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掲載日:2023年12月5日
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夏に起こる印象の強い食中毒ですが、冬にも食中毒は発生します。そして、その原因の多くは、ノロウイルスによるものです。
カリシウイルス科、ノロウイルス属のウイルスです。人にのみ胃腸炎症状を起こします。環境中での抵抗性が強く、長期間生存し続けます。感染すると、糞便中に大量のウイルスを排出します。
構造は、直径約30nm(1mmに約3万個並びます)のたん白質でできた正20面体の殻の中にRNA遺伝子(RNA;リボ核酸)が入っています。
ノロウイルスは、冬季を中心に、食中毒の原因となっています。また、世界中で乳幼児から高齢者まで全ての年齢層で感染性胃腸炎を引き起こしています。令和4年の全国食中毒統計(厚生労働省)によると、ノロウイルスによる食中毒は、63事例(病因物質別事件数第3位)発生し、患者数は2175名(病因物質別患者数第1位)でした。
ノロウイルスは、人の腸管のみで増殖します。人の糞便とともに排出されたウイルスの一部は、下水を通って海に流れ込み、海に生息する二枚貝の中腸腺に蓄積されます。そして、汚染された貝を人が摂取し、発症するというサイクルが形成されています。二枚貝以外の食品で原因が判明しているものには、寿司、サラダ等があり、人の手を介した汚染が疑われます。しかし食中毒事例の約半数は、原因食品が不明です。これらについても、調理従事者からの二次汚染が疑われる事例が多く含まれていると推測されています。また、ノロウイルスには食中毒としての感染経路のほかに、感染症としての感染経路もあります。学校や保育園等での集団発生の中には、患者の便や吐物に接触した人-人感染によると考えられる事例もあります。また下水道管等の破損により、井戸水等の飲料水を汚染し、集団胃腸炎を引き起こすこともあります。
潜伏時間は、24~48時間です。症状は、下痢(74%)、おう吐(72%)、吐き気(66%)、腹痛(53%)、38℃以下の発熱(57%)、頭痛(23%)です。通常、1~2日症状が続き回復します。血便の報告はありません。また、ウイルスに汚染された食品を摂取しても、感染しない人や感染しても発症しない人も存在します。なお、症状消失後、長いときには1ヶ月程度のウイルスの排泄が続くことがあるとされています。
食中毒の予防にも人から人への感染の予防にも、手指の洗浄が最も大切です。
石けんを用いて良く手を洗い、ペーパータオルまたは清潔なタオルで拭いてください。特に、糞便やおう吐物を処理した後や、トイレのあとには念入りに手洗いを実施してください。また、ノロウイルスにはあまり効きませんが、他の細菌のことも考慮して、手洗い後に消毒用エタノールに消毒薬を配合した速乾式エタノールローションを揉み込む方法が推奨されます。逆性石けんはウイルスには無効です。
おう吐物の中にもノロウイルスが含まれています。おう吐物を処理するときには必ず使い捨て手袋を着用してください。できればマスク、エプロンも着用するようにしてください。処理を始める前に汚染物を入れるビニール袋も準備しておきます。吐物が飛び散らないように拭き取った後、0.1%次亜塩素酸ナトリウム溶液を浸したペーパータオルをかけて10分間放置してから、水拭きしてください。次亜塩素酸ナトリウム液を使う時は換気にも気を付けてください。おう吐はかなり広い範囲に飛び散りますので、それを考慮して処理することが必要です。処理が終わったら、手袋、マスクはビニール袋に入れ廃棄し、エプロンは消毒後洗濯をしてください。最後に、念入りな手洗いとうがいをしてください。
器材の消毒には、次亜塩素酸ナトリウムが適しています。食品は、十分加熱調理してください。食品がウイルスに汚染されている場合でも、食品の中心温度85℃以上で90秒間以上の加熱を行えば、感染性はなくなるとされています。
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