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掲載日:2023年9月25日

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第4章 申請から裁決までの主な手続き

収用裁決申請等の手引き・第1編第4章 申請から裁決までの主な手続き

土地収用法に基づく収用裁決申請から裁決に至る間の収用委員会における諸手続に関する説明です。

第4章 申請から裁決までの主な手続き

この章は、申請から裁決までの間、収用委員会がどのようなことをするのか、起業者・土地所有者等はどのように関わりをもつことになるのかについて、事務の主な流れとその概要について説明します。

第1 申請・申立て

1 収用・使用の裁決申請書及びその添付書類(法第41条)

  • (1)裁決申請書及びその添付書類が提出されると、収用委員会は、これを収受し事件番号を付けます。
  • (2)裁決申請書等が、法又は規則の要件をみたし、条例で定められた金額に相当する手数料が納付されれば、収用委員会は申請を受理します。(規則第16条、第17条、規則別記様式10)
  • (3)(2)の要件を欠くときは、収用委員会は、期間を定めて欠陥の補正をするよう命令を出します。その欠陥を定められた期間内に補正すれば、受理します。また、当該期間内に欠陥の補正をしない場合には却下します。
    なお、却下されても、裁決申請ができる期間内であれば、起業者は、改めて申請をすることができます。
  • (4)収用・使用の裁決申請には所定の手数料が必要であるのは、前述のとおりです。

2 明渡裁決申立書及びその添付書類(法第47条の3第5項)

  • (1)明渡裁決申立書及びその添付書類が提出されると、収用委員会は、これを収受し、事件番号を付けます。(事件処理要領第2条)
  • (2)明渡裁決申立書等が、法又は規則で定められた要件をみたしていれば、収用委員会はそれらの書類を受理します。法又は規則で定められた要件をみたしていなければ、収用委員会は期間を定めて欠陥の補正命令を出しますので、申し立てた者は当該期間内に補正をしなければなりません。
  • (3)明渡裁決申立てには、手数料はかかりません。

第2 公告、縦覧、報告等

市町村長は、収用委員会から書類の送付を受けると、裁決の申請があった旨及び収用し、又は使用しようとする土地の所在、地番及び地目等を公告し、公告の日から2週間、その書類を公衆の縦覧に供します。

公告等をする趣旨は、物件についてのみ権利を有する関係人(例えば、借家人)、準関係人等の収用委員会からの通知の相手方とならない権利者へ知らせることにより、意見書提出の機会を与えるとともに、裁決手続開始の決定と登記の予告をするものです。

市町村長は公告したときは、公告の日を収用委員会に報告しなければならないことになっています。(法第42条、法第47条の4)

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第3 意見書

1 提出することができる者

市町村長の公告があると、土地所有者、関係人、準関係人は、2週間の縦覧期間内に収用委員会に意見書を提出することができます。

  • (1)土地所有者及び関係人は、縦覧期間中に提出した意見書に記載した事項の外は、損失の補償に関する事項を除き、審理において新たに意見書を提出したり、口頭で意見を述べたりすることが、原則としてできなくなります。(法第43条第1項、法第63条第1項)
  • (2)準関係人(公告があった土地及びこれに関する権利について仮処分をした者その他損失の補償の決定によって権利を害されるおそれのある者)は、自己の権利が影響を受ける限度で損失の補償に関する意見書を収用委員会に提出することができます。(法第43条第2項)

2 意見書提出の効果

  • (1)意見書の提出者に対しては、その者が裁決申請書の添付書類に記載されていなくても、審理の期日及び場所について通知が行われます。(法第46条第2項)
  • (2)意見書が損失の補償の額に関するものであるときは、収用委員会は、損失の補償についてはその額を超えて裁決することができなくなります。(法第48条第3項)
  • (3)意見書を提出した土地所有者又は関係人は、当該意見書に記載した事項については、これを補充し、説明するために、審理においても意見書を提出し、また口頭で意見を述べることができます。(法第63条第1項)
  • (4)意見書又は口頭による意見の内容を証明するために、収用委員会に対して資料の提出、参考人の審問、鑑定命令又は実地調査等を申し立てることができます。(法第63条第3項)

なお、これらの申立てを認めるかどうかは、収用委員会の裁量の範囲であると解されています。

第4 裁決手続開始の決定、公告及び登記

収用委員会は、縦覧期間が終了すると、遅滞なく裁決手続開始の決定をします。

この裁決手続開始決定は、裁決手続における土地所有者等の権利者を固定する処分です。この決定は、公告により一般に知らせるとともに、起業者は収用しようとする土地の分筆等の登記を代位して申請することができるようになります。また、裁決手続開始の登記がされますと、この決定書に記載された権利者は、その権利を処分することが事実上できなくなります。

1 裁決手続開始決定書

収用委員会は、申請書の添付書類に記載されているところに従って、裁決手続の開始を決定し、裁決手続開始決定書を作成します。

この裁決手続開始決定書は、裁決手続開始の登記の登記原因証書となり、また、起業者がする分筆登記等の代位登記(前提登記)における登記原因を証する情報(不動産登記法第61条)にもなります。(法第45条の2)

2 公告・通知

収用委員会は、裁決手続開始の決定をすると、そのことを(埼玉県収用委員会の場合は埼玉県報にて)公告し、起業者に対して、裁決手続開始を決定した旨の通知をします。

3 起業者による登記(代位登記、前提登記)

収用委員会は、裁決手続開始の決定の登記を嘱託することになりますが、裁決手続開始決定書の記載事項と登記簿上の表示等が異なる場合、この登記の嘱託ができません。

このため、起業者は、収用委員会から交付を受けた裁決手続開始決定書の正本を用いて土地所有者又は関係人に代位して必要な登記の手続を行なう必要があります。(昭和43年建設省計画局長通達参照)

起業者が、土地所有者又は関係人に代位して登記の手続をするのは、次の場合です。

  • (1) 裁決手続開始決定書の土地(収用しようとする土地)の表示が一筆の土地の一部であるとき(分筆登記)
  • (2) 登記簿上の地積と実測地積に差異があるとき(地積更正登記)
  • (3) 裁決手続開始決定書の土地所有者又は関係人(差押債権者及び仮差押債権者を除く)の表示が登記簿の表示と符合しないとき、又はこれらの権利者が登記名義人である権利者から権利を承継したものであるとき(土地所有者表示更正登記、相続登記等)
  • (4) 未登記の地上権者等の権利に対して、裁決手続開始の決定があったとき(地上権の設定登記等)
  • (5) その他、裁決手続開始決定書に表示された土地所有者又は関係人の住所等が登記簿上の表示と符合しないとき等(土地所有者表示変更登記等)

4 裁決手続開始に関する登記とその効果

(1)裁決手続開始の登記の嘱託
収用委員会は、裁決手続開始の決定をしたときは、そのことを公告し、申請に係る土地及びその土地に関する権利に対し、収用又は使用の裁決手続開始の登記を嘱託します。(法第45条の2)

(2)裁決手続開始の登記の効果

  • ア 処分制限
    裁決手続開始の登記があると、次のような権利の変動等は、起業者に対抗することができなくなります。(法第45条の3第1項)
    • (1) 当該登記に係る権利の承継
    • (2) 当該登記に係る権利に対する仮登記又は買戻特約上の権利
    • (3) 当該登記に係る権利に対する差押え、仮差押え又は仮処分
  • イ 損失補償請求権の処分禁止
    裁決手続開始の登記前には、土地が収用され、又は使用されることによる損失の補償を請求する権利は、差押え、仮差押えの執行、譲渡等の処分ができないことになっています。(法第45条の3第2項)

(3)裁決手続開始の登記の抹消

収用委員会は、次に掲げる場合、裁決手続開始の登記の抹消登記を嘱託することになります。(昭和44年建設省計画局長通達)

