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掲載日:2023年3月14日
Q 小島信昭 議員(自民)
最新である2020年農林業センサスを見ると、本県の基幹的農業従事者は3万7,683人。これは30年前の1990年の9万5,198人と比較して60.4%減少し、農業産出額は2,724億円から1,678億円に38.3%減少しています。
農業は県民の食を支えているということは言うまでもありませんが、また、農業者は営農を通じて本県の県土の約2割を占める農地を耕作し、県土の良好な景観、維持に寄与しています。さらに、農地は大雨の際に一時的に水をため、洪水の抑制をする大きなダムの役割も果たしています。この恩恵は全ての県民が享受しています。こうした農業が担う役割を果たすために必要な農業政策が、県民にまだまだ理解されていないのは非常に残念なことです。
私は、この代表質問で毎回「農業は全ての県民の暮らしに欠かすことのできない大切なものであること」を訴え、ICTの活用や経営として成り立つ農業への転換を提案させていだいてきております。そのかいあって新たな5か年計画にもしっかり位置付けられておりますし、令和5年度一般会計当初予算案の中でも、農業技術研究センター久喜試験所において少額ですがICT研究施設の調査予算が計上されています。
農業低迷の時代を断ち切り、令和の時代にふさわしい新技術を導入し、競争力をつけた農業者が持続可能で発展的な経営ができるような農業政策を掲げていかなければなりません。ここで改めて、県政における農業、そして農業政策の方向性など、知事の農業振興に対する考え方を伺います。
次に、農業振興に向けて具体的な提案をさせていただきたいと思います。
まずは、現下の原油・原材料の高騰対策についてです。
農林部では、スーパーや小売店において米の増量キャンペーンを行うなど間接的な支援に限られた予算の中で対応していただいていますが、他の産業と比較し個別的な支援がない状況です。そこで、軽油引取税の免税制度で農業者に対する農業支援をできないものかと考えます。軽油引取税は、県税として軽油を購入するとき1リットル当たり32.1円が課せられています。現在は一般財源化されましたが、そもそも軽油引取税は公道を走行使用する場合の負担を想定した道路目的税として創設されました。私有地である農地で耕作をする場合、本来免税されるという措置がなされています。しかし、実際は申請が煩雑で、申請をする農業者が非常に少ない状況になります。令和3年度に免税を受けた農業者は僅か623件、本県の基幹的農業従事者の僅か2%です。
具体的に農業機械で免税を受けるためには、申請により3年ごとに免税軽油の使用者の認定を受けた上で、毎年、免税証の交付を受け、ガソリンスタンド等で軽油を購入するとき軽油引取税分の値引きを受けるという仕組みになっています。また、申請のたびに提出する添付書類も、農業用機械のカタログや写真、免許証等の本人確認が必要になるなど、細部にわたりかなり厳密になっています。さらに、使用状況を事後的に確認するために、農地が広範囲かつ点在している農業者は使用するほ場までの移動分を差し引き、ほ場での耕作に使用した軽油の量を計算し報告することが義務付けられています。それを作業のたびに計算し、使用量を記録しなければならず非常に煩雑です。
この説明を聞いただけで申請を断念してしまうのは当然です。ハードルを上げておいて、申請がないということで文句を言わないところからもらっておこうという意図さえ感じます。
公平な税負担の観点や横流し等の脱税を防止するため、適正な手続を行う必要があることは十分理解できますが、免税の趣旨や昨今の原油価格高騰を受け、農家の方々の負担がますます重くなっている現状に鑑みれば、今こそ生産コストを少しでも下げ、農家の負担を和らげるためにも、この免税制度を申請しやすいように改善し、本来免税されるべき農業者の燃料費がしっかりと免除されるように配慮すべきではないでしょうか。
国が定める法令等によって規定されている部分も多いことは理解していますし、この免税制度が時限的な特例措置であることも承知をしておりますが、県として改善に着手すべきと思いますが、知事の見解を伺います。
次に、優良農地の減少対策について提案します。
この件については、令和3年6月定例会の我が党の高橋稔裕議員が同趣旨の一般質問をしましたが、首都圏近郊に位置し、交通の便に優れる本県に事業の拠点を置きたいと希望する企業も多く、県企業局では産業団地の整備を進めています。しかし、農業にとって優良な農地は大事な資源です。この優良な農地を守っていくことは県内農林業の維持、発展には重要ですが、産業団地の整備に起因して優良な農地が減少していることも事実です。
そこで、提案です。
産業団地造成により県企業局が得た収益は、直ちに全額が使われるわけではありません。次の産業団地の整備までの手持ち資金となります。過去には県の一般会計が、この資金をリーマンショック後や新型コロナウイルス感染症対策推進基金のように広く財源不足を補う手段として借り入れたことがあります。同様に、この資金を農地の保全や再生、そして農業の維持、発展のために有効活用することはできないでしょうか。
例えば、土地改良区の賦課地域では、現状の優良農地の水田を水田以外の耕作、若しくは農地転用を図ろうとすれば、土地改良法に基づいて30年分の賦課金に当たる決済金を支払います。その決済金は、残された将来の優良な農地維持のために管路等の農業インフラの維持費として積み立てられます。限られた農林部の予算で農業基盤整備を希望する地域が何年も順番待ちで待たされている現状もありますので、優良農地を減らす分、残す農地に生かすべきだと思います。是非このような視点からの検討をすべきであります。
これはあくまでも例示ですが、一般会計に貸し付けた資金で基金を設置し、その運用益を先ほど申し上げた農地の保全や農業振興のために使うことはできないでしょうか。多少金利の上昇が見込める局面になってきましたので、ただ利息を事業に当てるというのではなく、工夫すれば施策として成り立つ可能性があると思います。
また、以前行ったように、県の一般会計にこの資金を貸し付けることなどが今後あれば、その際に貸付け等の条件として農地の保全をはじめとする農林振興の財源に優先的に充てるという条件を付すことも考えられます。過去にガソリン税や自動車重量税が道路財源として、現在は消費税が社会保障の財源として使われるという仕組みのように、貸付けの目的と財源をひもづけることは意義があると考えます。
この資金活用について、受け手となって活用を図る知事と、財源の出し手である公営企業管理者のお二人の見解を伺います。
A 大野元裕 知事
県政における農業、そして農業政策の方向性など、農業振興に対する考えについてであります。
議員御指摘のように、農業は、県民の食を支えるのみならず、県土における良好な景観の維持や洪水の抑制など、多面的な機能を通じて県民の暮らしに大きな恩恵をもたらしていると思います。
また、現在、ウクライナ情勢の影響などにより、海外に食料を依存する社会的構造に対する不安が高まっており、食料安全保障の観点からも農業の重要性が再認識されております。
このため、農業振興は県政において最も重要な政策のひとつであり、儲かる農業の実現のため積極的に取り組んでまいります。
今後、本県農業の活力を維持・向上させていく上では、経営を大規模化・高度化する農業者や、地域を支える中小・家族経営など、多様な農業の担い手が活躍することが重要です。
農業の担い手については、新規就農の促進に加え、農業基盤整備や農地の集積・集約化、スマート農業の推進により、生産性向上や知識・技術の見える化等を進め、農業の持続的発展を図ってまいります。
農業・食品分野では、アグリテック・フードテックと呼ばれる革新的な技術への注目も高まっており、こうした技術により本県農業に活力を加えることにも、積極的に挑戦してまいります。
また、都市と農村が近い本県では、農ある暮らしを求める移住者や農村を農業体験で訪れる方々などの活力を取り込むことや、農業と農産物のすばらしさを県民にアピールし、県民生活と農業を食でつなぐことも大切であります。
こうした考え方に基づき、埼玉農業の将来に明るいビジョンを持ちながら、農業振興に取り組んでまいります。
次に、現下の原油原材料費等の高騰対策についてであります。
本県の軽油引取税収入額は年間約500億円を超え、県税収の約6.3%を占める貴重な財源であります。
