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ページ番号:13611
掲載日:2024年8月21日
第4章 信頼にこたえる開かれた学校づくり
-教育諸条件の整備-
教員の採用については、昭和56年度採用の618人をピークに、採用者数が漸減傾向をたどり、平成12年度採用選考試験の採用予定者数は約70人と、100人を割り込む見込みとなっている。採用者数の減少は、最終合格者に多様な人材を確保することに支障を招く恐れがある。この状況のもとで、個々の学校が抱える多様な教育課題に対応するためには、「様々な生活体験に裏打ちされた指導力のある優秀な人材」を確保する必要がある。
教職員の配置については、今後学級減が続くため、毎年多くの学校の教職員定数が減少することによる過剰人員の解消、いわゆる過員解消という大きな課題を抱えている。また、教員の年齢の不均衡が生ずるため、学校の活力と教職員の意欲を高め、魅力ある学校づくりを一層推進するための人事異動が求められている。
教職員の勤務環境整備については、教職員の定期健康診断結果によると、生活習慣病が増加傾向にあるため、健康診断の充実と事後指導により、早期発見と生活習慣の改善を図る必要がある。また、教職員のこころの健康対策を一層推進する必要がある。
(1)教員採用の改善
教員採用選考試験では、知識の量を重視するのではなく、一般教養・教職科目、専門教科、適性検査、小論文等の筆記試験を実施しているほか、実技試験や3段階の面接試験を実施しており、今後とも、できるだけ人物を重視する方向への改善を進める。
ア 採用スケジュールの早期化
教員に優秀な人材を確保し、また、採用予定者に教職につくための心構えや自覚をもたせるため、採用内定時期はもとより、受験者の募集時期や採用選考試験実施時期も可能な限り早めるなど、採用スケジュール全体の早期化を図る。
イ 面接方法の改善
教員としての資質能力、意欲や情熱、指導力を適切に見極めるためには、面接による選考が極めて有効である。特に、面接を通じてより多角的にきめ細かく人物を見極めるためには、一人の受験者に対して複数の面接を行うことが効果的である。また、面接担当者についても、従来の方法にこだわらず、多様な観点から積極的に評価するために、他の職域分野を含めた多彩な構成とするなど、優れた人材を確保する方法について検討する。
(2)人事異動の在り方の見直し
時代の変化に即しながら、学校を活性化し教育効果を高めるため、人事異動の在り方について、次の観点から見直しを図る。
ア 各学校の活性化を図るために、全県的な視野に立った人事異動を推進する。
イ 学校の活力と教職員の意欲を高めるため、できるだけ早い機会に複数の学校で勤務することにより、多様な教育実践を積ませ、資質能力の向上を図っていくことが重要である。
ウ 教職員の年齢構成の不均衡を解消する方途を探る。
(3)人事管理の改善
指導力が不足する教員に対しては、それぞれに応じたきめ細かな研修を行うことにより、指導力の向上を図る。また、学校の活性化を図るため、教職員の能力や勤務の実績を公平かつ客観的に評価する制度と、その評価に応じた適正な人事管理等、教職員の意欲を高める方策について研究する。
(4)教職員の勤務環境の改善
ア 定期健康診断及び事後指導の充実
定期健康診断の充実を図るとともに、健康診断事後指導や健康相談に健康管理医を積極的に活用する。
イ こころの健康相談体制の充実
教職員がいつでも、身近な場所で相談が受けられるよう、こころの健康相談体制の充実を図る。
ウ 衛生委員会の活動促進
教職員の安全と健康を確保するために、各高校に設置されている衛生委員会の活動促進を図る。
教職員の研修については、これまで、初任者研修、5年次、10年次の教職経験年数に応じた研修をはじめ、民間企業等派遣研修(異業種での体験的研修)や様々な希望研修などを実施してきた。
教職員一人一人の資質能力は固定的なものではなく、変化し、伸長が可能なものであり、それぞれの職能、専門分野、能力・適性、興味・関心等に応じ、生涯にわたりその向上が図られることが求められている。
今後、多様化する生徒への対応や、いじめや不登校など教育の諸課題に対応し、教職員の資質能力の向上を図るため、教職経験年数に応じた研修の体系的整備に努める必要がある。
また、これまでの研修の見直しを行い、精選等の検討を進めるとともに、教育の諸課題の解決に向け、総合教育センターに企画部門を設けて、様々な研修機会の確保と研修内容の充実を図る必要がある。
(1)経験年数に応じた研修(年次研修)等の整備
すべての教職員に共通に求められる基礎的・基本的な資質能力を確保するとともに、さらに積極的に各人の得意分野づくりや個性の伸長を図るため、系統的な研修体系の整備などを進める。
ア 年次研修の改善・充実と系統的な研修体系の整備
教員として求められる資質能力を養うため、各年次研修について、その内容の改善・充実を図るとともに、教職経験年数に応じた研修機会の拡充も視野に入れ、系統的な研修体系の整備を図る。
イ 年次研修における選択制の拡充
各教員の得意分野づくりや個性の伸長を図るため、年次による一律の研修だけではなく、研修年次や研修課題に幅をもたせ、主体的に選択できるような選択制の研修の拡充を図る。
ウ 希望研修等の充実
各年次研修の補完的・発展的な研修や教職員のニーズに合った研修など、年次研修以外の希望研修等の充実や整備を図る。
また、今後、国や都道府県等から配信される衛星通信による研修プログラムの活用について研究する。
(2)社会的視野を広げる体験的研修の充実
学校以外の社会において様々な体験を重ねることで、豊かな社会性を身に付けるとともに、社会的視野を一層広げ、これまでにない伸びやかな発想を身に付けるなど、教員の意識改革を図る。
ア 民間企業等での研修
教員の社会的視野を広げ、変化に対応した教育活動を展開できる資質を養うため、民間企業や社会福祉施設等における体験的研修の充実を図る。
イ ボランティア活動等を含む研修
教員の幅広い識見と豊かな人間性を養うとともに、ボランティア教育を推進するため、ボランティア活動等を含む体験的研修の充実を図る。
ウ 異校種間の研修
生徒の発達段階を踏まえた指導の充実を図るため、異校種の教員を交えた研修機会の整備や異校種での研修などについて研究する。
(3)教育の諸課題に対応した研修の充実
各学校の教育活動を一層充実するため、教育の諸課題の解決を目指した研修の整備や充実を図る。
ア 心と体の教育に関する研修
多様化する生徒に的確に対応し、生徒一人一人が健康で充実した生活を送れるよう、教員のカウンセリングマインドの育成や薬物乱用の防止など、心と体の教育に関する研修を進める。
イ 情報教育に関する研修
情報教育の充実や学校の情報化を推進するため、すべての教員がコンピュータや情報通信ネットワーク等の操作手法を身に付け、その活用を図ることができるよう、情報教育に関する研修を推進する。
ウ 新設教科・科目等に対応した研修
新学習指導要領で新たに設定された「情報」等や「総合的な学習の時間」の学習指導の充実を目指し、新たな研修の在り方について検討するとともに、関連する諸研修の充実を図る。
エ 最新の知識・技術に対応した研修
最新の知識・技術が絶えず求められる科学技術の分野等においては、知識・技術の進展に対応し、専門性を高めるとともに、新しい指導方法を身に付けるため、大学等への長期にわたる研修の機会の拡充を図る。
オ 緊急性が高い課題に対応した研修
いじめや不登校、薬物乱用や体罰等、緊急性の高い課題に対しては、今後も、その解決に向けた研修の適切な整備を図っていく。
(4)校内研修の充実
各学校において、特色ある教育活動を展開し、魅力ある学校づくりを進めるに当たって、教員の指導力の一層の向上を図るため、校内研修の積極的な推進に努める。
ア 組織的・計画的な校内研修
学校の教育目標の具現化に向け、自校の教育課題を的確に把握し、組織的・計画的な研修体制の整備を進める。
イ 授業公開の推進
よりよい授業を目指し、公開授業等による授業研究を推進する。また、保護者や地域の人たちにも授業を公開し、学校と地域との連携を深める。
今日、地域や生徒の実態に応じた教育を推進するため、開かれた学校づくりが強く求められている。これまでも、中学校との連携や家庭・地域との交流が図られてきたところであるが、今後、開かれた学校づくりを推進していくためには、学校経営の観点からも、地域のもつ豊かな教育力を生かしていくことが重要である。
また、校長の教育方針のもとに、学校運営が円滑かつ機動的に行われるため、職員会議の運営の適正化を図ることなどにより、校長のリーダーシップの確立が求められている。
(1)開かれた学校づくりの推進
学校の教育方針を明らかにし、保護者や地域住民の信頼にこたえるとともに、心豊かな生徒の育成を目指し、中高の連携を一層推進することが必要である。このため、授業公開の実施や地域の人材活用などにより、学校と家庭、地域との交流・連携を進め、開かれた学校づくりを推進する。
ア 開かれた学校経営の推進
(ア)学校評議員制度の導入
開かれた学校づくりを推進する観点から、校長が学校外の有識者等の参加を求め、学校運営に関し幅広く意見を聞く学校評議員制度を、学校の実情に応じて導入することについて、調査・検討を行う。
(イ)授業公開の推進
学校の掲げた教育目標に責任をもち、保護者等の協力を得て教育活動を展開するため、保護者や地域の住民、中学校教職員及び中学生等に、積極的・継続的に授業公開を推進する。
(ウ)社会人特別講師等の活用
幅広い学校教育を進めるため、社会人講師制度やスペシャリストに学ぶ事業を拡充するなど、地域の人材活用を図る。
(エ)民間人の管理職への登用
幅広く人材を確保する観点から、民間人の管理職への登用について研究する。
イ 中学生を対象とした学校説明会・体験入学等の充実
中学生が、高校への理解を深め、適切に進路選択ができるよう、中学校と連携し、学校説明会や体験入学等を一層充実させる。
(2)校長のリーダーシップの確立
