トップページ > 県政情報・統計 > 情報公開 > 情報公開審査会 > 平成22年度情報公開審査会答申 > 答申第154号「特定医療法人の平成19年9月の社員総会及び理事会議事録」の部分開示決定(平成22年7月27日)
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掲載日:2024年4月2日
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答申第154号(諮問第201号)
答申
1 審査会の結論
埼玉県知事(以下「実施機関」という。)が平成21年12月11日付けで行った、医療法人○○○(以下「本件医療法人」という。)の平成19年9月の社員総会及び理事会議事録(以下「本件対象文書」という。)の部分開示については、次の部分を除き開示すべきである。
常務理事、顧問、事務長及び庶務部長の氏名並びに個人及び理事長の印影
2 異議申立て及び審議の経緯
(1) 異議申立人(以下「申立人」という。)は、平成21年12月7日付けで埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し本件対象文書の開示請求を行った。
(2) これに対し実施機関は、平成21年12月11日付けで本件対象文書を特定し、「出席者氏名、議案中の個人名、印影」を条例第10条第1号に該当するとして不開示とする部分開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、申立人に通知した。
(3) 申立人は、平成22年1月21日付けで、実施機関に対し、本件処分の取り消しを求めて異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。
(4) 当審査会は、本件異議申立てについて、平成22年2月18日に実施機関から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。
(5) 当審査会は、実施機関から、平成22年3月10日に開示決定等理由説明書(以下「理由説明書」という。)の提出を受けた。
(6) 当審査会は、平成22年4月27日に実施機関から意見聴取を行った。
3 申立人の主張の要旨
申立人が主張している内容は、おおむね次のとおりである。
(1) 医療法人の理事会は公的なものであり、その理事の氏名及びその重要な議事録を同医療法人職員で構成する労働組合に開示することは、社会通念上及び労働組合法上団結権、団体交渉権を保障されていることからも当然のことである。
(2) 理事等の氏名は個人情報とはいえ、開示したことによって、個人の利益が著しく損なわれることはない。これらの情報開示は条例第10条第1号には該当しない。
4 実施機関の主張の要旨
実施機関が主張している内容は、おおむね次のとおりである。
(1) 本件対象文書中の出席者氏名、議案中の個人氏名、印影は個人に関する情報であることから、条例第10条第1号に該当するため不開示とした。
(2) 医療法人の理事長の氏名は登記事項であるため、公にされている情報として条例第10条第1号ただし書イに該当するため、本件対象文書においても理事長氏名は開示している。しかし、他の理事、社員等の氏名及び印影は法令等において公にすることを予定しておらず、ただし書イに該当しない。
(3) 本件対象文書中の出席者氏名等を公開することが、人の生命、財産等の保護につながる事情は見当たらないため、条例第10条第1号ただし書ロに該当しない。また、本件対象文書中の個人は公務員等に当たらないため、条例第10条第1号ただし書ハに該当しない。
(4) 医療法人の理事長の印影については、押印された文書が真正なものであることを示す認証的機能を有する性質のものであり、法人の対外活動において重要な意義を有する。これを公にすることは、当該医療法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから、条例第10条第2号に該当するため不開示とした。
(5) 申立人の主張する「公的」の意味は明確ではないが、仮に医療法人の理事会は私的な会合ではなく、定款に記載されたものでありその意味で「公的」だとみなしても、そのことにより条例第10条第1号に該当しないと解することはできない。
さらに、条例による開示請求は、請求者の職や身分によって開示・不開示の判断が変わるものではなく、本件の場合、労働組合が団結権等を有するが故に当然に条例第10条第1号に該当しないと解することはできない。
また、本件で不開示とした氏名及び印影は条例第10条第1号の「特定の個人を識別できるもの」であることが明らかであり、開示することによって個人の利益が著しく損なわれるか否かを論ずる余地はない。
5 審査会の判断
(1)不開示理由の追加について
実施機関は、本件処分において、当初、条例第10条第1号に該当するとしていた。しかし、当審査会に提出した理由説明書で、理事長の印影については条例第10条第2号に該当するとして不開示理由を追加した。
行政処分における理由の付記は、実施機関の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、不開示理由を開示請求者に知らせることによって、不服申立てに便宜を与えるために行うものである。そのため、不服申立てが行われた後に実施機関が不開示理由を追加したことは、情報公開制度の運用上、必ずしも適切なものとはいえない。
しかし、最高裁判所平成8年(行ツ)第236号同11年11月19日判決が示すように、不開示理由の追加は認められないものではない。また、当審査会において、追加された不開示理由について審議しないまま答申をした場合、実施機関が当該不開示理由により再度部分開示決定を行う可能性も考えられる。
そのため、追加された不開示理由についても申立人に反論の機会を与え、条例第10条第1号と第2号の双方について審議を行った。
(2)本件対象文書について
本件対象文書は、医療法施行令第5条の13の規定に基づき、本件医療法人が知事に提出した役員変更の届出の添付書類である。その内容は、理事等の選任について理事会及び社員総会で審議したときの議事録であり、開催日時、場所、出席者等のほか議案の審議結果が記載されている。
