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掲載日:2023年8月22日

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第3章 損失補償について

収用裁決申請等の手引き・第1編第3章 損失補償について

土地収用法に基づく収用手続における損失補償の概略に関する説明です。

第3章 損失補償について

土地収用法上の損失補償は、大きく分けて二つです。

「収用又は使用による損失補償」と「測量、事業の廃止等による損失補償」です。

このほか、他の法律に基づき、土地収用法第94条第2項の規定による裁決申請をできる場合もあります。

これらを順に説明します。

第1 「収用又は使用による損失の補償」とは

土地を収用し、又は使用することにより、土地所有者及び関係人が受ける損失は、起業者が補償することになります。(法第68条)その主な内容は、次のとおりです。

1 起業者による損失の補償

起業者が補償しなければなりません。(法第68条)

2 個別払いの原則

損失の補償は、土地所有者及び関係人に対し各人別にしなければなりません(個別主義)。

ただし、各人別に見積もることが困難な場合には、補償は土地全体について一括して決定し、支払いは、権利者全員を被供託者とする供託による方法、または土地所有者(特定の被収用者)へ一括払いする方法(代位主義)があります。(法第69条)

3 損失の補償方法

収用委員会は、損失の補償額については、起業者、土地所有者、関係人及び準関係人が申し立てた範囲内で裁決します。(法第48条第3項)なお、準関係人とは、損失の補償の決定によって権利を害されるおそれのある者をいいます。(法第43条第2項)

損失の補償は、原則として、金銭で補償することになります。(法第70条)

例外として、替地の提供、耕地の造成、工事の代行による補償などがあります。(法82条など)

※準関係人制度の趣旨及び範囲など詳細については、「小澤道一著 土地収用法(上)〈(ぎょうせい)」第二次改訂版〉の559ページ以下など、参考書籍を参照してください。

4 補償金の額の算出基準

土地に係る補償金の額は、原則として近傍類地の取引価額等を考慮して算定した事業認定の告示の時における相当な価格に権利取得裁決の時までの「物価の変動に応ずる修正率」を乗じて得た額です。(法第71条、第72条)

また、それ以外の補償(土地に対する補償以外の補償)の金額は、明渡裁決の時の価格によって算定されます。(法第73条)

5 損失の補償を求めることのできる項目

補償の対象となる権利は、事業認定の告示以前から存在し(法第8条第3項ただし書)、裁決時にも存在しているものです。また、意見書によって請求又は要求をしなければならないものもあります(法87条)。

(1)土地又は土地に関する所有権以外の権利に対する損失の補償

  • ア 収用又は使用をしようとする土地又は土地に関する所有権以外の権利に対する損失の補償(法第71条、第72条)
    →土地所有者には土地の所有権に対して補償し、関係人には関係人が有する賃借権、地上権、抵当権等の権利に対して補償するものです。
  • イ 残地補償(法第74条第1項)
    →一団の土地の一部が収用された結果、残地の価値が減って損失が生じる場合等に、その損失に対して補償するものです。
    この残地補償のほか、残地に係る補償のもう一つの方法として、いわゆる「残地収用」があります。
    これは、残地を従来のとおり使用することが著しく困難となった場合であって、
    土地所有者が意見書で残地収用も請求し、かつ、収用委員会の裁決で認められた場合の方法です。(法第76条)
  • ウ 替地による補償(法第82条第2項、第4項)
  • エ 耕地の造成(法第83条第2項)
  • オ 宅地の造成(法第86条第2項)

