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掲載日:2022年12月20日
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未来をより素敵なものにしようとチャレンジし続ける埼玉県の起業家や起業家スピリット溢れる経営者の方々にお話を伺うインタビュー特集「想いをカタチに」。
第12回は、県主催のスポーツ分野でビジネスアイデアの事業化やその事業の拡大を目指す若者を支援する「イノベーションリーダーズ育成プログラム」において、令和元年度の伴走支援対象者として採択された、篠田大輔さん(株式会社シンク 代表取締役)です。
さて、篠田大輔さん流「明日を拓く」ヒントとは?さっそく読んでみて!
★インタビューは令和3年5月に行ったものです。
[株式会社シンク 代表取締役 篠田大輔さん]
――株式会社シンクの主な事業について、お聞かせください。
当社はスポーツに関連する企画コンサルティング会社として、2014年に設立し、現在8年目を迎えました。
事業としては、スポーツコンサルティング事業、イベントプロデュース事業、ITクラウド事業、防災スポーツ事業の4事業から成り、スポーツコンサルティング事業では自治体や企業等に対して、運動やスポーツに関わるコンサルティングを行っています。例えば、スポーツ政策に係る事業プロデュースのほか、自治体に当社がコーディネートしたオリンピアン・パラリンピアンを派遣する出前教室の開催、企業にスポーツ関連の新商品を発売する際のプロモーションサポートなどを行っています。
また、イベントプロデュース事業では、マラソン・ランニングを中心としたスポーツ大会を自社独自で企画運営しています。そこで培った運営ノウハウを活用し、自治体や企業からスポーツ大会開催事業の業務委託を受け、サポートも行っています。
そのほか、ITクラウド事業では、マラソン大会の参加ランナーの現在地やペース等の記録をWeb上で確認・記録できる「スポロク」というサービスを開発し、国内外問わず、多くのマラソン大会に導入いただいています。
2018年からは“スポーツで災害に強くなる”をコンセプトにした防災スポーツ事業を展開しています。
――令和2年12月に第8回スポーツ振興賞 スポーツ庁長官賞を受賞された「防災スポーツ」について、より詳しく教えてください。
防災スポーツはその名のとおり、スポーツで楽しみながら防災について学んでもらうことを目的とした事業です。
私が中学生の頃、当時過ごしていた兵庫県西宮市で阪神・淡路大震災を経験し、避難先の小学校でプールの水を被災者で協力しながたトイレに運んだり、家具に埋もれた家族を引っ張りだしたり、支給された支援物資を必要な場所に運んだりしました。
その経験により被災時に必要な動き方を身体が覚えており、それはスポーツを通じて備えられることではないかと思ったのが、この事業を考案したきっかけです。
事業化に当たっては、私自身の被災体験に基づいた内容だけではなく、防災の日常化を目指して展開しているNPO法人プラス・アーツにプログラム監修していただくほか、東京大学大学院で防災を専門に研究している廣井悠准教授にアドバイザーとして参画いただき、防災に関する学術的な根拠をおさえました。
サービス提供開始から現在まで、体験プログラム「防リーグ」は多くの団体に導入いただいています。例えば、学校ではコロナ禍によりこれまでの密となるような運動会が開催できないことから、その代わりとして防災スポーツを学年別に実施しました。また、企業では商業施設や開催イベントにおけるファミリー層の来場促進を目的とした集客コンテンツとして活用いただき、埼玉県内では2020年2月にネッツトヨタ東埼玉様が主催するイベント内で実施させていただきました。自動車、住宅、保険など生活に近い商品・サービスを取り扱う企業への導入が進んでいます。
昨年12月には、防災スポーツが地域振興策として認められ、スポーツ振興賞 スポーツ庁長官賞をいただきました。また、スポーツ庁主催「INNOVATION LEAGUEコンテスト」においては、防災スポーツが社会的インパクトのある事業・ビジネスとして評価され、ソーシャル・インパクト賞をいただきました。
防災スポーツは、防災課題とスポーツ課題の両者を解決できる社会的意義のあるものと自負しています。
[防災スポーツ イベント風景(1)]
[防災スポーツ イベント風景(2)]
[スポーツ振興賞 スポーツ庁長官賞 受賞時風景(with 室伏広治スポーツ庁長官)]
――“防災”と“スポーツ”を掛け合わせる発想は、どのような思考過程から生まれたのですか。
防災とスポーツの掛け合わせに当たり、「スポーツを構成する要素」について検討しましたところ、スポーツは「遊戯性=楽しむ要素」「運動=体を動かす要素」「競争性=競う要素」の大きく3つの要素から成り立ち、そのうち、運動と競争性については「身体を動かして、より早く逃げる」といったように災害時にも通ずる共通要素です。
防災にも遊戯性を加えることで、スポーツにより非日常である防災のハードルが低くなり、防災意識の向上につながります。そのための仕掛けとして、身体で覚える体験プログラムの考案に至りました。身体で覚えたことは万一の時の行動に繋がりやすいですからね。
