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掲載日:2022年3月24日

令和4年2月定例会 「予算特別委員長報告」

委員長 本木 茂

予算特別委員会における審査経過の概要について、御報告申し上げます。
本委員会に付託されました案件は、議案21件であります。
初めに、部局別質疑を3月9日から15日までに5日間行い、集中的に審査を行いました。
以下、論議のありました主なものについて申し上げます。
まず、「財源調整のための基金の残高については、これまで、議会側との間で700億円程度が、復元すべき数値目標であるとの議論がなされてきた。現状においても、この水準に回復させるという考え方に変わりはないか」との質疑に対し、「ここ数年の基金の取崩しは、およそ500億円前後で推移している。今回、730億円を取り崩している。これは令和3年度の税収が好調であったため、地方交付税をもらい過ぎている状況であり、制度上、令和4年度からの3年間で精算しなければならない。この精算に単年度で185億円程度必要であり、この精算額を差し引くと500億円程度の取崩しとなる。今後は、財政に余裕を持たせるために、これまで数値目標としてきた700億円ではなく、ここ数年取り崩してきた500億円の2年分となる1,000億円を確保したいと考えている」との答弁がありました。
次に、「埼玉版スーパー・シティプロジェクトに取り組む市町村への事業化検討補助及び事業推進補助について、前年度の普通交付税不交付団体と交付団体で補助率が異なっている。まちづくりの推進に係る助成において、普通交付税の交付状況で差を付けるべきではないと考えるがどうか」との質疑に対し、「まちづくりには多額の費用を要するため、特に財政力の低い市町村には負担が大きい。そのため、限りある財源の中で、より多くの市町村に当該補助制度を活用していただけるよう、財政力の低い団体に対し、手厚い支援となるよう制度設計を行った」との答弁がありました。
次に「多子世帯応援クーポン事業については、新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減少する多子世帯のために、その補填や貯金に使えるよう、現金給付が有効であると考える。また、現金給付とすることで、利用者の利便性が向上するとともに、給付に要する事務費の削減にもつながり、削減分を給付額に上乗せすることができるのではないか」との質疑に対し、「多子世帯応援クーポン事業の目的として、経済的支援のほかに子育てサービス業界の育成や県全体で多子世帯を応援していることを示す意味合いも持っている。現金給付とした場合は、貯金や子育て以外の使用も考えられることから、子育て支援のために使用できるクーポンでの給付が最善だと考えている。また、経済的支援については、国に対して実態を示し、児童手当や児童扶養手当制度について議論していきたい」との答弁がありました。
次に、「保育士の確保と定着について、国の処遇改善事業が実施されることになったがこの事業では近隣都県との賃金格差は解消されない。東京都や千葉県のように、保育士の給与水準改善のため、県単独の処遇改善を行うことを検討したのか」との質疑に対し、「県単独の処遇改善の要望があることは承知している。近隣都県との賃金格差が統計上にも表れていることから解決しなければならない課題だと認識している。本質的な問題は、国の定める公定価格が非常に不合理であることであり、その解決を国へ要望していきたい」との答弁がありました。
次に、「BCPの策定支援について、新型コロナウイルス感染症の拡大時や、自然災害により従業員が出勤できない場合、サプライチェーンが機能しなくなる場合など様々な場面でBCPが必要となるが、どのような効果を狙っているのか。また、県内企業のBCP策定率は、全国水準よりも低いが、今後、どのように取り組んでいくのか」との質疑に対し、「策定支援に当たっては、まず、損害保険会社と連携してセミナーを開催し、経営者にBCPの重要性を認識していただく。また、スキル不足等の要因で、BCPの策定に至っていない事業者に対しては、経済産業省が認定する簡易なBCPである、事業継続力強化計画の策定を専門家の派遣により支援していく。あわせて、企業単独では対応できないリスクに対して複数の事業者が連携して対応する、連携事業継続力強化計画の策定も支援していく。策定率の向上については、全ての企業にBCPを備えていただきたいと考えており、着実に策定が進むよう、啓発や策定支援に取り組んでいきたい」との答弁がありました。
次に、「埼玉県コバトン健康マイレージについて、アクティブ率が42.7%と登録者の半数以上が利用していないにもかかわらず、40万人の登録目標に近づいているというのは疑問である。効果検証をする際は、参加者数ではなく、アクティブ率を基に算出したランニングコストを用いるべきではないか。また、利用実態の把握に努め、効果検証は第三者に委ねるべきと考えるがどうか」との質疑に対し、「参加者一人当たりのランニングコストの算出に当たっては、『当該年度における運用費を参加者数で割ったもの』と定義し、他の自治体の同様の取組と比較検証できるようにしている。アクティブ率を基にしたランニングコストの算出については、他の自治体との比較検証が可能であれば、より有効であると捉えている。また、利用の実態は、現在のシステムでは把握できないため、今後、事業の検証を行い、見直しを図っていく中で実態把握の方法を検討していきたい。効果については、来年度、外部の有識者等による事業の在り方検討会議を設置し、検証していく」との答弁がありました。