学校運営が、校長の教育方針のもとに組織的、機動的に行われるためには、すべての教職員がその職務と責任を十分に自覚し、一致協力して校務に携わることが必要である。このため、マネジメント能力などこれからの管理職に求められる資質能力を高め、職員会議の運営や主任の任命などに当たり、校長のリーダーシップの確立を図る。
ア 管理職等研修の充実
校長としての資質能力を高めるため、現在実施している新任校長研修の一層の充実・改善を図るとともに、校長のリーダーシップをより確立するため、継続的な研修について検討する。
また、教頭、事務長及び管理職候補者名簿登載者の研修を充実・改善し、管理職としての資質向上を図るとともに、校長がリーダーシップをより発揮しやすい体制づくりを進める。
イ 職員会議の適正な運営
校長の職務の円滑な執行を補助する機関とする方向で、職員会議の位置付けを明確にする。
老朽化した校舎の増加している中で、過去において建設した校舎の建て替え時期が今後集中するため、計画的な対応が課題となっている。
建築後20年を経過した校舎等では、経年劣化が進み、維持修繕が頻繁に行われていることから、大規模な改修等により、既存建物の耐久性を高め、快適な環境を確保することが必要である。
校舎について、現在、耐震補強を実施中であるが、今後は校舎以外の施設についての対応が課題となる。
障害のある生徒への対応として、スロープ設置、トイレ改修などを行ってきたが、総合的なバリアフリー対策を推進していく必要がある。
生涯学習時代を迎え、県立高校においても学校開放講座や体育施設の開放事業を推進しているが、開かれた学校づくりに対応した施設づくりを進めていく必要がある。
(1)校舎の建て替え等の推進
学校施設の個性化・特色化を推進するなど、彩りゆたかな高校づくりを図る。
今後、老朽化した校舎の建て替えや、再編整備に伴う施設整備などに当たっては、事業量の平準化を視野に入れ、地域バランスにも配慮し、個々の校舎の経過年数、老朽化の程度など総合的に勘案するとともに、以下の点について配慮しながら、具体的な施設計画をたてる。
学校施設の個性化や特色化の推進
多様な教育の展開を可能にする弾力的な施設・設備
快適、健康、安全な教育環境
地域開放、生涯学習など開かれた学校づくり
(2)既存施設の有効利用
既存施設の有効利用については、今後の県立高校の再編整備も視野に入れ、大規模な改修を計画的に実施する。耐震補強については、校舎以外の施設についても計画的な対応を行う。以下の点について考慮する。
多様な教育内容の展開に対応した施設整備
地域開放、生涯学習に対応した施設改修
(3)ゆとりやうるおいのある学校施設の整備
学校は学習の場であると同時に人間形成の場でもあるので、ゆとりやうるおいのある学校施設の整備を図る。以下の点について考慮する。
エレベーターなどバリアフリー(*1)に対応した施設整備
空調設備など快適でゆとりの感じられる施設整備
(*1)バリアフリー:障害者や高齢者などが社会生活をしていく上で、障壁(バリア)となるものを取り除くこと。この場合、学校の施設について、必要に応じてトイレ、スロープ、エレベーターなどを改修設置すること。
生涯学習社会を築くため、学校は、生涯にわたり学び続けるための基礎を培う場であるとともに、地域の中核をなす学習センターとしての役割を果たすことが期待されている。学校がその役割を十分に果たしていくためには、生涯学習社会での学校の在り方を踏まえた開かれた学校づくりの一層の推進が必要不可欠である。
なお、平成11年度に、埼玉県高等学校教育振興協議会に、「生涯学習社会における高等学校の役割」について諮問し、2年間にわたる協議を依頼しているところである。
(1)地域の人材活用の促進
幅広い学校教育を進めるため、地域社会で活躍している各分野で優れた知識、技能をもった人材の情報を有効に活用し、地域で活躍している社会人の活用促進を図る。
(2)地域の中核となる学習センターとしての機能の充実
学校の教育機能は、地域の人々のためにも活用されるべきである。そこで、生涯学習社会を構築していくため、地域の中核となる学習センターとして、学校の教育機能を地域社会の学習活動のために活用するとともに、その有効な活用の在り方について、今後とも研究を進める。
ア 場の提供
体育館、校庭、図書館等の施設を地域に開放し、地域に開かれた学校づくりを一層推進する。
イ 学習機会の提供
開放講座(*1)等の学習機会の充実を一層図るとともに、学習の場の整備・充実に努め、県民の多様化・高度化する学習ニーズにこたえる生涯学習社会の構築を目指す。
ウ 相談機能の充実
県民は、学習活動の質を高めるため、様々な学習活動の情報を求めていることから、県民への情報提供や県民からの学習相談にこたえられるよう、教職員の専門性を生かして相談機能の充実を図る。
(*1)開放講座:地域の人々に生涯にわたる学習の機会を提供するため、学校の教育機能を開放するもの。教養・芸術文化・体育などの講座が開設されている。
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