労働委員会の手引き
はじめに
この手引は、労働委員会を利用しようとする労使の方々のために、労働委員会制度のあらまし、利用の手続を、できるだけわかりやすく解説したものです。
(1)労働委員会とは
労働者と使用者(以下「労使」といいます。)との間の紛争は、当事者が自主的に話し合って解決するのが望ましいことはいうまでもありません。しかし、労使の関係は、双方の利害が相反することが多い上に、対等の立場で話し合っていくことは難しく、当事者間で解決できない場合もあります。
このような場合、公平な第三者の意見や判断を聴くことによって、紛争の解決を早め、労使の間にしこりを残さず、よりよい結果を生むための方策が必要となります。
また、法律で禁止する不当労働行為が使用者にあったかどうかを公正に判断し、その事実があるときは、簡易迅速に労働者を救済することが必要となります。
これらの必要性にこたえるのが労働委員会制度です。労働委員会は、労働組合法(以下「労組法」といいます。)に基づいて設置されています。
(2)労働委員会の種類
労働委員会には、中央労働委員会と都道府県労働委員会とがあります。
中央労働委員会は、国の機関として設けられたもので、二つ以上の都道府県にわたる事件や全国的に重要な事件を取り扱い、また、都道府県労働委員会が行なった不当労働行為の判定と労働組合の資格審査の再審査をします。
都道府県労働委員会は、都道府県の機関として各都道府県に設けられ、その区域内に起こった事件を取り扱います。
(3)労働委員会の性格
労働委員会は、独立の機関として常設されている合議制の行政委員会です。
労働委員会の委員や事務局職員は、知事が任命しますが、仕事はすべて委員会に任されています。このようなことから、知事の指揮監督を受けることも外部からの何らの制約を受けることもありませんので、中立・公平に仕事をすすめることができます。
(1)委員の構成
労働委員会は、公益の代表者(公益委員)、労働者の代表者(労働者委員)、使用者の代表者(使用者委員)の三者から成り、それぞれ同数の委員で構成されています。
ちなみに、埼玉県労働委員会(以下「当委員会」といいます。)は、公・労・使それぞれ5人、計15人の委員で構成されています。
公益委員は、公平な第三者の立場としての性格をもつものです。また、労働者委員と使用者委員は、紛争の当事者である労使の単なる利益代表者にとどまらず、それぞれの側の事情を的確に労働委員会に反映して労使関係の安定を図る立場にあります。
労働者委員は労働組合の推薦に基づいて、使用者委員は使用者団体の推薦に基づいて、公益委員は労使委員の同意を経て、知事が任命します。その任期は2年です。
労働委員会には会長と会長代理がおかれていますが、いずれも委員の選挙によって公益委員の中から選ばれます。
(2)事務局
労働委員会には、事務を整理するために事務局が置かれています。
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(1)労働委員会の機能
労働委員会の機能は、次のような調整的機能と判定的機能との二つに大別されます。
- ア.調整的機能
例えば賃上げや一時金あるいは労働時間短縮などの事項についての交渉をめぐって労使間に紛争が生じた場合、あっせん、調停、仲裁といった方法で、円満な解決に導くよう労使間の調整を行います。
- イ.判定的機能
労組法第7条で禁止されている不当労働行為の事実があったかどうか(不当労働行為の審査)、労働組合が労働組合法で定められた自主的・民主的な組合であるかどうか(労働組合の資格審査)、地方公営企業及び特定地方独立行政法人においてどの職が非組合員の範囲に該当するかどうか(地方公営企業等における非組合員の範囲の認定及び告示)などの判断を行います。
なお、労使間の争いを解決するには、裁判所の利用もありますが、この場合には、問題を権利・義務があるかないかという観点から白黒をつけるということになります。一方、労働委員会の場合には、労働基本権の保障と同時に労使関係の安定を第一義として、将来にしこりを残さないよう弾力的な方法で解決に当たることを主眼においています。
(2)労働委員会の会議
労働委員会は、前に述べましたように公・労・使の各委員の三者構成による合議機関で、すべて会議にはかって運営されます。
会議の主なものとしては、総会と公益委員会議があります。
- ア.総会
公・労・使の委員全員で行う会議で、委員会の業務の基本的事項の協議・検討、取扱事件や公益委員会議の決定事項の報告、委員会としての運営方針の決定などを行います。
総会は、月1回以上開催することになっており、当委員会では、原則として毎月第2及び第4木曜日に、月によってはそのどちらかにおいて開いています。
- イ.公益委員会議
公益委員だけで行う会議で、不当労働行為の成否の判定や命令の決定、労働組合の資格の決定、地方公営企業等における非組合員の範囲の認定などを行います。
公益委員会議は必要に応じ、その都度開いています。
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労働委員会の主な仕事は、労働争議の調整、不当労働行為の審査、労働組合の資格審査並びに地方公営企業及び特定地方独立行政法人における非組合員の範囲の認定及び告示です。
(1)調整とは
労働組合などの労働者団体と使用者との間で生じた紛争は、当事者である労使が話合いで自主的に解決するのが原則ですが、当事者間で自主的に解決することが困難になることがあります。このような場合に労働委員会が公正・中立な機関として労使の間の調整を図り、労使の自主的な解決への手助けを行います。このことを労働争議の調整といいます。
労働委員会が行う調整は、労使双方の歩み寄りを促して争議を解決に導くことを基本とするもので、強制的に執行させるものではありません。
なお、調整は原則として当事者からの申請によって行われますが、公衆の日常生活に著しい障害を及ぼす争議のような特殊な場合などには、労働委員会の会長(「以下「会長」といいます。)の職権や知事の請求によっても開始されることがあります。
(2)調整事項
労働委員会が行う調整は、労働組合等と使用者との間で生じた労働条件等に関する紛争について調整を図るもので、その対象となる事項は、例えば次のようなものがあります。
- ア.賃金等に関する事項:賃上げ、賃金カット、一時金の支給・増額、退職金の未払・増額、賃金体系など
- イ.人事等に関する事項:配転、昇格、降格、出向、解雇、雇止め、人員整理など
- ウ.上記ア、イ以外の労働条件に関する事項:労働時間、休日休暇、定年制など
- エ.団体交渉に関する事項:団交の開催、団交拒否、団交の促進など
- オ.労働協約に関する事項
なお、労働者個人と使用者との間で生じた同様の労働条件等に関する紛争については、個別的労使紛争のあっせんで取り扱っています。
(3)調整の方法
労働委員会が行う調整の方法には、あっせん、調停、仲裁の3種類があり、当事者は、これらのうちのいずれの方法を選ぶこともできますが、ほとんどの場合、あっせんの方法が利用されています。
それぞれの調整の方法の相違点は、次のとおりです。
区分
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あっせん
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調停
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仲裁
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制度の内容
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あっせんは紛争当事者双方の主張のとりなしや団体交渉のとりもちなどを「あっせん員」が行うことにより、当事者間の自主的解決を援助する制度である。