次に、「発災初期の情報収集力強化のため、県の情報収集共有システムである災害オペレーション支援システムと国の基盤的防災情報流通ネットワークいわゆるSIP4Dを接続するとのことだが、国だけでなく、県民生活に直結するライフライン事業者からも情報収集ができるようにしておくことが重要ではないか」との質疑に対し、「内閣府等が示しているSIP4Dのコンセプトによると、公的な情報に加え、将来的には電気通信等の民間事業者の防災情報も共有されるとのことである。官民の情報を災害対策に有効に活用していくため、国等の動きを捉えながら、本県システムでの情報共有方法を検討していく」との答弁がありました。
このほか、駅ホームの転落防止対策、税収確保対策、スポーツ活動の推進、森林の循環利用促進、児童虐待防止対策、産業団地の整備、がん対策の推進、通学路の緊急対策、県営公園の魅力アップ、学校における働き方改革、高齢者講習施設庁舎の建設などについて質疑がありました。
次に、総括質疑を3月17日に行い、更に慎重な審査を重ねました。
以下、論議のありました主なものについて申し上げます。
まず、「証紙の廃止については、部局別質疑において、全手数料収入に占める証紙の収納割合が9割近くを占めているが、県民の利便性の向上、非対面の促進など、キャッシュレス決済のメリットを実現することが、県民サービスの向上につながると考えているとの答弁があった。令和4年度予算では、電子申請届出サービスでクレジットカード支払いができるようにシステム改修経費を計上している。現在、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進している中で、決済の選択肢を整えながら、一斉に証紙を廃止することは考えられないのか」との質疑に対し、「民間でのキャッシュレス決済の普及、非対面取引の要請など、証紙の制度を根本的に見直し、時代に合った形に改める時期を迎えている。県のDXビジョンロードマップでは、キャッシュレス化の本格運用時期を令和5年度中としており、同時期に証紙の廃止を目指したいと考えている。現在、庁内検討会議を立ち上げて、証紙の廃止に伴う収納方法の在り方や課題解決に向けた検討を行っているところであり、証紙制度の見直しについては、スピード感を持って取り組んでいく」との答弁がありました。
次に、「彩の国さいたま芸術劇場の大規模改修に当たっては、ウィズコロナ、アフターコロナを想定し、専門家の知見も取り入れて、接触感染や飛沫感染等の徹底した対策が図られるよう見直しが必要と考えるがどうか。また、本県の文化芸術の発信の要である彩の国さいたま芸術劇場は、今後、収益を上げていくために、民間の劇場とも競っていかなければならない。デジタルインフラの整備された、日本一安心・安全な劇場を目指して来場者を増やすことが、赤字体質の解消につながると思うがどうか」との質疑に対し、「大規模改修工事については、令和2年度に、新型コロナウイルスの感染症対策を踏まえて基本設計と実施設計を行っている。具体的には、手すり等は抗菌仕様とし、出入口の一部は自動ドアとするなど接触感染を減少させる仕様となっており、ホール内は、換気機能の強化が図られる空調システムに更新する。また、文化芸術の価値については、来場者の安心・安全を第一に考えた劇場にすることで、付加価値を付けることができると考えている。改修後は、近藤良平新芸術監督の下、芸術性の高い舞台作品を快適なホールで鑑賞できる機会を提供するなど、多くの方に訪れていただき、公演を鑑賞していただくことが、収益の向上につながるものと考えている」との答弁がありました。
次に、「観光振興関連予算については、部局別質疑の中で、都道府県と政令指定都市の67自治体における2021年度観光振興関連当初予算額ランキングにおいて、本県の予算額は3億3,000万円と67自治体中63位であるとのデータを示したところ、県民生活部の魅力発信事業にあたる予算を観光予算にカウントしている県もあるかと思う。補正予算で計上した繰越額約78億円も、事実上、観光事業者への支援であるとの答弁があった。この約78億円については、本県の観光を更にブラッシュアップしていくための予算ではなく、ほとんどがコロナ禍における事業者支援の予算であった。本県にとって観光は、どのようなものであると考えているのか」との質疑に対し、「本県を訪れる観光客は日帰りが中心であり、飲食、物産販売、宿泊、交通など、すそ野が広いのが本県の観光事業の特徴である。北海道や京都府などのように、観光産業への依存度が高くはないものの、観光は国内外から人を呼び込み、地域ににぎわいや消費を生み出す、経済を活性化させる重要な産業の一つと捉えている。本県には、自然や歴史、文化など伝統的な観光にとどまらず、グルメやアニメなど、多彩な魅力がある。また、首都圏の4,000万人を超える人口と交通アクセスに恵まれていることも強みである。こうした魅力や強みを生かしながら、にぎわいや経済の活性化、県民の満足度につなげていきたい」との答弁がありました。
