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掲載日:2023年1月11日
環境科学国際センター研究課題(大気環境担当/H30~R1)
人為起源粒子(PM1)との並行測定によるPM2.5長期通年観測データの解析
(大気環境担当:米持、佐坂、長谷川、野尻/H30~R1)
当センターでは、2000年から週単位のPM2.5の通年測定を継続してきました。また2005年からはこれにPM1の並行測定を行ってきました。年平均濃度は緩やかな低下が見られ、近年ではPM2.5は環境基準値を下回っています。この間にディーゼル車の運行規制や東日本大震災や原発事故を契機とする発電形態の変化が生じています。また、近年では越境大気汚染による影響も顕在化するなど発生源にも変化が見られています。本課題では、これらの変化を、主として元素成分から明らかにし、20年間のPM2.5モニタリングの総括を行います。
令和2年度第2回研究審査会コメント
研究課題
人為起源粒子(PM1)との並行測定によるPM2.5長期通年観測データの解析
研究審査会コメント
- 本研究は、これまで長期間にわたって採取されてきたPM1やPM2.5 のサンプルの元素分析を行って、社会現象との関係を明らかにした研究です。埼玉県は東京の北に位置し、海風や南からの季節風下では、東京起源の粒子の大きな影響を受けます。そのため、その影響の把握は、県の様々な施策を考える上でも極めて重要な課題です。また、行われている研究は全国でも極めて高いレベルにあります。
- 本研究の成果では、原発事故の後の石油由来のバナジウム濃度の増加や、中国由来と考えられる冬季の石炭由来の元素の上昇など、発電源に起因する影響が明瞭に得られており、日本のエネルギー政策を考えていく上でも重要な結果が得られています。
- 20年にもわたるPM2.5の長期観測結果は希少価値の高いデータであり、またPM1.0のデータも併せて詳細な分析を行うことで、社会変化の影響も考察し証拠とともに説明できたことは十分目標を達成したといえます。
- 配布資料が丁寧に作られていたため、内容を把握しやすかったです。研究業績も着実にあげており、順調に進んでいます。得られた成果を出前講座や環境学習において県民に知らせて、役立ててもらいたいです。
- 長期観測から何が見いだせるか、今後も丁寧な検討を継続頂きたいです。一方、観測から示される水準のPM2.5・PM1の濃度が人体や生態系に及ぼす影響についても、最新の知見を併せて説明していくことが、観測・解析の役割を明確化していくうえで重要ではないかと考えます。
- 全国的に観測結果の少ないPM1とPM2.5の対比を行う点は新規性も高く、かつ長期的データでの有用な濃度変化の傾向が得られています。埼玉県は既にPM2.5の環境基準もほぼ満たしているところではあるが、将来の発電方法の変化に伴う大気への影響も予測ができる可能性を示しており、今後の研究も期待できます。