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掲載日:2024年3月8日
Q 岡 重夫 議員(県民)
我が国では、平成2年代後半から増加してきた自殺者数は、平成15年の3万4,427人がピークでした。その後、平成18年に自殺対策基本法が制定されてからは様々な対策が功を奏し、10年後の平成28年には自殺者数が31.9%も減少し3万人を下回りました。
しかし、全体の自殺者が減少する中、新たな課題として浮かび上がってきたのが若者の自殺です。そこで、平成28年の法律改正では、若者の自殺予防が重点課題とされました。さらに、翌年の平成29年に児童生徒の自殺対策の強化が定められた新たな自殺総合対策大綱が閣議決定されて、現在に至っています。
このように、これまで行政を含めた様々な機関による対策と努力により自殺者数が減少傾向にありましたが、残念ながら昨年から新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、自殺者が増加しています。警察庁が昨年11月9日時点で発表した10月の自殺者数は、全国2,153人と前年同月と比較すると39.9%、実に4割も増加しているのです。また、月別に見ると、昨年4月では前年同月対比で17.6%、5月では15.1%と減少していたものが、7月になると2.6%の増加に転じ、8月には17.8%増、そして10月には39.9%増と、増加の一途をたどっています。
中でも女性の自殺がこれまでにないほど増加しているのが特徴です。これについて厚生労働省は、新型コロナウイルスの影響が長期化する中、仕事やDV、育児や介護の悩みなどが深刻化していることが背景にある可能性があると分析しています。
一方、埼玉県でも昨年1年間の自殺者数は1,186人と、昨年より76人も多くなっています。
さて、大野知事は公約「次世代を担う子供たちを育成する埼玉へ」の中で自殺対策の推進を掲げ、これまでも相談体制整備事業や若者向けICTによる自殺対策事業等の様々な対策を行い、自殺防止に取り組んでこられました。また、令和3年度にはSNSなどを通して相談体制を構築する予算も組み込まれています。しかし、それらは全て相手からの相談を受ける受け身の体制です。特にSNSによる相談体制は、相手が連絡を断ってしまうと後を追うことが困難になるおそれがあります。
そこで、現在県が行っているゲートキーパー制度の在り方を見直すべきではないかと考えています。このゲートキーパーは地域や職場、教育、その他様々な分野において身近な人の自殺のサインに気付き、その人の話を受け止め、必要に応じて専門相談機関へつなぐなどの役割を持った人のことで、「命の番人」ともいわれています。現在、このゲートキーパーの研修は市町村に任され、県はその活動実態などを正確に把握できていないために、この制度を改めて活用すべきだと考えています。国立精神衛生医療研究センターで自殺対策に取り組む松本俊彦医師は、「死にたいと言っている人が説教されたり、否定されたりするのではなく、もう少し話を聞かせてという人がいる社会を作るべきだ」と述べており、正にゲートキーパーは自殺の兆候を早く見つけて話を聞ける人です。
そこで、この制度を県が主体となり更に充実させて自殺者を減らす取組が必要と考えますが、知事の御見解を伺います。
次に、さいたま市を除く県内小中学校や高校などの自殺が疑われる事案は、昨年12月末時点で18人も出ており、前年の同時期に比べて9人も増えています。全国的にも同様の傾向にありますが、厚生労働大臣指定法人いのちを支える自殺対策推進センターは、昨年10月の自殺者急増は、新型コロナウイルスの影響により社会全体の自殺リスクが高まっている可能性が高いと指摘しています。
そこで、ふだんから教職員が児童生徒の学校での行動などに目配りをすることも大事ですが、SOSの出し方に関する教育を推進することも大切だと考えています。このSOSの出し方に関する教育の推進については、平成29年7月25日に閣議決定された自殺総合対策大綱の中に明記されたものです。子供たちはSOSを発信することをためらうことが多いので、私も大切な教育だと思います。また、発信したSOSをどのように受け止めて対応するのか、教職員の知識や対応力も必要です。
県は、東京大学大学院と自殺防止対策を含めて子供の他者に援助を求める力の向上や、校内組織の体制強化、外部専門機関等との連携などに取り組む協定を締結したと伺っています。また、令和3年度からは、この連携協定の下に自殺者を含むあらゆる心身の不調の早期発見、早期対応に向けた体制整備に取り組む研究を始めるとのことです。SOSの出し方に関する教育の効果を上げるには、まず学校現場でどのような教育が行われているのか実態を把握することが重要です。
そこで、この研究を通じ、SOSの出し方に関する教育についての実態調査を行う考えはあるのか、教育長に伺います。
また、研究全体を通じ、どのような体制整備を目指すのか、併せて教育長に伺います。
A 大野元裕 知事
県内の自殺者数は平成22年以降減少傾向にありました。
これは埼玉県自殺対策連絡協議会において、医療、福祉、教育、労働、警察など各分野からの委員及び民間団体で協議の上、埼玉県自殺対策計画を策定し、共に取組を進めてきた結果と受け止めています。
ところが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、令和2年の県内自殺者数は、最初の緊急事態宣言解除後の6月以降増え始め、10月には前年比86.7%増の155人に急増をいたしました。
これを受け、県では平日午前9時から午後5時まで実施していた自殺予防電話相談「こころの健康相談統一ダイヤル」を11月1日から年中無休の24時間化し、悩みを抱える方からの相談対応体制を強化をいたしました。
新型コロナウイルス感染症の影響が拡大する中にあって、11月以降、県内の自殺者数はほぼ前年水準まで減少してくるなど、相談体制の強化が一定の効果を上げているものと考えております。
しかし、この感染症の影響は長期に及ぶと考えられることから、コロナ禍の下、アフターコロナを見据えた対策を講じる必要があります。
自殺者が増えてしまうのではないかという危機感を、相談に対応している行政、民間団体、有識者など様々な分野の支援者が強く共有をしております。
このため、議員から御提案がありましたゲートキーパー制度の有効性を改めて評価し、実践することは、非常に重要だと考えています。
こういう時期だからこそ、例えば行政機関の窓口対応者には、相談者の不調のサインに気づき、一緒に考え、安心に繋がる情報を提供するなど問題の解決に寄り添うゲートキーパーの役割が求められています。
このため今後は、県が主体となってゲートキーパーの重要性の周知、様々な分野での養成方法や好事例を市町村に対して紹介するなど、ゲートキーパー制度を充実させてまいります。
この危機感を共有するため、私自ら市町村長に対し、直接働きかけを行うつもりでございます。
A 高田直芳 教育長
SOSの出し方に関する教育についての実態調査を行う考えがあるかについてございます。
議員御指摘の、県内小・中学校や高校における自殺事案の増加につきましては、かけがえのない尊い命が失われたことに大変心を痛めており、極めて憂慮すべき状況であると認識しております。
自殺をはじめとする生徒指導上の様々な課題の背景には、心の不調に起因するものも多くあり、児童生徒から発信されるサインに早い段階で気付き、支援につなぐことが重要です。
そこで県では、令和2年11月、児童生徒自らの援助を求める力の向上や、児童生徒から発信されたSOSを学校全体で受け止め、支援していくための体制の強化に向けた研究を行うため、東京大学大学院と連携協定を締結いたしました。
また、国が定めている自殺総合対策大綱にも、児童生徒が命や暮らしの危機に直面したときの対処法や、苦しいときには助けを求めても良いことを学ぶ教育の推進が明記されており、自殺防止対策の一つとして、SOSの出し方に関する教育を推進することが大変重要であると考えます。
各学校におけるSOSの出し方に関する教育についての実態につきましては、今回の研究においてしっかりと把握し、必要な対策の検討に繋げてまいります。
次に、この研究全体を通じ、どのような体制整備を目指すのかについてでございます。
自殺を含む様々な問題を防ぐためには、学校が児童生徒の心身の不調を早期に発見するとともに、児童生徒自ら援助を求める力を付けることが大切です。
そのためには、校内の体制を一層充実・強化することが必要であると考えております。
そこで今回の研究を通じて、教職員の資質向上策や、外部専門機関等との連携を含めた効果的で実効性のある校内体制の整備について、検討してまいります。
今後、児童生徒に対して、ためらうことなくSOSを発信できる力を身に付けさせるとともに、そのSOSを受け止めることができる組織体制を構築し、児童生徒の自殺予防対策にしっかりと取り組んでまいります。
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