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掲載日:2024年4月30日
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近年の肥料価格の高騰から、日本国内の資源を活用した肥料が求められています。
なかでも、下水汚泥を利用した肥料は農業に貢献できる大きなポテンシャルを有しています。
埼玉県流域下水道では毎年約50万tの下水汚泥が発生しており、その多くは焼却炉で燃焼して減容化し、セメントなどで再利用しています。
下水汚泥中にはりん酸が数%含まれており、年間ではりん酸が1万t以上含まれていることになります。
下水道局では堆肥化と燃焼灰の肥料利用について検討を進めています。
下水汚泥の有害成分については、堆肥や燃焼灰の有害成分分析を行い、このページで公開しています。
下水汚泥を発酵させて堆肥化することで、肥料の主要3成分のうち、窒素とりん酸を含む堆肥にすることができます。
窒素 | りん酸 | カリ | |
令和5年度試作堆肥 | 2.6 | 3.8 | 0.41 |
写真 試作堆肥
下水道局では埼玉県内で比較的農業が盛んな県北部に位置する3流域の下水汚泥を対象として、どの程度の量を堆肥化するか、どのように堆肥化するかなどの検討を行っています。
図 流域図
県民のかたに下水汚泥堆肥の使用感を確かめていただくために、堆肥試作を行っていく予定です。
まだ、試作は準備中ですが、ご関心のある方のために試作ができるまでの間は市販の下水汚泥由来の肥料である還元くん(株式会社ピラミッド)を無償配布しています。
配布の申込方法や肥料成分については以下のPDFで確認してください。
下水汚泥を燃焼すると、りん酸などは固体(燃焼灰)で残り、炭素などは燃えてなくなります。
燃焼灰にはりん酸が約30%含まれており元の下水汚泥と比べると10倍程度の濃度となります。
これだけの濃度になると、化学肥料の代替として利用できる可能性があります。
また、燃焼灰は安定的に大量に発生するため、海外の化学肥料と比べると安価で安定した価格になることが期待できます。
一方で有害成分も濃縮されることから、使用量を管理して利用することが大切となります。
令和5年11月29日(3号炉) | 令和5年11月29日(4号炉) | 令和6年2月1日(4号炉) | |
りん酸全量 | 29(15) | 23(12) | 21(11) |
く溶性りん酸 | 15 | 12 | 11 |
水分 | 20 | 31 | 40 |
カッコ内の数値は、りん酸全量のうち、植物に吸収されやすい「く溶性りん酸」の量を示す。
このような燃焼灰の特性から、窒素などの他の肥料成分を加えて成分を調整した肥料を作ることが有効となります。
これまでも燃焼灰は肥料として登録可能でしたが、肥料会社が燃焼灰を原料として成分を調整した肥料を作ることができませんでした。
そのような中で、令和5年10月に新しい「菌体りん酸肥料」ができて、燃焼灰を肥料原料として販売できるようになり、肥料会社が燃焼灰を他の肥料と混合することで農家のかたが使いやすい成分に調整した肥料を販売できるようになりました。
この新しい肥料規格の創設をうけて、下水道局では全国の自治体で初めて下水汚泥の燃焼灰を「菌体りん酸肥料」として肥料登録しました。
今後は、肥料会社と協力して、燃焼灰を利用した新しい肥料を開発していくことを目指しています。
ご関心のある肥料会社には燃焼灰肥料を試験的に販売します。
このホームページの下部にある、お問合せ先にご連絡ください。
登録番号 | 埼玉県第708号 |
肥料の種類 | 菌体りん酸肥料 |
肥料名 | 荒川クマムシくん1号 |
保証成分量 | りん酸全量16.0% |
生産した事業場の名称 | 荒川水循環センター |
生産した事業場の所在地 | 埼玉県戸田市笹目五丁目37番14号 |
埼玉県の流域下水道では、各家庭や工場などから出る下水は市町の下水管を経由して県の下水管に入り、水循環センターで処理されます。
有害な物質を排水する可能性のある工場は事前に市町へ届出を行い、下水として流せる基準値以下まで有害な物質を取り除く施設を設けるとともに、定期的に有害な物質の濃度も確認しています。もし、基準値を超えている場合には排水停止の措置などを行うことになります。
さらに、県では市町の下水管から県の下水管に入る場所や水循環センターに入ってくる場所で水質の確認をしており、基準値を超えている場合は直ちに市町と原因調査を行い改善しています。
下水処理場では初めに大きな砂やゴミを取り除きます。それらのものは堆肥や燃焼灰肥料には含まれないように管理しています。
その後、下水はクマムシなどの微生物で処理をしています。処理の過程で増えすぎた微生物などが下水汚泥となります。
その下水汚泥を堆肥化したり、燃焼して肥料になります。
作られた堆肥や燃焼灰肥料は定期的に分析を行っています。
燃焼灰肥料は堆肥よりも有害成分が高い濃度となるため、出荷前に必ず分析を行い基準に適合していることを確認しています。
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