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ページ番号:13612
掲載日:2024年8月21日
第3章 彩りゆたかな高校づくり
-県立高校の再編整備-
学級規模については、現行の「公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律」で、1学級の生徒の数は40人を標準とするとされている。
学校規模については、生徒急増期(昭和49年~平成元年)対策として、高校を新設するとともに、将来の生徒急減期を見越し、必要な高校新設を極力抑え、臨時学級増や臨時学級定員増で対応してきた。その結果、本県の公立高校の平均学級数は、生徒数がピークであった平成元年度には学年当たり8.9学級となった。その後、生徒数が減少する中で学校規模の適正化を進めてきており、平成11年度の平均学級数は7.5学級となっている。
平成2年の埼玉県高等学校教育振興協議会(*1)答申では、生徒減少期における本県高等学校の適正な規模について、標準を18学級(学年当たり6学級)とし、最大を24学級(8学級)、最小を12学級(4学級)とすることが望ましいとしている。しかし、その後、40人学級が完成し学級規模が縮小したことや、社会・経済構造の改革が、今後、進んでいくことなど、社会情勢の変化も勘案しながら、適正な学校規模について、さらに検討を加える必要がある。また、検討に当たっては、「個性を生かす教育の推進」という国を挙げての教育改革の流れの中で、教育課程の編成・実施に際し、生徒の興味・関心等に応じた選択授業を展開するために、必要な教室数を確保することが課題となっている。加えて、平成11年3月に告示された学習指導要領では、選択幅のますますの拡大、総合的な学習の時間の実施などが示されており、今後、大規模校の解消を進めていくことが必要である。
一方で、生徒数の減少に伴い学校の小規模化が進むと、多様な教育課程の編成が困難になったり、学校行事などの特別活動や部活動の活力が欠けたりするなど、学校運営上の課題が生ずることから、各学校が活力ある教育活動を進めるためには、一定の学校規模の確保が必要である。
学級規模については、「学級定員の規模」と「学習集団の規模」とに分けて考える必要がある。
「学級定員の規模」については、弾力的な学級編制などについて、今後とも研究を進める。また、「学習集団の規模」については、教科や科目によっては小集団の方が効果的なものがあるので、柔軟な学習集団での授業が可能になるように、一律に定めることではなく弾力的に対応することが望ましい。このため、現行の「教職員配置改善計画」の主旨を踏まえ、小人数指導などにより「個に応じた教育」を一層推進していく。
適正な学校規模については、埼玉県高等学校教育振興協議会答申やその後の社会情勢を踏まえ、各学校が新しい学習指導要領に基づく教育課程の編成・実施や施設状況に応じた、適切な教室数の確保ができるよう、また、各学校が活力ある教育活動を進めることができるよう、配慮する。
学年当たりの適正な規模については、
を標準とする。
普通科については、多くの実験・実習室をもつ専門学科に比べ、選択授業や小人数授業等を展開する上で、今後、教室数を確保する必要があり、8学級~6学級の規模になるまで、学級数を減ずることを目安にしていく。
また、専門学科については、実験・実習を中心に行う学科の特性を考慮しながら、生徒数の減少に応じて、6学級まで学級数を減ずる。
総合学科については、その当該学科の教育課程や施設状況などにより、8学級~6学級の幅で考える。
(*1)埼玉県高等学校教育振興協議会:県教育委員会が、高校教育に係る主要施策の実施に関し、諮問する事項について協議し、その答申を行う協議会。
県教育委員会は、これまで、社会の変化に対応するとともに、生徒・保護者の多様なニーズに対応するため、総合学科(*1)や全日制単位制高校(*2)の設置、学科再編、国際学級(*3)の設置など、特色ある学校づくりに取り組んできた。
現在、総合学科は3校、全日制単位制高校は1校設置されているが、これらの学校での成果、生徒・保護者のニーズの高まり、通学の便等も考え、今後も総合学科の設置や単位制のシステムの導入を進めるとともに、少子高齢社会、高度情報通信社会、生涯学習社会などに対応した学校づくりを進めながら、特色ある学校の適正配置をさらに進めていく必要がある。
特色ある学校を生徒・保護者が選択できるよう、普通科、専門学科、総合学科等を適正に配置していく。
特に、今後の高校教育の方向性を見据え、(1)単位制のシステムを導入することにより、単位制のメリットを最大限に生かしながら特色化を図った学校、(2)将来の進路を考え自分で科目を選択し学ぶ総合学科、(3)学ぶ意欲と熱意をもつ者がいつでもどこでも学べる、昼夜開講の単位制による新しい発想の定時制・通信制高校については、適正配置を図りながら、その設置を積極的に推進する。
そのほか、芸術、環境、福祉に対応した学科について、その適正配置を図る。
また、中高一貫教育校(*4)の設置及び情報に関する学科の設置について、検討する。
(*1)総合学科:普通科目と専門科目にわたる幅広い選択科目の中から、将来の進路を考え自分で科目を選択し学ぶ学科。平成6年度に創設された。
(*2)単位制高校:単位制のシステムを導入した高校。学年による教育課程の区分を設けず、学年進級ではなく、卒業までに決められた単位を修得すれば、卒業を認める高校で、昭和63年度から定時制・通信制の課程に、平成5年度から全日制の課程に導入された。
なお、単位制とは、修得した単位の累積加算により、卒業を認めるシステムである。高校においては、学年制と同時に単位制が併用されており、通常、各学年の課程の修了(進級)の認定においては、認定された教科・科目の単位数の累計をもって行っている。単位制を活用することにより、多様な学習を可能にするとともに、弾力的な進級認定などを図ることができる。
(*3)国際学級:外国人特別選抜により、入学した外国人子女が在籍するクラスをいう。本県では、岩槻高校、和光国際高校、蕨高校、深谷第一高校の4校に設置されている。
(*4)中高一貫教育校:学校制度の複線化を図り、生徒や保護者の学校選択の幅を拡大するとともに、6年間を通じて、ゆとりの中で生徒の個性をより重視した教育を推進するため、平成11年度から導入された。以下のように三つの型がある。
(*5)系列:総合学科において設置される多様な選択科目を、まとまりのある学習を可能にするため、体系性や専門性などに関連のある科目によって構成した総合選択科目群。
(県内中学校卒業者数の動向)
県内中学校卒業者数は、平成元年にピークを迎え115,584人であったが、その後、生徒数は急減し、平成11年3月には76,982人となった。
平成12年1月の「義務教育人口推計調査報告書(平成12~17年度)」に基づくと、ボトム期(平成18年3月)には、約63,000人になると推計され、平成元年3月と比べ、約55%の卒業者数となることが見込まれている。さらにこの調査報告書に基づき、平成18年度以降の中学校卒業者数についても予測をすると、小さな幅での増加・減少を繰り返しながら推移し、平成25年3月には、約64,000人になると推計される。生徒急増期に激しく増加し、生徒急減期を経て緩やかに減少し、その後小さな幅での増加・減少を繰り返していく状況が見られるが、このような状況を視野に入れた対応が必要である。
また、首都圏に位置する本県の地理的条件にかんがみ、新都心建設や交通網整備などに伴う人口増が見込まれる可能性もあることから、今後の生徒数予測については慎重に見守る必要がある。
(再編整備の必要性)
このような生徒数の減少に対応するとともに、新しい時代に対応した魅力ある県立高校づくりの観点から、再編整備を進める必要がある。
自らの個性を生かす生徒を育成するためには、変化の激しい社会に対応できる学力の育成を図るとともに、多様で柔軟な教育課程を編成し、自己の興味・関心、進路希望等に応じた科目を選択できるようにすることが必要である。このため、各学校における教育活動の充実を図るとともに、学校の活力を維持する観点から、適正な学校規模を確保することにより、各学校の「活性化」を図ることが必要である。
また、社会の変化や生徒の多様化に対応するためには、単位制のシステムを導入しながら、特色ある学校づくりを進めることが必要であり、その上で、総合学科など特色ある学科の適正配置を図るとともに、従来の高校教育の枠組にとらわれないような学校づくりも進めていくなど、各学校の「特色化」を図る必要がある。
