文化の伝承」を「環境教育の推進」に加えてほしい。
- 「管理の担い手と参加のイメージ図」の「行政」の表現を、「国・県・市町」と直した方がいい。
- 連携・協働組織は、「武蔵野の自然を育む会」というようにもう少し大きく考えてはどうか。
- 「自然再生推進法」に基づいた「協議会」の設置を明記してほしい。
- この検討委員会を「協議会」として再設置し、移行していくのが良いのではないか。
- 計画の中に、今後の事業の進め方に関する期日を入れてほしい。
- 自然の再生には20~30年はかかるはずなので、長期にわたる取り組みを継続していただきたい。
- 三富基金などの樹林地を買うことができる基金を早急につくることを明記してほしい。
- 県の五ヶ年計画で位置づけられている「公有地化」を実行すべきである。
- 農家や地権者にも有利な「緑地保全地区」「都市公園」の指定制度には、財政的な裏付けが必要。
- 産廃施設等については、「追い出す」というのではなく「公園にするので移っていただきたい」というのが移転・誘導の考え方であろう。
- 新たに多くの住民との協議の場を設けた場合、さらに合意が困難になるので、この委員会を「協議会」としていくのが良い。
検討の結果、主に以下の方針や内容にもとづく「くぬぎ山自然再生計画検討委員会報告書」がまとまりました。
計画対象区域
これまで約130ヘクタールとしていた計画区域を、新たに川越市、三芳町の一部を加えて、約152ヘクタール(狭山市63.3ヘクタール、所沢市40.5ヘクタール、川越市38.4ヘクタール、三芳町10.2ヘクタール)に拡大します。
4つの基本方針と9つの実施方針を定めます。
基本方針1
- 緑地保全制度の適用などにより、平地林の永続性を確保する
- 新たな森林管理のしくみを構築し、農地と一体となった平地林の多様な価値の継承と増進を図る
基本方針2
- 都市公園制度などの活用により、産廃処理施設などの移転を誘導する
- 改変が進んだ土地へ自然環境を再生する
基本方針3
- 地域農業との関わりを持続するしくみをつくる
- 循環型社会の形成に向けた提案の場とする
基本方針4
- 平地林の美しさや生物の豊かさを実感し安らぎを得る場にする
- 先人の知恵や地域の自然を知る場にする
- さまざまな人が、森林を守り育む活動を通じて協働し交流する場にする
くぬぎ山地区の森林のもつ歴史的・文化的・環境的価値を継承し、生物多様性の保全を図るために、再生の目標とする自然を、『多様な環境を有する二次的な自然』とします。
森林の永続的な保全・活用と、既存施設の移転誘導に基づく自然の再生を効果的に実施するために、次の2つの制度を適用します。
「都市公園」と「緑地保全地区」の制度の適用による自然再生のイメージ
当面の実現方策
計画を実現するためには、以下の方策の実施が必要とされます。
- くぬぎ山地区の「環境保全特区」への指定
- 土地取得や管理などの財源確保(三富基金などの活用、三富地区の近郊緑地保全区域への指定、国への制度充実の要望、グリーントラストなどによる森林の保全、企業の協力による苗木育成費などの募金、自然環境税、森林税など新たな受益者負担の制度としての財源の確保)
- 各主体の連携と役割分担の実施