インタビュー・コラム
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掲載日:2024年7月12日
サカール 祥子(さかーる さちこ)さん
プロフィール
学生時代に、さいたま市の見沼福祉農園でボランティアとして活動。大学卒業後は障害者福祉施設に就職。国際結婚、出産を経て、見沼田んぼの農福連携のNPO法人で、農業体験イベントを企画・実行する事業に携わる。障害の有無や性別、年齢、国籍などに関わらずさまざまな人が活躍できる場を作りたい」という思いから、前職の障害福祉事業を行うNPO法人で知り合った女性2人と2021年3月に、合同会社十色を設立。
「畑はエンターテインメント」をテーマに、「さいたまを激辛の聖地に!」をキャッチコピーとし、世界各国の唐辛子の品種を栽培。唐辛子でSDGsを実現する、パワフルな女性です!
さいたま市在住、二児の母
「SAITAMA Smile Women ピッチ 2021」審査員特別賞
見沼田んぼを農業で活用していきたい
学生時代に、さいたま市の「見沼田んぼ」と呼ばれる農業地域で、見沼福祉農園のボランティアとして農地の保全活動としての農業や福祉にかかわり、様々な人たちと、何もないところから農園を作ることの楽しさや面白さを経験し、見沼田んぼとそこで行う農作業が好きになりました。大学卒業後は、障害福祉施設に就職しましたが、次第に障害の有無、性別、年齢、国籍などに関係なく、みんなで何かを作り出していきたいという思いが強くなりました。
その頃から、農業と福祉で何かできないかと考えるようになり、前職の障害福祉事業を行うNPO法人で、ともに農業体験事業を企画運営していた仲間に相談したところ共感してくれ、「見沼田んぼを活用しながら、様々な人が働ける場をつくりたい」という思いが一致したことをきっかけに、3人で起業することにしました。
なぜ唐辛子を選択?!
楽しいことをしたいという思いがあったのと、新規就農としては始めやすかったということがあります。見沼田んぼ周辺の農地は里芋栽培に向いているのですが、栽培のために広い土地が必要なこと、運ぶときに重いこと、ストックしておく場所を確保しなくてはいけないことなど、とにかく広い土地が必要で、新規就農でやるにはハードルが高く、里芋をやるのは大変だと思いました。
また、少量多品種栽培と呼ばれる、狭い土地でも収穫時期が異なる作物を栽培して1年中収穫できる方法も考えましたが、栽培する野菜の知識が必要になりますし、常にそれぞれの生育状況や収穫、出荷準備をしなくてはいけないため難しいと思いました。
様々な野菜を試す中で、唐辛子は辛いものだけでなく、辛くないものや形がかわいいものがあったりして面白いと思い、唐辛子に決めました。さらに、現在の日本での唐辛子栽培は小規模でありながら、需要がある野菜であることも分かり、本格的にやろうと思いました。
辛くない「ビキーニョ」、甘みもあって辛い「スパングルス」、茄子味噌炒めのピーマンの代わりになる「牛角トウガラシ」、香りと味のバランスが良い「プサジュエラ」・・・など、現在は0.7haの土地で約40種類の唐辛子を栽培しています。
唐辛子でSDGsを実現
唐辛子のほかにも小麦や大麦も栽培していますが、すべて有機栽培でやっています。これは、見沼田んぼの自然や生態系を守るためです。農薬は基本的には使いませんが、ヒトの体に有害な病気などが出てしまう恐れがある場合は、有機JAS規格が認定している薬を使うようにしています。
また、収穫の時期には近隣の障害者福祉施設に業務委託をしています。検品、袋詰め、納品まで行っていただき、誰もが働ける可能性を広げています。そして、周辺のNPOと協力して、環境のことを学べる取組もしています。農業体験を通じて、生き物観察をしたり、環境を守っていくにはどうしたらよいかを考えるきっかけづくりをしています。
農業体験やイベントを通じて、見沼田んぼに来てもらうことでまちと農業をつなぎ、多様な働き方ができるよう、今後も実現に向けて取り組んでいきます。
見沼田んぼ全体でイベントをやりたい!
昨年は、田んぼ体験や小麦の農業体験などのイベントで延べ2,000人ほどが来場しました。田んぼ体験は、主に親子での参加が多く、田植えと泥遊び、草取りと生き物観察、稲刈り、焚火と藁遊びの全4回を開催しています。このようなイベントを見沼田んぼ全体に広げていき、ゆくゆくは県内の観光の一つにもして、インバウンドを積極的にしていきたいとも考えています。
起業を考えている方へメッセージ
まずは一歩踏み出して、できることから始めてみてください。そして、やめずに続けることが大事です。失敗したところでやめてしまうと失敗ですが、やめない限り失敗ではありません。私も、唐辛子栽培で初年度は雑草だらけになりましたし、昨年は豪雨で畑が水に浸かり植えたばかりの苗がダメになったり、今年は苗の病気で上手に育たなかったりと毎年何かしらトラブルがあります。次はどうしようか、どう対策をすればいいのか、ということを毎回考えながら試行錯誤しています。イレギュラーなことがあるのは当たり前と思い、諦めずに続けていきましょう!