トップページ > 埼玉県議会トップ > 定例会・臨時会 > 定例会概要 > 平成29年12月定例会 > 12月11日(月曜日) > 杉島理一郎(自) > 平成29年12月定例会 一般質問 質疑質問・答弁全文(杉島理一郎議員)
ここから本文です。
ページ番号:118722
掲載日:2023年12月1日
Q 杉島理一郎議員(自民)
国づくりの根幹は人づくりであり、学校教育はその基盤であります。しかし、本県は教員の不祥事が多発し、昨年は懲戒免職が過去最多の20件、今、正に教員にこそリカレント教育が必要な状況であります。特に子供に被害がある事案については、徹底的に根絶を図らなければなりませんし、不祥事を隠蔽するような体質は絶対にあってはなりません。
近年、仙台市では、いじめによる中学生の自殺が連続し、特にこれを隠蔽した教育委員会の体質に非難が殺到しています。しかも、1998年に自殺が起きたのと同じ学校で、また自殺があったと。これは、当時原因がいじめとされた際に事実をうやむやにしたことに始まって、20年かけて醸成された根深い隠蔽体質の結果だとの声もあります。
そして、そのときに仙台市の教育長をしていたのは小松教育長であります。不祥事をうやむやにすれば、必ずまた同じことが起こるのです。仙台市の教育長としての経験を生かすと言うなら、今こそ教員による不祥事の根絶に本気で取り組むべきではないでしょうか。
就任前の文教委員会で参考人として小松教育長は、「もし教育長になったら、不祥事の要因分析を行って勉強し、至急改善策を検討して実行していきたい」と答弁されています。その改善策が、まさかこの「不祥事の根絶を目指して」と書かれた教育長メッセージを作成して教員に配ることだけではないと信じて、御質問をいたします。
本年5月に、本県の中学校教員が生徒の着替えを盗撮し、逮捕されました。後に懲戒免職となったのは当然のことであります。しかしながら、問題は、最初に報告を受けた校長と教頭が証拠を隠滅し、事実をもみ消したことであります。結果、そのまま1年教員を続けた犯人は、カメラを購入してまた生徒を盗撮し続け、新たな被害者を出す結果となりました。
これに対し県教委は、校長を休職させ、定年退職まであと半年となった日に停職6か月の処分を下し、同日、校長は依願退職して退職金を満額受領しています。教頭は減給3か月の処分にとどまり、そのまま異動先で教頭として管理職を続けています。全国の類似事件と比べても処分が軽過ぎると感じたため、調べたところ、身内に甘い体質だけでなく、制度の不備やその運用に問題があると感じました。
そこで、まずは処分に係る基準について、教育長に3点質問いたします。
1点目、国では、停職処分は1年以内と規定されていますが、本県の懲戒に係る条例では6か月以内と定められています。他県でも1年以内を採用していますが、なぜ本県では規定を国より緩めているのか。高い倫理観が求められる教員については、国に準じて停職の基準を1年以内に改正すべきでないか、伺います。
2点目に、県教委が定める懲戒処分の基準は、平成16年の制定以降、飲酒運転や体罰など、時代に応じて5度の改正を行っております。6項にある「管理職による隠蔽、黙認」について、本県の処分基準では停職とされていますが、全国では免職と重くしている県もあります。不祥事の隠蔽が社会問題化している今、隠蔽に係る処分基準を改正すべきでないか、伺います。
3点目に、県教委が定める適格性に課題のある校長等の取扱いに関する要綱では、校長、教頭に対して、「適格性に問題があれば、総合教育センターによる研修を実施する」と定められており、研修後の審査会を経て、降任すなわち降格の人事勧告を行えることとなっています。
そこで、まずは今回の事案で教頭にこの研修を実施しなかった理由はどこにあるのか教えてください。その上で、教頭というものは校長の決断には逆らえないものだとして情状酌量したと聞きましたが、それは本当でしょうか。道徳の授業で、悪いことを見て見ぬ振りをしたら同罪だと教わりましたが、大人は許されるのでしょうか。校長が証拠隠滅、犯人隠避の罪を犯しても黙認してしまう教頭でも、管理職としての適格性に課題がないということなのか、教育長に伺います。
さて、当該校長が処分後に保護者に宛てた手紙があります。隠蔽した理由を述べた部分を原文から引用します。「私は、このまま教育委員会等に報告すれば、間違いなく○○先生は免職になると思いました。そして、教員が欠けることによる様々な弊害について考えました。そして、間違った判断をしてしまいました。」、引用を終わります。
