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掲載日:2019年6月26日
Q 須賀敬史議員(自民)
子供たちのメディア漬けは乳幼児期から始まり、学童期のゲーム漬け、思春期のスマホ・ネット依存に続き、さらには子育て中の親を通じて次の世代へと、より深刻に連鎖をしています。
乳幼児期では、赤ちゃんの脳神経回路が形成される大切な時期に、授乳をしながらテレビやビデオ、DVDを見たり、スマホでメールやSNSを利用したりしている母親の割合が7割を超えています。長時間の強い光や大きな音のメディア接触が、子供の体の発達に大きなマイナスの影響を及ぼしているだけでなく、子供と目を合わせずに行われる授乳などにより、親子の愛着形成に大きな悪影響を及ぼし、そのひずみが子供への虐待にもつながっていくのです。
厚生労働省の統計によると、表面化した全国の児童相談所における児童虐待相談の対応件数は、平成26年度は8万8,931件でした。統計を取り始めた平成2年の1,101件に比べると、約80倍に激増しているのが現状であります。
平成26年度における内閣府の青少年インターネット利用環境実態調査では、スマホ、ノートパソコン、携帯ゲーム機などでインターネットを利用する割合は、小学生で62.9パーセント、中学生で86.8パーセント、高校生になると97.3パーセントと、青少年の8割以上が何かしらの機器を用いてインターネットを利用しているのが現状です。
このように、小学生の頃からインターネットに触れられる生活環境があるため、コミュニティサイトを利用した子供たちが犯罪の被害に遭うケースも多発しています。加害者の犯行動機は、子供とのわいせつ行為や子供のわいせつ画像の収集などが主な目的でした。金銭や物品ではなくて、子供自身が狙われているのです。
埼玉県では、ネットアドバイザーを養成し、ネット犯罪の危険性や保護者の役割について、直接小中学生の保護者に啓発する子供安全見守り講座を行っています。しかし、インターネットの利用時期が低年齢化している状況の中で子供たちを守るためには、インターネットに触れる前の小学校低学年からメディア漬けから解放し、インターネットを使う上でのマナーや上手に使うことの便利さ、その裏にある危険性を教えるべきだと考えます。ネットを使ったいじめがいかに陰湿か、遊び半分で載せた画像が人生を大きく狂わせることがあること。これら現実の怖さを、インターネットを使い始めてから後追いで教えるのでは遅過ぎるのです。そして、小学校低学年、さらには幼稚園、保育園の保護者にも問題意識を持ってもらわなければならないのです。
福岡県のNPO法人子どもとメディアは、文部科学省の委託事業として、小学生自身に合わせた啓発内容と体験型学習を取り入れながら、子供自身の気づきを促すアプローチでの「シアタープロジェクト」という啓発公演をしています。この「シアタープロジェクト」は、自己表現、他者への共感、家族関係に着目して、子供たちをメディア依存から解放することを目的としています。
この「シアタープロジェクト」の中に、茶の間で父親はテレビ、姉はスマホ、弟はゲームをしているという、メディア漬けでうまくいっていない家族の芝居を見てもらった後に、観客の子供たちや保護者から、劇中の家族をもっとすてきな家族にするためのセリフや構成の変更のアイデアを募り、役者たちは、同じ人物設定で子供たちや保護者から提案された状況を即興的に演じ、芝居の変更を繰り返していくというものがあります。例えば、会場から「話をするときに相手の目をみていない」と指摘があると、役者は同じ場面を、今度は相手の目を見て話す芝居に変えて演じます。「父親の声が暗い」、「ずっとスマホをいじり過ぎ」と指摘があれば、またそこを変えて演じ、会場が納得する家族ができ上がるまで続けるのです。
この啓発公演の事前・事後アンケート分析結果によると、公演後、テレビの視聴時間が減る傾向にあり、家庭用ゲーム機、携帯ゲーム機も、長時間使用が減る傾向があることが分かりました。公演後のアンケートで、家族との関係と約束をクロス集計したところ、家族が好きなほど約束を守る傾向が高い、家族が好きなほど家族に相談する率が高いという傾向が分かりました。当たり前の結果かもしれませんが、スマホなどのインターネット接続機器を持たせるときのルールや約束の前に、家族の信頼関係があるかどうかがとても重要なのです。
たばこが体に悪影響を及ぼすと言われ、禁煙が社会的に広まるまでに70年かかりました。ネット社会の中で、子供のメディア漬けが子供たちに悪影響を及ぼしていると言われてから、まだそう長くはたっていません。しかし、70年も待つわけにはいかない今、埼玉県もこの分野で全国に先駆けて、NPO法人などの力も利用して、子供のメディア漬けからの解放と低年齢からのインターネットメディア・リテラシー教育を学校で行うべきと考えますが、教育長の御所見をお伺いします。
A 関根郁夫 教育長
現在、小学校におけるインターネットの扱い方、いわゆるインターネット・メディア・リテラシー教育については、特定の教科ではなく、様々な教科などの時間で実施しております。
特に低年齢段階では、直接的な体験を重視し、情報機器に触れ、親しませることを基本としながら、発達段階に応じて、情報や情報技術のもつ影の部分の影響や対処法も指導しております。
また、市町村においては、各小中学校の児童生徒の代表が集まり、各学校で実施したアンケートを基に、メディア機器活用の問題点を考え、主体的にルールづくりを進めている例がございます。
県立高校においても、生徒自身が主体的にスマホ利用のルールづくりを行っております。
その際、NPO法人などから講師を招き、ワークショップや講演会を行い、生徒の気付きを促す取組を実施しております。
この取組の結果、スマホ利用のプラス面とマイナス面への理解が深まり、生徒のメディア・リテラシーが高まったという成果が報告されております。
議員御指摘のとおり、低年齢段階においても子供自身の気付きを促す体験的な取組は、効果的であると考えております。
小学校において子供自身が自ら考え、主体的に行動するような取組が行われるよう、NPO法人などの取組をはじめ、他の自治体や県立高校の実践事例などについても市町村に情報提供してまいります。
県といたしましては、こうした取組を通して、小学校の低学年の段階でのインターネット・メディア・リテラシー教育が充実するよう市町村への支援に努めてまいります。
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