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調停は第三者(調停委員会)が紛争当事者を仲介し、折り合わせ、納得したところで調停案を提示する。あっせんよりは調整者としての主体性が強くでる制度である。
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仲裁は紛争当事者双方が第三者(仲裁委員会)に白紙で解決を任せ、その決定に従うとの約束のもとに調整を進める制度で、委員会は決定権限等を有するものである。
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開始
方法
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- 労使いずれか一方の申請
- 労使双方の申請
- 会長の職権
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- 労使双方の申請
- 労使いずれか一方の申請(労働協約に定めがある場合若しくは公益事業の場合)
- 労働委員会の決議(公益事業など)
- 知事の請求(公益事業など)
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- 労使双方の申請
- 労使いずれか一方の申請(労働協約に定めがある場合など)
- 労働委員会の決議(地方公営企業など)
- 知事の請求(地方公営企業など)
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調整者
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あっせん員
(通常、公労使の委員各1名があっせん員となる)
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調停委員会
(公益委員、労働者委員、使用者委員各1名で構成)
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仲裁委員会
(公益委員3名、労使の委員は意見を述べることができる)
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終結
方法
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あっせんは、双方の歩み寄りにより解決を図るもので、例えば、あっせん員が「あっせん案」を提示し、双方がそれを受諾することにより解決する場合もある。
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調停案を提示して、労使双方にその受諾を勧告する。(調停案の受け入れの諾否は自由)
調停案は理由を附して、新聞等に公表することができる。
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仲裁裁定を提示
(当事者は、この裁定に従わなければならず、その効力は労働協約と同じである。)
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(4)あっせん
あっせんは、会長が指名するあっせん員が、関係当事者の間に入って両者の交渉を進め、または主張の食い違いを調整し、合意に達するように仲立ちなどして労働争議を解決に導く調整方法です。
- ア.あっせんの申請
あっせんは、労使いずれか一方又は双方からの申請によって開始されます。申請は、労働争議あっせん申請書を作成して、労働委員会事務局に持参等していただき、その場において調整事項や申請に至るまでの交渉経過などについて説明していただきます。
申請の受付後であっても、争議の実情や調整事項等があっせんに適さない事項であると会長が判断した場合あるいはあっせんを行うことが不要であると会長が認めた場合には、あっせんを行わないことがあります。
- (参考:職権あっせん)
事件の規模が大きく、公衆の日常生活に著しい障害を及ぼす恐れのある争議の場合などには、当事者からの申請が無くても会長の判断によって、職権により開始される場合があります。
職権あっせんといっても、開始が他のあっせんと異なるというだけで、あっせんの進め方等は申請によるあっせんと全く同じです。
- イ.あっせん員の指名
あっせんが申請され、あっせんをすることが適当と認められると、会長はあっせん員候補者の中からあっせん員を指名し、解決にあたらせます。
あっせん員には、通常、当委員会の委員3人(公・労・使から各1人)が指名されます。
- ウ.事務局調査
あっせんの開始が決定されると、事務局職員が被申請者(多くの場合、使用者側)から争議の経過と申請者の主張に対する意見や周辺情報等を聴取させていただきます。申請者の主張等は申請時に聞いていますので、この調査は、主として被申請者の意見等を聞くこととなりますが、更に必要があれば申請者からも事実の確認等を聴取させていただきます。
また、被申請者があっせんに応じるかどうかについての意向も確認させていただきます。あっせんにどうしても応じかねるとの意向が強い場合には、あっせんは行うことができません。(当該会社等に「争議をあっせんによって解決する」旨の労働協約の定めがある場合は除く。)
- エ.あっせんの実施
あっせんは日時を定め、申請者及び被申請者双方の出席を求め、原則として当委員会審問室等において非公開で行います。
あっせんには当事者以外は出席できませんが、当事者の代理人を立ててその人に委任して行うこともできます。弁護士等に代理を依頼した場合には、委任状を提出していただきます。
なお、組合の上部団体役員は、当事者に含まれますので、あっせんの場への出席及び発言をすることもできます。
あっせんは、申請者側からあっせんに至るまでの経過を述べてもらうことから始まり、次いで事情聴取に入ります。
事情聴取は、通常、労使双方から個別に行い、事情を十分聞き取り、主張を確かめ、争点を明らかにします。
あっせん員は事情聴取の結果、調整事項についての団体交渉が十分でなく、交渉の余地が残っていると見られるときは、更に団体交渉を続けるよう勧めます。また、労使間の主張をとりなし、お互いの譲り合いを勧め、対立をときほぐして解決に導くよう努力します。調整事項の変更や追加は、あっせんの途中においてもできます。
- オ.あっせん案の提示
あっせん員は、労使双方に「あっせん案」を提示し、これにより争議の解決を図るよう検討を求めることがあります。
あっせん案は、労使のいずれか一方のみの意見を支持する形で提示されることはなく、労使双方がほぼ合意できるように調整がついてきた段階で必要に応じ提示するものです。
なお、こうして作成されたあっせん案についても、その諾否については当事者である労使それぞれの判断に委ねられています。
- カ.あっせんの終結
- (ア)解決
労使双方があっせん案を受諾する旨の受諾書があっせん員あてに提出されたときは、その受理日をもって、あっせんを終結します。
また、あっせんの場において双方が和解し、あっせん員の立会いによる自主的な協定や合意書等が取り交わされた場合には、あっせん員があっせんの場において終結を宣言し、宣言した日を持って終結となります。
この他、自主的に団体交渉等を実施し、解決が図られた場合や当争議事項に関して労使間における自主的な協定書等を締結した場合などについては、申請者からあっせんの取下げ書を提出願い、取下げ書受理日を持って終結となります。
- (イ)打切り
あっせんの開始後において、被申請者があっせんを拒否したり、辞退した場合においては、会長またはあっせん員の判断により、あっせんを打ち切ることがあります。あっせんは打切りの通知を発した日付をもって終結となります。