(3)本件処分について
実施機関は、本件処分において、個人の氏名、肩書、印影及び所属を条例第10条第1号に該当するとして不開示とした。
また、理事長の印影を、条例第10条第2号に該当するとして不開示とした。
これに対し、申立人は、これらの情報を不開示とした処分は妥当でないとして開示を求めている。以下、本件処分の妥当性について判断する。
(4)医療法第52条ついて
医療法人は、医療法(以下「法」という。)第52条第1項の規定に基づき、事業報告書等及び監事監査報告書を知事に届け出なければならない。これらの様式は、平成19年3月30日付け医政指発第0330003号厚生労働省医政局指導課長通知で定められており、事業報告書には役員の氏名を、監事監査報告書には監事の氏名を記載するものとなっている。また、法第52条第2項は、知事は医療法人の定款、事業報告書等及び監事監査報告書について請求があった場合は、これを閲覧に供しなければならないと規定している。
法第52条第2項の規定に基づく閲覧に係る実施機関の事務について、実施機関からの意見聴取及び実施機関が作成したホームページにより確認したところ、次のとおりであった。1 県所管法人は、事業報告書等及び監事監査報告書を、正本2部、閲覧用1部提出する。2 閲覧用については、代表者印及び監事の印などの押印が不要である。3 事業報告書に記載する役員の氏名は、社会医療法人、特別医療法人及び特定医療法人以外の医療法人(以下「社会医療法人等以外の医療法人」という。)については任意記載事項である。4 提出された閲覧用の事業報告書等及び監事監査報告書は、希望者に対し県において閲覧に供されること、及び任意記載事項である役員の氏名についても、記載されていれば閲覧に供されることを、医療法人に伝えている。
さらに、当審査会で、本件医療法人が知事に提出し、法第52条第2項の規定に基づく閲覧の対象文書となっている事業報告書等及び監事監査報告書を見分したところ、次のとおりであった。1 平成20年6月提出分と平成21年6月提出分があった。2 平成20年6月提出分については、理事長及び監事の印影が黒塗りにより不開示、理事長、理事及び監事の氏名が開示となっていた。3 平成21年6月提出分については、理事長及び監事の印は押されておらず、理事長の氏名は開示、監事の氏名は黒塗りにより不開示となっていた。
これらの状況を踏まえ、当審査会では次のとおり判断した。
(5)個人の氏名について
個人の氏名は、個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるものであり、条例第10条第1号本文に該当する。そこで、本件対象文書の個々の氏名について、条例第10条第1号ただし書の該当性を検討し、開示・不開示の判断をした。
(6)理事長及び監事の印影について
法人の代表者である理事長の印影は、契約締結や各種届出等において使用されるなど、法人の対外活動において重要な意義を有するものであって、開示することにより当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため、条例第10条第2号本文に該当する。
また、監事の印影は、個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるものであり、条例第10条第1号本文に該当する。
これらの印影は、法第52条第1項の規定に基づき知事に提出される事業報告書等及び監事監査報告書に押印されるものであるが、実施機関は、閲覧用として提出する事業報告書等及び監事監査報告書については押印が不要であることを医療法人に伝えている。そのため、本件医療法人においても、平成20年6月提出分には押印されていたこれらの印影が、平成21年6月提出分には押されていない。記載された役員の氏名が法第52条第2項の規定に基づく閲覧に際して開示されるのに対して、印影がこのような取扱いとなっているのは、印影を閲覧に供さなくても、医療法人の運営をより透明なものとするという法の趣旨を損なわないという判断によると考えられる。このことから、理事長及び監事の印影について、それを不開示とする理由を上回る開示の必要性は見当たらない。
以上のことから、理事長の印影は条例第10条第2号本文に該当しただし書に該当しないため、監事の印影は条例第10条第1号本文に該当しただし書に該当しないため、実施機関が不開示としたことは妥当である。
(7)個人の肩書及び理事長の所属病院名について
肩書及び所属病院名については、特定の個人を識別することができるもの又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある場合には不開示となる。
本件対象文書において不開示とされている肩書について検討すると、肩書のみで特定の個人が識別されるものや、肩書の開示により権利利益を害するおそれのあるものはないことから、条例第10条第1号本文に該当しないため開示することが妥当である。
また、理事長の所属病院名は特定の個人を識別するものではあるが、法第14条の2の規定により、管理者の氏名や診療に従事する医師の氏名は病院内に見やすいように掲示しなければならないことから、理事長が当該医療法人の経営する病院の院長であることを示す所属病院名は、条例第10条第1号ただし書イの「法令により公にされている情報」に該当するため、開示することが妥当である。
以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
鈴木 幸子、田村 泰俊、早川 和宏
審議の経過
年月日 |
内容 |
---|---|
平成22年2月18日 |
諮問を受ける(諮問第201号) |
平成22年3月10日 |
実施機関から開示決定等理由説明書を受理 |
平成22年4月27日 |
実施機関から意見聴取及び審議(第三部会第58回審査会) |
平成22年5月11日 |
審議(第三部会第59回審査会) |
平成22年6月7日 |
実施機関から意見書を受理 |
平成22年7月2日 |
審議(第三部会第60回審査会) |
平成22年7月21日 |
審議(第三部会第61回審査会) |
平成22年7月27日 |
答申(答申第154号) |
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