学年主任の教員が欠けたときの現場の影響、これと盗撮された女子生徒の人生への影響、これをてんびんにかけて隠蔽を選んでいます。つまり隠蔽の根源には、有能な教員が不足しているという現場の実態と、教員が欠けたときにフォロー、サポートする後方支援体制ができていないという実態があるわけです。実際、警察の捜査が長引き、処分確定までは欠員補充の人事配置がなされず、現場は相当混乱したと聞きます。
そこで、県教委には有能な教員が数多く在籍しているわけですが、問題が発生した学校に対して、一定期間だけでも、すぐに県教委から教員や管理職を派遣できる体制の構築ができないのか、管理職や教員の育成についてどのように改善を図っていくのか伺います。
A 小松弥生 教育長
まず、「教員の停職の基準を1年以内に改正すべきではないか」についてでございます。
県教育委員会では、教職員の懲戒処分に当たっては、停職6月を超えるような重大な事案の場合、免職とするという、むしろ厳しい処分をしております。
そのため、停職期間を6月以下から1年以下に伸ばすことについては、慎重に検討すべきものと認識しております。
なお、停職の期間を1年以下としている県は、47都道府県中9県でございます。
次に、「隠ぺいにかかる処分基準を改正すべきではないか」についてでございます。
県教育委員会の「懲戒処分の基準」では、今回の事案のような、監督責任者が「部下職員の非違行為を知得したにもかかわらず、その事実を隠ぺいし、又は黙認した」場合は、「停職又は減給」と規定しております。
全国的に見ますと、「非行の隠ぺい、黙認」の処分基準を公表している35都道府県のうち、本県の「停職又は減給」よりも重い「免職」を規定しているのは1県のみでございます。
本県の基準では、個別の事案の内容によって、基準に掲げるものよりも重い処分とすることができることとなっていますので、現在の基準を維持しながら、今後とも厳格な対応をしていきたいと考えております。
次に、「適格性に課題のある校長等に関する研修を教頭に実施しなかった理由はどこにあるのか」についてでございます。
本研修は、市町村立学校の教頭の場合、当該市町村教育委員会の申請に基づいて実施することとなっております。
現在のところ、当該市町村教育委員会からの申請がない状況でございます。
次に、「教頭は校長の決断には逆らえないものだとして情状酌量としたと聞いたがそれは本当か」についてでございます。
本事案については、非違行為を行った職員の職責と非違行為の関係を評価し、決定しており、情状酌量としたものではございません。
具体的には、校長は盗撮の隠ぺい、黙認を指示したことについて、教頭はその事実を認知したにも関わらず校長に必要な進言を行わなかったことについて、それぞれ懲戒処分を行ったものでございます。
次に、「教頭は、管理職としての適格性に課題がないということなのか」についてでございます。
当該教頭が、この事案の際に、校長に進言しなかったというのは、不適切であったと認識しております。
そのため、服務監督権者である市町村教育委員会が当該教頭に対して指導をしております。
次に、「問題が発生した学校に対して、一定期間だけでもすぐに県教委から教員や管理職を派遣できる体制の構築ができないのか」についてでございます。
本事案におきましては、学校の混乱を最小限とするため、当該市町村教育委員会と協議し、休職となった校長に代わる後任校長の発令や非常勤講師の配置を行い、支援してまいりました。
県といたしましては、問題の発生した学校に対しては、市町村教育委員会と連携を密にし、学校運営に支障がでない体制を維持できるよう支援してまいります。
また、県教育委員会から管理職や教員を学校に人事異動し、支援することについては、必要に応じて対応してまいります。
次に、「管理職や教員の育成について、どのように改善を図っていくのか」についてでございます。
度重なる教職員の不祥事は、県民の学校教育に対する信頼を著しく損ねております。
不祥事の根絶に当たっては、まず、管理職をはじめとする教職員一人ひとりが、どうすれば不祥事をなくすことができるか真剣に考えることが必要だと思います。
また、教職員だれもが率直に意見を出し合い、相談できる風通しの良い職場づくりを進めてまいります。
リーフレットを活用した、リーフレットに対する意見の提出状況でございますけれども、この意見につきましては、市町村教育委員会ごとに、とりまとめていただいておりまして、12月18日までの提出をお願いしています。
現在のところ、62市町村のうち、17市町村から出していただいております。
