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掲載日:2023年7月12日
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未来をより素敵なものにしようとチャレンジし続ける埼玉県の起業家や起業家スピリット溢れる経営者の方々にお話を伺うインタビュー特集「想いをカタチに」。
第17回は埼玉県主催の女性のビジネスプランコンテスト「SAITAMA Smile Women ピッチ 」2022年最優秀賞受賞者の加納千裕さん(ASTRA FOOD PLAN株式会社)です。
さて、加納千裕さん流「明日を拓く」ヒントとは?ぜひご覧ください!
ASTRA FOOD PLAN株式会社 ホームページ https://www.astra-fp.com/
★インタビューは2023年5月に行ったものです。
――ASTRA FOOD PLAN株式会社の事業について教えてください
創業3年目のスタートアップです。食品を乾燥させて粉にする過熱蒸煎機という機械を開発し、事業を展開しています。
私たちが取り組んでいるのは、かくれフードロスの削減と有効活用です。皆さんがご存知のフードロスというのは、製品になった後に売れ残ったり食べ残されたりしたものを指し、国内で年間約500万トン以上もあると言われています。しかし、実はもっとたくさんのかくれフードロスがあります。製品の製造工程で出てくる野菜の切れ端、規格外の作物、酒かすやビールの搾りかすのような、まだ使われていない資源になりうるものです。それを過熱蒸煎機で粉に加工すれば、まだまだ食べられるようにできるのではないのか、という発想で取り組んでいます。
この装置を私たちは販売ないしお客様にレンタルをするという形で提供しています。自社で大きな工場を持っていて、食品ざんさを引き取り、受託加工をするという会社さんはほかにあるかもしれませんが、弊社のビジネスモデルは異なります。食品ざんさがあるところに機械を置いてもらうという考え方をしてます。食品ざんさはすぐに腐るので、別の場所に運ぼうとすると、梱包して、冷凍や冷蔵便で運ぶことになるため、ここにすごく物流コストがかかってしまいます。しかも車で運搬することでCO₂も発生してしまうため、食品ざんさが発生している場所で乾燥処理してもらうのが一番良いと考えています。
食品ざんさを粉末化し、新たな食品原料になれば、これまでコストをかけて廃棄していたものがなくなります。さらに高付加価値な食品パウダーとして、他社に販売することができれば利益を生み出すこともできます。そこで、弊社は装置を提供するだけではなくて、粉の用途開発や販路開拓、さらには弊社が買い取って食品メーカーなどに販売する取組にも力入れています。
粉を購入する食品メーカー側には、SDGsを訴求する新たな商品開発ができるメリットがあります。食品ざんさをどうにかしたいというニーズと、おいしい商品を作り、SDGsの取り組みをしたいというニーズを、弊社の技術とネットワークで繋ぎ、解決します。皆Win Winになって、気が付いたらかくれフードロスがどんどん商品に変わって、食べてもらって消えていく、サーキュラーエコノミーのビジネスモデルを目指しております。
食品ざんさを美味しい粉にするだけでは、かくれフードロスの解決になりません。粉が何に使えるのか、どこがそれを買ってくれるのか、という出口まで結びつける必要があるため、弊社は機械メーカーというよりは、循環型のモデルをプランニングする会社にしたいと考え、ASTRA FOOD PLANという社名にしました。
――起業したきっかけを教えてください
父は勤めていた会社を退職後、二十数年にわたって過熱水蒸気という高温スチームの技術開発に取り組んできました。過熱水蒸気によって作る規格外農作物を原料とした野菜や果物のピューレの製造販売、業務用過熱水蒸気オーブンの開発など、2つほど会社を起業し、農業生産者の収益向上や人々の健康など、社会課題の解決を目指したビジネスを行っていました。
父の熱意ある姿にあこがれて、私もキャリアの過程で父の会社で一緒に働いていたこともあるのですが、残念ながら事業はうまくいきませんでした。父が諦めて引退するとなった時に、ビジョンやノウハウを引き継いでもう一度チャレンジしたいと思い、2020年にASTRA FOOD PLANを設立しました。
過熱水蒸気は、酸化による劣化を抑え、美味しくて健康に良い食品を作ることができる素晴らしい技術です。父はオーブンに取り組んできましたが、私は乾燥機での過熱水蒸気技術の活用を目指し、完成したのが過熱蒸煎機です。
――起業してよかったことや得られたことを教えてください
私達の理念である、かくれフードロス削減や、人々の健康、生産者の持続可能性への寄与というような社会課題解決型のビジョンに対し、いろいろな人が共感してくれて支えてくれていることです。
取引先であっても応援していただけて、ビジョンによってすごく良好な関係を築けていると思います。
社会課題の解決は1社ではできないと言い続けていますが、実際に様々な方から、もっとよりよい社会にしよう、サーキュラーエコノミーを実現しようと協力してもらえたことが、私としてはすごく嬉しいなと思っています。
――起業して大変だったことを教えてください
大変だったのは、創業当初お金がなかったことです。装置を開発するところからスタートしているので、創業メンバーの自己資金を元手に日々の研究をするわけです。すぐに売上げが立つ事業ではないので、銀行の融資も難しく、活動資金が常に不足しているのが一番辛かったですね。創業後しばらくはアルバイトをしながらやっていました。
ちゃんと会社になるのかな、本当に大丈夫かな、という不安もありましたけど、楽観主義なので何とかなるでしょうと思ってやってきました(笑)
社長の仕事はほぼ資金繰りだということを実感しています。
――SAITAMA Smile Women ピッチ 2022に参加したきっかけは何ですか?
銀行にポスターが貼られていて、その銀行の方に応募をおすすめされたのがきっかけです。広報戦略やネットワーキングとして、ビジネスコンテストにチャレンジしようと思っていた矢先でした。
――SAITAMA Smile Women ピッチ 2022に参加してよかったことはありますか?
埼玉県が主催しているビジネスプランコンテストで、最優秀賞を受賞したということで、会社の信用度が上がったことが一番良かったです。売上げがまだついてこないスタートアップにとって、ビジコンでの受賞は大きな力になります。その後の融資も受けやすくなりました。
――現在起業に興味がある人、起業に興味があるけどなかなか踏み出せない人向けにメッセージをお願いします。
ビジネスコンテストにたくさん出た方がいいと思います。ビジネスコンテストに出場すると、あなたのビジネスのビジョンは何ですか、と必ず問われます。逆にそこをアピールして人に刺さるプレゼンテーションをしないと、当然良い評価をもらえません。人々の共感を集めるビジョンを作り、自社のリソースを生かして、どんな社会課題解決ができるだろうかと、ビジネスプランコンテスト出場の準備をしているだけで整理ができたところもあります。
私もSAITAMA Smile Womenピッチだけではなくて、この1年で10回以上ビジネスプランコンテストに出場してきました。そこで知り合う方とのネットワークも広がります。
また、賞をいただけたことで、自信がついたこともよかったです。
――起業するときに大切なことはありますか?
楽観主義でいることだと思います(笑)私はあまり深く考えないタイプでメンタルは強めなのですが、メンタルを正常に保つことは会社経営にすごく大事なことだと思います。
あとはバランス感覚ですね。事業の方向性について強い思いを持つのも大事ですが、それが難しいとなった時にきちんと方向転換をすることや、頑張りすぎずに疲れたら休むなど、バランスを取ることができないと自身の心身も会社もつぶれてしまうと思います。
――今後の目標について教えてください。
SDGsの取り組みは、それぞれの関係性がWin Winでないと持続可能性がないと考えています。
自社の利益ばかりを優先してどこかにしわ寄せがいってしまうようなビジネスモデルではなく、社会全体に利益がある状態を保って循環型を作るというのがサーキュラーエコノミーです。持続可能な新しいビジネスモデルを作っていきたいと思っています。
私の目標としては、かくれフードロスを限りなくゼロにしていくことです。私だけではできないので、埼玉県にも協力していただきたいですし、様々な事業を巻き込んで、チャレンジしてきたいと思います。
インタビューはいかがでしたか?フードロス問題に社会全体で取り組んでいくことを目標にされている加納千裕さん。何かしたいことのある人、チャレンジしてみたいことのある人にとっては、背中を押してくれる言葉の宝庫だったのではないでしょうか。
「未来へと挑み続けるチャレンジャー」の皆さんから学ぶ、「明日を拓く」ヒント。これからも、インタビュー特集「想いをカタチに」をどうぞお楽しみに♪
埼玉県では、女性起業家の成長を支援し、埼玉県から国内外で活躍するロールモデルともいうべき女性起業家を輩出することを目的とした、ビジネスプランコンテスト「SAITAMA Smile Women ピッチ」を実施しています。
「SAITAMA Smile Women ピッチ」公式サイト
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