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掲載日:2023年11月1日

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狂犬病を予防するために

狂犬病は、発症した場合の死亡率がほぼ100%のウイルス病で、全世界で年間5万人以上が発症・死亡している危険性のきわめて高い病気です。

狂犬病は、海外旅行をする場合に注意・予防する必要があるだけでなく、国内の防疫対策(犬への狂犬病予防注射)も重視しなければならない病気です。

狂犬病について

 狂犬病とはどのような病気なのでしょうか?

狂犬病は狂犬病ウイルスの感染によって引き起こされる致死的な動物由来感染症です。

「狂犬病」という名前は、この病気に犬が感染した場合に凶暴性を示すことが多いため、人への感染源として恐れられたことから付けられた和名です。

しかし、実際にはすべての哺乳類が感染するため、犬に限らず他の哺乳動物からも人に感染することがあります。

狂犬病には以下のような特徴があります。

  • 有効な治療法がないため、発症すればほぼ100%死亡する。
  • 狂犬病患者の大半は潜伏期が1か月~3か月と長い。
  • 発病する前に狂犬病ウイルス感染しているかどうか検査する方法がない。
  • ほとんどすべての哺乳動物が感染・発症するが、地域によって主に感染源となる動物が異なる。
  • 狂犬病ウイルスは消毒薬には抵抗性が弱いが、感染後に有効な薬剤はない。このため、狂犬病発生国では罹患動物に咬まれた場合の対応として、ただちに狂犬病ワクチン等の接種を開始し、潜伏期間中に免疫を獲得させる狂犬病暴露後発症予防が行われている。

このように、狂犬病ウイルスに感染した場合は、発症する前にワクチン接種など適切な治療を行えば発症を防ぐことができます。

 狂犬病はどのように感染するのですか?

狂犬病は、発症した動物に咬まれることなどによって、唾液中に含まれるウイルスが傷口から侵入して感染します。

傷口から体内に侵入したウイルスは、神経を上向性に進み、脳に達すると脳神経の機能を侵して発症に至ります。

狂犬病ウイルスの潜伏期間は、人間の場合、数日~数年(通常20~60日程度)とされていますが、感染部位が脳に近いほどウイルスが脳に達するのが早くなるため、潜伏期間が短くなります。

 狂犬病の症状は?

初めは発熱、頭痛、嘔吐などの症状から始まり、次いで筋肉の緊張、けいれん、幻覚などが起こった後に昏睡状態に陥り、呼吸麻痺を起こして死に至ります。

狂犬病は「恐水病」などとも呼ばれますが、これは神経が過度に過敏になる結果、患者が水を飲もうとすると、水の刺激で反射的に強い痙攣が起こり、水が飲めなくなるため、患者が水を飲むことを恐れることによるものです。

このような症状は、光や風などの刺激でも起こり、患者の意識自体は明瞭なため、症状に対する強い恐怖を伴うという悲惨な病気です。

 狂犬病にかかった場合、治療すれば治るのですか?

狂犬病に対する効果的な治療法はなく、発症した患者はほぼ100%が死亡します。

ただし、呼吸麻痺に対する措置として人工心肺などを用いた結果、発症したが生存できたという事例が過去に6例ほど報告されているようです。

しかしながら、全世界で毎年、5万人以上の人々が狂犬病で死亡している状態の中で、これはきわめて稀な事例であるため、狂犬病による死亡率は「ほぼ100%」と表現されます。

 日本国内の狂犬病の発生状況について教えてください

狂犬病の発生は、有史以来、地球上のさまざまな地域における発生が記録されています。

日本でも古代に海外から侵入したと考えられ、近世の江戸時代や、明治~第二次世界大戦後などに流行しました。

昭和25年、狂犬病予防法によって犬への狂犬病予防注射が義務づけられるとともに、徹底した野犬対策などが行われた結果、日本国内では、昭和31年(1956年)の発生を最後に、60年以上、狂犬病の発生(国内感染例)はありません

 日本国内で狂犬病に感染する可能性はありますか?

前述のように、過去50年間、日本国内での狂犬病の感染・発症事例はありません。

これは、日本国内の狂犬病がさまざまな対策で撲滅され、その状態が維持されている(清浄化されている)結果であり、日本国内で生活している限り、狂犬病の感染を恐れる必要はありません。

 海外の狂犬病の発生状況について教えてください

狂犬病は全世界で発生しており、発生のない国(狂犬病清浄国)は日本を含め数カ国にすぎません。

WHOの統計では、狂犬病で死亡する人は全世界で年間5万人以上としています。

特にアジア地域で死亡者が多く発生しているため、事前の対策と注意が必要です。

 海外を訪れる前に注意することは?