(2)明渡しに伴う損失の補償

土地の明渡しなどに伴う損失の補償としては、以下のようなものがあります。

  • ア 移転料の補償(法第77条)
    収用又は使用をする土地に建物などの物件があるとき、その物件を他の場所に移転するための費用を補償するものです。
    なお、当該移転料の補償に係る見積金額より、当該移転すべき物件の取得に係る補償見積金額の方が少ない場合には、起業者の請求により裁決で当該物件の取得に係る補償が認められる場合があります。(法第79条)
  • イ 工事の費用の補償(いわゆる「みぞかき補償」)(法第75条)
    収用し、又は使用することによって、残地に通路、みぞ、垣などを作ったり、盛土や切土をする必要を生じたとき、これに要する費用を補償するものです。
  • ウ 収用物件の補償(法第80条)
  • エ 工事の代行による補償(法第84条第2項)
  • オ 移転の代行による補償(法第85条第2項)
  • カ 宅地の造成による補償(法第86条第2項)
  • キ その他通常受ける損失の補償(法第88条)
    土地を収用し、又は使用することによって損失を受ける営業上の利益、建物の賃貸料などを補償するものです。

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第2 「測量、事業の廃止等による損失補償」とは

この損失の補償は、事業の準備段階における行為による損失の補償、事業認定後の事業の廃止・変更等による損失の補償及び収用する土地又は使用する土地以外の土地に通路、みぞ、垣等の工作物を新設する必要が認められるときの損失補償(いわゆる「みぞかき補償」)をいい、裁決申請及び明渡裁決申立ての損失補償とは異なるものです。

この補償は損失を受けた者が起業者に請求し、起業者と損失を受けた者とが協議して起業者が補償するものですが、その協議が整わないときは、起業者又は損失を受けた者が収用委員会に裁決(収用裁決と区別して、一般に「補償裁決」といいます)を申請することができます。

1 補償の請求ができる者

  • (1) 測量、調査等によって損失を被った場合
    →土地所有者及び関係人に限定されず、現実に損失を受けた者となります。(法第91条)
  • (2) 事業の廃止又は変更等によって損失を被った場合
    →土地所有者及び関係人に限定されています。(法第92条)
  • (3) 収用又は使用をする土地以外の土地について、通路、みぞ、かき等の工作物の新設などの工事を必要とする場合
    →土地所有者・関係人に限定されませんが、公平の観点から補償の請求ができる者等は慎重に判断されます。(法第93条)

2 補償の請求ができる時期

測量、調査等による損失の補償及び事業の廃止又は変更等による損失補償の請求の期間は損失があったことを知った日から1年となっています。

また、収用し、又は使用する土地以外の土地についての工作物を新設する等の損失補償の請求期間は、事業に係る工事の完了の日から1年となっています。

これらの期間を過ぎると請求ができなくなります。(法第91条、第93条)

3 補償裁決申請の手続

この補償の裁決の申請をしようとする者は、次の事項を記載した裁決申請書を収用委員会に提出しなければなりません。(法第94条第3項)

  • (1) 裁決申請者の氏名及び住所
  • (2) 相手方の氏名及び住所
  • (3) 事業の種類
  • (4) 損失の事実(損失の発生の場所、時期をあわせて記載)
  • (5) 損失の補償の見積及びその内訳
  • (6) 協議の経過(協議が成立しない事情も記載)

これらの裁決申請書の様式例は、資料編の「資料1-3」のとおりですが、作成の際は収用委員会事務局にご確認ください。

4 手数料の納付

手数料の額については、前掲の第1編第2章の第6を参照の上、申請する前に、収用委員会事務局にご確認ください。

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第3 「その他の法律に基づく損失補償」の裁決申請とは

都市計画法、土地区画整理法などの法律では、それらの法律で定める事業に係る損失の補償について、おのおのの法律で定める場合にあっては、土地収用法第94条第2項に基づく裁決申請を収用委員会にできるものと定めてあります。

また、都市再開発法、生産緑地法などでは、おのおのの法律で定める場合にあっては、収用委員会に対して価額に関する裁決申請をできる旨定めがあります。

いずれの裁決申請も、おのおのの法律で定められている要件をみたす場合に限り、収用委員会に裁決を求めることができるとされていますので、裁決申請の前に収用委員会事務局にご確認ください。

なお、これらの裁決申請にあっては、裁決申請者が手数料を負担する必要があります。

これらの裁決申請書の様式例は、資料編の「資料1-4」のとおりですが、作成の際は、収用委員会事務局にご確認ください。

お問い合わせ

収用委員会事務局    

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 職員会館4階

ファックス:048-830-4945

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