トップページ > しごと・産業 > 産業 > 創業支援 > 埼玉県の起業家インタビュー「想いをカタチに」 > 第10回:髙久侑也さん(株式会社Sportip)
ページ番号:175442
掲載日:2022年12月20日
ここから本文です。
未来をより素敵なものにしようとチャレンジし続ける埼玉県の起業家や起業家スピリット溢れる経営者の方々にお話を伺うインタビュー特集「想いをカタチに」。
第10回は、県主催のスポーツ分野でビジネスアイデアの事業化やその事業の拡大を目指す若者を支援する「イノベーションリーダーズ育成プログラム」において、平成30年度の伴走支援対象者として採択された、髙久侑也さん(株式会社Sportip 代表取締役)です。
さて、髙久侑也さん流「明日を拓く」ヒントとは?さっそく読んでみて!
★インタビューは令和2年2月に行ったものです。
――起業に至った経緯についてお聞かせください。
私は小学校から野球を12年間やっていました。元々、身体が歪んでしまう疾患を持っており、そういった身体特性を無視した指導を受けることによって症状が悪化し、野球を続けられなくなってしまいました。
そこで、個人が怪我によりスポーツを続けることを断念せざるをえなくならないよう、また上手くなれずに悔しい思いをしないよう、手を差し伸べたいと思い、大学に入った当初は教師になろうと思っていました。
しかし、カンボジアオリンピック委員会での活動や中国への留学など世界を見る中で、日本だけじゃなくて、世界中の多くの人たちが困っている状況を目のあたりにしました。
そういった経験から、個人の身体や目的に合った指導を受けられる「一人に“ひとつ”のコーチを」をテーマに、指導者を担うAI(Artificial Intelligenceの略。「人工知能」)を作り、広く多くの人に届けたいと強く思い、大学1年生の時に起業を決意し、2018年9月(当時23歳・大学院生)、満を持して株式会社Sportipを設立しました。
[Sportip アシスタントAI(1)]
[Sportip アシスタントAI(2)]
――なぜ学生で起業しようと思ったのですか。
学生であることを意識して起業したわけではなく、マクロ環境がどうなのかということが判断基準としてあります。
結局のところ、自分がやりたいことは何歳になっても変わらないと思っています。しかし、周りの環境は常に変わるため、その時々によって他社よりも先に前に出ていきやすかったり、自分たちが目指しているサービスを作りやすかったりすることがあります。
具体的には、2020年は東京オリンピック・パラリンピックが開催される予定であり、スポーツビジネス市場の今後を見据えた場合、2018年に起業することがタイミングとして良いと考えました。そのタイミングがたまたま学生であったというだけです。
余談ですが、学生で起業というと、「目立ちたいから起業する」という人が時々いらっしゃいますが、リスクも伴うため、あまりオススメしません。「起業」は自己実現の手段の一つであると捉えています。「起業」以外にも自己実現の手段はいくらでもありますから、多くの手段の中で適切なものをちゃんと選んでいくことが必要であると考えます。
私の場合、私の祖父と父が会社を経営しており、私は幼い頃から、何か新しいものを作って経済を動かすということについて教えてもらい、強く影響を受けていたため、「起業」が自己実現の最良の手段であると判断しました。
――起業を実現できたポイントを教えてください。
起業を意識し出した高校3年生の頃は、こういったサービスを作りたい、こういった問題を解決したいと漠然と考えていましたが、ひとまず学校の授業をちゃんと受けていました。
大学(筑波大学体育専門学群)では、体育以外の授業(医学や芸術など)が豊富かつ良質なため周辺知識を収集するとともに、ヘルステックベンチャー企業にインターンし、社会の中で自ら作ることを体験しました。
株式会社Sportipの活動につながるようなことでいうと、各部活動の活動風景を動画撮影し、個人の身体情報を基に部活動とマッチングさせるようなサービスなどを作っていました。ただ、サービスの核となるAIプログラムの作成に特化したエンジニア人材が必要であったため、人材確保に努めながら、あらゆるサービスを作っては壊すことを繰り返していました。
私が一番好きな言葉に、パーソナルコンピュータの父といわれ、教育者でもあるアラン・ケイ氏が発言した「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」があります。未来を予測する方法は見つかっていないけれど、自分自身がしっかりと活動することによって、それを生み出せるのではないかと思っています。
そう思っていること自体が楽しくて、活動を止めたり、諦めたりすることなく、起業につながったのだと思います。
――起業前後において、改めて感じていることはありますか。
起業前から課題に感じていることが人材確保です。
目指す理想に向かって、こういったものを作る必要があると思い、メンバーにそのイメージが伝わっても、学生の場合、責任が発生しないことや技術力がそこまで高くないことから、モノを作れないことがあります。
自分たちの理想実現にあたり、世代を超えた経験豊富な人材を集めるといっても、学生のため社会人との接点が少なく、人材が見つかったとしても、学生と年齢が離れることによってコントロールが効かない等の問題が発生します。
学生であることで、自分たちが本来理想とする姿から数段階落とさなくてはいけず、それによって活動を諦めてしまう人が周りに結構存在し、学生起業の難しさを感じています。
一方で、法人格を得ることで信用力が強化され、優秀な人材の確保につながり、成長スピードが変わることも実感しています。
[会議の様子]
――大学院生と経営者で立場が異なることで苦労したこと、両立してよかったことはなんですか。
苦労したことは、学業と経営を両立させるための時間配分です。どちらも常に100点を取ることは難しく、時期によってかける時間が偏ってしまうことがありました。
大学院では経営管理についての研究を行っており、今後の企業経営にも役立つため、アカデミックな部分をしっかり突き詰めておきたかったと、少々心残りを感じています。
両立してよかったことは、学位として「修士号」を得られることです。元々、その後のスポーツ分野での「博士号」取得が目的の一つであるため、仕事をしながら最短で物事を進めることができ、非常に嬉しく思っています。
「博士号」を得ることで、スポーツ分野における発言の説得力が増すため、ビジネスを有効に進めることができます。今後、海外への展開を視野に入れると、発信力強化として必要ではないかと考えています。
――今後の事業展開について教えてください。
株式会社Sportipは、設立した2018年(平成30年度)に埼玉県主催のアクセラレーションプログラム「イノベーションリーダーズ育成プログラム」において、浦和レッドダイヤモンズ、大宮アルディージャ、埼玉西武ライオンズといった埼玉県を代表するプロスポーツチーム等との連携・協業が図れる伴走支援対象者に採択いただきました。
当社の動作解析技術をスポーツ分野から起こし、他産業に発展させるきっかけとなり得るため、しっかり活用し、成果を示していきたいと思います。
[「平成30年度イノベーションリーダーズ育成プログラム最終選考会」登壇(1)]
[「平成30年度イノベーションリーダーズ育成プログラム最終選考会」登壇(2)]
今後5年から10年のスパンでは、人が生まれてから人生を終えるまでのすべてのフェーズにおいて、サービスを届けていくことを目指しています。
生まれた瞬間は単純動作の指導を行い、その後、興味で行うスポーツに対する指導、もう少し本気でスポーツをやる人たちへの指導を行い、その先にフィットネスやリハビリ・介護の領域に展開していきたいと考えています。
展開にあたって、幼児の動作やリハビリ・介護の動作については、知見が広いわけではないですし、現場の課題を知っているわけではないですので、関連する企業様と積極的に連携して取り組んでいきたいと考えています。
一方で、旧態依然の傾向が強い組織である、例えば学校に当社のようなベンチャー企業が入り込んでいくのはなかなか難しいため、イノベーションを起こすことに前向きな自治体様と組んで、学校教育の姿を変えていけたらと考えています。
人口減少・高齢化に関して課題先進国の日本において、当社のサービスをしっかり固め、ゆくゆくは海外に輸出し、グローバル展開の可能性を模索します。
また、直近においては、そろそろ皆様に認知してもらうフェーズに入ったと思っていますので、プレゼンの機会があれば積極的に活用し、露出を増やしていきます。会社のプレスリリースも今後多くなるため、ぜひ楽しみにしていただければと思います。
インタビューはいかがでしたか?自身の原体験を原動力に、世界を見据えて、着実にかつスピーディーに取り組み、新たなサービスを生み出していく。何かしたいことのある人、チャレンジしてみたいことのある人にとっては、背中を押してくれる言葉の宝庫だったのではないでしょうか。
「未来へと挑み続けるチャレンジャー」の皆さんから学ぶ、「明日を拓く」ヒント。これからも、インタビュー特集「想いをカタチに」をどうぞお楽しみに♪
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください