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掲載日:2022年10月19日
Q 永瀬秀樹 議員(自民)
我が国の地域公共交通は大きな変革期を迎えています。少子高齢化、人口減少、コロナ禍によるニューノーマルへの対応等による乗客、利用者の減少による収入減に見舞われ、これまで民間事業者により支えられてきた地域公共交通は、このままでは維持できない可能性も出てきました。
一方、免許返納による移動弱者の増大等も想定される中、クオリティ・オブ・ライフ向上等の観点から、住民の移動の自由、モビリティの確保は行政で責務であり、持続可能な社会の形成や脱炭素社会の実現等のため、地域公共交通は公共が担保すべきとの議論が始まっています。既にヨーロッパでは地域公共交通は公共サービスと位置付け、ドイツ・フランス・オーストリアなど各国で統合的政策の下に運営されています。
こうした社会情勢の大きな変化を受けて、国は、2020年11月、地域公共交通活性化再生法を改正し、地域が自らデザインする地域の交通づくりに向け、都道府県も含めた全地方自治体に地域公共交通計画の策定を努力義務としました。令和6年度1,200件の策定目標に対し、令和4年7月末時点で758件の計画が策定され、コンパクト・アンド・ネットワークなまちづくりと連動した、地域が自らデザインする地域の持続可能な地域公共交通の形成に取り組んでいます。
こうした流れの中、今年3月、東京都は2040年のまちづくりを見据え、都全域にわたる持続可能な地域公共交通の形成に向け、東京における地域公共交通の基本方針を策定、神奈川県も7月に神奈川交通計画を改訂しました。群馬・栃木の各県も全県を対象区域とした地域公共交通計画を策定中です。
全国に目を向ければ、多くの都道府県がエリア全域にわたる地域公共交通計画、地域公共交通の基本方針、ビジョンでなどを策定、又は策定中であり、計画も基本方針も持たない本県は、もはや取り残された存在となりつつあり、このままでは地域公共交通政策に関する後進県になることが危惧されます。
本県においても、知事公約であるあと数マイルプロジェクトと地域公共交通の2つをテーマとした公共交通の利便性向上検討会議を設置し、平成30年の地域の足の活性化検討調査報告書等も活用し、現時点での主要な課題を整理し、解決に向けての方向性を示す報告書を取りまとめましたが、会議のメンバーは学識経験者3名と県職員の2名だけであり、国や交通事業者、市町村、民間団体などの参加はなく、広く知見を集めたとは言い難い構成です。
また、成果物はあくまで報告書であり、本県の地域公共交通の理念と将来像、国、交通事業者、市町村などステークホルダーとの役割分担、今後5年程度の具体的な取組等は示されず、今後の県の地域公共交通政策の羅針盤とはなり得ないと感じます。
こうしたことを踏まえ、県が社会の変化に的確に対応し、県の将来に資する地域公共交通政策が推進されることを願い、以下お聞きします。
1点目、令和3年2月定例会での私の質問に対し、「地域公共交通に関する法によらない計画、つまり基本方針やビジョンについては他県に事例もあるので、策定する意義や効果について研究してまいります」との答弁をいただきました。県が研究を続けている1年半の間に、全国の都道府県が続々と方針を策定しています。
今回の研究対象は46都道府県になりますが、県はそのうちの何県程度を研究したのか、どの程度研究したのか、効果と意義についてはどのような結果を得ているのか、具体的にお聞かせください。
また、研究はいつまで、どの程度まで続けるのか、県はどれぐらい、かつどのようなデータが集まれば計画策定の可否判断をしようと考えていますか、併せて教えてください。
2点目、県は、地域公共交通に関する基本方針もビジョンもないまま、あと数マイルプロジェクトという他県にはない壮大で野心的なプロジェクトを掲げています。これは、全国的に見て極めて特異な存在です。取組の根拠は向上会議の報告書のみです。これで莫大な費用と労力、年月のかかる事業が推進できるのでしょうか。
5か年計画に位置付けて県職員が事業推進に取り組んでいくとのことですが、県職員だけの取組で推進することは少々難しいと思います。あと数マイルプロジェクトの推進については、県民の理解を得るためにも、延伸元である東京都の理解や延伸先自治体との連携のためにも、基本方針を策定し、その中に位置付けて取り組んでいくことが必要と考えます。
県は、どのような取組を行っていこうと考えていますか、具体的にお聞かせください。
3点目、地域公共交通政策について、社会の大きな変化に対応しコンパクト・アンド・ネットワークのまちづくりによる今後の県土の発展、県民福祉の増進を考えれば、幸福度の向上という観点から描かれる将来の県のあるべき姿の実現に向けて、モビリティの核を担保し持続可能な地域公共交通を形成していくため、早期に県全域を対象にした地域公共交通基本方針あるいはビジョン等を策定し、ステークホルダー全員と方針を共有し、役割を明確化し、具体的な施策を示して取り組んでいくことが必要と考えますが、いかがでしょうか。
以上について、知事の御所見をお聞かせください。
A 大野元裕 知事
まず、今までの研究と、法によらない計画を作成する効果と意義、計画策定の可否判断についてでございます。
前回の質問で頂いた御指摘を踏まえ、法によらない計画に関して、全国の策定状況を調査をするとともに、先行する他県へのヒアリングも実施し、研究をさせていただきました。
該当する計画は、東京都や神奈川県など約20の都道府県で策定されており、それらを対象とし調査をしたところであります。
計画を策定する意義・効果につきましては、まず、地域公共交通に関して、県全体の将来像や目指すべき方向性を明確化できることが挙げられます。
また、計画があることで、県民や交通事業者、市町村など、多くのステークホルダーが、地域公共交通の将来像を具体的にイメージでき、目指すべき方向性を広く共有できるものと考えます。
さらに、中長期のビジョンを関係者間で共有することにより、各主体の取組の整合性とともに、一貫性、継続性を確保できる、という効果も期待されます。
このように、議員御指摘のとおり、法によらずとも県が計画を策定し、中長期の方向性を関係者に対し分かりやすい形で示すことには一定の意義や効果もあると考えます。
研究の目途や程度、計画策定の可否判断につきましては、県全域を対象にした地域公共交通の基本方針やビジョンの策定についての御質問と関係しておりますので、後ほど一括してお答えをいたします。
次に、基本方針を策定した上で、あと数マイルプロジェクトを位置付けることについてでございます。
「あと数マイルプロジェクト」は、鉄道の延伸、及び県内交通困難地域のアクセス向上を目指すものであり、将来の人口・需要や新たな技術の動向等を十分に把握した上で、公共交通の利便性向上策について、これまでの経緯等を踏まえつつ検討を進めることとしています。
そのため、令和2年6月に「公共交通の利便性向上検討会議」を設置し、個別の鉄道延伸事業とともに、その前提となる公共交通の利便性向上策について検討を行い、報告書を取りまとめたところであります。
報告書におきましては、「現状の把握」、「課題の整理」、「取組の方向性」の3点を示しており、その内容は実質的に、議員御指摘の、公共交通分野に関する基本方針としての役割を担っているところでございます。
県といたしましては、検討会議の報告書の内容を基本方針として捉え、「あと数マイルプロジェクト」をはじめ公共交通の利便性向上策を着実に推進してまいります。
次に、県全域を対象にした地域公共交通の基本方針やビジョンの策定についてでございます。
他県が策定しているビジョン等の中身を精査したところ、多くのビジョン等において、「理念や将来像」を掲げた上で、「現状や課題」、「取組の方向性」、「具体的な施策」について示すという共通点があることが分かりました。
これらの4つの共通点のうち、「公共交通の利便性向上検討会議」の報告書では3つ、つまり「現状や課題」、「取組の方向性」、「具体的な施策」についてお示しをしています。他方で、「理念や将来像」についての直接的な記述は薄いことを確認いたしました。
この報告書は私の公約をベースにそれを実現させるための過程で策定したものであり、実質的には県民にお約束した公約が理念に相当するものと考えます。
しかし、「理念」から「具体的な施策」までを一括して取りまとめたものではないことは事実であります。
御指摘のとおり、例がないほど壮大で野心的であればこそ、様々なステークホルダーとの調整を前提とし、地域ごとの要件を勘案しながら、計画作りに慎重さを入れていくことが必要です。 そのため、他県の例も参考にしながらも、県としての「理念や将来像」を中心に更に研究を進め、一定の成果が得られた段階で、どのような形式にまとめていくかを含め、判断してまいりたいと考えています。
再Q 永瀬秀樹 議員(自民)
大変様々な研究を地道に続けていただいたということでいろいろなことが分かったと思いますが、私がこの質問を行っている趣旨というのは、非常に今社会が大きな変革を迎える中で、社会を支える基盤である地域公共交通というものも、しっかりと時代に変化に的確に対応して将来を見据えて形成していかなければいけないという考えの中で、選択肢として2つあるというふうに考えられると思っています。
1つは、国や世界で行われているような、まず大きな基本理念や方針といったものをしっかりと考えの下に調べて、それを全体が共有して取り組んでいくというやり方。そして、もう1つは、そうした大きな方針は定めずとも、個別の課題に対しての具体的な対策を立てながら進めていくと。
こういう考え方であろうかというふうに思っておりますが、現在、法による計画まで含めますと、全国のほぼ、非常に多くの自治体が都道府県レベルでですね、自治体がこの基本理念やビジョンあるいは計画を定めて、この地域公共交通の再編に取り組んでいこうとこういうような実態があるというふうに理解をしております。埼玉県は、そういった意味では極めて少ない、本当に数少ない自治体の一つであります。
一方ですね、孤高を保つという考え方もありますので、ある意味そういったことによらずに、大きな基本理念やビジョン、方針は立てずにこの地域公共交通政策に乗り出していく、取り組んでいくということもありですから、しかし、今の答弁をお聞きした中で、非常に取組をしていきますという方向性が、私としては県は抱いたというふうな感覚の聞き取り方をいたしましたけれども、まず、お聞きしたいのは、今後、埼玉県としては地域公共交通政策についての基本方針やビジョン、これを策定する方向で進んでいくのだということでよろしいのでしょうかということを確認の意味でお聞きしたいと思います。
もう一つ、とはいえですね、何事にもやはり時間というものは大切でありますから、必要な判断に足る材料が集まった段階で、これを策定に向けて具体的に進めますという御答弁だったと思いますけれども、どれぐらいの時間をかけてそのことを判断しようと考えているのか。時間的な概念というのは非常に大切だというふうに思っておりますので、その策定に向かうために必要と県が考えている時間、これが半年なのか、1年なのか、あるいは2年なのか、このことについて県が現在どういうふうに考えているかということをお聞きしたいというふうに思います。
再A 大野元裕 知事
再質問に関しましては、地域公共交通計画を県として策定するのか、またその場合には、時間軸と言いますか、どのぐらいでやるのか、と、この2点であったと理解をしております。
先ほどの、すみません、私の答弁分かりにくかったのかもしれませんが、議員の御指摘を受けて、様々な他の地方公共団体の状況を調査をさせていただきました。その結果、それぞれの共通のところは4つの要素があるということで、既に3つは報告書の中でカバーをされていると、そして今後、検討会議の報告を基本方針として捉え、カバーされているんだけれども薄い理念やビジョンを中心に検討するという御答弁をさせていただきました。
これらは法による計画を含めて、現在、数多くの自治体において過剰に計画が策定をされており、総合的な県としての全体計画がある中で、計画を作ること自体が目的化してはならない、という片っぽの発想と、そしてもう1つは、それぞれの、私もしっかりとしたビジョンを共有していただくことの利点というのは、すでに御答弁させていただいているとおりでございますので、報告書がカバーをしていることに対して、理念やビジョンを付け加えることによって、それで十分であるかどうかということを検討させていただく、と申し上げたものでございますので、地域公共交通計画という形で他の自治体と同様にゼロから作るという状況ではございませんので、埼玉県といたしましては、先ほど申し上げたとおり、いかにビジョン等を加えていくかということを検討させていただく、と申し上げてございますので、地域公共交通計画の策定ありきという検討には、現時点では考えておりません。
すみません、公共交通計画ありきという形では考えておりませんので、期間自体を明示することはできません。
再々Q 永瀬秀樹 議員(自民)
ただ今の知事の答弁の中で、埼玉県は地域公共交通計画については策定をする考えではないと。現在ある報告書に足りないと思われる基本理念や、そうしたものを加えるかどうかの判断をされるという御答弁でしたけれども、私がもともと聞いておりますのは、地域公共交通計画について尋ねているわけではございませんので、地域公共交通の未来を作るに対して必要と思われる基本方針やビジョン、こういったものの策定が必要ではないかということをそもそも問いている中で、ただ今の答弁ですと、地域公共交通計画というもの県が限定して捉えて考えているふうというふうに受け取ってしまいますので、あくまで法による地域公共交通計画と、法によらないその都道府県の定める公共交通の基本方針やビジョンといったものは全く別物でありますから、その点についてどのように考えているかということをもう一度確認したいということと、答弁の先ほどの中では、その法によらない埼玉県の今後の地域公共交通の方針、理念をまとめたビジョンといったものは、策定する方向であるというふうにも受け止められましたので、その辺をもう一度確認させていただきたいと思います。
再々A 大野元裕 知事
御質問は地域公共交通計画の策定に至らないとしても理念やビジョンを策定するのかというのが御質問だったというふうに理解をさせていただいております。
先ほど、申し上げましたが、いわゆる理念やビジョンに先ほど申し上げた、4つの構成要素のうちの理念やビジョンに当たるであろうものは私の公約でございました。
ただその公約だけでは、全体像として示すには、不十分もしくはその専門家の方の御意見が入っていますので、やはりそこで再度お示しをするという必要が私もあろうと思っておりますので、御指摘のとおり、地域公共交通計画が念頭にあるわけではございませんけれども、しかし、ビジョンあるいは、皆様に対する柱は示すという意味でビジョン、更には理念について、今後付け加えていく方向で専門家の方々の御意見も伺いながら、策定に努めたいと考えております。
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