With You さいたま > センターの概要 > 広報紙 > With You さいたま Vol.59(令和元年7月) > 特集 メディアとジェンダー
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掲載日:2019年7月4日
近年、テレビCMやインターネット動画広告で描かれる男女像や家族像が、SNSなどを通じて批判される事例が相次いでいます。わたしたちは日々メディアを通して、多くの情報を得ると同時に、様々なメッセージを受け取っています。人々の物の見方や考え方に大きな影響があるメディアの表現。今回は、主に広告における男女や家族の描かれ方から、多様性を尊重する表現のあり方について考えます。
みなさんは、テレビCMやPR動画を観て、男女や家族の描かれ方に違和感を持った経験はありませんか。
近年、企業CMや自治体のPR動画に批判が殺到し、公開中止や謝罪に追い込まれる事例が相次いでいます。
例えば、職場の男性に「(職場の華として)需要が違う」と容姿を揶揄される女性を描いたファッションビルの動画。出張先の店で出会う女性たちが性的な意味にもとれる言葉で語りかけるビール系飲料の動画。養殖ウナギを擬人化した水着の少女を飼育する地方自治体のPR動画。1人で赤ちゃんの世話をする母親の「ワンオペ育児」を「宝物の時間」として伝える企業CMには、賛否両論がありました。
このような広告は、多くの場合、女性の描き方や、家事・育児の描き方が批判の要因になっています。
女性の価値を容姿や年齢で判断したり、女性を性的対象にしたりする性差別。「家事・育児は女、男は仕事」といった性別役割の固定化。女性が直面している苦しい現実の美化。このような広告から発せられるメッセージに対して違和感や反感を持った受け手から、抗議の声があがっているのです。
時代を遡ると、1975年に「わたし作る人、ボク食べる人」という即席麺のテレビCMが放映されました。このCMは「男女の役割を固定化する」という女性団体の抗議で放映中止になりました。それから40年以上が経過した現在、共働き世帯や働く女性の増加など、社会は大きく変わりました。性差別や偏見に反対する意識も高まっています。しかし、メディアからは、現在でも固定的性別役割や性差別の表現が発信され続けています。
批判された広告は、発表前に問題視されることはなかったのでしょうか。
ここで、広告主である企業や自治体の意思決定の場における女性の参画状況を見てみましょう。厚生労働省の調査によると、民間企業における役職者に占める女性の割合は、部長級が6.3%、課長級が10.9%、係長級が18.4%です(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」平成29年)。地方自治体における課長相当職以上に占める女性の割合は、都道府県で9.0%、市町村で14.1%です(内閣府「地方公共団体における男女共同参画社会の形成又は女性に関する施策の推進状況」平成29年)。これらの割合をみると、企業や自治体で意思決定の場にいる女性が、まだまだ少ないことがわかります。
さらに、放送局や新聞社などメディアで働く女性の参画状況を見てみます。各種メディアで管理職に占める女性の割合は、民間放送各社で14.3%、新聞社・通信社で6.1%です。新聞社・通信社の記者に占める女性の割合は19.4%です。メディア業界においても意思決定の場に参画する女性は少なく、男性に偏っています(下記グラフ参照)。
広告を制作する過程に、もっと多くの女性が参画すれば、発信前に受け手が不快感や違和感を覚えるかもしれないとチェックする機能が増えるのではないでしょうか。
社会の価値観や意識が変わり、家族のあり方や性別をめぐる考え方は多様化しています。このような社会に向けた広告の表現には、多様性を前提にした配慮が必要です。広告を制作する者にも多様な視点が求められます。
わたしたちは日々、テレビやインターネット等の情報に接しています。CMに限らず、テレビ番組や新聞記事などメディアが発信する表現は、物の見方や価値観に大きな影響を与えます。わたしたちは、それらを無意識のうちに取り込んでしまいます。メディアの中での男女の描かれ方について意識的になることが必要です。情報の受け手にはメディアが発信する情報を主体的に読み解く視点が必要なのです。
近年では、ステレオタイプ(固定的)な女性像に疑問を投げかける広告や、多様な男女像や家族像を模索する広告も増えています。例えば、米国の女性用品ブランドの動画広告「Like A Girl」。「女の子らしく走って」と大人に言うと、男女問わず、“なよなよと”動いたり、内股で走ったりする人が多いのですが、同じことを少女たちに言うと、全力で力強く走ります。この動画は、「女の子らしく」という言葉がいかにステレオタイプに捉えられているかを観る者に投げかけました。世界的に多くの共感を呼び、国際的な賞を受賞しています。
SNSが浸透した現代は、メディアの表現に違和感を覚えたら、人々は簡単に声をあげることができます。そしてその声は即座に広がり、同じように感じる人々とつながり、大きなうねりとなります。メディアの表現を読み解く視点は、社会を動かす力にもなります。わたしたち受け手が、違和感や不快感をそのままにせず、声に出していくことが多様性の時代に沿った表現を模索するきっかけになるのではないでしょうか。
男女を入れ替えて違和感はありませんか?
女性又は男性だけで企画・作成していませんか?
ステレオタイプ(固定的)な表現になっていませんか?
異なる性別、年代や立場で確認してみましょう。
(右チェックシート参照)
埼玉県では、男女共同参画の視点から考えて、どのような表現がなぜ問題なのか、そしてより適切に表現するにはどうしたらよいかを考える手がかりを提供することを目的として、この冊子を発行しています。
県の機関による広報を対象としていますが、県民、事業者、メディアの方々にもご活用いただきたいと考えます。
(冊子より一部抜粋)
表現ガイドはWEB上からダウンロードもできます。
詳しくは、男女共同参画の視点から考える表現ガイドのページをご覧ください。
発行・問合せ/埼玉県県民生活部男女共同参画課
電話/048-830-2921
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