主だったものを御紹介いたしますと、例えば、「他の教員の教育活動を『見る』、『褒める』活動、授業でも部活動でも教室掲示でも相互に見合う活動、こういったことが互いにリスペクトし合う関係づくりにつながる」とか、「わからないことは遠慮なく同僚に聞く、自分のみで問題を抱え込まず、グループワークを多様に取り入れることによって、人間関係を練り上げていく」などの意見がございました。
不祥事根絶の覚悟についてでございますけれども、私が東京に住んでおり、教員出身でもないという御指摘でございますけれども、個人的なことですけれども、自宅は世田谷ではございません。また、浦和にもマンションを持っております。
御指摘いただきましたように、県教育委員会には、有能な教員が数多く在籍しておりますので、730万県民の教育、学校教育、そして社会教育、文化に関して、教育長1人だけでは、何事もできないと思いますので、有能な職員の能力も活用し、また現場の教職員の意見も活用しながら仕事を進めてまいりたいと考えております。
不祥事根絶に関しましては、今後も、市町村教育委員会とも連携して、粘り強く続けてまいりたいと考えております。
再Q 杉島理一郎議員(自民)
ただ今の答弁の中で、国の懲戒による条例、また、県教委が定める懲戒処分の基準、この基準を定めているけれども、事案によっては、その条例よりも、基準よりも重くすることができるとありました。それでは、この条例や基準というのは何のための基準であり、上限は何のためにあるのか、教えてください。
また、今回の事案では、その上限を超える必要がない、それだけの事案だったという判断なのかも併せて教えてください。そして、その理由も教えてください。
また、3点目に、適格性に課題のある校長等の取扱いに関する要綱についてのお話がありました。これは、市からの申請ベースがなければ、県としてこの研修を実施することができないという御答弁でありましたが、先ほど、この教頭は管理職として不適切であるというような答弁がありました。不適切ではあるけれども、適格性に課題がないので研修を実施しないということであるとすれば、もし市町村からの申請がなければ研修ができないということなのか。その場合には、県がしっかりとその制度を改めて、必要とあれば県から指導をして研修を実施できるように改めるべきでないか、お伺いをいたします。
再A 小松弥生 教育長
まず、基準についてですけれども、「事案によっては重くすることができると書いてあると、上限が何のためにあるのか分からないのではないか」との御質問ですけれども、この懲戒処分の基準は標準例ということで定めております。
個別の事案の内容によっては、標準例に掲げる処分の種類以外とすることができるということで、例えば日頃の勤務態度とか非違行為後の対応等も含めて総合的に考慮して判断するための標準例であるという定め方をしておりますので、事案によっては重くすることができるというふうにしております。
それから、「本件が上限を超えないと判断したのか」でございますけれども、本件につきましては懲戒処分の基準をまず基にし、それから同様の他県の事例などを参考といたしました。
それからもう一つ、刑事処分も行われる可能性がございます。懲戒処分と刑事処分の乖離が大きければ県教育委員会の懲戒処分にかかる裁量権の逸脱の可能性が出てくるということで、刑事処分についての情報も参考としたところでございます。
それから、教頭について、不適切であると言ったではないかということでございますが、この教頭につきまして、校長の非違行為について、それは駄目だということを進言できなかったということについて、誠に不適切であると思っております。
しかしながら、それ以外の学校運営に係ること全てについて不適切かどうかということにつきましては、市町村教育委員会の方できちんと判断をしているのだと思いますけれども、市町村立の学校では服務監督権者も市町村であるということから、市町村教育委員会の申請を待って研修を行うこととなっております。
それで、今回の件につきましては、市町村からの申請はございませんけれども、県の方からは、当該教頭について研修もできますよということは働きかけております。
今後とも、当該市町村教育委員会と、この件については、協議をしてまいりたいと考えております。それから、県が直接、市町村立学校の職員についての研修ができるようにすべきではないかということでございますけれども、その点につきましては、現在の制度のもとではできないと考えております。
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください