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掲載日:2024年10月24日
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【理事長の吉田進さん】
埼玉県の約4分の1の面積をもつ秩父地域は、その約8割が森林です。これらの森林は前世代の人々の苦労によって維持されてきましたが、林業従事者の減少や財源の問題等により、森林の荒廃が進みつつありました。また、設立当時、大滝地域では赤字経営だった木炭工場の担い手や抜根処理の担い手に困っていたのです。そこで、「これらの問題を解決し森林保全をしよう」と大滝地域の住民や森林経営者などが集まり、当法人が平成13年4月に設立されました。
生態系の保全や水資源の確保、二酸化炭素の削減など解決しなければならない環境問題はたくさんありますが、まずは私たちが日頃生活している荒川流域の環境づくりに貢献したいと立ち上がったのが、私の父と当時の大滝村の前村長でした。そんな父の姿を近くで見ていて私も協力したいと思いました。平成13年4月の設立当初から理事として参加しており、現在は、思いを継いで二代目理事長として頑張っています。
【自然豊かな秩父地域】
現在は、荒川ビジョン推進協議会の事務局がメインの活動になっています。荒川ビジョン推進協議会は、荒川流域の安定化・上下流交流等の推進を目的として発足し、上下流交流のための5カ年計画の策定や環境整備活動を行っています。
また、荒川流域や秩父地域を守るためにはどうしたらよいか調査研究をしており、最も重要なテーマは人口問題であると考えています。秩父地域では人口減少が進んでいますが、”一定の人口”がいなければ秩父地域を守り続けることはできません。秩父地域を守るためには、”最低でもどれだけの人口が必要なのか”を明らかにするために、今後、様々な職種の人たちと意見交換する機会をつくりたいと考えています。
荒川ビジョン推進協議会の事務局を務めて13年目に入りました。荒川流域内の上流・中流・下流では、人口や文化、歴史に大きな違いがあり、とりまとめには大変な思いをしました。だからこそ、多くのかたの意見を聞き、協力を得ながら進めることを大切にしています。わからないことはとことん聞いて解決します。学びが多くて楽しいです。
また、荒川流域では約1,000万人の人々が生活をしており、洪水があった場合には多くの人が被害に遭ってしまいます。上流である秩父地域の安全を守ることが中流・下流の安全にもつながっていると考えています。このような”世のため人のため”といった信念と秩父地域への”地元愛”が活動の原動力となっています。
荒川流域治水や気候変動、ゼロカーボン社会に地域住民が対応していけるよう情報を提供していくことが当法人としての役目だと思っています。荒川ビジョン推進協議会では例年講演会を開催しており、令和6年度には熊谷地方気象台の調査官のかたをお招きし「気候変動」をテーマにご講演をいただきました。引き続き、「秩父地域を守り続けるための一定の人口とは」「荒川流域を守り続けるための気候変動への対応策」「ゼロカーボン社会に向けての秩父地域の役目」などといったテーマについて調査研究し、情報発信していきたいと考えています。
社会、行政、制度、人口など私たちをとりまく環境は、日々目まぐるしく変化しており、そんな中でも安心・安全な生活ができることを人々は望んでいます。その人たちのために、NPO法人が役に立てることはたくさんあると信じています。新たな道を切り拓くことは苦労が伴い簡単にできることではありませんが、心に秘めたことを是非、行動に移してほしいと願っています。
【インタビューに応じる吉田理事長】
[取材日:2024年8月9日]
令和6年7月27日(土曜日)に開催された「秩父4ダム探検隊が往く!」に運営スタッフとして参加させていただきました。
このイベントは、秩父地域にある4つのコンクリートダムの概要や役割を知っていただくため、荒川ビジョン推進協議会と秩父4ダム連携検討会が主催しているものです。