また、あっせんを進める中で、労使の意見や主張に隔たりがあって、どうしても歩み寄りが見られず、あっせんを継続しても解決の見込みがないとあっせん員が判断した場合には、あっせんの場において打切りを宣言し、あっせんは打切りを宣言した日付をもって終結となります。
- (ウ)申請者からの取下げ
あっせんの必要がないと判断した場合あるいは他の手段により解決を図りたい場合などについては、申請者は、いつでも調整事項の一部または全部について、あっせんの取り下げを行うことができます。
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(5)調停
調停は、調停委員会が調停案を提示して労使双方に受諾を勧告し、争議を解決に導く調整方法です。
- ア.調停の申請
調停は一般的には、労使双方からの調停申請によって開始されます。当該会社等における労使間の労働協約に、調停等による解決の等の定めがある場合あるいは当該会社が行っている事業が公益事業に該当する場合は、当事者の一方からの調停申請によっても開始されます。
調停申請書を作成し、労働委員会事務局に持参等していただき、その場において調整事項や申請に至るまでの交渉経過などについて、申請者から説明していただきます。
なお、地方公営企業等や公益事業に関しての争議で、公衆の日常生活に著しい障害を及ぼす恐れのある争議の場合などには、当事者からの申請が無くても労働委員会の決議や知事からの請求により、調停が開始されることもあります。
- イ.調停委員会の設置
調停が申請されると、労働委員会は開始について審議し、妥当と判断された場合には会長が指名する公・労・使の三者の委員からなる調停委員会が設置され、その調停委員会が解決に向けて対応することとなります。
- ウ.調停の実施
調停委員会は、労使双方の出席を求め、その主張や意見を聞きます。また、必要があれば参考人の出席を求め、その意見を聞くこともあります。
(ア)調停案の作成
調停委員会は、当事者等から聞いた意見や職権で調査した資料に基づき、調停案を作成します。
(イ)調停案の提示
調停案が作成されると、調停委員会はこれを労使双方に、10日以内の期限をつけて受諾の有無を回答するよう提示します。(調停案は、労使双方とも必ず受諾しなければならないというものではありませんが、受諾に向けての勧告は調停委員会から行います。)
労使双方とも調停案を受諾し、受諾書を提出すれば争議は解決しますが、一方が受諾しなければ調停は不成立となり、受諾書の拒否文書の受理日をもって終結となります。
(ウ)調停の取下げ
労使双方からの申請において、調停が開始された後でも労使双方の合意があれば、調停事項の一部または全部について申請を取り下げることができます。当事者の一方の申請によるものであれば、取下げも申請した一方の当事者のみでできます。
調停の全面的な取下げの場合、申請者から調停の取下書を提出願い、取下書受理日を持って終結となります。
(エ)調停の打切り
調停が継続できないような状況となった場合(労使の一方が調停に出席しないことや双方の主張の隔たり
がかなり大きく調停案の作成が難しいような場合など)においては、調停委員会は理由を明示して調停を
打ち切ることがあります。調停は打切りを宣言または通知した日付をもって終結となります。
- エ.調停案の解釈、履行の疑義
労使双方が調停案を受諾した後、労使間で調停案の解釈または履行について見解が一致しないときは、関係当事者は調停委員会にその調停案の解釈または履行に関する見解を明らかにすることを申請により求めることができます。
この申請があった場合、調整委員会は申請のあった日から15日以内に、申請事項について見解を示すこととなっています。
なお、当事者は調停委員会から見解が示されるか、あるいは上記の15日の期間が経過するまでは、調停案の解釈または履行に関して争議行為を行うことができません。
- オ.調停に関する公表
公益事業に関する事件について、調停の申請があったとき、あるいは調停案の解釈若しくは履行に関し関係当事者から見解を明らかにすることの申請があったときは、新聞、ラジオ等によりその旨を公表することとなっています。
また、調停案について、理由を附してこれを公表することができることとなっています。
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(6)仲裁
仲裁は、労使双方が争議の解決を仲裁委員会に任せ、仲裁委員会がその判断(仲裁裁定)を示すことにより、争議を解決に導く調整方法です。
- ア.仲裁の申請
仲裁は、一般的には労使双方からの仲裁の申請によって開始されます。労働協約に定めがある場合は、当事者の一方からの仲裁申請書の提出によっても開始されます。仲裁申請書を作成し、労働委員会事務局に持参等していただき、その場において調整事項や申請に至るまでの交渉経過などについて申請者から説明していただきます。
仲裁は、当事者の申請によって開始されるもののほかに、地方公営企業等に関する争議の場合、労働委員会の決議や知事からの請求によって開始されることもあります。
- イ.仲裁委員会の設置
仲裁が申請されると、会長が指名する3人の公益委員からなる仲裁委員会が設置されます。その際、労使双方が合意して選んだ公益委員がいれば、会長はその委員を指名します。
また、当事者は労働委員会の労働者委員、使用者委員それぞれを指名することができ、その委員は仲裁委員会に出席し、意見を述べることができます。
- ウ.仲裁の実施
仲裁が開始されると、仲裁委員会は当事者や参考人の出席を求め、その主張や意見を聞くとともに、資料があればその提出を求めます。
- (ア)仲裁裁定書の作成
仲裁委員会は、当事者等から聞いた意見や職権で調査した資料を検討した上で、仲裁裁定書を作成します。
- (イ)仲裁裁定書の交付及びその効力
仲裁裁定書を当事者に交付します。仲裁裁定書はそこに記載された効力発生の日から効力をもち、その裁定内容は労働協約と同じ効力を有し、当事者を拘束します。また、仲裁裁定の内容が当事者にとって不満であったとしても、これに対して不服を申し立てることはできません。
- (ウ)仲裁の取下げ
労使双方からの申請において、仲裁が開始された後でも労使双方の合意があれば、仲裁事項の一部または全部について申請を取り下げることができます。当事者の一方の申請によるものであれば、取下げも申請した一方の当事者のみでできます。
仲裁の全面的な取下げの場合、申請者から仲裁の取下書を提出願い、取下書受理日をもって終結となります。
- (エ)仲裁の打切り
仲裁が継続できないような状況となった場合においては、仲裁委員会は理由を明示して仲裁を打ち切ることがあります。仲裁は打切りを宣言または通知した日付をもって終結となります。
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(7)争議行為の予告と発生届
労働委員会は、労働争議の解決のために、常に労働争議に関する情勢を的確に把握しておく必要があります。
このため、法律は、争議の当事者に対して、争議行為の届出を義務付けるとともに(労働関係調整法第9条)、特に公益事業については住民の日常生活に広く影響を及ぼすことを考慮して、その予告を義務付けています(労働関係調整法第37条)。
- ア.争議行為の予告通知
運輸、医療、公衆衛生事業等の公益事業(労働関係調整法第8条)において争議行為を行おうとする場合、当事者である労働組合又は使用者は、争議行為をしようとする日の少なくとも10日前(通知が労働委員会及び知事に到達した日と争議行為を行う日を含めないで、満10日間をおく。)までに当委員会及び知事(産業労働部雇用労働課が窓口)に文書によってこの旨を通知する必要があります。
なお、この予告をしないで争議行為を行なった場合には、10万円以下の罰金に処せられる場合があります。