なお、中学校卒業者の公立と私立への進学者の割合については、埼玉県公私立高等学校協議会(*1)(以下「公私協」という。)での協議により65対35となっているが、県民のニーズや近県の状況、また、これまで公私で協調して公教育を担ってきた実績を踏まえ、今後、公私協で検討する場を設ける。
生徒数の減少を踏まえ、県立高校一校一校の「活性化」「特色化」を図り、各学校をいきいきとさせていくため、各学校の適正規模の確保及び特色ある学校の適正配置を図る観点から、統廃合を含めた再編整備を進める。
今後、再編整備に関する基準について検討し、その基準に基づいて再編整備を進めていく。
なお、県立高校の再編整備を進めるに当たっては、市立高校との関係も考慮する。
今後の、具体的な改善の方向は以下のとおりである。
(1)単位制のシステムの全県的拡大
単位制のシステムを導入することを通じ、多様な教科・科目の設定により小人数での授業展開が可能となることや、また、大学等での授業、地域社会での体験学習、ボランティア活動といった様々な学習活動の成果の単位認定も容易に取り入れられることなど、単位制のもつメリットを高校教育に最大限に生かしながら、各学校の特色化を図ることができる。
このため、単位制については、高校教育の改革を進める有効な手段として、全校においてその「活用」を図るとともに、単位制のシステムを「導入」することにより、単位制のメリットを最大限に生かしながら特色ある学校づくりを推進し、その全県的拡大に努める。(「4 全日制高校の充実(1)ア 単位制の活用による教育活動の改善・充実」を参照)
平成12年度については、浦和高校(全)、芸術総合高校(全)、川越工業高校(定)、川口工業高校(定)、大宮工業高校(定)に、単位制のシステムを導入する。
(2)総合学科の設置
普通科目と専門科目にわたる幅広い選択科目の中から、将来の進路を考え自分で科目を選択し学ぶ総合学科は、設置校での成果も上がっており、また、「自分で志を立てさせ、それを励ます」ことが青少年教育の要諦であるという観点から、極めて教育的意義が高い。当面、通学区域の範囲を基本として、既設校の改編や統合により、積極的に設置を進める。
(3)芸術系総合高校の開設と芸術に関する学科(系列)の設置
次代の芸術文化を担う人材を育成し、その一層の振興を図るため、様々な芸術分野からなる新しいタイプの芸術系総合高校を設置する。また、芸術に関する学科(系列)について、県内のどの地域の生徒も通えるよう、その適正配置に努める。
平成12年度については、所沢緑ケ丘高校を改編し、芸術総合高校を開設する。
(4)生物・環境系総合高校の開設と環境に関わる学科(系列)の設置
次代の環境保全・創造などの分野で広く活躍する人材を育成するため、生物・環境系総合高校を設置する。また、環境科学科や環境デザイン科など、環境に関わる学科(系列)の適正配置に努める。
平成11年度については、与野農工高校を改編し、生物・環境系のいずみ高校を開設した。
(5)福祉に関する学科(系列)の設置
福祉に関する基礎的・基本的な知識と技術を総合的・体験的に習得させるとともに、福祉の増進に寄与するため、福祉に関する学科(系列)を増設していく。設置に当たっては、当面、既設校の充実を図りつつ、生徒の通学の範囲を配慮して、県内のどの地域の生徒も通えるよう配置する。
平成12年度は、不動岡誠和高校の社会福祉科において、1学級から2学級への学級増を行う。
(6)情報に関する学科の設置
近年の高度情報通信社会や科学技術の進展に対応し、科学技術を支える創造性豊かな人材を育成するため、情報に関する学科の設置について検討する。
(7)新しい発想の定時制・通信制高校の設置(「6 新しい発想の高校づくり(1)を参照)
学ぶ意欲と熱意をもつ者がいつでもどこでも学べる、昼夜開講の単位制による新しい発想の定時制・通信制高校を、東西南北の地域バランスに配慮して、地域の中核となる、交通の利便性のよい場所に設置する。
(8)中高一貫教育校の設置(「6 新しい発想の高校づくり(2)」を参照)