  • ア 裁決手続開始の決定が取り消されたものとみなされた場合(法第29条第2項、法第100条)
  • イ 使用の権利取得裁決に基づき起業者が当該権利を取得した場合
  • ウ 裁決手続開始の決定が失効した場合
  • エ 裁決手続開始の決定の取消しがあった場合
  • オ 任意売買の成立等により、裁決申請が取下げられた場合

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第5 審理

収用委員会は、裁決申請書等の写しの縦覧期間が経過した後、遅滞なく審理を開始します。(法第46条第1項)

審理は、収用委員会が指定した場所、日時に、起業者及び土地所有者、関係人等が出席し、原則として公開により行われます。ただし、審理の公正が害されるおそれがあるとき、その他公益上必要があると認めるときは、非公開とすることができます。(法第62条)

裁決を行うには、必ず審理を経なければならないことと解されています。(法第46条第1項)

1 審理の開始の通知

収用委員会は、審理を開始するときは、次の者に、あらかじめ書面により通知をします。

  • (1) 起業者
  • (2) 裁決申請書に記載された土地所有者及び関係人
  • (3) 法第43条の規定により意見書を提出した者
  • (4) 法第87条ただし書きの規定により意見書を提出した者

なお、土地所有者等の住所、居所が確知することができない場合又は民事訴訟法に規定する特別送達によることができなかった場合には、公示送達による通知をします。(令第4条、第5条)

2 審理の場での意見を述べる権利等

起業者、土地所有者及び関係人は、裁決申請書及びその添付書類又は法第43条第1項の規定によって提出し、受理された意見書に記載された事項については、これを説明し、補充する場合に限り、収用委員会の審理において意見書を提出し、口頭で意見を述べることができます。

また、損失の補償に関する事項については、審理において、新たに意見書を提出し、口頭で意見を述べることができます。(法第63条第1項及び第2項)

なお、審理の期日に欠席しても意見書の提出があれば、これを陳述したものとして扱われます。
証拠申立書や意見書の様式は任意ですが、資料編に記載の様式例を参考に作成してください。

3 資料提出・参考人への審問等へ求釈明

起業者、土地所有者、関係人は、証拠の提出、審問、調査、参考人の審問等を申立てることができます(法第63条第4項)。

4 釈明処分

収用委員会は、これらの申立てが相当であると認めるとき、又は審理、調査のため必要があると認めるときは、次の処分をすることができます。(法第65条第1項)

  • ア 起業者、土地所有者若しくは関係人又は参考人に出頭を命じて審問し、又は意見書若しくは資料の提出を命じること。
  • イ 鑑定人に出頭を命じて鑑定をさせること。
  • ウ 現地について土地又は物件を調査すること。

5 和解

  • (1)和解の勧告
    収用委員会は、審理の途中において、いつでも、起業者、土地所有者及び関係人に和解を勧めることができます。(法第50条)
  • (2)和解調書の作成
    起業者、土地所有者及び関係人(起業者とすべての被収用者)との間に、法第48条第1項各号又は法第49条第1項各号に掲げるすべての事項に関して和解が成立し、その和解の内容が法第7章の規定に適合するときは、収用委員会は起業者等の申請により和解調書を作成することができます。
  • (3)効果
    和解調書が作成されたときは、権利取得裁決又は明渡裁決があったものとみなされます。
    また、起業者、土地所有者及び関係人は、和解の成立及び内容を争うことができません。
    (法第50条第5項)

6 取下げ

裁決申請書又は明渡裁決申立書を収用委員会に提出した後、起業者と土地所有者及び関係人との間において、任意で契約が成立した場合など、裁決を得る必要がなくなったときには、起業者は取下書を提出し、裁決申請等を取下げることができます。

なお、単に取り下げた場合は、和解調書を作成した場合と違い、土地収用法上、権利取得裁決又は明渡裁決を受けたのと同じものとみなされるという効果が生じませんので注意が必要です。

第6 裁決の種類

裁決には、「却下の裁決」、「権利取得裁決」、「明渡裁決」の3つがあります。

なお、裁決をするに当たっては、収用委員会は、審理が終わると会議を開いて裁決の内容を判断し、裁決書を作成します。

この裁決に係る委員会の会議は、非公開とされています。(法第66条)

なお、裁決の効力は、裁決書の正本が、起業者、土地所有者等に送達されたときに生じます。

1 却下の裁決

収用委員会は、裁決の申請が次のいずれかに該当するときは、申請を却下することになります。

  • ア 申請に係る事業が、事業認定の事業と異なるとき。
  • イ 申請に係る事業計画が事業認定に係る事業計画書に記載された計画と著しく異なるとき。
  • ウ その他この法律の規定に違反するとき。

2 権利取得裁決

収用委員会は、裁決申請に対し、却下する場合を除き、収用又は使用の裁決をします。

明渡裁決がなく、権利取得裁決だけでは起業者は収用の実効があがらないため、通常は権利取得裁決申請と同時に、又は権利取得裁決申請後に明渡裁決申立てもなされます。

ア 権利取得裁決において決定する事項(法第48条第1項)

  • (ア)収用する土地の区域、又は使用する土地の区域並びに使用の方法及び期間
  • (イ)土地又は土地に関する所有権以外の権利に対する損失の補償
    ただし、以下の3つの点に注意が必要です。
    • (1) 収用委員会が正当な補償と判断した額が起業者の申立額及び被収用者の申立額を超える場合でも、あるいは反対に、正当な補償と判断した額が起業者の申立額及び被収用者の申立額より低い場合でも、収用委員会は、それらの申立額の範囲内で裁決することになっています。(法第48条第3項、参照:民事訴訟法第246条)
    • (2) 収用委員会は、権利取得裁決をする場合には、補償金を受けるべき土地所有者、関係人の氏名及び住所を明らかにして裁決します。
      しかし、土地所有者、関係人の氏名又は住所を確知することができないときは、不明として裁決します。(法第48条第4項)
    • (3) 収用委員会は、土地に関する所有権以外の権利に関して争いがある場合に、裁決の時期までにその権利の存否が確定しないときは、権利が存するものとして裁決します。(法第48条第5項)
  • (ウ)権利を取得し、又は消滅させる時期
  • (エ)その他この法律に規定する事項

イ その他の裁決事項

  • 上記ア(エ)「その他この法律に規定する事項」に該当する主なもの
  • (ア)残地に関する権利の存続(法第76条第2項)
  • (イ)使用に代わる収用の場合の権利の存続(法第81条第3項)
  • (ウ)担保の提供(法第83条第3項)
  • (エ)加算金(法第90条の3)
  • (オ)過怠金(法第90条の4)
  • (カ)鑑定人等の旅費及び手当の負担(法126条)

3 明渡裁決

ア 明渡裁決において決定する事項(法第49条第1項)

明け渡すべき土地若しくは物件又は移転する物件のほか、次の事項を決定することになります。

  • (ア)土地又は土地に関する所有権以外の権利に対するものを除くその他の損失の補償
  • (イ)土地若しくは物件の引渡し又は物件の移転の期限
  • (ウ)その他、この法律に規定する事項

イ その他の裁決事項

  • 上記ア(ウ)「その他、この法律に規定する事項」の主なものは、以下のとおりです。
  • (ア)担保の提供(法第84条第3項、法第83条第3項)
  • (イ)移転困難な場合の物件収用(法第78条)
  • (ウ)移転料多額の場合の物件収用(法第79条)
  • (エ)鑑定人等の旅費及び手当の負担(法第126条)

ウ 損失補償、補償を受けるべき権利者の表記、権利関係に争いがある場合の取扱いについては、前記の権利取得裁決の場合と同じです。

お問い合わせ

収用委員会事務局    

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 職員会館4階

ファックス:048-830-4945

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