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掲載日:2020年7月10日
Q 杉島理一郎 議員(自民)
知事は、上田県政の「継承と発展」を掲げて当選されて以降、台風災害や豚熱、新型コロナウイルスと次々と危機対応に追われ、平時であれば見えなかった壁に突き当たったことと思います。特に財政調整基金の不足や医師不足、職員不足など、不足だらけの環境下で危機対応を行うことの限界に直面したのではないでしょうか。
しかし、こうなることは自民党県議団がずっと前から指摘し続けてきたことであり、全ては数字ありきの上田県政の弊害、正に負の遺産が表面化したものであります。
当然、今回でさすがに知事も改善の必要性を痛感していると思いきや、齊藤邦明議員への答弁を聞いてがく然といたしました。財政調整基金の積立てには事業の中止や縮小が必要だから慎重に判断をするとの答弁がありましたが、全く認識が間違っております。ゼロ金利下において、本来は県債を発行してでも積極的に投資を進め、適切に基金も積み増しすべきところを、上田県政が県債を減らすことしか考えず、適切な投資を怠ってきたことで本県経済がシュリンクし、財政調整基金を食いつぶし、事業にしわ寄せがきてしまうのであります。
また、国の補正予算が十分でないと言われましたが、それは全国の自治体で同じ条件であります。だからこそ、他県は基金を使っていち早く対応したのであり、本県独自の支援策がこんなにも遅れたのは、基金不足のせいであることは明白な事実です。それを後悔も、反省もせず、企業局から借入れして作った基金で迅速に対応できたと胸を張るのは、愚の骨頂であります。
さらに、職員不足の件についても同じです。
上田県政による数字ありきの職員削減で、若手職員の空洞化や専門職や技術職の不足など、どれだけ県庁が弱体化しているか。知事の言う今回の全庁的な対応も、各部局から半ば強制的に職員を集めて体制を構築したものであり、通常業務へのしわ寄せがあってのものであります。
このように課題の根本原因や本質を見て対策を講じることなく、挙げ句には埼玉版FEMAでうまく運用するというような認識では、また必ず危機対応のときに同じ壁に直面してしまいます。私には、「継承と発展」を盾にして知事が思考停止しているとしか思えません。今こそしっかりと本県の置かれている現状を根本的に検証し、反省し、反転攻勢しなければ、埼玉県の未来はありません。
世の中が今、この新型コロナウイルスに対峙する中で、これまでの慣習を改め、新たなステージへと変革を求められています。ぜひ大野知事にもこれを機に、上田県政を「継承し、発展する」のではなく、「検証し、反転」していただきたいと思います。
以上、これまでの指摘事項も含めて、大野知事に答弁を求めます。
一方で、大野知事独自の公約にも「検証と反転」が必要なようであります。
あと数マイルプロジェクトについて、先週初めて工程表に基づく有識者会議が開催されましたが、その名称はなぜか「公共交通の利便性向上検討会議」でありました。また、5名の委員のうち2名は本県職員、3名の専門家は埼玉大学、富山大学、福島大学の先生であり、路線を接続する東京都や利害関係者が一切入っておりませんでした。交通政策審議会の答申では難しいとされた路線や都営の路線も含めて延伸させるわけですから、一般的な政策論ではなく、政治的なロジックと手法を持って利害関係者と具体的に取り組むよりほかないはずであります。
また、原則公開であるにも関わらず、冒頭で本県職員の委員から非公開の提案がなされ、開始15分で傍聴した議員も、記者も全て退席をさせたことは問題です。私が事前に確認した際には、「議論が核心にまで進んだときには非公開とする可能性もあるが、原則公開する」と明言されていましたが、初回の、それもたった15分でどんな核心に触れたというのでしょうか。利害関係者は入れずに、部長と局長が委員に入るという不思議な構成から見ても、私には自由闊達な議論ができないから非公開にしたのではなく、県の欲しい結論を導くために進捗状況を見せたくないから非公開にしたとしか思えません。
また、このように工程表に基づく有識者会議が全て非公開で開催されれば、議会はそのプロセスを一切チェックすることができません。知事が県民目線で民間経営者の感覚で取り組むというなら、非公開で一般論を議論する会議には意味がなく、オープンで現実的な議論で結果を出すことこそが何より重要だと、本当は分かっているのではないでしょうか。
そこで、知事公約における有識者会議がこのような形で進んでいくことについて、知事はどのように考えているのか伺います。また、県側からの提案で会議を急遽非公開とした理由と、今後も非公開で開催するつもりなのかについても、併せて見解を伺います。
A 大野元裕 知事
まず、「『継承と発展』から『検証と反転』へ」のお尋ねのうち、県債を発行せず、財政調整基金を取り崩してしまったため、基金残高が減少してしまったのではないかについてでございます。
財政調整のための3基金の残高は、上田県政時代の平成15年度から平成21年度までは約780億円前後で推移し、平成22年度から27年度までは約950億円前後で安定的に推移しておりました。
つまり、任期後半では約170億円の積み増しを行っております。
しかし、平成28年度を転機に今年度まで、3基金の残高は減少傾向になっています。
これは、社会保障関係経費などが急激に増える一方、景気の影響による県税収入の伸び悩みなどによって生じた、歳入歳出のギャップに対応したことなどによるものです。
一方、公共事業費の予算額は、平成15年度の1,436億円から平成28年度の816億円になるまで減少傾向であったものの、平成29年度からは一転して増加傾向となっております。
このように、データ・実績から読み解く限り、財政調整のための3基金の残高と、公共事業の投資額との間には相関関係は認められません。
他方、私も必要な投資を行うことによって県内経済を活性化することは重要だと考えております。県債残高の削減自体を目的とする考えはなく、令和2年度当初予算の公共事業費は、過去10年間で最大の1,016億円を確保したところでございます。
今後とも財政規律に配慮しながら、本県の発展のために必要となる投資をしっかりと行ってまいりたいと考えています。
次に、基金残高が少ないため、本県独自の支援策が遅れたのではないかについてでございます。
今後の新型コロナウイルス感染症対策については、抜本的な経済対策が必要であり、かつ多額の財源確保が求められたと考えています。
そのため、私は、3月16日にいち早く西村経済再生担当大臣を通じて国に対し交付金の創設を要望し、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金など一連の交付金制度が設けられました。
また、中小企業への支援については、止血的な措置として2月に県制度融資枠に新型コロナウイルス特例を設けるなど早い時期から連続して経済対策を行いました。
また、国に要望するだけではなく、県としてもしっかりと財源を確保するべく、地域整備事業会計からの借入金を原資に「新型コロナウイルス感染症対策推進基金」を設置し、ちゅうちょなく活用することといたしました。
3基金の残高が少ないことは御指摘のとおりでございますが、その中でも、全庁で知恵を絞り、県全体で財源を確保した結果、埼玉県中小企業・個人事業主支援金を創設するとともに、制度融資枠を過去最大規模に拡大するなど、本県として必要な支援事業を迅速に実施できたものと考えております。
次に、上田県政による数字ありきの職員削減は、県庁の弱体化を招いたのではないかについてでございます。
上田県政では、効率化を図りながら重点的に職員を配置しており、県民サービスを低下させることなく計画的に職員定数を見直してきたものと認識しています。
実際に、児童虐待防止対策や災害復旧対策などを重要課題と位置付け、上田県政の平成31年度には46人を増員をしております。また、私が就任後の令和2年度には、81人の増員を行いました。
私といたしましては、数字ありきではなくメリハリをつけて、職員の採用や、行財政改革を前提とした業務の配分などを適切に行っていきたいと考えております。
次に、新型コロナウイルス感染症対策の全庁的な対応についてでございます。
緊急事態宣言の際には、新型コロナウイルス感染症対策という優先的課題に根本的な対応を行うため、平時の組織を超えた非常時の体制として、全庁的な応援体制を強化し、各部局の職員を派遣し、全庁一丸となって対応いたしました。
他方、県民サービスに支障が生じることがないよう、非常時における優先順位付けを実施し、現場の業務運営にも最大限の配慮をしてきたところです。
今後とも、平時と非常時双方について多様な課題に的確かつ弾力的に対応をしてまいります。
私は、上田県政の継承と発展をお約束をいたしました。
その一方で、議員が御指摘になられたとおり、これからの大きく変革する社会においては、過去のやり方に捉われず、検証し、必要に応じて新たな視点を取り入れていくことは大切だと私も思います。
例えば、今回の新型コロナウイルス感染症対策では、「彩の国『新しい生活様式』安心宣言」制度を全国に先駆けて創設し、県民や事業者の皆様など多くの御協力をいただきました。
知事と県議会は県政を推進していく二つの大きな車輪です。
皆様の御意見や御提言をしっかりと受け止め、真摯に議論し、県政に反映させることで、未来の埼玉を創っていきたいと思っています。
次に、あと数マイルプロジェクトの有識者会議についてでございます。
御質問の非公開で進められている有識者会議についての考え、会議を非公開とした理由と今後も非公開とするのかについては、相互に関連がありますので一括してお答えをさせていただきます。
あと数マイルプロジェクトの有識者会議は、プロジェクトに大きく関わるとともに、県全体の公共交通の課題に応えるために、その利便性向上策の検討を目的とし、幅広く専門家の知見を取り入れるものであります。
具体的な検討を進めるに当たっては、将来の人口減少や高齢化、新技術の動向などを把握し、これまでの経緯等を踏まえ、交通政策全般に専門的な知見のある有識者の意見を取り入れながら検討することが効果的と考えました。
こうした考えの下、有識者3名、県職員2名を委員として、検討会議を設置する要綱を定め、これを根拠として、第1回会議を開催したところでございます。
この会議では、高齢社会における移動手段や地域での交通アクセスなど公共交通の利便性向上策について、県としての取組を進めていく上での課題の整理や取組の方向を検討していくこととしています。
そのため、東京都や利害関係者は委員としておりません。
交通政策審議会答申の路線などについては、これまでも東京都と定期的に意見交換を重ねているところですが、今後は、新たに立ち上げた東京・埼玉連携会議において、都市づくり部会を設置し、意見交換を行うこととしています。
第1回会議の議事以降を非公開とした理由でありますが、有識者会議における検討内容は、様々な関係者の利害に影響を及ぼす可能性があるとともに、有識者の方にはできる限り制約の無い自由な議論をしていただくことが重要と考えたことによるものです。
このため、要綱に基づき議事の開始前に全ての委員が一致して非公開を決定いたしました。
議事自体は非公開といたしましたが、会議の議事概要と資料については、会議当日にホームページにて公開したところです。
しかしながら、御指摘のとおり会議資料の取扱いや議事全体を非公開とした手続きなど、今後の会議の運営については改善の余地があると考えています。
次回以降の会議の運営に生かすよう早速私から指示をさせていただいたところです。
今後は、会議設置要綱に基づき、有識者の方々の自由な議論を確保しつつ、可能な限りオープンな会議となるよう努めてまいります。
あと数マイルプロジェクトの実現に向けては、多くの課題があることは承知しておりますが、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
再Q 杉島理一郎 議員(自民)
財政調整基金や職員定数の件について、私の認識に対する反ばくをいただいたものだと思っております。やはり数字というものは、読みようによってはうまく取れるなというものは、これも上田県政から継承されているんだなと思いましたけれども、重要なのはこの不足だらけの状況を良くない、課題であると受け止めて、これから改善するかどうか、そこを聞いているわけであります。基金不足だけれども、対応が遅れたけれども、少ない中でもやったんだ、できないけれども、こういうことをやったんだということではなくて、こうした不足した状況が課題であるという認識を持って、これからはこの課題を改善するように取り組んでいくのかどうか、その点についてしっかりとお答えいただきたいと思います。
次に、あと数マイルプロジェクトの件についてお伺いいたします。
知事からは、この有識者会議については県全体の公共交通に関わることや、人口減少や高齢化や交通政策全般について語るものだというふうに語られました。そもそもこれが間違っているわけであります。これはあと数マイルプロジェクトの5路線をどう延伸させていくかというための実行部隊の有識者会議なわけであります。それを全般にまで広げて、一から何の利害関係者のない人を入れて、そこで政策論を展開していって何を得たいと思っているのか、私には全く分かりません。ですから、これはしっかりとあと数マイルプロジェクトの検討会議に変えていくのかどうか、内容を見直すのかどうか、そういったところをしっかりと確認させていただきたいと思います。
また、答弁の中で、今、都と別にこれからやっていく実務者会議があるというような御答弁がありました。これは結局、有識者会議と都の実務者会議がパラレルで進んでいくということになれば、そもそも重要なのは都との実務者会議であって、この公共交通の全般を語っている有識者会議は、何の政策形成のプロセスに影響を与えるのかが全く分かりません。この位置付けがもはや全く分からなくなりましたので、それについても再答弁をお願いいたします。
また、非公開の提案の件について、改めて確認させていただきます。
これは要綱に定めたとおり、内容を鑑みて非公開にしたという御答弁でありました。私が申し上げているのは、この会議に当たっている人間が、しっかりと利害関係が及ぶような内容であれば、それは当然、条例に基づいて非公開にしていただいて構わない、それでしっかりと議論を進めていただくのは当然だと思います。
しかしながら、今回のメンバー構成で、今回の議題で、1回目の15分で、どうして非公開に該当するのか、それが全く分からないということであります。今回、すぐに15分で非公開とせざるを得なかった理由をはっきりとお答えください。
そして、今後こうした有識者会議がどんなメンバー構成であっても、今回のメンバー構成で非公開にできるということは、どんなメンバーであってもこれから全て知事の公約に関する有識者会議は非公開にできてしまうと、私は思います。この非公開について、これから全ての知事の政策のプロジェクトについて、原則公開でしっかりと進めていくんだというところについて見解をお伺いさせていただきたいと思います。
再A 大野元裕 知事
1点目の不足だらけの課題に対応し変化していくのかという認識について御質問いただいたと理解をしております。
現実の問題として、例えば医師数とかベッド数、先ほど収入と支出のギャップがあるということで基金の問題もございましたけれども、他県や過去と比較し、目減りしたりあるいは下がっていることはまさに御指摘のとおりでございます。
この点については私どもも課題と考えていることは事実でございます。先ほど申し上げましたけれども、例えばICTやAI、あるいは行政改革といった工夫をしながら、しっかりと変化に対して向き合っていきたいと考えております。
次に、あと数マイルプロジェクトについての御質問でございますけれども、この会議に関して、会議開始後わずかの時間で、これをクローズにしたことについての適否、それからもう一つが、政策決定に影響を与えるものであり、これは知事の公約である「あと数マイルプロジェクト」の中に位置しているものではないか、とのお尋ねであったと理解しています。
まず、最初の方でございますけれども、あと数マイルプロジェクトに関する議論として、この会議の運営につきましては自由活発な議論を確保するために、この要綱に従って全員一致で会議をオープンにしないことを決めたものでございます。
他方で、意思決定のプロセスを明確にすることにつきましては、もう一つの御質問でございますが、利害に関係がないからこそ自由な議論をするという政策決定のプロセスは明確に検証されなければならないと考えています。
したがって、可能な限りオープンにするとともに、私としては今回の措置については改善の余地があるというふうに考えていますので、例えば資料の事前配布とか、説明時の傍聴とかについては、改善をするように既にお伝えをしました。
話が戻りますけれども、あと数マイルに関して、今回の都との協議の方でございますけれども、都との協議については、県と都との間で部会をもちながら、今後の都県境における交通の状況等についても、まずは議論をします。
そして今後の、先程申し上げた数マイルプロジェクトに反映するものであります。他方で、今回の会議につきましては、改善の余地はあるものの、公共交通の利便性向上全体を、有識者の観点からお話をいただき、それを政策に昇華していくためのものでございます。
令和2年度としては有識者による会議として、今後関係者を入れた会議へと変えていくつもりでございますが、まずは有識者に広く知見をいただくことを目的としております。
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