中高一貫教育校については、平成11年度から2年間、文部省の中高一貫教育実践研究の委嘱を受け、伊奈学園総合高校と小鹿野高校で研究を進めており、今後、その結果を踏まえながら、適正配置も含め、その設置について検討する。
(*1)埼玉県公私立高等学校協議会:埼玉県の公私立の設置者及び関係者によって構成され、公私立高等学校教育の共通的諸課題について検討する協議会。
高校には多様な能力・適性、興味・関心、進路希望等をもった生徒が入学している。このような多様な生徒の実態や国際化、情報化等の社会の変化に適切に対応するため、これまで、専門学科や普通科における学科再編・コース設置等を積極的に推進してきた。今後とも、特色ある学校づくりや学科再編等を通じて各学校の活性化・特色化を一層推進し、生徒の多様な学習ニーズにこたえる全日制高校の充実に努めていく必要がある。
(1)生徒の実態に応じた柔軟なシステムの導入
ア 単位制の活用による教育活動の改善・充実
履修と修得の単位数に差を設けることによる進級・卒業認定の弾力化、生徒の能力・適性、興味・関心、進路希望等に応じた多様な教科・科目を設定することによる選択幅の拡大、学校外における様々な学習成果の単位認定など、単位制を活用することにより、多様な生徒の実態に応じた教育活動の改善・充実を図る。
また、全日制の課程と通信制の課程との併修について研究を進める。
イ 二学期制(*1)の導入の推進
多様な選択科目の開設など単位制の活用を図るためだけでなく、授業時間を確保し、学校生活にゆとりをもたせ、あるいは帰国子女の円滑な受け入れを進めるためにも、二学期制の導入は極めて有効である。今後、各学校の実情に応じて、二学期制の導入を進めるとともに、そのための条件整備を図る。
二学期制については、平成10年度に行田進修館高校で、平成11年度は、蕨高校と和光国際高校で導入された。平成12年度については、川口北高校、越ケ谷高校及び芸術総合高校で導入する。
(2)普通科高校の特色化の推進
普通科高校においては、社会の変化を背景に、生徒の多様化がますます進んでいくと考えられる。このため、生徒に多様な学習活動を提供するために、教育課程の編成・実施において工夫を図ったり、学科再編を進めたりすることにより、各学校の特色化を積極的に推進する。
ア 特色ある普通科高校づくり
普通科に入学を希望する生徒が、自己の興味・関心等に応じて学校を選ぶことができるよう、特定の分野に重点を置いた特色ある普通科高校づくりを進める。例えば、普通科の教科・科目の中で、自然科学系、人文系など特定の分野を重視した教育課程を、学校全体で編成し、学校の特色化を図ることなどが考えられる。
イ 多様な選択科目の開設や特色ある類型(*2)設置の推進
多様な能力・適性、興味・関心、進路希望等をもつ生徒に対応し、各学校が生徒一人一人の能力・適性等を生かし、個性を伸長する教育活動を進めるため、多様な選択科目の開設を推進する。
また、学習効果をより一層高めていくために、学習計画に系統性・継続性をもたせる特色ある類型を数多く設置し、創意工夫を生かした教育活動を進める。
ウ 普通科における学科再編の推進とコースの改善
社会の変化や生徒・保護者の多様なニーズにこたえ、生徒の個性の伸長を図るため、県民のニーズの多様化に配慮しつつ、学科再編を引き続き推進する。
また、普通科におけるコースについては、各学校の個性化や特色化を図り、教育活動の活性化に大きく貢献してきたが、普通科における多様化・弾力化が進展し、教育課程における選択幅が拡大したため、コースと普通科との違いが小さくなったことなどから、次のような改善を図る。
(3)専門高校の改善の推進
専門高校に学ぶ生徒たちが一つの得意な分野で技術や技能を身に付けるとともに、望ましい勤労観・職業観を確立し、誇りをもって社会で活躍していけるよう、特色ある教育、特色ある学校づくりを積極的に推進する。
ア 継続教育を視野においた専門性の基礎・基本の重視
産業界で必要とされる知識や技能・技術の高度化等を踏まえ、完成教育としての職業教育ではなく、継続教育を視野においた専門性の基礎・基本に重点を置き、教育内容の精選を図る。
イ 社会の変化に適切に対応した教育の展開
国際化、情報化、少子高齢化や環境問題等の諸課題を踏まえ、専門高校における教育内容の見直しを図るとともに、情報活用能力や実践的な語学力の育成に努める。
