With You さいたま > センターの概要 > 広報紙 > With You さいたま Vol.57(平成30年11月) > Women 現代の吟子たちに聞く 海老原夕美さん(弁護士)
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掲載日:2018年12月1日
第13回「さいたま輝き荻野吟子賞」の受賞者・弁護士の海老原夕美さんにお話をうかがいました。
私が社会に出た頃は女性が自立して生きることが難しい時代でした。大学卒業後、会社に勤めましたが、当時の女性の仕事は「お茶くみ」のような仕事ばかり。将来自立することを考えると長く働き続けることは難しいと思い、検事だった父の影響もあって司法試験の勉強を始めました。弁護士を目指したのは「人のためになる仕事は、教師か弁護士」という母の言葉があったからです。法廷ドラマ「ペリーメイスン」を見て、弁護士への憧れもありました。
私が弁護士になった頃、女性弁護士は全体の1割もいませんでした。女性の弁護士は「本当にちゃんと弁護してくれるのか」という依頼者の目を感じることもありました。それでも目の前の事件に真摯に取り組み続け、ある困難な事件で勝訴判決をもらった時、依頼者から「最初は頼りないと思ったけど、すごくよくやってくれた」と感謝されて、とても嬉しかったことを覚えています。
30年前に担当した刑事事件では、被告人の女性の調書に現実にはあり得ないことが書かれていました。それは出産に関する事柄で、出産経験のある私が担当になるまで、その明らかな誤りに気づく捜査官はいませんでした。結果的に、その女性は無罪となりましたが、司法関係者が男性だけだったら、この明らかな誤りに気付かず冤罪を生んでいたかもしれません。この事件で女性弁護士を含め、司法の場に多様な経験を持つ人がいることの重要性を痛感しました。
2008年に埼玉弁護士会で初の女性会長になりました。弁護士になった頃から、埼玉弁護士会の子どもの権利委員会を中心に、両性の平等委員会の創設など様々な委員会の活動に取り組んできたことが評価してもらえたものと思います。
DV被害者支援に力を入れるようになったのは、受任する離婚事件で夫からの暴力の問題が非常に多かったこと、そして女性への暴力は許しがたい人権侵害だと思ったからです。1995年には第4回世界女性会議(北京会議)に参加し、翌年から日本弁護士連合会(日弁連)の両性の平等委員会に参加するようになりました。そこでDV防止法の制定に向けて取り組んだのです。
これまで多くのDV被害女性の相談を受けてきました。依頼者の立場に立って話を聴きながら、将来は前を向いて歩いて欲しいという思いで、問題解決に向けた話をしています。夫からの暴力に悩み、初めは暗い顔をして事務所を訪れた女性たちが、問題が解決していくにつれて徐々に元気を取り戻し、最後には明るい顔つきに変わっていくのは嬉しいですね。DVが子どもに与える影響も深刻で、子どもへのケアに力を入れて取り組む必要があると感じています。
この他にも、子ども虐待防止や若年女性支援に取り組んできました。その根底には「弱いものいじめは許せない」という思いがあります。先輩の女性弁護士たちは女性の権利を訴え、大変な努力で社会を変えてきました。日弁連でも役員に女性枠を設けるなど、組織として変わりつつあります。女性が当たり前に男性と対等に生きられる社会をこれからも目指していきたいと思います。
弁護士。埼玉弁護士会初の女性会長、日本弁護士連合会副会長、両性の平等に関する委員会委員長を歴任。1982年の弁護士登録以来、女性も男性もともに活き活きと暮らしていける社会をめざして活動。DV被害者の支援に積極的に取り組み、DV防止法の制定を強く訴えた。その後も、代理人としてDV被害者の立場に寄り添った活動をしている。また、早くから子どもの権利の問題にも力を注ぎ、NPO法人「埼玉子どもを虐待から守る会」の会長として活動するほか、「子どもシェルター」の開設にも尽力した。
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