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掲載日:2024年12月6日
令和6年度研究課題(大気環境担当 R6~R8 バイオエアロゾル観測研究基盤の構築:大気中微生物DNA濃度の計測)
(大気環境担当:村田、市川、長谷川、松本、佐坂;研究推進室副室長:米持;水環境担当:渡邊)
バイオエアロゾルは生物起源物質が空気中に粒子として浮遊しているものであり、花粉や細菌、ウイルス、真菌胞子なども含まれる。環境中においてバイオエアロゾルは、(1)大気汚染物質の一部、(2)アレルゲン、(3)病原体、(4)環境微生物叢の撹乱あるいは調整・維持、(5)雲の凝結核・氷晶核としてはたらく。人への影響だけでなく、生物多様性や気候変動とも関係するため、現代の環境問題を横断する新たな大気環境学の研究対象である。
バイオエアロゾル研究は、従来の大気環境研究とは全く異なる分子生物学的手法を用いる。そのため、手法の検討はもちろんのこと新たな試薬・器具等の研究基盤構築が必要である。本研究では、埼玉県におけるバイオエアロゾル研究着手を目指し、まずは大気中DNAの取得手法の確立と実大気での濃度計測を行う。同時に、大気環境モニタリング調査事業で取得された予備のフィルター試料への応用も検討する。
令和6年度研究審査会コメント
- 現在は基礎的な段階にはあるが、問題をひとつひとつ解決していくことで、将来的には幅広い活用が期待される研究である。埼玉県はこれまでもこの分野をリードしてきているが、その伝統を受け継ぎ、世界を視野に置いた成果が期待されるものである。
- あまり実態が知られていないバイオエアロゾルの測定のための基盤構築を目指すものであり、たとえば黄砂飛来による健康被害について、県内の感染症発生リスクの管理に役立つと思われる。手法確立により、県内だけでなく全国や国外への寄与も期待できる。
- 大気中から取得したDNA から細菌の存在量を計測する手法を確立するという興味深い研究で、本手法に関する従来の研究との比較があればoriginality についてより説得性があると思われます。確立した手法を海外での実験で試してみることも期待されます。
- 新規性と独創性のある研究であり、研究成果は他の地方環境研究所でも活用できるものと高く評価できる。採取試料中のDNA 分解とPCR 阻害物質の対応が研究を進めるうえで重要になると考えられるため、関連研究等を参考にして進めていただきたい。
- 研究目標が十全に達成された場合には様々な計測対象に応用可能性のある、野心的な研究提案と思います。一方で、実用的な計測精度を得るために克服すべき点も多く、資料取得と計測の実施だけでなく既存研究のサーベイなどにもリソースを割き、効率的に研究を進めて頂きたいと思います。
- 大気環境を超えて様々な分野に発展性のある研究だと思います。花粉、ウイルスなど目的に応じて粒径別にサンプリングすることも有効ではないかと思います。観測研究基盤が構築されることを期待します。