ウ 地域や産業界とのパートナーシップの確立
専門高校における教育の改善・充実を図るため、地域や産業界と連携した教育を展開する。特に、実践的な知識や技術・技能を身に付けるため、地域や産業界の人々を非常勤講師として招いたり、生徒の就業体験活動への協力を依頼したりするなど、地域や産業界との間に双方向の協力関係(パートナーシップ)を確立する。
エ 専門学科の学科再編等の推進
専門学科の学科再編については、産業構造や就業構造の変化、情報化、国際化、高度技術化等の社会の変化に柔軟に対応するとともに、県民及び生徒・保護者のニーズにこたえるため、引き続き推進する。
なお、看護に関する学科の在り方については、今後の国の動向等を見守りながら対応していく。
オ 専門学科の在り方の工夫
複数の小学科を設置する専門高校では、中学校段階では小学科での学習内容を十分理解した上で学科選択を行うことが難しい場合もあることから、学科の枠を超えた科目履修ができる総合選択制などの導入を進める。また、入学後に学科選択を行うくくり募集の実施を検討する。
(4)男女共学化への対応
男女共学は、教育の機会均等等の趣旨から意義のあることであり、新設の高校では、いずれも男女共学としてきた。一方、男女別学の高校は、長い歴史と伝統をもち、地域社会に親しまれ、別学ならではの特色を生かしてきた。今後の共学化については、学校関係者の意向や地域社会の動向、生徒募集上の男女バランス等を見ながら対応していく。
(*1)二学期制:4月1日に始まり翌年3月31日に終わる学年を、前期(4月1日から9月30日)と後期(10月1日から3月31日)との2期に分けること。
(*2)類型:生徒の特性や進路希望に応じて、より学習効果を高めるため、ある規模の集団の生徒が共通に履修する各教科・科目をあらかじめ配列し、生徒の学習計画に系統性、持続性をもたせた教育課程編成上の一形態。
(定時制の課程)
定時制の課程においては、中学校卒業者数の減少や産業・就業構造の変化に伴う勤労青少年の減少により、入学者の減少が進むとともに、その一方で、不登校の生徒や過年度卒業者が入学するなど、生徒の多様化が一層進んでいる。また、社会人の生涯学習へのニーズも高まっており、時代の変化に対応した定時制教育の在り方が求められている。
夜間定時制の課程では、学年当たりの在籍者数が10人前後の学校もあり、このような学校においては、教育活動全般にわたり活力を欠く傾向が見られる。
一方、昼間に授業を行う単位制による定時制の課程は、現在、大宮中央高校、羽生高校に設置されている。両校では、入学希望者数も多く、個性を一層伸長させたい生徒や不登校の生徒など、様々な生徒の多様な学習ニーズにこたえている。
(通信制の課程)
通信制の課程においても、不登校の生徒や過年度卒業者が多く入学するなど、今後、場所や時間にとらわれず、自らの学習スタイルに合わせて主体的に学習したいという要請が多くなると考えられる。このため、情報通信ネットワーク等の活用など、一層多様で弾力的な学習形態の導入が求められる。
通信制の課程は、現在、大宮中央高校にのみ設置されており、在籍者数は5,000人を超え、一つの公立高校の在籍者数としては全国有数の規模である。また、受講生の居住地も広く全県にわたっている。このため、スクーリング(*1)による指導や他校からの定・通併修(定時制・通信制の課程間の併修)の需要への対応などに課題が生じている。
(再編整備の必要性)
今後の定時制・通信制教育については、全日制、定時制の時間割の枠にとらわれず、自らの学習スタイルに合わせ自主的に学びたい生徒、多様な履修形態に魅力を感じている生徒、不登校の生徒や高校中途退学者、また、社会人などの様々な学習ニーズにこたえるため、通信制の課程を併置した昼夜開講の定時制・通信制独立校を、東西南北の地域バランスに配慮して適正に設置するとともに、周辺の夜間定時制の課程の統合等を含めた再編整備を進める必要がある。
定時制・通信制教育の充実を図るため、以下の基本的な考え方に基づき、改善を行っていく。
(1)定時制・通信制の課程の再編整備