秩父地域では、昭和36年に二瀬ダムが完成し、次いで平成11年に浦山ダム、平成15年に合角ダム、平成20年に滝沢ダムができました。これらダムの役割は、洪水調節、利水補給及び流水の正常な機能の維持、発電です。
私たちにとって必要不可欠な「水」について考える良い機会となりそうで、とても楽しみでした。
イベント当日の受付、昼食費の集金、資料の配布、各ダムにおける参加者の安全管理などを体験させていただきました。
スタッフとして9時20分頃に荒川ダム総合管理所に集合し、他のスタッフのかたと一緒に順次到着する参加者の受付をするとともに、資料の配布、会議室までの誘導のお手伝いをしました。参加者は約40名と大盛況のツアーとなり、なかには遠方からお越しいただいたかたもいました。
【当センター職員が受付をする様子】
参加者が全員集合すると、全体説明が行われ、スタッフの紹介や「水」と「ダム」についての説明がありました。全体説明の後、4ダムの周遊がスタートしました。
【全体説明会の様子】
まず浦山ダムを見学しました。浦山ダムの高さは156mで40階建てビルに相当します。重力式コンクリートダムでは全国2位の高さを誇り、ダムから見える秩父の景色は圧巻でした。秩父さくら湖を眺めながら、清水バイパス(濁りの少ない水を放流するための設備)や選択取水設備(下流に流す水を水温や濁り等の状況により、良い条件の水を選択して流せるようにできる設備)の仕組みを学びました。
【秩父さくら湖】
【清水バイパスの説明の様子】
エレベーターで132mほど降下し、ダムの中に入りました。ダムの内部通路は、外気温が30℃を超える夏の日でも約16℃ととても涼しかったです。
【浦山ダムの内部通路】
内部通路を抜けてダムの下流広場に移動すると、そびえ立つコンクリートの壁を間近で見ることができ、浦山ダムの大きさを改めて実感しました。参加者が笑顔で記念撮影をしている様子がうかがえました。
【浦山ダムのコンクリートの壁】
浦山ダムで昼食(ダムカレー)をとった後は、バスで二瀬ダムに移動しました。
二瀬ダムは、埼玉県内最初の多目的ダムで、秩父4ダムの中では最も歴史があります。また、秩父4ダムのうち唯一の重力式アーチコンクリートダムということもあり、最初に見学した浦山ダムとの違いを見ることができました。
【二瀬ダム】
3か所目に見学した滝沢ダムは、秩父多摩甲斐国立公園内に位置しており、奥秩父の大自然との調和が印象的でした。道中でサルの親子と遭遇したり、迫力のあるループ橋(雷電廿六木橋)を通れたりと観光スポットとしての楽しみもありました。
特別に「非常用洪水吐き」を覗くことができ、参加者は目をキラキラさせながら見学していました。
【滝沢ダムを見学する様子】
【滝沢ダムの非常用洪水吐きゲートを見学する様子】
最後の見学場所である合角ダムでは、「常用洪水吐」から放流している様子を真上から見ることができました。また、管理棟には模型が置いてあり、参加者は模型を動かしながらダムの構造を学んでいました。
【合角ダムの常用洪水吐から放流している様子】
スタッフの皆さんが丁寧に説明をしてくださり、それぞれのダムについて理解を深めながら参加することができました。参加者は、初めて見る設備にワクワクしている様子であり、終始笑顔が見られました。スタッフの皆さんの熱い思いが参加者の「興味」や「笑顔」につながっていると思いました。また、こういった参加者の様子もスタッフのやりがいになっているのだと実感しました。
イベントに参加してダムの役割を学んだことで、今後どのように水を使用していくべきか改めて考えるきっかけになりました。良い思い出になるだけでなく、何かを考え直すきっかけを与えられる活動はとても素晴らしいと感じました。地域活動への参加は、多くの人たちとの交流が生まれ、新たな楽しみが見つかると思います。地域の活性化につながる地域活動へ参加し、秩父地域を盛り上げていきましょう。
[体験日:2024年7月27日]
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