- イ.争議行為の発生届
争議行為が発生したときは、当事者である労働組合又は使用者は、当委員会又は知事(産業労働部雇用労働課が窓口)に届け出なければならないことになっています。
なお、届出は、口頭又は電話などでも構いません。
- ウ.実情調査
公益事業にかかる労働争議が発生したときには、速やかに、その労働争議の実情を調査します。
また、公益事業以外の労働争議が発生したときにも、労働委員会の調整活動上必要と認められるときには実情を調査します。
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個別的労使紛争とは、個々の労働者と使用者との間で起きた労働条件や雇用に関して発生したトラブルで、個人レベルの話し合いだけでは解決が困難と思われる事案について、あっせん員が共同で、労働者、使用者の双方から話を伺い、問題点の整理と意見の調整あるいは助言などの支援を行いながら、歩み寄りによる解決を図ろうとするものです。
- ア.あっせんの申請
申請者からあっせん事項や申請に至るまでの交渉経過などについて説明していただき、あっせんに適合するようであれば、所定の様式による申請書を受け付けます。
申請の受付後であっても、紛争の実情やあっせん事項があっせんに適さないと会長が判断した場合には、あっせんを行わないこともあります。
- イ.あっせん員の指名
あっせんを行うことが適当と認められると、会長は個別的労使紛争あっせん員候補者の中からあっせん員を指名します。あっせん員には、通常、公益側、労働者側、使用者側から各1名が指名されます。
- ウ.事務局調査
事務局職員が被申請者(多くの場合、会社側)のところに赴いて、労務担当部長等から、紛争の経緯と申請者の主張に対する意見や会社の就業規則や会社の労務制度等について伺います。
また、被申請者があっせんに応じるかどうかについての意向も確認させていただきます。被申請者がどうしても応じかねるとの意向が強い場合には、あっせんを行うことができません。
- エ.あっせんの実施
あっせんは、当委員会委員室等において非公開で行います。原則として労働者、使用者を対席しての場面は極力少なくし、それぞれから個別に話を伺います。状況によっては、労働者については労働者側あっせん員が、使用者側については使用者側あっせん員が、それぞれの控室に出向いて話を伺うこともあります。こうした意見の聴取等を何度か行い、主張の確認と争点あるいは双方が妥協できる点などを明らかにしていきます。
初回のあっせんにおいて、折り合いがつかない場合などについては、あっせん員が双方に課題点等について、さらに検討するよう要請し、状況に応じて自主的な話し合いを促し、そうした経緯を見据えた上で、次回の期日を設定することとなります。
2回目以降のあっせんにおいては、1回目と同様に双方の歩み寄りを図るよう、あっせん員による意見の調整や双方に対する助言などを行います。
- オ.あっせん案の提示
あっせん員は、労働者、使用者の双方に「あっせん案」を提示し、これにより紛争の解決を図るよう検討を求めることがあります。「あっせん案」は、いずれか一方のみの意見を支持する形で提示することはなく、それぞれがほぼ合意できるように調整がついてきた段階で必要に応じ提示されるものです。
なお、こうして作成されたあっせん案についても、その諾否については当事者である、労働者、使用者それぞれの判断に委ねられています。
- カ.あっせんの終結
- (ア)解決
労働者及び使用者の双方があっせん案を受諾した場合や、あっせん員の助言等により当事者間で覚書等を締結した場合、あるいは自主的な話し合いにより合意に達した場合などは終結となります。
- (イ)打切り
あっせんを継続しても解決の見込みのないときは、あっせん員はあっせんの場において打切りを宣言し終結となります。
- (ウ)取下げ
申請者がこれ以上あっせんを継続しても、解決の見込みがないと判断した場合(他の解決手段に訴えるなど)、あっせん申請を取り下げることがあります。この場合は取下書を受理し終結となります。
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(1)不当労働行為とは
憲法は、勤労者の労働基本権、すなわち「団結する権利」「団体交渉をする権利」「団体行動をする権利」のいわゆる労働三権を保障しています。
そして、労組法はこの労働三権を具体的に保障するために、次のような使用者の行為を不当労働行為として禁止しています。
- ア.不利益取扱い(労組法第7条第1号)
- (ア)労働者が、a労働組合の組合員であること、b労働組合に加入しようとしたこと、c労働組合を結成しようとしたこと、d労働組合の正当な行為をしたことを理由にその労働者を解雇したり、あるいは昇給その他について他の人と差別して不利益な取扱いをすること。
- (イ)労働者が労働組合に加入しないことや労働組合から脱退することを雇用条件とすること(黄犬契約といいます。)。
- イ.団体交渉拒否(労組法第7条第2号)
労働組合からの団体交渉の申入れを正当な理由がないのに拒否すること。一応団体交渉には応じるが、交渉態度が不誠実である場合もこれに含まれます。
- ウ.支配介入(労組法第7条第3号)
- (ア)労働組合の結成や運営に干渉したり、あるいは、妨害したりすること。
- (イ)労働組合の運営に要する経費を援助すること。
- エ.報復的な不利益取扱い(労組法第7条第4号)
不当労働行為の救済を申し立てたことやその審査のときあるいは労働争議の調整のときに証拠を提出したり、発言をしたりしたことを理由に労働者を解雇し、あるいは賃金や昇給その他について他の人と差別して不利益な取扱いをすること。
(2)救済の手続
使用者が不当労働行為を行なったときは、労働者又は労働組合は労働委員会に対して救済を申し立てることができます。
この申立てを受けた労働委員会は、審査(調査・審問)、公益委員による合議などを行い、命令を出します。
不当労働行為救済申立事件は、命令で終結するもののほか、和解(自主和解・関与和解)で解決するものも少なくありません。
- ア.救済申立て
- (ア)救済申立てができるのは、不当労働行為を受けた労働者と労働組合です。両者の連名でもできます。
なお、労働組合が申し立てる場合には、申立てと同時に労働組合資格審査を申請することが必要となります。(労働組合資格審査の申請については後述します。)
- (イ)申立てができる期間は、原則として不当労働行為があった日から(翌日から起算して)1年以内です。したがって、例えば12月1日に解雇された場合、翌年の12月1日が申立期間の最終日となります。
ただし、「継続する行為」については、その終了した日から1年以内が申立期間となります。
- (ウ)労働委員会は各都道府県に一つずつありますが、当委員会には次のいずれかに該当すれば申し立てることができます。
- a.申立てをする人(労働者、労働組合=申立人)の住所や主たる事務所が埼玉県内にあること。
- b.申立ての相手方(会社等=被申立人)の住所や主たる事務所が埼玉県内にあること。
- c.不当労働行為の行われた場所(例えば工場・営業所等)が埼玉県内にあること。
なお、上記a~cの都道府県が異なる場合、どこの労働委員会に申し立てるかについては、申し立てる側の事情により選択することができます。例えば、次のようになります。
申立ての管轄
会社の所在地・申立てをする人の住所
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申立てをする労働委員会 |
- 本社=東京都内
- 工場=埼玉県内
(不当労働行為が行われた場所)
- 申立てをする人の住所=群馬県内
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左記の場合、次のいずれか都合のよいところに申立てができます。