ア 東西南北の地域バランスに配慮して、各地域の定時制・通信制教育の核となる昼夜開講の定時制・通信制独立校(新しい発想の定時制・通信制高校(後掲))を設置し、周辺の夜間定時制の課程の統合等を含めた再編整備を行う。
イ 近隣に複数ある定時制の課程については、入学率、在籍率等に留意して、統合等を含めた再編整備を図る。
ウ 入学率、在籍率がともに低く、かつ、将来もその傾向が続くと見込まれる定時制の課程については、募集停止等を含めた再編整備を図る。
(2)履修形態の多様化・弾力化
ア 生徒の多様な学習ニーズにこたえるため、単位制のシステムの導入を推進する。
イ 授業時間を確保するとともに、学期ごとの単位認定など弾力的な履修形態を図るため、二学期制の導入を推進する。
ウ 学習機会を拡大する観点から、定・通併修、定・定併修(定時制の課程相互の併修)など履修形態の多様化を推進する。
エ 大学入学資格検定合格科目の単位認定、技能審査の成果の単位認定及び実務代替(*2)の単位認定などを推進する。
(3)生涯学習社会への対応
定時制・通信制教育は、地域における生涯学習の一翼を担うという観点から、社会人の資格取得や学習を支援するため、定時制の課程の科目を履修する一部科目履修制度(*3)の活用や、特別講座(*4)・公開講座(*5)などの開講を推進し、その充実に努める。
(*1)スクーリング:通信制の課程において、生徒が登校し、教師による指導を受ける学習形態。
(*2)実務代替:定時制・通信制の課程で、働きながら学ぶ生徒を対象に、その仕事が、学校の教科・科目の一部を履修した場合と同様の成果があると認められる場合、教科・科目の履修の一部として認める制度。
(*3)一部科目履修制度:単位制による課程(全日制の課程であるものを除く。)において、社会人が聴講生として、一部の科目を履修する制度。
(*4)特別講座:生涯学習の一環として、社会人を対象に、自己の啓発や職業能力の向上などを目的に、年間を通じて行われる講座。
(*5)公開講座:生涯学習の一環として、社会人を対象に、その興味・関心等に応じ短期間で行われる講座。
【現状と課題】
定時制・通信制高校の現状(5 定時制・通信制高校の充実を参照)を踏まえ、多様な履修形態に魅力を感じている生徒、不登校の生徒や高校中途退学者、また、社会人などの様々な学習ニーズに一層対応するためには、新しい発想の定時制・通信制高校を設置する必要がある。
【改善の方向】
学ぶ意欲と熱意をもつ者がいつでもどこでも学べる、昼夜開講の単位制による定時制・通信制独立校を、東西南北の地域バランスに配慮して、地域の中核となる、交通の利便性のよい場所に設置する。あわせて、生徒の履修上の便宜を図るため、定・通併修等の拡大を図る観点から、原則として通信制の課程を併置する。
【現状と課題】
中高一貫教育の在り方については、平成11年3月、埼玉県高等学校教育振興協議会から「児童・生徒や保護者のニーズ、地域の実情に配慮して、中高一貫教育を導入することが適当である。」との答申が出された。今後、中高一貫教育の導入に際しては、地域の実態に応じた中学校と高校との接続の在り方や6年間を見通した教育活動の在り方などについて検討する必要がある。
【改善の方向】
中高一貫教育校については、平成11年度から2年間、文部省の中高一貫教育実践研究の委嘱を受け、伊奈学園総合高校と小鹿野高校で研究を進めており、今後、その結果を踏まえながら、適正配置も含め、その設置について検討する。
【現状と課題】
平成14年度からの完全学校週5日制のもとで、新しい教育課程が実施される。新教育課程では、各学校が創意工夫を生かし、特色ある学校づくりを進めることを目指している。
今後、県民の多様な高校教育への要請にさらに的確にこたえるためには、それぞれの地域の特性やニーズを踏まえながら、一層多様な試みを展開し、従来の枠組にとらわれない新たな高校教育改革に取り組むことが必要である。
【改善の方向】
県立高校の活性化・特色化を目指し、地域の特性やニーズを踏まえた一層特色ある教育活動を進めるため、学校の設置者である県教育委員会が発案した研究開発課題について文部大臣の指定を受けて実践研究を行う、新しいタイプの研究開発学校の導入について研究する。
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