この免税は、農業用途などに限定的に認められるものであることから、公平・公正な手続の下に運用する必要があります。
このため、免税を受ける場合には、免税軽油使用者としての登録を3年ごとに受けた上で、実際の購入時に必要な免税証の交付を毎年申請し、原則として毎月の使用量を報告する必要があります。
他方、議員御指摘のとおり、脱税防止を重視した制度設計が結果的に手続の煩雑さを招いているため、不正使用防止の効果を担保しつつも、より手続等がしやすい制度に改善していく必要があると私も考えます。
そのため、まずは県が実施する改善案としては、市町村が発行する耕作証明書や標識交付証明書の県への提出について、県と市町村がいわゆる
バックオフィス連携を行い確認することで、申請者が省略をできるよう検討してまいります。
また、申請者が所有している農業機械の契約書や現況写真等について、変更がない限り次回以降の県への提出を省略するワンスオンリー化を検討するとともに、農林部や関係団体と連携し、相談窓口の拡大やサポート体制の充実を図ってまいりたいと考えます。
さらに、毎月の使用量の報告につきましては地方税法で規定されていることから、国に対して、更なる報告サイクルの緩和などを要望したいと思います。
この免税手続につきましては、令和6年度から全国一律でeLTAXによる電子申請が導入される予定のため、スマートフォンからの申請を可能にするなど、電子申請が不慣れな方にも使いやすいシステムとするよう、国に要望してまいります。
農業者の方にとって、より利用しやすい免税手続となるよう、県としてもしっかりと検討を進めてまいります。
次に、産業団地造成により企業局が得た資金の活用についてでございます。
議員御指摘のとおり、企業局の産業団地整備においては、他に適地がないなどの理由で、やむを得ず優良農地を開発することがございます。
その際、営農継続を希望する農業者には他の農地をあっせんするなど、農業振興への影響緩和措置を講じますが、事実、開発に伴い農地や農業者は減少してしまいます。
こうした中で県全体の農業振興を図る上では、保全すべき農地の基盤整備や集積・集約化による生産性向上、新たな担い手の確保などが重要であります。
基盤整備については、国の財源の配分、市町村の事業方針、地域の合意形成などとの兼ね合いもある中、県の予算がボトルネックにならないよう、令和5年度予算案を編成いたしました。
農地の集積・集約化、意欲ある担い手の確保などについても、貴重な農地を有効に活用して農業振興を図るために必要な額を確保したところであります。
企業局からの借入れ等による基金の創設については、過去に一般財源の不足への対応や新型コロナウイルス感染症対策推進基金の創設のため、地域整備事業会計から借入れを行っております。
また、平成25年度には地域整備事業会計において減資した資金を一般会計に繰入れ、県内の産業振興及び雇用機会の創出を図るため「埼玉県産業振興・雇用機会創出基金」を創設いたしました。
その際には農業の先端技術開発補助にも、この基金からの資金を活用した前例がございます。
議員御提案の農業振興のための基金の設置については、県の財政状況や企業会計の状況等を踏まえ、県の産業振興といった観点も含め総合的に検討したいと思います。
A 北島通次 公営企業管理者
企業局では、産業や地域の振興を図るため、地域整備事業会計を設け、産業団地の整備を進めているところでございます。
地域整備事業会計は、地方公営企業法を適用して設置された特別会計で、その経営は、自ら造成した産業団地を売却して得られた分譲収入により維持していくことを前提としております。
産業団地の整備では、用地買収や造成工事など多額の資金を必要としますが、国庫補助金のような特定財源もございませんので、あらかじめ十分な自己資金を確保しておくことが必要となります。
企業局といたしましては、御指摘の農林業の振興に関し、財政当局から一般会計の施策に対する貸付などの要請があった場合には、産業団地整備の状況や今後の見通し等を勘案の上、貸し付け可能な額や期間など、対応を検討してまいります。
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