- 埼玉県労働委員会
- 東京都労働委員会
- 群馬県労働委員会
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- (エ)申立ては、次の事項を記載し、申立人本人が氏名又は名称を記載した不当労働行為救済申立書を当委員会へ提出して行うことになっています。弁護士など代理人の名義で提出することはできません。
なお、申立ては口頭で行うこともできますが、この場合は事務局に御相談ください。
- a.申立年月日
- b.申立人の氏名、住所
(申立人が労働組合のときは、その名称、代表者の役職名・氏名と主たる事務所の所在地)
- c.被申立人の氏名、住所
(被申立人が株式会社などの法人その他の団体であるときは、その名称、代表者の役職名・氏名と主たる事務所の所在地)
- d.請求する救済の内容
- e.不当労働行為を構成する具体的事実
- f.主張
- イ.審査委員の選任と参与委員の申出
申立てがあると、当委員会では、通常、会長が公益委員の中から1人を審査委員に選任して審査を担当させるとともに、事務局職員の中から事務を処理する担当職員を指名します。また、労働者委員・使用者委員の中から通常それぞれ1人が審査に参与することを申し出ます(参与委員といいます。)。参与委員は審査に出席し、審査委員に助言したり当事者に質問したりします。審査委員・参与委員と担当職員は、緊密な連絡をとりながら、審査を進めていくことになります。
- ウ.公益委員の除斥、忌避
公益委員が、事件の当事者と親族関係にあったり、当事者の代理人であったり、事件について証人となるなどの特別な関係にある場合には、当委員会の職権により、又は当事者からの申立てにより審査に係る職務の執行から除斥され、事件に関与することができないよう排除されることになります。
また、公益委員について除斥の事由にまでは該当しないとしても、審査の公正さに疑いが生じるおそれがある場合には、当事者は、書面をもって申し立てることにより、その公益委員が事件に関与することを忌避することができます。
- エ.調査
調査は、被申立人から答弁書の提出を求め、当事者双方から申立書又は答弁書の説明を聴くなどして主張を整理・確認し、争点を明らかにするなど、審問の準備をするための手続です。
- (ア)答弁書の提出
当委員会では、担当職員が被申立人の所に出向き、申立書の副本を被申立人(使用者)に直接渡し、申立書に対する答弁書の提出を求めます。答弁書の提出期限は当委員会が指定しますが、原則は申立書の副本が被申立人に届いてから10日以内となっています。
答弁書は、被申立人本人が氏名又は名称を記載したものを提出することになっています。また、代理人許可を得た後であれば、弁護士など代理人の名義で提出することも可能です。
なお、答弁書の提出に代えて口頭による答弁もできます。この場合は事務局(担当職員)に御相談ください。
- (イ)次いで、審査委員は、調査期日を設定し、当事者双方の立会いのもとに当事者双方の主張の整理・確認を行うほか、次のような手続を行います。
- a.証拠の整理
当事者双方の主張を裏付ける証拠の提出を求め、この整理を行います。証拠には書証(例えば、組合のビラ、解雇通知、団体交渉申入書、写真等)と人証(証人、当事者本人)があります。
- b.代理人及び補佐人の許可
審査において、当事者は、代理人を選び他人に代理させることができますし、また、補佐人を伴って審査に出席することができます。このいずれの場合も審査委員の許可を必要とします。
代理人及び補佐人は、審査委員の許可を得て陳述を行い、審問の場で証人を尋問することができます。
代理人及び補佐人に特別の資格は必要としませんが、代理人には当事者双方とも弁護士がなっているケースが多く、また、補佐人には、申立人の場合は申立組合の役員、上部組合の役員など、他方、被申立人の場合は人事担当の役員などがなるケースが多いようです。
- (ウ)却下
調査段階においても、例えば、申立人の主張する事実が不当労働行為に該当しないことが明らかなとき、あるいは請求する救済の内容が法令上又は事実上実現することが不可能であることが明らかなときなどの場合は、公益委員会議の決定で却下されます。この場合は(却下)決定書の写しが交付されます。
- オ.審査の実効確保の措置
当事者から申立てがあったとき、又は審査委員が必要と認めたときは、公益委員会議の決定により、当事者に対し審査の実効を確保するため必要な措置をとることを勧告することができる制度があります。これを「審査の実効確保の措置勧告制度」といいます。
これは、不当労働行為の審査中に、そのまま放置すれば救済の実効が阻まれたり、困難になるような事態が生じたり、あるいは不当労働行為制度の趣旨が損なわれるなどのおそれがある場合に、審査中であっても、労働委員会が当事者に対し必要な措置をとるよう勧告し、制度の実効を確保しようとするものです。
- カ.審査計画
調査の手続において、当事者からの主張が出そろい、争点の整理が終わると、審問を開始する前に、当事者双方の意見を聴いて審査計画を定めます。この審査計画には、その後の審査を迅速で計画的に進めることができるよう、次の事項を記載することとされています。
- (ア)調査を行う手続において整理された争点及びこれらの争点に関して事実の認定に必要となる物証や人証などの証拠
- (イ)審問を行う期間とその回数及び証人の予定数
- (ウ)救済命令等の交付の予定時期
当委員会は、この計画に沿った審査の進行に努めるとともに、当事者双方もこれに協力することが求められています。
- キ.物件提出命令
労働委員会は、当事者からの申立てにより又は職権で、事件に関係のある帳簿書類などの物件の所持者に対して、それら物件の提出を命じて証拠調べをすることができます。
- (ア)物件提出命令の対象となるのは、賃金台帳などの帳簿書類や人事考課の結果を記載した書類などであり、それらの物件によらなければ不当労働行為の有無に関する事実の認定が困難となるおそれがあると認められるものです。
- (イ)当委員会が、物件提出命令をするかどうかを決定するに当たっては、個人の秘密や事業者の事業上の秘密の保護に配慮した上、物件の所持者に、口頭又は書面により個別的に陳述する機会を与えることとなっています。
- (ウ)当委員会が、物件の提出を命じたにもかかわらず、それらの物件を提出しなかった場合は、その後の裁判所における取消訴訟において証拠として提出することができません。ただし、物件所持者が提出するのに不可能な事情があるなど正当な理由があると認められる場合は、この限りではありません。
- ク.証人等出頭命令
労働委員会は、当事者からの申立てにより又は職権で、審問を行う手続において、当事者又は証人に出頭を命じて陳述させる方法によって証拠調べをすることができます。
- ケ.不服の申立て
当委員会が行なった物件提出命令や証人等出頭命令について不服があるときは、それらの命令を受けた日から1週間以内(天災などのやむを得ない理由があるときは、その理由がやんだ日の翌日から起算して1週間以内)に、中央労働委員会に審査を申し立てることができます。
不服の申し立てを受けた中央労働委員会は、これを審理して、申し立てに理由があると認めるときは、その全部又は一部を取り消します。
- コ.審問
審査計画が作成され、調査の手続が終わると、次いで審問になります。
審問は、当事者双方が申立書あるいは答弁書で主張している事実について裏付けを行う手続で、証拠調べが中心となります。審問は、当事者双方の立会いの上、原則として公開で行われるもので、裁判所の口頭弁論に似ています。
裏付けは、事件について審査委員に「そうであるらしい」という心証をもたせる程度で足り(疎明といいます。)、確信を持たせるほどの強い立証(証明といいます。)は必要でありません。その手段として当事者は、疎明のための資料を提出し、又は事実を知っている人に証人として証言してもらうことになります。