海外では狂犬病は全世界的に流行しており、狂犬病の発生のない国はきわめて少ない状況です。

したがって、海外を訪れる際には、事前に現地の狂犬病発生状況を調べるとともに、出国前、早めに狂犬病ワクチンの接種を済ませておくことをお勧めします。

通常、狂犬病に対する免疫を得るためには数回のワクチンの接種が必要なため、早めに接種を開始することが望ましいのですが、急遽、出国するなどの場合であっても、1回目のワクチン接種を行っているだけでも危険度を下げることができます。

なお、標準的な接種方法でワクチン接種を受けていても、狂犬病ウイルスに対する免疫力はだんだんと低下しますので、海外に長期滞在する場合などは、追加のワクチン接種を1~2年ごと行うことが望ましいとされています。

 

 外国滞在中に注意すること

狂犬病流行地域であるかどうかにかかわらず、海外にはさまざまな動物由来の感染症が存在します。

したがって、むやみに犬やねこ、その他の野生動物に手を出さないようにするとともに、具合の悪そうな動物には近づかないなどの注意が必要です。

もしも、現地で犬に咬まれたり、動物によってけがをした場合は(出国前のワクチン接種の有無にかかわらず)以下の手順で対処してください。

  1. 流水と石けんで傷口をよく洗う
  2. 消毒用アルコール 又は ポピドンヨード消毒液などで消毒する
  3. できるだけ早く現地の医療機関を受診し、傷口の治療を行うとともにワクチンの接種をする
  4. 現地医療機関への受診の有無にかかわらず、帰国時には検疫所(健康相談室)に相談をしてください

潜伏期間があることから、「帰国後にワクチン接種を行えば良い」との説もありますが、事前にワクチン接種を行っていても期間が経過すると免疫力が低下することや、傷口が脳に近い場合に潜伏期間が短くなること等を考慮すると、なるべく早く現地の医療機関を受診し、ワクチン接種を行なった方が良いと考えられます。

 将来、日本国内で狂犬病が発生する可能性はありますか?

日本は島国であるため狂犬病の清浄化に成功しましたが、海外から狂犬病が侵入する可能性は残っています。

このため、検疫体制の維持・強化とともに、万一、狂犬病が国内に侵入したとしても蔓延することを防ぐための犬への狂犬病予防注射が徹底されなければなりません。

WHOは、狂犬病が侵入した場合に蔓延しないために、どの程度の犬が狂犬病の免疫を持っていることが望ましいかという率を、すべての犬の70%としています。

近年、日本国内における狂犬病予防注射の実施率は低下する傾向があるとされていますが、これまで50年間、狂犬病の国内発生がなかったのは、犬の飼い主の皆さんが狂犬病予防注射を行ってきた結果です。

将来にわたって狂犬病の国内発生・蔓延を防ぎ、安全を確保するためには、狂犬病を過去の病気とせずに、「身近な危機」として感じていただき、引き続き、犬への狂犬病予防注射を徹底することが必要なのです。

 なぜ、犬に狂犬病予防注射をするのですか?

  1. 犬は、狂犬病の発症時に凶暴性を示す場合が多く、狂犬病の最大の感染源になるため、狂犬病の侵入・発生時の蔓延を防ぐための最も効果的な方法は犬の狂犬病予防対策になります。狂犬病に対する免疫を持つ犬の比率が多ければ、万一、狂犬病が国内に侵入したとしても感染が広がらず、短期間で撲滅が可能になります。
  2. ねこは狂犬病ウイルスに対して感受性が高い(感染しやすい)動物で、狂犬病にかかった場合も一時的に凶暴になりますが、その後は暗く静かな場所に潜んで死亡する場合が多いと言われています。また、狂犬病に罹ったねこから検出されたウイルスの遺伝子を検査した結果、そのほとんどが犬の狂犬病ウイルスに由来するものであったとの報告があり、これも犬の狂犬病予防対策を優先させる理由の一つになっています。
  3. 万一、狂犬病が侵入・発生しても人間が免疫を持っていれば安全ですが、そのためには多くの人々にワクチン接種を定期的に行わなければなりません。これは経済的な損失も大きく、また、医学的にも、決して0ではないワクチンによる副反応などのリスクを考えると望ましいことではありません。このため、日本では感染源となる可能性の高い「犬」に対して狂犬病の免疫を与えることによって発生を予防するという方法を採用しました。

犬に狂犬病予防接種を行って狂犬病の発生を防ぐ方法は、「日本方式」として海外でも評価を得るとともに、50年以上にわたって国内発生がないという、世界でも稀な「狂犬病清浄国」となっている結果をもたらしているのです。

生後91日以上の犬は登録を行うとともに、毎年1回、狂犬病予防注射を受けなければなりません

これは「狂犬病予防法」基づく飼い主(管理者)の義務であり、これに違反した場合は20万円以下の罰金に処せられる場合があります。

日本が「狂犬病に対する不安のない国」としてあり続けるために、皆さまのご理解をお願いいたします。

犬の鑑札と予防注射済票は必ず犬の首輪等に付けておいてください

万一、迷子になっても飼い主のもとに戻ることができます。

付けていない場合は、狂犬病予防法によって捕獲・収容の対象となります。

 関連リンク

お問い合わせ

保健医療部 動物指導センター  

郵便番号360-0105 埼玉県熊谷市板井123

ファックス:048-536-0800

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