[なぜスポーツか]
――「防災スポーツ」はどのような社会的役割を担えると考えますか。
防災スポーツは、スポーツを通じて防災へのハードルを低くし、防災意識を高めることを第一目的としており、災害時における個々の初動対応力向上につながるものとして、社会的意義はあるものと考えています。
昨年、防災スポーツがスポーツ振興や地域活性化に寄与するもので、社会的インパクトのある事業とスポーツ庁に評価された経緯から、防災スポーツが社会課題の解決につながる可能性を秘めており、様々な場面において社会的役割を担えることを実感したところです。
例えば、防災を切り口にスポーツへの親しみやすさを促し、スポーツの苦手な子どもがスポーツに興味・関心を持っていただくことで、スポーツ実施率の向上に寄与します。
また、通常、企業が開催するイベントの場合、ファミリー層を中心に参加されるが、地域や自治会等が開催するイベントの場合、シニア世代が集まる場になりがちです。防災スポーツをコンテンツとして取り入れていただくことで、若い人たちのイベント参加の動機付けになります。防災スポーツがその地域の老若男女をつなぐハブとなり、地域のコミュニティ作りのきっかけになることが期待されます。少子高齢化が進む中、「助けられる側」が増え「助ける側」が減っていくことになります。その「助ける側」に防災スポーツを通して防災の知恵や技を身につけてもらうことは、減災につながるものと考えています。
さらには、防災スポーツを通じて災害時に想定される動きを事前に学んでおくことで、参加者は自らできることが増え、自己肯定感を高めるとともに、例えば若い人が困っているおばあちゃんやおじいちゃんを助けようという日常的な意識の変化に繋がり、個人の活躍の場をより生み出すことができるのではないかと期待しています。
――「防災スポーツ」の事業展開に当たり、特に課題に感じていること、その課題に対して取り組んでいることはなんですか。
事業内容は非常に良いと評価される一方、ビジネスとして展開し、非日常である「災害」に備えるサービスを提供している以上、継続していくことが重要です。
現状、防災へのきっかけ作りで終わってしまうことがあるため、サービスの受け手側が意識を持って、防災対策を継続的に進めていくことができる環境の整備が必要と考えています。
環境の整備に向けて、自治体や企業等とパートナーシップを結び、防災イベントの実施に縛られず、俯瞰的な視点で地域を巻き込みながら展開していきたいと考えています。
今後、この活動を広めていくためにはパートナーシップを結んでいただける自治体や企業等の存在が必要不可欠ですので、ご興味ある方はお気軽にご連絡いただきたいです。
また、事業の活動範囲を広めるための人材確保も課題です。
防災スポーツは自分の体験がベースとなり思い入れも強いが、1人でできることには限界があります。同じ志を持って、一緒に進められる人材を確保できると事業に広がりが生まれるとともに、サービスの質の向上が望めます。
――「防災スポーツ」の今後の展望について、教えてください。
目下、課題に感じている「継続的な防災対策の実施に向けた環境整備」に取り組んでいきます。
まずは“地域の防災を歩きながら学ぶ”をコンセプトにした「防災ウォーク」を東京都内の河川敷で実施しました。想定される災害として洪水があり、洪水発生時に自分がどう判断し、どう動くべきかをシミュレーションするとともに、避難先となる防災施設や危険箇所を把握するなど防災視点で地域を見ることができるようになり、防災意識の日常化につながると考えています。
リアルイベントは、1か所に集まり、頭と身体をフルに使うことで災害時の動きを身体で覚えることについては効果的ですが、イベントを終えたら各参加者はほとんど会うことがなく、せっかく覚えたことも薄れていってしまいます。withコロナ時代だからこそ、双方向で楽しみながら学べ、より広い地域の防災力強化につながる「プラットフォーム」の重要性が増していると感じ、現在、その構築に向け、検討を進めているところです。
東京2020オリンピック・パラリンピックの開催を控え、スポーツ市場全体として盛り上がりを見せる今、「防災スポーツ」を世界に発信し、レガシーの一つとして残せる貴重な機会と捉えています。今後、防災対策の一つとして防災スポーツの実施が広まり、ひいては文化として定着していけるよう邁進していきます。
防災スポーツの最新情報は、下記公式ホームページでご覧いただけます。
※「防災スポーツ」及び「防リーグ」は、株式会社シンクの登録商標です。
インタビューはいかがでしたか?防災対策をビジネスの起点にして、要素の掛け合わせにより、社会課題の解決を促し、新たな文化の創出を目指す篠田大輔さん。何かしたいことのある人、チャレンジしてみたいことのある人にとっては、背中を押してくれる言葉の宝庫だったのではないでしょうか。
「未来へと挑み続けるチャレンジャー」の皆さんから学ぶ、「明日を拓く」ヒント。これからも、インタビュー特集「想いをカタチに」をどうぞお楽しみに♪
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