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掲載日:2023年1月11日
大気環境担当の研究活動を紹介します。
埼玉県では、大気中の環境基準が設定されている多くの物質(二酸化硫黄、二酸化窒素、浮遊粒子状物質、一酸化炭素等)について改善が進み、環境基準を100%達成するようになりました。一方で、光化学オキシダントの濃度には改善が見られず、環境基準の達成率は依然として0%で、光化学スモッグ注意報の発令日数は全国でも常に上位にあります。また、平成21年度に環境基準が定められた微小粒子状物質(PM2.5)についても基準は達成されていません。これらの対策には、PM2.5の化学組成や揮発性有機化合物(VOCs)の個別成分の把握を行い、発生源を解明することが不可欠です。また、高濃度の要因の解析も必要です。これ以外にも、国際条約の発効した水銀や、今後建造物の解体等により大気中への飛散が懸念される石綿、更には有害大気汚染物質対策のための実態把握が必要です。
大気環境担当では、きれいな大気環境を維持し、あるいは取り戻すために次のような調査・研究を行っています。
微小粒子状物質(PM2.5)は健康への影響が指摘されており、平成21年に環境基準値が設定されました。濃度には微減傾向が見られますが、依然として未達成地域があります。また、PM2.5の発生源対策を進めるためには、質量濃度だけでなく、詳細な化学成分を把握する必要があります。埼玉県では環境基本計画において、平成33年末までに目標年平均濃度として12 µg/立法メートルを掲げており、一層の濃度低減を目指しています。
PM2.5の観測と解析により、対策立案の基礎となる知見の集積を継続しつつ、目的に応じた観測による詳細な解析を可能とします。これらの結果をデータベースとして整備しながら、原因別寄与(国内・国外及び発生源別の寄与)を解明するとともに、低減対策の提案を行います。
平成12年から継続してきた加須における通年観測や富士山頂、中国や韓国との同時観測などによりPM2.5の詳細な成分(水溶性イオン、炭素成分、無機元素等)を把握します。また、PM1にも着目した取組もしています。
1週間単位で採取したPM2.5試料
PM2.5秤量用の精密天秤
関東甲信静や2.型研究を通じた全国の地環研等との共同研究のほか、移動測定車を活用することで、発生源の解明を行います。また、詳細な成分データを活用して高濃度要因の解明も行います。
炭素成分の分析装置
田園地帯の枯れ草焼却
光化学オキシダント(光化学オゾン)は、大気中に排出された揮発性有機化合物(VOCs)と窒素酸化物(NOx)とが太陽光の下で複雑な光化学反応によって生じ、濃度が高い場合には、光化学スモッグ注意報が発令されることもあります。埼玉県の注意報発令日数は全国でも上位であり、環境基準達成率は0%が続いています。VOCsの排出抑制はこれまでにも進められてきましたが、種類が非常に多いことに加え、発生源も多種多様で、植物起源のものもあります。埼玉県では今後一層の対策を進めていく必要があります。
大気観測を通じて、実態把握を継続しつつ、観測結果から高濃度日を抽出・解析して高濃度要因を解明します。また、原因物質の排出を低減する方策を提案します。
VOCsは種類と発生源が多種多様で、大気中のVOCsには発生源から排出されたものと大気中で生成したものとが混ざり合っています。このため、VOCsを昼夜別に採取して、100程度の成分を分析し、実態の把握を行っています。
VOCs採取用キャニスターの分析装置 VOCs測定のためのサンプリング
VOCs対策により平成12年から22年の10年間で大気中のVOCs濃度は大きく減少しましたが、光化学オキシダント濃度には減少は見られていません。光化学大気汚染対策を進めるため、詳細なVOCsデータを活用して発生源 (特に暖候期) の解明を進めます。
光化学オキシダントの環境基準値を超過した各月の積算時間 (鴻巣局、戸田局)
県庁からの依頼による調査研究や試験検査、施策遂行に必要な研究を行っています。ここでは、主要研究課題に関連するもの以外で代表的な業務を紹介します。
県内のばい煙発生施設を対象として煙道におけるPM2.5を採取し、詳細な成分分析を行っています。また、光化学スモッグやPM2.5の二次生成粒子対策として排出規制の対象外の施設におけるVOC排出削減の自主的な取り組みを支援しています。
煙道のPM2.5サンプリング T-VOC測定装置
印刷工場での測定
有害大気汚染物質を県内8地点で月に1回測定し、県内全域の濃度を把握しています。特に、近年はいわゆる「水俣条約」で知られている水銀や建造物の解体時等に大気中に飛散する恐れのある石綿への社会の関心の高まりから、これらの把握も行っています。
大気中の水銀分析 繊維状物質の石綿検査
大気中の石綿サンプリング
東アジア地域の近年の実態を調べ、越境大気汚染の解明に役立てるため、中国・韓国の研究機関(夏季は富士山頂でも実施)と連携してPM2.5の同時観測を行っています。
大気汚染で霞む中国の空港 富士山頂での観測
日中韓PM2.5シンポジウム
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