このほか、主な質疑項目として、医師確保対策の推進、中小企業への支援、看護職員確保対策、新型コロナウイルス感染症対策、認知症施策の推進、LGBTQへの支援、ウクライナからの避難民への支援などについて質疑がありました。
次に、討論及び採決を3月22日に行いました。討論では、第1号議案に賛成の立場から、「新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策や様々な分野におけるデジタル化の推進のための予算が重点的に計上されていることから賛成する」。また、「児童相談所、一時保護所の整備、医療的ケア児への支援などは、誰一人取り残さないために取り組んできた知事の姿勢にふさわしく、県民に寄り添った県政を更に進める観点から賛成する」との討論がありました。そのほか、第19号議案及び第21号議案についても賛成の立場から討論がありました。
以上のような審査経過を踏まえ、本委員会に付託されました議案21件について採決いたしましたところ、いずれも総員をもって、原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
その後、附帯決議が提案されました。「『第1号議案令和4年度埼玉県一般会計予算』については、新型コロナウイルスの感染収束が見通せない中、未だ経済への影響は顕在化しており、財政運営には大きな懸念がある。こうした状況の中、ウイズコロナ、アフターコロナを見据えた事業により社会経済活動との両立、新たな日常の創出が不可欠となるが、費用対効果に懸念を抱かざるを得ない事業が散見された。ついては、事業の必要性や執行方法について十分検討し、適切な対応を求めるものである。
第一に、令和2年1月に国内で新型コロナウイルス感染症が発生してから2年が経過したが収束の気配は感じられない。これまでの感染症対策を精緻に検証し、知見やエビデンスに基づき感染症対策を進めること。
第二に、県証紙制度については、DXの推進を加速化する流れの中で制度を根本的に見直し、時代に合った形に改める時期に来ている。県民の利便性を図るため現状から改善策を積み上げるのでなく、バックキャスティングの発想で県証紙制度の廃止を確実に進めること。
第三に、幼稚園教諭の処遇改善については、令和4年10月分以降も教育支援体制整備事業費交付金の負担割合を維持することを国に強く要望するとともに、県においては、県の負担割合を増やし、私立幼稚園の負担割合が変わらないよう措置をするなど、幼児教育のための人材確保を支援すること。
第四に、彩の国さいたま芸術劇場の大規模改修に当たっては、この改修を好機と捉え、様々な専門家の意見を取り入れ、アフターコロナを踏まえた感染症対策やデジタルインフラに対応した日本一安心・安全な劇場に整備すること等で、来場者を増やし、赤字体質の解消に取り組むこと。
第五に、観光振興については、多くの方々に本県を訪れてもらうために観光資源の新たな発掘やブラッシュアップが必要である。あわせて、効果的なプロモーションも欠かせない。そのために、観光予算の増額を図るとともに埼玉県物産観光協会(DMO)がPRで話題づくりができるノウハウを持ち自主財源を稼げる強い組織になるよう支援を強化すること。
第六に、多子世帯応援クーポンについては、子育て支援と事業者支援の両面を追い求める余りクーポンの利用に固執している。本来の事業目的である子育て支援を幅広く捉え、手続きが簡単で使いやすい現金給付等、子育て世帯にとってより良い制度となるよう検討すること。
第七に、保育士の確保に当たっては、近隣自治体との人材の争奪戦になっている。国への公定価格の改善を強く要望するとともに、本県独自に給与の上乗せ補助を行うことで、他の自治体との保育士の獲得競争に負けないよう人材確保策を講じること。
第八に、コバトン健康マイレージについては、依然として目標の登録者数40万人を大きく下回っている。また、事業目的の健康寿命の延伸と医療費抑制の効果も確認できていない。令和4年度に事業検証を精緻に行うことで費用対効果を見極めるとともに、事業の継続に当たっては、市町村への事業の移管も含め聖域なき改革を断行すること。
第九に、看護職員の確保を推進するために、ナースセンターへの登録者数の増加に向けた取組を強化すること。取組の強化を検討するに当たっては、県独自のインセンティブの付与、登録の簡素化など、利用者目線に立って検討すること」
以上の内容であります。続いて、質疑並びに附帯決議に反対の立場から討論があり、採決いたしましたところ、多数をもって附帯決議を付すことに決した次第であります。
以上をもちまして、本委員会の報告を終わります。

 

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