トップページ > 県政情報・統計 > 情報公開 > 情報公開審査会 > 平成22年度情報公開審査会答申 > 答申第155号 行政文書(歴史的資料)A3733 商工部長更迭事務引継書」の不開示決定(平成22年7月27日)
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掲載日:2024年4月2日
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答申第155号(諮問第202号)
答申
1 審査会の結論
埼玉県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成21年10月16日付けで行った、「行政文書(歴史的資料)A3733 商工部長更迭事務引継書」を不開示とした決定(以下「本件処分」という。)は妥当である。
2 異議申立て及び審議の経緯
(1) 本件異議申立人(以下「申立人」という。)は、平成21年10月4日付けで、埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し次の開示請求を行った。
(2) これに対し実施機関は、本件処分を行うとともに、文書1及び文書2について平成21年10月16日付で開示決定を行い、申立人に通知した。
(3) 申立人は、平成21年11月6日付けで、実施機関に対し、本件処分の取消しを求めて異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。
(4) 当審査会は、本件異議申立てについて、平成22年3月26日に実施機関から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。
(5) 当審査会は、実施機関から、平成22年4月28日に開示決定等理由説明書の提出を受けた。
(6) 当審査会は、平成22年5月11日に実施機関の職員から意見聴取を行った。
3 申立人の主張の要旨
申立人が主張している内容は、おおむね次のとおりである。
(1) 本件処分を取り消せ。
(2) 本件対象文書は県の公文書そのものであり、また県として歴史的資料として保存することを自ら意思決定したものである。本来ならば、全部開示により閲覧利用に供されるべきものであり、個人情報の記載がある場合には、当該情報単位でマスキングの技術的処理が容易に可能なはずなので、そのようにして閲覧利用に供されるべきものである。
(3) 埼玉県立文書館(以下「文書館」という。)の条例及び規則には閲覧制限に関する規定(救済規定を含む。)は設けられていない。文書館の窓口対応においては利用制限という行政処分は明示的に存在せず、したがって行政事件訴訟法上の義務行為である不服申立て及び行政訴訟に関する教示も存在しない。
(4) 事実上の救済行為として、申立人と文書館と現課の3者による口頭による調整があるが、申立人の立場から見ると著しく不安定なものであり、また権利性が保障されていないので受け入れることには躊躇する。
(5) 単に本件対象文書が文書館の管理下にあることのみを理由に、形式的に条例第2条第2項第2号を適用することは、条例第1条の目的規定に照らして著しく不合理であると言わざるをえない。したがって、本件文書は条例第2条第2項第2号に該当しない。
4 実施機関の主張の要旨
実施機関が主張している内容は、おおむね次のとおりである。
(1) 「埼玉県文書管理規則」(平成13年3月30日規則第61号)(以下「規則」という。)第11条は、「廃棄を決定した文書等のうち、歴史的資料として重要であると認められるもの」の文書館長への移管を規定しており、これを受けた文書館長は、「歴史的資料の保存及び利用に関する規程」(平成3年2月22日教育委員会教育長訓令第4号)(以下「規程」という。)に基づき、本件対象文書を「公文書その他の記録(以下「公文書等」という。)のうち郷土の歴史的資料として重要であると認められるもの」(規程第1条)として管理している。
なお、本件対象文書は、規程施行以前に文書館へ移管されたものであるが、規程の附則第2項「この訓令の施行の際、現に文書館長が保存している歴史資料については、この訓令の相当規定に基づき文書館長が引継ぎ又は移管を受けた歴史資料とみなす。」が適用されている。
(2) 歴史的資料の利用提供は、規程第4条「歴史的資料を引継ぎ又は移管した者と協議の上、学術、文化等の調査研究のための資料として、利用に供することができる。」の規定により、「文書館の収蔵文書の利用に関する要綱」(平成18年文書館長決裁)(以下「要綱」という。)第5条に定める利用制限の基準をもとに、引継ぎ又は移管した者と協議を行った上で利用に供している。
(3) 利用を制限された部分について、要綱第5条第2項で「館長は、前項の各号に該当する文書がその理由に該当しなくなったと認めるときは、速やかに利用に供するよう努めるものとする。」と、「時の経過」により制限を見直し、公にすることが予定されている。
本件対象文書の袋がけ部分についても、申立人からの閲覧の希望を受けて見直しを行い、情報単位でのマスキング処理による利用提供の準備を整えているところである。
(4) 保存と利用を両立させる必要のある歴史的資料の公開には、利用制限の条件が情報の内容のみによって規定され、その提供の方法・形態も一律に定められる情報開示のあり方はそぐわない。このため本件対象文書は、条例による情報開示とは異なる文書館の閲覧制度によって、歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として、その趣旨に添った公開を行っているところである。
5 審査会の判断
(1) 本件対象文書の性格について
申立人は、本件対象文書は公文書そのものであり、本来ならば全部開示により閲覧利用に供されるべきものであって、個人情報の記載がある場合には、当該情報単位でマスキングして閲覧利用に供されるべきものであると主張する。
また、申立人は、単に本件文書が文書館の管理下にあることのみを理由に、形式的に条例第2条第2項第2号を適用することは、同第1条の目的規定に照らして著しく不合理であるとも主張する。
しかし、条例第2条第2項第2号は、「埼玉県立文書館その他規則で定める機関において管理され、かつ、歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として公にされ、又は公にすることが予定されているもの」を公文書から除外している。これは、形式的には公文書に該当するものであっても、文書館等において、歴史的な若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として管理されているものは、その管理の趣旨に添った公開がなされるべきことから、公文書の範囲から除いたものである。
そこで本件対象文書について検討すると、本件対象文書は、文書館に対し「廃棄を決定した文書等のうち、歴史的資料として重要であると認められるもの」(規則第11条)として移管され、これを受けた文書館長が、「公文書その他の記録のうち郷土の歴史的資料として重要であると認められるもの」として、規程に基づき管理しているものである。
したがって本件対象文書は、県として歴史的資料として保存することを意思決定し文書館が管理しているものであり、条例第2条第2項第2号に該当し条例に基づく公文書開示請求の対象外となるものである。
(2) 本件処分について
上記(1)のとおり、本件対象文書は条例第2条第2項第2号に該当し、条例に基づく公文書開示請求の対象となる「公文書」には該当しない。したがって、実施機関が本件対象文書を不開示とした本件処分は妥当である。
なお、申立人は、文書館の「条例及び規則には閲覧制限に関する規定(救済規定を含む。)は設けられて」おらず、また、文書館の「窓口対応においては利用制限という行政処分は明示的に存在せず、したがって行政事件訴訟法上の義務行為である不服申立て及び行政訴訟に関する教示も存在しない」と主張する。
しかし、これらの主張は、文書館の閲覧制度の問題であって、本件処分の適否とは関わりのないものである。
以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
鈴木 幸子、田村 泰俊、早川 和宏
審議の経過
年月日 |
内容 |
---|---|
平成22年3月26日 |
諮問を受ける(諮問第202号) |
平成22年4月28日 |
実施機関から開示決定等理由説明書を受理 |
平成22年5月11日 |
実施機関から説明及び審議(第三部会第59回審査会) |
平成22年7月2日 |
審議(第三部会第60回審査会) |
平成22年7月21日 |
審議(第三部会第61回審査会) |
平成22年7月27日 |
答申(答申第155号) |
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