トップページ > 県政情報・統計 > 県概要 > 組織案内 > 保健医療部 > 保健医療部の地域機関 > 衛生研究所 > 感染症情報センター > 埼玉県全域における最新のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)のゲノム情報
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掲載日:2024年11月6日
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新型コロナウイルス感染症の流行の波(第1波~第11波)では、それぞれの波で主流となる流行株は異なっていました。新型コロナウイルス感染症の動向を把握するには、ウイルスのゲノム情報を早期に把握することが重要となります。
埼玉県衛生研究所でおこなったゲノムの解析結果に加え、県内政令市・中核市、民間検査機関、国立感染症研究所が実施したゲノム解析結果を分析し、検出状況を掲載しました。
【現在の状況】
第10波にあたる2024年1月以降、L455S変異を有するBA.2.86系統(通称:ピロラ)の一種であるJN.1系統が急増しましたが、2月中旬から4月上旬にかけて減少しました。4月中旬以降は、JN.1.11.1やKP.3系統(JN.1.11.1の子孫系統)等、JN.1系統の子孫系統の中でもL455S変異に加えF456L変異を有する変異株の検出数が増加しました。特に5月以降(第11波)は、L455S及びF456L変異を有するKP.3系統の検出が急激に増加し、患者数も併せて増加しましたが、7月末をピークに8月以降の患者数は減少傾向に転じています。
COVID-19のゲノム検出状況
特定のアミノ酸変異を有する変異株について
新型コロナウイルス感染症発生当初から現在までのゲノム解析結果が得られた陽性者の人数を、系統別に検体採取週別に集計しました。
県内流行の第1波から第11波まで、いずれも主流となる流行株の亜型は異なっていました。
第8波は第7波と同様のBA.5系統(オミクロン株の子孫系統)が主流ですが、系統の中の亜型は異なっています。
第9波、第10波及び第11波は、第6波(後半)と同様のBA.2系統(オミクロン株の子孫系統)が主流ですが、それぞれの期間において系統の中の亜型は異なっています。
第7波以降の詳細な亜型、系統については次の項目に掲載しています。
2022年6月(第7波)以降の埼玉県内のゲノム解析結果を詳細に集計しました。
【各波における主流株及び主流系統について】
第7波(2022年6月~9月)
BA.5.2、BA.5.2.1、BF.5などのBA.5系統の亜型
第8波(2022年10月~2023年3月)
前半(2022年10月~11月):第7波に引き続き、BA.5.2、BA.5.2.1、BF.5などのBA.5系統の亜型
後半(2022年12月~2023年3月):BQ.1.1系統、BF.7系統、BN.1系統などのBA.5の子孫系統
第9波(2023年4月~11月)
XBB.1.5系統、XBB.1.9系統、XBB.1.16系統などのBA.2系統の子孫系統、及びEG.5系統(XBB.1.9系統の子孫系統)
第10波(2023年11月~2024年4月)
前半(2023年11月中旬~12月)は、HK.3系統及びHV.1系統といったEG.5系統の子孫系統や、BA.2の子孫系統であるBA.2.86系統(通称:ピロラ)が検出されました。第10波のピーク付近(2024年1月~2月前半)ではJN.1系統(BA.2.86系統の子孫系統)の検出数が急激に増加し、第10波の後半(2024年2月~4月)にかけてJN.1系統の占める割合が増加しました。また、4月下旬以降、JN.1系統の子孫系統であるKP.3系統が検出されました。
第11波(2024年5月~)
第10波の後半に検出されたKP.3系統の検出数が増加しており、主流となっています。
BA.2.86系統(通称:ピロラ)及びJN.1系統の詳細な説明は、BA.2.86系統(通称:ピロラ)及びその子孫系統に関するWHOの情報等についてをご確認ください。
第11波(2024年5月~)に検出されているKP.3(JN.1.11.1.3)系統の亜型について、埼玉県内の検出状況(検体採取週別)を下図に示しました。KP.3系統の亜型であるKP.3、KP.3.1.1及びXECは、WHOでVUM(監視下の変異株)に指定されており、埼玉県でも今後の動向について注視しています。
(VUMについては、BA.2.86系統(通称:ピロラ)及びその子孫系統に関するWHOの情報等についてをご確認ください。)
サイズ拡大版のグラフ(エクセル:201KB)
2024年4月下旬以降、KP.3.3が検出され始め、6月下旬にかけて総検出数に対する割合は増加する傾向にありました。その後、KP.3.3の検出割合は減少傾向にありましたが、6月中旬からはKP.3.3.3及びKP.3.1.1が検出され始め、9月末にかけて、その割合は増加傾向にあります。
また、2024年4月下旬以降の埼玉県内の新型コロナウイルス感染症の定点当たり報告数に、上図の週毎の変異株の検出割合をかけて、定点当たり週別報告数の系統別の内訳を推計しました。
2024年4月下旬のKP.3.3の検出に伴い、新型コロナウイルス感染症の週別定点あたり報告数も増加していましたが、8月に入り減少傾向となっています。8月以降の減少のペースは、KP.3.3.3及びKP.3.1.1の出現・流行により増加局面よりも緩やかになっています。
直近の発生状況は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行情報をご確認ください。
(過去の発生状況は、2023年5月7日以前のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行情報をご確認ください。)
特定のアミノ酸変異を有する変異株は、以下のような特徴があると言われています。
埼玉県で検出されたCOVID-19の亜型について、期間ごとに、亜型数と特定のアミノ酸変異を有する亜型の割合を集計しました。
波(期間) | 亜型の数 | 特定の変異の種類(特定の変異を有する亜型の割合) |
---|---|---|
第7波(2022年6月~9月) | 50以上 | R346T変異(約4%) |
第8波(2022年10月~2023年3月) | 160以上 | R346T変異(約51%) |
第9波(2023年4月~11月中旬) | 270以上 |
R346T変異とF486P変異(約73%) R346T変異とF486P変異とF456L変異(約14%) |
第10波(2023年11月下旬~2024年4月) | 110以上 |
R346T変異とF486P変異とF456L変異とL455F変異(約25%) F486P変異とL455S変異(JN.1等、約22%) |
第11波(2024年5月~) | 60以上 | F486P変異とL455S変異(JN.1等、約14%) F486P変異とL455S変異とF456L変異(KP3等、約82%) |
そこで、埼玉県で検出があった変異株を、検体採取週別・系統別に、R346T変異、F486P変異、F456L変異、L455F変異、L455S変異の5つの変異の有無によって区別し集計しました。
凡例 | 系統 | R346T変異 | F486P変異 | F456L変異 | L455F変異 | L455S変異 |
---|---|---|---|---|---|---|
BA.2 | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | |
BA.5 | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | |
BA.5 | 〇 | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | |
BA.2 | 〇 | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | |
BA.2 | 〇 | 〇 | ✕ | ✕ | ✕ | |
BA.2 | 〇 | 〇 | 〇 | ✕ | ✕ | |
BA.2 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ✕ | |
BA.2.86 | ✕ | 〇 | ✕ | ✕ | ✕ | |
BA.2.86 | ※ | 〇 | ✕ | ✕ | 〇 | |
BA.2.86 | ※ | 〇 | 〇 | ✕ | 〇 |
〇:変異を持つ ✕:変異を持たない ※:変異を持たない亜型が多いものの、一部持つ亜型が存在
埼玉県で検出された系統別・特定のアミノ酸の変異の有無別、検出数の推移
【各波における主流系統について】
第7波(2022年6月~9月)
前半(6月~7月上旬):特定のアミノ酸変異を持たないBA.2系統()
後半(7月中旬~9月):特定のアミノ酸変異を持たないBA.5系統()
第8波(2022年10月~2023年3月)
前半(2022年10月中旬~11月):特定のアミノ酸変異を持たないBA.5系統()
後半(2022年12月~2023年3月):R346T変異を持つBA.5系統()、R346T変異を持つBA.2系統()
第9波(2023年4月~11月)
前半(2023年4月~9月上旬):R346T変異とF486P変異を持つBA.2系統()
後半(2023年9月中旬~11月):R346T変異、F486P変異、F456L変異を持つBA.2系統()、R346T変異、F486P変異、F456L変異、L455F変異を持つBA.2系統()
第10波(2023年11月~2024年4月)
前半(2023年11月~12月)は、第9波の後半に引き続き、R346T変異、F486P変異、F456L変異、L455F変異を持つBA.2系統()の検出に加え、BA.2.86系統()が検出されました。その後、2023年12月中旬より、JN.1系統をはじめとするL455S変異を持つBA.2.86系統()が検出され始め、2024年2月前半にかけて検出数が急増しました。2月中旬以降は、総検出数は減少したものの、3月下旬にかけて総検出数に対するL455S変異を持つBA.2.86系統()の割合は高い状況にありました。また、2024年の3月以降は、KP.3系統をはじめとするL455S及びF456L変異を持つBA.2.86系統()が検出され始め、4月下旬以降、検出数は増加しました。
第11波(2024年5月~)
第10波の後半に引き続き、L455S及びF456L変異を持つBA.2.86系統()の検出が主流となっており、検出の殆どを占めています。
(埼玉県内で検出された特定のアミノ酸変異を有する変異株の一覧につきましてはリンク先をご覧ください。)
2022年10月以降の埼玉県内の新型コロナウイルス感染症の定点当たり週別報告数(2022年9月26日から2023年5月7日は全数報告からの推計値、2023年5月8日以降は定点医療機関からの報告に基づく定点当たり報告数)に、上図の週ごとの変異株系統の割合をかけて、定点当たり週別報告数の系統別の内訳を推計しました(2023年5月8日以降のCOVID-19の流行情報及び2023年5月7日以前の全数報告時のデータを用いた定点当たり報告数の推計につきましてはそれぞれリンク先をご覧ください)。
埼玉県内の新型コロナウイルス感染症の定点当たり週別報告数をみると、第9波にあたる2023年8月から9月にかけて急激な患者数の増加がみられていました。その要因の一つとして、F456L変異を有するBA.2系統()が増加していたことが考えられます。
また、2023年12月以降に定点当たり週別報告数の増加がみられました。2023年12月中旬はL455F変異を有するBA.2系統()が流行の大部分を占めていましたが、2024年1月以降はBA.2.86系統(通称:ピロラ)のうち、JN.1系統をはじめとするL455S変異を有するBA.2.86系統()が急激に増加しており、第10波の流行に影響を及ぼしたと考えられます。
2024年4月下旬以降は、KP.3系統をはじめとするL455S及びF456L変異を有するBA.2.86系統()に検出数の増加がみられ、それに伴い患者数の増加が確認されています。L455S及びF456L変異を有するBA.2.86系統()が、第11波にあたる2024年5月以降の流行に影響している可能性が考えられます。
(埼玉県内で検出された特定のアミノ酸変異を有する変異株の一覧につきましてはリンク先をご覧ください。)
2022年9月8日以降に埼玉県内で検出されたBA.2.86系統(通称:ピロラ)のうち、スパイク蛋白質のL455S変異の有無別に図示しました。
さらに、F456L変異を有する亜型については、薄い青色で染めて示しています。
2022年9月8日以降に埼玉県内で検出された亜型のうち、スパイク蛋白質のR346T変異を有する変異株を、BA.5系統及びBA.2系統に分け、F486P変異を有する系統は薄いピンク色、持たない系統は薄い青色で示し、エクセルファイルにまとめました。
また、BA.2系統については、系統別に分類し、その中でも、F456L変異を有する変異株を黄色、L455F変異を有する変異株を橙色で染めています。
なお、BA.2.86系統(通称:ピロラ)はR346Tを持たないことが多いため、下の分類表(Excelファイル)には掲載していません。
詳細については、以下のExcelファイルをご覧ください。
BA.2及びBA.5系統におけるR346T、F486P、F456L、L455F変異の有無別一覧表(エクセル:46KB)
世界保健機関(WHO)では、新型コロナウイルス感染症の変異株の変異についてリスク分析を行い、そのリスクに応じ、VOC(variant of concern:懸念される変異株)、VOI(variant of interest:注目すべき変異株)、VUM(variant under monitoring:監視下の変異株)に分類しています。
2024年10月31日現在における分類は以下のとおりです。
VOC(懸念される変異株) | VOI (注目すべき変異株) |
VUM (監視下の変異株) |
|
該当なし |
BA.2.86系統* |
JN.1.7(BA.2.86.1.1.7) |
KP.3.1.1(BA.2.86.1.1.11.1.3.1.1) |
*VOIに分類されているBA.2.86の亜系統は除く **VUMに分類されているJN.1の亜系統は除く
※1 KP.3.3(BA.2.86.1.1.11.1.3.3)※2 KS.1.1(BA.2.86.1.1.13.1.1.1)
WHOは、2023年11月21日に、BA.2.86系統(通称:ピロラ)が世界的に増加傾向にあることを踏まえVOIに指定しました。
WHOのリスク評価で判明している、BA.2.86系統に関する主要事項は以下のとおりです。
さらに、WHOは、2023年12月18日に、BA.2.86系統の子孫系統であるJN.1(BA.2.86.1.1)系統の検出割合が世界的に急増したことを踏まえVOIに指定しました。
WHOのリスク評価で判明している、JN.1に関する主要事項は以下のとおりです。
また、WHOは、2024年5月3日に、JN.1系統の子孫株であるKP.3(BA.2.86.1.1.11.1.3)をVUMに指定しました。
KP.3は、JN.1のスパイク蛋白のアミノ酸にF456L変異が加わった変異株で、F456L変異を有する変異株は、感染性や免疫逃避性が高くなると言われています。
埼玉県においても、第11波(2024年5月~)よりKP.3系統の検出が急増しており、今後の動向を注視しています。
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