- (ア)証人の宣誓
審問において、証人尋問を行う場合、証人は審問廷で宣誓をしなければなりません。
宣誓は、証人が、起立して、「良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、また、何事も付け加えないこと」を誓う旨の宣誓書を朗読し、これに署名して行われます。
正当な理由がないのに宣誓をしない場合、又は宣誓をした証人が虚偽の証言を行なった場合には、罰則が適用されます。
- (イ)証人尋問
宣誓の後、証人尋問が開始されます。
証人尋問は、事件の核心に触れた事実についてだけ行うことが大切です。事件にあまり関係のないことや意見についてまで尋問すると、かえって混乱してしまうおそれもあります。当委員会では、おおよそ次のような要領で行われます。
- a.まず、その証人を申請した側の代理人・補佐人が証人を尋問します(主尋問といいます。)。
- b.次に、相手方の代理人・補佐人が証人を尋問します(反対尋問といいます。)。反対尋問は主尋問の範囲と関係事項の範囲を超えないようにしなければなりません。
- c.さらに、審査委員や参与委員が必要に応じて尋問を行います。
*証人尋問をするに当たっては、労働委員会が証人を呼び出すことになりますが、呼び出しに応じて出席した証人には条例の定めるところにより交通費等が支払われます。
- (ウ)最後陳述
審査委員は、証拠調べの後、審問を終結することになりますが、この審問終結に先立って、当事者に対して終結の日を予告し、最後陳述の機会を与えます。最後陳述は、これまでの調査や審問の全過程をふりかえって、自己の主張や事実を整理するための陳述です。
- サ.命令
- (ア)公益委員会議
- a.参与委員からの意見聴取
審問が終結すると、公益委員会議が開かれ、命令の合議が行われますが、合議に先立って審査に参与した参与委員の意見を聴きます。
- b.公益委員の合議
合議では、使用者の行為が不当労働行為であるか否かを判定し、その結果、不当労働行為があったと認めたときは、申立人が請求する救済の全部又は一部を認める命令(救済命令)を、反対に不当労働行為があったと認められないときは、救済申立てをしりぞける命令(棄却命令)を決定します。
- (イ)命令書の写しの交付
合議で決定した命令を書面にして命令書とし、当事者にはこの写しを交付します。
当委員会では、当事者双方の出席を得て直接手渡して交付するのが通例となっていますが、配達証明郵便で送付することもあります。この場合、配達された日が交付の日となります。
命令の効力は、命令書の写しの交付の日から生じます。
- (ウ)命令に不服がある場合
- a.申立人、被申立人とも中央労働委員会へ再審査の申立てを行うことができます。再審査の申立期間は、命令書の写しを受け取った日から15日以内となっています。
したがって、例えば、12月1日に命令書の写しを受け取ったとすれば、(12月2日から起算して)12月16日が申立期間の最終日となります。
再審査の申立ては初審の都道府県労働委員会を経由して行うこともできます。
- b.訴えの提起
また、地方裁判所(当労働委員会の命令に対してはさいたま地方裁判所)に対して、命令の取消しを求める訴えを起こすことができます。
この場合、申立人は命令書の写しを受け取った日から6か月以内、被申立人は命令書の写しを受け取った日から30日以内に行わなければなりません。以上のことを図示しますと次のようになります。
なお、再審査の申立てや訴えの提起がなされても労働委員会の命令に従う義務が失われるわけではありません。当事者は引き続き労働委員会の命令に拘束されます。
-
- (エ)命令の確定と不履行
前記(ウ)aの期間内に再審査の申立てをせず、また、bの期間内に裁判所への訴えも起こさないで所定の期間が経過すると、労働委員会の命令は確定します。
確定した命令に従わない使用者には罰則の適用があります。
- (オ)緊急命令の申立て
使用者が裁判所に命令の取消しを求める訴えを起こした場合、労働委員会は、裁判所に対し「使用者に対し、判決の確定に至るまでその労働委員会の命令の全部又は一部に従うべき旨を命ずる」よう申し立てることができます。裁判所がこの申立てに基づいて命令をした場合、使用者がこれに違反すると罰則の適用があります。
- シ.和解・取下げ
- (ア)和解の話合いは、審査の途中においていつでも行うことができ、当委員会から当事者双方に和解を勧めることもあります
- (イ)また、当事者が命令により決着をつけるよりも、話合いにより解決したいと望む場合もあります。このような場合には、審査委員と労使の参与委員が協力して、当事者双方が納得できる条件で円満に事件が収まるよう努力します。そして、話合いによって意見が一致すれば、和解協定を締結し、申立人が取下書を提出することによって事件は終結します。
- (ウ)さらに、労使間の自主的な団体交渉などによって、労働委員会の場以外で、当事者双方の合意がなされることもあります。この場合も前記同様、申立人が取下書を提出することによって事件は終結します。
- ス.和解の認定
命令が確定するまでの間に、当事者間で和解が成立し、当事者双方からの申立てがあり、その和解内容が当事者間の労使関係の正常な秩序を維持し確立するために適当であると当委員会が判断したときには、和解の認定を行うことができます。
なお、和解の認定を受けた事件について、既に救済命令が発せられている場合は、命令の効力は失われます。
- (ア)和解調書の作成
当委員会の認定を受けた和解の内容に、金銭の一定額の支払い等の合意が含まれる場合には、当事者双方の申立てにより、当委員会は和解調書を作成します。和解調書を作成したときは、申立てを行なった当事者双方に対し、その正本を送達します。
なお、この和解調書は、強制執行に関しては債務名義とみなされます。
- (イ)債務名義執行文の付与
債務名義とみなされる和解調書の正本には、この債務名義により強制執行することができる旨の文言(債務名義執行文)が付記されます。
- セ.不当労働行為審査関係の主な提出書類等
番号
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提出書類名
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提出部数
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備考
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1
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不当労働行為救済申立書
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5部
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2
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労働組合資格審査申請書及び関係書類
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1
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3
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被申立人の登記簿謄本
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1
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4
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答弁書
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5
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5
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代理人許可申請書(委任状添付)
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1(1)
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6
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補佐人許可申請書
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1
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7
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証人等尋問申出書
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5
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8
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書証
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5
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申立人提出の書証には「甲第○号証」と、被申立人提出の書証には「乙第○号証」と番号を付ける。
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9
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書証申出及び証拠説明書
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5
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10
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最後陳述書
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5
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11
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取下書
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1
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1・2・3は申立てをするとき一緒に提出してください。
提出書類は、できるだけ日本工業規格A列3番の用紙を二つに折ったもの、又は日本工業規格A列4番の用紙を使用して、横書き左とじとしてください。
1・4・7・8・9・10及び準備書面等の提出部数は原則として5部(正本1部、副本1部、写し3部)ですが、相手方当事者が1名を超える場合は、当事者数が1名増すごとに副本を1部追加してください。(例えば、相手方当事者が2名ならば、副本は2部とし、正本1部、写し3部の合計6部提出することになります。)
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(1)資格審査を必要とする場合
労働組合は自主的に組織され、民主的に運営されるものです。したがって、労働組合を作っても、どこへも届け出る必要はありませんし、その組織や運営についてだれからも干渉されることはありません。
しかし、次の場合には、労働組合法で定められた要件を備えた適法な組合であるかどうか、労働委員会で審査することになっています。
- ア.労働委員会の労働者委員の候補者を推薦する場合
- イ.不当労働行為の救済を申し立てる場合
- ウ.労働協約の一定地域への拡張適用を申し立てる場合
- エ.法人登記をするために資格証明書の交付を受けようとする場合
- オ.職業安定法で定められている無料の労働者供給事業の許可申請を行う場合
労働組合は、上記の手続を行う都度、資格審査を受けなくてはなりません。したがって、例えば、A組合が、既に法人登記のための資格審査において労働組合法上の労働組合であるとの決定を得ていても、後日、不当労働行為の救済を申し立てる場合には、改めて、資格審査の申請を行わなくてはなりません。
(2)資格審査の基準
資格審査は、主に「自主的な労働組合といえるかどうか(労組法第2条)」と「民主的な労働組合といえるかどうか(労組法第5条第2項)」の二点について行われます。
- ア.自主的な労働組合であるというための要件は次のとおりです。
- (ア)労働者が主体となって自主的に組織していること。
- (イ)労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を主たる目的としていること。
- (ウ)使用者側の利益代表者が参加していないこと。
- (エ)組織運営のために使用者から経済的援助を受けていないこと。
- (オ)共済事業その他福利事業のみを目的としていないこと。
- (カ)政治運動や社会運動を主たる目的としていないこと。
- イ.民主的な労働組合であるというためには、組合規約に次の条項を含んでいなければなりません。
- (ア)労働組合の名称
- (イ)労働組合の主たる事務所の所在地
- (ウ)単位労働組合(連合団体でない労働組合)の組合員は、その労働組合のすべての問題に参与する権利及び均等の取扱いを受ける権利をもつこと。
- (エ)何人も、いかなる場合においても、人種、宗教、性別、門地又は身分によって組合員たる資格を奪われないこと。
- (オ)単位労働組合の役員は、組合員の直接無記名投票により選挙されること。
連合団体である労働組合又は全国的規模をもつ労働組合の役員は、単位労働組合の組合員又はその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票により選挙されること。
- (カ)総会は、少なくとも毎年1回開催すること。
- (キ)すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名並びに現在の経理状況を示す会計報告は、組合員によって委嘱された職業的に資格がある会計監査人(公認会計士など)による正確であることの証明書とともに、少なくとも毎年1回組合員に公表されること。
- (ク)同盟罷業(ストライキ)は、組合員又は組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票の過半数による決定を経なければ開始しないこと。
- (ケ)単位労働組合における規約は、組合員の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正しないこと。
連合団体である労働組合又は全国的規模をもつ労働組合における規約は、単位労働組合の組合員又はその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正しないこと。
(3)資格審査のための提出書類
資格審査を受けようとする労働組合は、資格審査申請書に次の書類を添えて当委員会に提出してください。なお、申請にあたっては、「埼玉県電子申請・届出サービス」システムを利用することもできますので、希望される方は、事前に労働委員会事務局へお問合せください。
- ア.労働組合及び使用者の概況
- イ.労働組合規約及びこれに準ずる諸規程
- ウ.労働協約
- エ.労働組合役員名簿
- オ.労働組合会計書類
- カ.事業所職制及び非組合員の範囲一覧表
- キ.使用者の利益を代表する者の参加を許すものではない旨等の誓約書
- ク.申請者が連合団体等である場合には、上記アからオまでに加えて、次の書類
- (ア)組合組織形態表
- (イ)構成組合のうちから抽出した2単位組合に係る上記アからキまでの書類
- (ウ)すべての構成組合が労働組合法第2条(自主性)及び第5条第2項(民主性)に適合する旨の連合団体等の誓約書
*クの(ア)「組合組織形態表」は、すべての構成組合の名称、所在地、組織人員及び下部組織の数(単組、支部及び分会の別に)を一覧表に作成してください。
*提出書類は、できるだけ日本工業規格A列3番の用紙を二つに折ったもの、又は日本工業規格A列4番の用紙を使用して、横書き左とじとしてください。
(4)資格審査の手続
- ア.申請があると、当委員会では、通常、会長が公益委員の中から1人を審査委員に選任して審査を担当させるとともに、事務局職員の中から事務処理をする担当職員を指名します。
- イ.審査委員は、提出があった資料に基づき審査を行います。必要があるときには、担当職員が組合事務所へ出向き事実の調査を行うこともあります。
- ウ.審査の結果、労働組合に労働組合法の定める要件に適合しないと判断されるところがあるときは、補正指導(組合規約に労働組合法の定める事項が規定されていない場合に、組合規約に加えることを指導するなど)を行いますが、この補正指導に従わない場合には、公益委員会議の決定に基づき、相当の期間を定めて補正を勧告することもあります。
- エ.審査が終わると、公益委員会議を開いて労働組合法の規定に適合するかどうかを決定します。
- オ.公益委員会議で労働組合法の規定に適合すると決定したときは、その旨の決定書の写し(労働者委員候補者推薦及び法人登記のためのときは証明書)を申請労働組合に交付します。不当労働行為の救済申立てに伴って行われた申請の場合は、決定書の写しをその不当労働行為救済申立事件の命令書の写しと同時に交付します。
- カ.公益委員会議で労働組合法の規定に適合しないと決定したときにも、その旨の決定書の写しが交付されますが、その決定に不服がある場合、申請労働組合は、決定書の写しの交付を受けた日から15日以内に中央労働委員会に再審査の申立てを行うことができます。
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(1)地方公営企業等における非組合員の範囲の認定及び告示とは
地方公営企業等の労働関係に関する法律第5条第2項の規定は、労働委員会が、地方公営企業又は特定地方独立行政法人に勤務する職員が結成し、又は加入する労働組合について、職員のうち労働組合法第2条第1号に規定する者、いわゆる使用者の利益を代表する者の範囲を認定して告示するものとしています。これは、地方公営企業等の重要性にかんがみ、企業内の平和的な労使関係の確立を図るため、あらかじめ使用者の利益を代表する者の範囲を明確にしておこうとするものです。
(2)認定及び告示の手続
- ア.この認定及び告示は、通常、地方公営企業等と労働組合のいずれか一方又は双方からの労働委員会への申出に基づいて行われます。
- イ.申出があると、公益委員会議を開いて認定手続を開始するかどうか決定します。
- ウ.認定の手続を開始することに決定した場合は、当事者にその旨を通知します。なお、組合が複数ある場合には、すべての組合に通知します。
認定の手続を開始しないことに決定した場合は、申出を行なった者にその旨を通知します。
- エ.認定の手続を開始することに決定した場合は、当委員会では、通常、会長が公益委員の中から1人を調査委員に選任して調査を担当させるとともに、事務局職員の中から事務処理をする担当職員を指名します。
- オ.調査委員は、提出があった資料に基づき調査を行います。通常、調査は資料調べで終わりますが、必要があるときは、現地ヘ出向き調査を行うこともあります。
- カ.調査が終わると、公益委員会議を開いて使用者の利益を代表する者の範囲を認定します。
- キ.公益委員会議において使用者の利益を代表する者の範囲を認定したときは、その内容を当事者に通知するとともにこの範囲を告示します(埼玉県報に登載)。
(3)認定告示のための提出資料
認定の申出をする者は、申出理由等を記載した認定申出書に次の資料を添えて当委員会に提出してください。
- ア.職制及び使用者の利益代表者の範囲一覧表
*申出人が認定を求める使用者の利益代表者の範囲を図で明示し、点線で区別してください。
- イ.地方公営企業等の組織及び事務分掌(職務権限)に関する規程
- ウ.組合規約
- エ.労働協約
*使用者の利益代表者の範囲に関する労働協約(附属協定、覚書等)がある場合には、提出してください。
- オ.事務分担表
- カ.その他必要書類
*提出書類は、できるだけ日本工業規格A列4番の用紙を使用して、横書き左とじとしてください。
(4)使用者の利益を代表する者
労働委員会は、地方公営企業等において、どのような職にある者が次に掲げるような使用者の利益を代表する者に該当するか調査します。
- ア.役員
- イ.雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者。
- ウ.使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接にてい触する監督的地位にある労働者。
- エ.その他使用者の利益を代表する者(上記以外の者で、その加入が、労働組合の自主性を損なうような職務上の地位にあるもの。)。
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労働委員会は、原則として、申請又は申立てがなければ事件として取り扱うことができません。
争議の調整(あっせん・調停・仲裁)の申請、不当労働行為事件の救済申立て、労働組合の資格審査の申請などの手続について、御不明な点がありましたら当委員会事務局へ御相談ください。
労働委員会の委員や事務局職員が仕事をするのに当たって知ることのできた労使の秘密にわたる事項は、労働組合法によって他に漏らすことを禁止されていますので、秘密は厳守されます。
なお、労働委員会の利用に当たって、特別な費用は必要ありません。当委員会が、審問のために証人としてお呼びした場合は、県条例の定めるところにより交通費等が支給されます。
県の労働相談センターでは、このほか各種の労働相談をお受けしていますので、労働委員会のことも含めて遠慮なく御相談ください。
関係機関一覧表
名称
|
所在地
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電話
|
交通
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労働相談センター
|
〒330-9301
さいたま市浦和区高砂3-15-1
埼玉県庁第二庁舎1階
|
048-830-4522
|
浦和駅西口
徒歩10分
|
産業労働部
雇用労働課
|
〒330-9301
さいたま市浦和区高砂3-15-1
埼玉県庁本庁舎5階
|
048-824-2111
(埼玉県庁代表)
|
浦和駅西口
徒歩10分
|
中央労働委員会
|
〒105-0011
東京都港区芝公園1-5-32
|
03-5403-2111
(代表)
|
浜松町駅北口
徒歩10分
|