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掲載日:2024年2月8日
令和5年度研究課題(温暖化対策担当 R5~R7 埼玉県内における暑熱分野の適応策の普及啓発手法に関する研究)
(温暖化対策担当:大和、嶋田、武藤、河野)
埼玉県では気候変動等の影響で気温上昇が続いており、特に夏季の暑さが厳しくなっている。今後も気候変動の影響で夏の暑さは厳しくなることが予想されているため、暑熱分野の適応策として熱中症対策を考えていく必要がある。
そこで、令和2年度から4年度に自主研究「埼玉県における高温の出現状況の統計的解析及びモニタリング技術の開発」及び、環境省事業「国民参加による気候変動情報収集・分析委託業務」において、暑熱環境のモニタリング技術の開発のため、暑さ指数を観測可能かつインターネットでデータ回収できるIoT暑さ指数計の開発を行い、屋外の暑熱環境のモニタリング体制の構築を行った。さらに埼玉県気候変動適応センターのウェブサイトで暑さ指数の情報の発信を行い、屋内の温湿度観測及び高齢者の熱中症対策についての調査も実施した。
しかし、これらの暑熱分野の適応策は、県民へ十分に周知や普及を行えていない現状があります。そこで、気候変動適応セ ンターの活動の一環として、暑熱分野の適応策に必要な情報の整備を継続して実施しつつ、効果的な県民(主に小中高校生及び高齢者)向けの情報発信及び普及啓発手法の検討を行うことを目的とした。
令和5年度研究審査会コメント
- 暑さ指数計の政策等、重要な課題が取り組まれています。ただ、熱中症者数が増えている大きな理由の一つに、年金生活になり、節約を迫られるということがあります。このようなことを明確に示すことは、自然科学的なものとは異なり、様々な工夫が必要です。今後、このようなことに対する研究の必要性は増加します。難しい取り組みになりそうですが、中心的な課題に据えて取り組んでみてはどうでしょう。すぐに解決できる解は出てこないかもしれませんが、得られるものは大きいと思います。
- 近年、全世界的に平均気温が上昇し続ける中で、埼玉県の高気温地域の説明とともに、熱中症リスク予測にも対応する研究であり、重要であると感じた。県立高校との連携など、若い世代の参加も企画されているのも評価に値する。
- 科学的知見に基づく暑熱健康被害回避のためのアクションの誘導については、あの手この手を試し経験を蓄積する必要があると思います。その観点で県立高校との連携の事例などは大事と考えます。そこで得られた経験の蓄積は、埼玉県にとどめず、広く共有頂くことが望ましいと考えます。
- 行政施策へ貢献する有意義な研究である。情報を得た際、屋内の対策はエアコンをつけることに尽きるが、屋外で対策をとるのは難しい場合もあると考えられる(例えばスポーツにおける試合中など)。
- 先行研究での県内多点計測とそのデータ公開手法など、大変新規性が高く、さらに普及啓発のために、年代別の対応とリスクマップ作成を最終目標とされている点など、貢献度も高いことが予想され、期待される研究計画となっている。
- 提案されたIoTは、暑熱リスクのある室外活動を制限することに主眼が置かれている印象で、それには有効な対策となると考えるが、室外の気温(あるいはWBGT)と室内の温度とはイコールではないのは自明なので、室内環境下での暑熱ばく露に対する対策としてどこまで有効かが気になる。高齢者(室内ばく露)に関する対策は、きわめて定性的・情緒的な印象だったので、IoT活用をそちらにも発展させてほしい。