ページ番号:192385
掲載日:2022年4月15日
ここから本文です。
障害者福祉・障害者雇用に関心のある方々にご協力いただき、障害者が働く企業を訪問して、障害者本人や企業の担当者にインタビューしていただいたものです。なお、【 】はインタビューを受けて頂いた従業員の方の障害種別、《 》は訪問企業の主たる事業内容です。
コバトン
インタビューした日:平成28年9月2日
インタビューした方:代表取締役 新井 利昌 さん
男性Sさん(30歳・知的障害者)
男性Tさん(37歳・精神障害者)
協力レポーター:伊藤泰成さん(行田市)、伊藤寿子さん(行田市)
【企業概要】
名称:埼玉福興株式会社
所在地:熊谷市弥藤吾2397-8
事業内容:障害者施設の管理運営、農業生産
総従業員数:10名(うち障害者数:2名)
厚生労働省をはじめ、様々な方面から農福連携が唱えられる今日、埼玉県においてその先駆的役割を果たしている埼玉福興株式会社(以下、「埼玉福興」という。)にお邪魔しました。
埼玉福興はグループホームやB型作業所等の複数のNPO法人を統括しています。
私たちを迎えてくださった新井社長は、その経営にとどまらず公的機関の求めに応えて、農福連携の旗手としてその普及に励んでいます。
1.障害者雇用の契機
障害者を対象とした生活寮を運営する中で、障害者にとってより張りのある人生を歩んでもらえるように、という自然な流れの中で障害者を雇用するようになった。
2.障害者の担当業務
農作業のかなめとして、種まきから出荷まで様々な業務を任せている。また、B型作業所に通う他の障害者のピアサポーター(※)としての役割を果たしている。
※ピアサポーター…障害を抱えた当事者同士による支援を「ピアサポート」といい、その支援する障害者のこと。
3.障害者を雇用する上での配慮
複雑な工程を単純化する。危ないからやらせないのではなく、機会を与えて本人の能力を向上させる。
4.埼玉労働局主催の「農業分野障害者雇用推進検討チーム」における活動
障害者を雇用して農業分野に参入する、あるいは参入を考えている企業等に向けて、新井社長がセミナーの講師として、障害者と農業との関わりの効用を説明するとともに、農業分野での障害者雇用の様々なアドバイスを行う。
5.障害者雇用のメリットは
彼らの成長と喜ぶ姿が自身の糧になっている。農業をすることは労働をすることなので、黙々と仕事をこなす彼らは、農業との相性が良く、労働力不足の改善につながる。
6.これから農業分野における障害者雇用を始める企業への助言
1~2人より、5~6人単位のほうが、チームで動けて能率性が高まる。農業は短期ではなく10年のスパンで捉えるとよい。
農業の環境からか、組織の体制からか、職員もB型作業所の利用者も和気あいあいと過ごしていました。炎天あり、寒風あり、実際に農業を続けるのは厳しいものがありますが、職員も利用者も自発的に黙々と作業に勤しんでいました。野菜作りは「土づくり」といわれますが、それ以上に、野菜作りは「人づくり」であると強く感じました。
埼玉福興に来て8年目のSさん(30歳・重度知的障害者)と、5年目のTさん(37歳・精神障害者)が質問に答えてくれました。
1.就職のきっかけは
Sさんは生活寮から、Tさんは作業所から、農業に関わるようになり、次第により多くの責任を担える状態になったからです。
2.一日の過ごし方は
勤務時間は平日の8時30分~16時00分です。土日はお休みです。
3.仕事をする中で嬉しかったこと
Sさんは納品や売り場を任されたりして、会社に信用されていることです。
TさんはB型作業所の利用者に農作業の手ほどきをしたり、自由に作付ができることです。
また、自分たちで手掛けた作物を試食し、堪能することです。(とてもおいしいです)
4.余暇の過ごし方
Sさん(生活寮)はTVを見たり、買い物に行ったり、年に1、2度の里帰りです。
Tさん(自宅)は、体を休めるか、自主管理の作物いじりです。
5.これから働きたいと思っている方へのアドバイス
毎日続けることが大切です。
Sさんは明るく楽しく過ごしており、Tさんは寡黙ながら、オリーブや野菜の栽培に大きな夢を抱いており、共に前向きです。障害を持ちながらも、農作物の生産において社会に大きく貢献していて、感服しました。
インタビューした日:平成29年3月8日
インタビューした方:運営管理本部 人事課 係長 塘さん
栗橋ナーシングホーム翔裕園 障害者雇用担当 市川さん
女性Nさん(46歳・精神障害者)
協力レポーター:青木律子さん(さいたま市)
【企業概要】
名称:社会福祉法人元気村
※( )内は栗橋ナーシングホーム翔裕園
所在地:さいたま市大宮区桜木町1-11-9 ニッセイ大宮桜木町ビル 8階
(久喜市小右衛門951-1)
事業内容:社会福祉事業、介護保険事業、障害福祉サービス事業、事業所内保育所の運営
社員数:正社員613名(81名)、準社員453名(34名)
雇用障害者数:身体障害14名(0名)、知的障害8名(1名)、精神障害7名(3名)
栗橋ナーシングホーム翔裕園は、社会福祉法人元気村が運営する老人保健施設です。ここでは4名(知的1名、精神3名)の障害者が清掃の仕事をしています。
社会福祉法人元気村が障害者の雇用を始めたのは平成22年頃のことで、雇用を通じて地域貢献・社会貢献ができれば、との想いからです。
現在は法人本部の人事部門が窓口となって障害者の採用をしており、本人の希望を考慮したうえで居住地から通勤可能な施設に配属しています。
障害者の採用が決まると、所属する施設で面接をして担当する場所や作業内容、1日のスケジュール、使用する道具などを決定します。
そして実際に仕事をしたうえで、必要に応じて修正を加えます。この段階で実際にできるかどうかを見極めて、できることとできないことを明確にし、できることにしっかり取り組んでもらうことが、精神障害者が定着していくために非常に大事だそうです。
栗橋ナーシングホーム翔裕園で働く4名の障害者は、それぞれ異なる場所を担当しており、勤務日や勤務時間も異なります。
それぞれの障害者には相談役となる上司や先輩がつき、1日の仕事の終わりに日誌をチェックしたり、質問や相談に応じたり、定期的に面談を行ったりします。
相談役を務める上司の市川さんは、精神障害者を雇用する上での留意点として、次のようなことをあげられました。
・職員にあらかじめ十分な説明や周知を行い、障害に対する理解を求めるようにします。
・本人がどういったところに不安を持つのか、話を聞いて様子を見るようにします。その際には、慎重に時間をかけて聞き出す必要があります。
・季節によって体調を崩す人もいます。他のスタッフよりもきめ細かな対応が必要なこともあります。
・気になることがあったら、声をかけるようにします。ただし本人に不安を与えないように、気を遣い過ぎないようにします。
・精神障害者にはその人なりの個性や視点があり、他の人が気付かずに見落としがちなところに気付くこともあります。
・指示の出し方によっては、受け取る側によって解釈が異なることがあるので、こうした違いをすり合わせることが重要です。自分の主観的な感覚だけでは不十分といえます。
また、特に福祉や介護に携わる立場から次のようなコメントもいただきました。
・社会福祉法人ということで、当たり前のように障害者と接していました。障害者と一緒に働くのは、何も特別なことではありません。福祉職という職業柄、スタッフの障害者への理解が高く、障害者雇用の受け入れがしやすい面もあります。とはいえ、障害に応じた配慮は必要です。
・できるところをやってもらう人が増えるだけでも助かります。一般に介護業界は人手不足と言われていますが、分業化してできることをしてもらうようにすれば障害者も仕事ができます。また、介護施設利用者のおじいちゃん、おばあちゃんにとっては、話し相手に障害があろうとなかろうと関係なく、利用者の方々の話を聞いてくれるだけで、十分重要な役割を担ってくれています。
介護の仕事は切り出しや分業が難しそうなイメージがありました。でも「できることをやってもらう人が増えるだけでも助かる」というコメントには、目からうろこが落ちるような思いでした。コメントの中に、障害者雇用の推進や人手不足解消のヒントがあるような気がします。
今回インタビューさせていただいたNさんは、46歳の女性です。栗橋ナーシングホーム翔裕園で清掃の仕事を始めてから約3年になります。
Nさんは現在の仕事に就く前には病院に通っていて、10年くらい仕事をしていなかったそうです。現在の職場には新聞広告を見て応募し、面接と実習を経て採用になりました。清掃の仕事は初めてだったので、最初の頃は仕事ができるかどうか、長く続けられるかどうか、不安がたくさんあったそうです。
勤務時間は午前8時30分から午後0時30分までの4時間で、週5日の勤務です。通院の都合で、平日を休みとしています。県外にある障害者のグループホームから、電車で1時間くらいかけて通勤しています。
Nさんが清掃を担当しているのは建物の玄関および3階で、手すりや棚の雑巾がけ、床面の掃き掃除、玄関の拭き掃除などを行います。
その日の作業スケジュールはあらかじめ決められていますが、3階全体はかなり広く、必ずしも予定通りに作業が進まないこともあります。そのため、1週間の中で調整して全体が偏りなく仕上がるように、柔軟に対応しています。
Nさんは採用当初、床と手すりの清掃から始めました。しばらく勤務して仕事を覚えたら、トイレや玄関の清掃も任せられるようになりました。
最近は介護施設利用者の部屋も清掃するようになり、古くなった来客用スリッパの廃棄といった、判断を要する仕事も任せられています。
Nさんが仕事をしていてうれしかったのは、利用者から笑顔で感謝されたときです。Nさんも利用者が困った様子を見せたときに、「大丈夫ですか」と声をかけることがあるそうです。
また、仕事がスケジュール通りに進んだときにはうれしくなり、逆に進まなかった時には悔しいと感じるそうです。
プライベートでは電車に乗ってショッピングに出かけたり、サイクリングに行ったりしてリフレッシュしています。
Nさんは2週間に1度、かかりつけのクリニックに通院しています。服薬は食前、食後、就寝前で、「寝る前に飲む薬はこれ」というように飲む薬が決まっています。幻聴など症状が重いときには、服薬の量を調整します。また精神科以外の診療科目にもかかっているので、薬の処方について薬剤師に相談することもあるそうです。グループホームの職員にも体調や服薬の相談をします。
これから働きたいと思っている方へのアドバイスとして、Nさんは「深く考えず、気を楽にする」「自分のペースで頑張る」という点をあげていました。
ご本人が自身の症状を率直に語っているのが印象に残りました。病気と上手に付き合いながら仕事を続けている様子が伝わってきます。
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください