ここから本文です。
ページ番号:184821
掲載日:2023年10月17日
Q 並木正年 議員(県民)
厚生労働省は、令和元年度の労災申請として、仕事を起因とするうつ病や睡眠障害など精神疾患を理由とした件数が前年比プラス240件の2,060件、脳や心疾患に関する事案が前年比プラス59件の936件であったと公表しました。男女別に見ると、女性では就労機会の増加からセクハラ、マタハラ、ニイハラなど女性特有のハラスメントによって164件増加して952件、男性では仕事内容や量の多さからの過重労働による心疾患など申請、認定ともに1983年の統計開始以降、最多となっています。
昨年4月に働き方改革関連法が施行され、常時雇用する人数が300名を超える企業に対しては、残業時間の罰則付き上限規制が適用されましたが、労災申請は増加傾向にあるようです。
そこで、最初の質問です。全てが仕事によるものではないと思いますが、本県職員の精神疾患による休職の状況、そして復職に向けた支援について伺います。
次に、職員の負担軽減についてです。
本県の人口は全国第5位の734万人ですが、同規模である全国第4位、755万人の愛知県と平成31年度における職員数を比較すると、教育部門は約2,600人少ない3万7,012人、警察部門は約1,600人少ない1万2,878人、知事部局でも約1,600人少ない6,776人と、いずれも少ない人員で県政運営を行っています。
また、県民1万人当たりに対する一般行政部門職員数は、全国平均の23.3人を大きく下回る全国最少の11.3人となっています。本県の平成18年から今年までの人口増加率は4%、数にして28万2,000人増加していますが、この間に知事部局の職員数は1,169名が削減されています。
また、直近10年間では、ラグビーワールドカップやオリンピック・パラリンピックに関係する県民生活部が12%増、福祉部も15%増員されている一方、知事部局全体としての増員はわずか22名であることから、職員一人当たりの業務量が過大になっていると感じます。
保健医療部では業務量の増大から7月6日付けで感染症対策課が新設されましたが、機構改革や職員の増員は、新型コロナウイルスの陽性者数が増加し始めた4月7日の緊急事態宣言前に行っておく必要があったと思います。機構改革による人員の確保は、医療や相談体制をはじめとした対策を強化するために先手を打つことが重要だったはずであり、危機管理を専門とする知事は、空振りを恐れることなく事前に対策を打っていくと様々な場面で答弁されています。
そこで、2つ目の質問として、感染症対策課の設置が7月6日付けと遅れた理由について。また、この課の新設によって、これまでの体制と異なり、どのような対策が強化できているか伺います。
次に、ICTツール等を活用したテレワークの推進と時差通勤についてです。
県では、新型コロナウイルス感染防止対策として、テレワークを導入する企業に奨励金を支給するなど積極的に支援するとともに、テレワークを活用したローテーション勤務や時差通勤などを実施して感染症対策を進めています。
今後は、県庁において感染防止対策のみにとどまらず、子育て世帯や女性、遠距離通勤者などを優先し、テレワークや時差通勤などで仕事と生活の両立支援を更に推進していくべきだと考えますが、実施状況とともに、今後の取組の推進について伺います。
次に、時間外勤務の縮減についてです。
本県職員は極めて優秀なことは分かりますが、734万県民を全国最少の職員数で行政サービスを行う場合には、幾つかの弊害が顕著に表れます。それは時間外の勤務です。平成30年度決算によると、本県職員一人当たりの時間外勤務手当の平均は年間54万3,000円、総支給額は122億円を超え、東京都職員一人当たりの時間外勤務手当平均34万2,000円を20万円上回っています。
労働基準法第33条第3項にあるように、県土整備事務所など一部の職員を除いては、時間外労働の上限規制適用外であるため、民間企業とは単純に比較できないことは承知しています。コロナ特別委員会で私が行った質疑において職員の時間外勤務の状況は、新型コロナウイルス感染症に対応するために県庁全体で1割以上増えており、個人では月200時間を超える時間外勤務を行った職員がいたことが明らかになっています。
そこで、非常時とはいえ、特定の部署や個人に大きな負担となっている現状をどう改善していくのか。また、年度途中ですが、保健所などの負担軽減のために、さらに職員の採用を図るべきと考えますが、いかがでしょうか。
最後に、職員の増員についてです。
保健医療部では医療機関、保健所との調整、宿泊施設の確保や物資調達など、少数で深夜にも及ぶ業務に追われ、各部局から延べ2,000名を超える総動員の応援を行うなど、今も多くの対応に当たっていただいています。災害時や非常時の対応を確実に行う体制や、多様化する県民ニーズを捉え実行するためにも、全国最少の職員数ではなく、本県の人口規模に相応な職員の増員を行っていくべきです。
また、人事委員会からは、総実勤務時間の縮減、民間労働法制の改正等を踏まえ、任命権者において時間外勤務命令の上限が遵守されるよう、実効性のある措置を講じていくことが必要であると報告されています。
今年度、その一環として、庁内の提携業務を集約して処理するスマートステーション「flat」が開設されました。このような取組に加えて、今後、時間外勤務の縮減に向けた働き方改革をどのように進め、実効性のある取組を行っていくのか、職員の増員の必要性の認識と併せて、以上5点、知事の所見を伺います。
A 大野元裕 知事
本県職員の精神疾患による休職の状況についてでございます。
令和元年度の精神疾患による休職者は82人であり、平成30年度と比べ残念ながら10人増加をいたしました。
休職に至った原因は、仕事や家庭など複数の要因が関係していることが多く、仕事面では、職場内の人間関係や業務量の増加、異動による業務内容や職場環境の変化などが多くなっています。
また、休職者の内訳は、主事や主任である一般職員が8割弱であり、30代までの職員で約半数となるなど、いわゆる若手職員が多くなっています。
将来の県庁を支える若手職員に精神疾患が多いということは、非常に憂慮するべきことでありますので、状況に合わせたきめ細やかな対策を進めているところであります。
次に、復職に向けた支援についてでございます。
本県では、精神疾患による休職者については、所属だけに任せることなく、必要な場合には精神科産業医を中心としたメンタルケアチームにより対応しています。
また、業務への不適応による精神疾患を発症した職員については、経験のある分野でリハビリ勤務を行い、復職と同時に配置換えを行うなどの対応を実施しました。
これらの取組により、令和元年度は28人の復職を実現をいたしました。
なお、精神疾患による休職から復職する場合、必ず精神科嘱託医に判断を求めることとしており、復職による健康状況の悪化を防いでおります。
この1年間、職員には豚熱
、台風、新型コロナウイルス感染症への対応など大変な苦労の中、頑張っていただいています。職員が心身ともに健康な状態で勤務できるような環境を整えることは、任命権者である私に課せられた重要な責務と考えております。
また、職員が心身ともに健康で能力をいかんなく発揮することは、県民サービスの向上にもつながります。
今後も、精神疾患の発生予防と早期復職に向けた取組を充実させてまいります。
次に、感染症対策課の設置が7月6日付けとなった理由についてでございます。
新型コロナウイルス感染症は未知の感染症であり、その感染速度、感染規模や予防策など、いまだ不明なところが多くありますが、特に3月から5月頃の感染拡大期においては、対応や職務分担について手探りの中でも感染症対策に万全を期すべく、全庁からの応援体制で対応いたしました。
6月に入り、徐々に蓄えられた知見を踏まえ、新規の感染者が落ち着いた中で、再拡大への備えを進めるため、業務の執行体制を見直しました。
その中で、この非常事態が長期化するおそれを否定できないこと、クラスター対策などを推進する必要があることから、感染症対策に関する専任の担当課として、感染症対策課を設置したものです。
設置の時期については、未知の新型コロナウイルス感染症の流行状況に応じた体制を整える中で、感染症対策への知見が蓄積され、専任の組織が必要となったタイミングで適切に設置をしたものと考えております。
次に、感染症対策課の設置により、どのような対策が強化できているのかについてでございます。
感染症対策課の新設により、大きく二つの対策を強化することができました。
第一に、宿泊療養施設の確保及び運営です。
感染症対策課を設置するまでの間、宿泊療養施設の確保及び運営は他の所属の応援職員が中心となって進めてきたところです。
一方、軽症者及び無症状者は宿泊療養施設での療養を原則とする中で、長期間、複数の施設を運営する必要があることが判明をいたしました。
そこで、感染症対策課が専任組織として継続的に宿泊療養施設の確保や運営に当たる体制を整えました。
同一の職員が継続的に業務に当たることで、知識や経験の蓄積を生かした効率的な運営を行うことができるようになりました。
第二に、クラスター対策です。
感染症対策課はクラスター対策チーム(COVMAT
)業務を所掌しております。
医療機関や介護施設などで一人でも陽性者が発生した場合には、医師、看護師、保健師及び事務職員によるチームを派遣し、クラスターの発生を未然に防ぎます。
これまでクラスター対策は各保健所が行っていましたが、COVMAT
の発足により、保健所の負担を大きく軽減することができました。
なお、COVMAT
は10月1日までに16回出動しております。
今後も専任組織としての特性を生かし、新型コロナウイルス感染症対策を推進してまいります。
次に、テレワークや時差通勤などによる「仕事と生活の両立支援」の推進についてでございます。
まず、実施状況でございますが、新型コロナウイルス感染症防止対策が必要となった今年2月以降、約6割の職員が、1回以上テレワークを経験しております。
緊急事態宣言下においては平日1日当たり平均約900人、緊急事態宣言が解除された後は、1日当たり平均約200人の職員がテレワークを利用しています。
また、時差通勤につきましては、同じく約4割の職員が経験をし、緊急事態宣言下においては平日1日当たり平均約1,500人、緊急事態宣言が解除された後は、1日当たり平均約900人の職員が行っております。
次に、今後の取組の推進についてです。
テレワーク・時差通勤を行った職員へのアンケート調査におきましては、多くの職員から、「通勤時間が削減できる」「通勤に伴う疲労感がない」などの声が寄せられました。
テレワークや時差通勤など多様な働き方の普及は、子育て世帯や遠距離通勤などの職員が「仕事と生活の両立」を図る上で非常に有効な手段だと考えます。
また、私が進める女性活躍の推進にもつながるのではないかと思います。
一方、テレワークの普及に当たっては、ICT機器などの環境整備やペーパーレス化の推進などの働き方の見直しが不可欠であります。
ハード・ソフト両面での対策を進め、「仕事と生活の両立」を図りやすい職場環境づくりに取り組み、働き方改革を進めてまいります。
次に、職員の負担軽減についてでございます。
議員御指摘のとおり、新型コロナウイルス感染症の拡大期であった4月には、未知の感染症への対応の全体像が見えない中で、一部の職員に業務が偏り、月200時間を超える時間外勤務を行った者がおりました。
この状況を改善すべく、特に時間外勤務が過大となっている保健医療部では、業務の見直しや応援体制の拡充を行いました。
保健所においては、保健師の負担軽減のため、専門性を要しない業務について事務職への業務配分を行いました。
さらに、陽性者への健康観察を行うため、民間派遣看護師を増員し、現在42名が業務に当たっております。
また、検体の搬送や患者の移送を民間に委託し職員の負担軽減を図りました。
これらの対策により、7月以降の再拡大期におきましては、保健所全体の時間外勤務数の平均値を4月から約2割削減をすることができました。
いまだに負担が大きい状況を完全に解消できたとは言えません。最も時間外勤務が多い職員の時間数も4月から約4割削減することができました。
また、本庁においても、応援体制を拡充して対応したほか、特に負担が大きい所属には職員の増員を行っております。
保健医療政策課及び感染症対策課では、業務繁忙の状況が続いていることから、10月1日付けで増員を行いました。
保健所の負担軽減のための増員についても、年度途中での職員採用も含め、検討を進めてまいります。
今後も業務の見直しや応援体制の拡充、職員の採用などあらゆる方法によって、職員の負担軽減に努めてまいります。
次に、時間外勤務の縮減に向けた働き方改革と増員の必要性の認識についてでございます。
働き方改革の推進に向けては、今後、ペーパーレス化などデジタル技術を活用して効率化を図る行政プロセスの見直しに取り組みます。
例えば、申請を紙から電子にすると、職員の手入力が省略できたり、結果通知の郵送が不要になるなど一連のプロセスの効率化が期待できます。
また、会議録の作成では、音声認識ソフトを活用することにより、大幅な作業時間の削減が期待できます。
こうした見直しにより、業務の効率化や時間外勤務の削減を図り、職員が能力を最大限に発揮する働き方改革を進め、県民サービス向上につなげてまいります。
また、新たな行政需要や県政の重要課題に重点的に対応できるよう、事業の不断の見直しを図りながら、業務量に応じメリハリをつけた人員配置を行うことも必要です。
今回の新型コロナウイルス感染症対策のように年度途中における業務量の急増につきましては、緊急的な応援体制をとりつつ、必要に応じて年度途中であっても増員をするなど時宜
にかなった対応を行ってまいります。
今後も、行政改革の努力をした上で、なお、県民の生命や財産に重大な影響を及ぼす事案等の対応には必要な職員を増員するなど、多様な課題に的確かつ弾力的に対応してまいります。
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください