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掲載日:2024年9月26日
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埼玉県では、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(平成18年4月施行。以下、「法」という)」の施行に伴い、各種施策を実施してまいりました。その経過等、紹介させていただきます。
15年度に県内における高齢者虐待発生件数の調査(14年度分)を行い、実態の把握に努めました。
16年度には、東京医科歯科大学の高崎絹子教授(当時)を委員長とする、高齢者虐待に造詣の深い学識経験者・介護保険事業者・行政機関担当者からなる検討委員14名による「埼玉県高齢者虐待対応ネットワーク研究委員会」を立ち上げ、4回の委員会と3回の作業部会を開催し、「高齢者虐待対応の手引き」を年度末に発行し、県内市町村に配付しました。17年度には、市町村・在宅介護支援センター職員を対象とする、手引きの活用方法に関する研修会を開催しました。なお、「手引き」については18年度に改訂版を作成し、配付しました。
17年5月から、県本庁高齢者虐待対応主管課に、主に市町村からの相談に応じるための専門員(非常勤)1名を配置しました。電話相談のみならず、市町村への訪問指導も行いました。
その後、法の施行を受け開始したのが「高齢者虐待対応専門員研修」(以下、「専門員研修」)です。
東京医科歯科大学大学院の高崎絹子教授(当時)を委員長とする高齢者虐待に造詣の深い学識経験者・行政担当者7名による「高齢者虐待対応専門員養成プログラム検討委員会」を18年7月20日に立ち上げ、5回の検討を経て、市町村虐待対応担当課職員を対象に第1回専門員研修を開始しました。2日間(11月9日、10日)の講義と1日間(1月16日)の演習の全3日間、12科目約14時間の全課程を修了した受講者80名には「高齢者虐待対応専門員」として認定証を発行しており、21年12月現在、累計442名の専門員を養成しました。(22年度は、6月1日及び6月3日の計2日間実施し、148名が受講した結果、累計590名となりました)。なお、19年度からは直営・委託を問わず、地域包括支援センター職員も含めた研修になっております。
研修内容は、高齢者虐待に関連する周辺知識や支援ネットワーク構築のためのノウハウを修得し、対応の核となりえる職員の養成を目的としたものです。
講義の第1日目は、主に高齢者虐待防止法の概要、地域における支援のネットワーク構築の手法を中心とした構成としました。
専門員研修の第2日目の講義から第3日目の演習に移るまでは、2カ月ほどの期間を設けます。この2カ月の間に、受講者には「ネットワーク構築について」という課題に取り組んでもらいます。
課題は、研修第1日目・2日目の講義で得た知識を踏まえ、以下の要領で進めます。
以上の点をまとめ、3日目の演習で各自が出来上がった課題を持ち寄り、各グループ内で個人発表をします。
発表された課題点等はグループごとに抽出、その後グループ代表者が全体発表し、最後に受講者全体の課題点やその解決方法を共通理解して終了となります。
なお、22年度以降の専門員研修については、計2日間の講義のみに改編しました。
認証後の専門員を対象に、援助技術の更なる向上を目的に開催しているのが「高齢者虐待対応専門員フォローアップ研修」です。
専門員研修を修了しても、虐待ケースは対応に苦慮する場合が多いため、1度きりの研修ではなく、その後も新しい情報を取り入れる等、常に自己研鑽をしていかなければなりません。専門員が研修で取得したスキルを風化させず、積極的なケースへの取組ができるよう、県のこうしたフォローも継続していくべきものと考えています。
この研修で使用する教材として、「高齢者虐待対応ハンドブック」を受講者と各市町村に配布しました。このハンドブックは、対応のフローチャートや分離保護等の各判断基準シート・アセスメントや記録の様式を一冊にまとめたもので、業務多忙な専門員が対応のポイントを容易に理解でき、即使用することができるよう、シンプルなつくりを意識したものに仕上げました。
作成は先の検討委員会メンバーによって行われ、その後改訂版も配布されました。
基本的に虐待ケースへの対応方法は、専門員の所属内で検討していくものですが、職員には異動や離職がつきものです。職場に高齢者虐待の対応の経験が蓄積されていない場合もあります。策に行き詰まり、解決への糸口が見つからない状況に入り込んでしまうこともあります。そのようなときに、気軽に県にいる専門員に話すことでヒントが得られる場合があるものと推測します。他市町村での解決・改善ケースや手法・制度を紹介したりするなど、その内容に応じて検討することとしています。
県の相談窓口において、近年増加しているのが養介護施設従事者等による高齢者虐待に関するものです。
従来、地域密着型介護施設・サービス以外の養介護施設や養介護事業等に対しては老人福祉法・介護保険法上の指定権限を所管している都道府県が老人福祉法や介護保険法、社会福祉法に基づく実地指導や監査等を行っております。
しかし、その後施行された高齢者虐待防止法では、養介護施設従事者等による高齢者虐待に関しては、市町村が通報を受け、都道府県に報告することと規定されており、この部分で戸惑う市町村もあるようです。
「通報は受けたが、その後はどう動けばいいのかわからない。事実確認調査は指定権限をもっている県がやるべきなのではないのか?市町村に事実確認しろと言われても、特別養護老人ホームや老人保健施設に調査に入った経験が一度もない・・・。」
このような連絡が入った場合、原則として市町村の施設等の指導権限を有する部署と連携を図り、事実確認調査を行使するよう求めています。しかしながら、ケースによっては県の虐待相談窓口が、各施設等の指導権限を所管している県の部署に通報するとともに、市町村との橋渡しを行い、県及び市町村の両者が合同で調査を行えるようコーディネートすることもあります。
高齢者虐待を早期発見・早期解決するためには、地域住民への啓発活動と、地域の協力体制、いわゆる見守りのネットワークの構築が何より重要です。
県では17年度に、「要援護高齢者等支援ネットワーク」を立ち上げました。
これは、当時深刻なリフォーム詐欺被害の発生をうけ、認知症等のある援護を要する高齢者等(以下、「要援護高齢者等」という。)の権利擁護を図るために関係団体が連携し、市町村が容易にネットワークを構築・強化できるよう図ることを目的として設立したものです。
各関係団体における日ごろの業務の中で、たとえば、高齢者宅に
このような状態を発見し、高齢者本人に呼びかけても応答がない場合には、市町村や警察に通報していただくよう協力を求めたものです。ここから高齢者虐待が発見されることもあります。
このほか、意識啓発活動として、県職員が施策を紹介する「県政出前講座」として高齢者虐待について原則無料の講演を行っています。年々受講希望者が増加しており、高齢者虐待への注目度が上がってきたことを実感しています。
法が施行されてから10年以上が経過しました。県内の通報件数は増加を続けている中、地域包括支援センターを含む市町村への支援のあり方について検討してみました。
第一に、人材の養成についてですが、例年、80名定員の2倍もの希望者がおり、要望に沿えないことが悩みでした。高齢者虐待という専門的な研修は一般行政職員のみならず、地域包括支援センターの全ての専門職種の職員に関心が高いものと思われます。研修のあり方を検討した結果、22年度は148名もの職員に受講いただきました。今後とも検討を重ねていきたいと思います。
第二に、要援護高齢者等支援ネットワークの構築や活性化が重要ですが、ネットワークの一層の促進を促すため、成果のあった事例を集約した事例集の発行等、検討していきたいと思います。
第三に、増加する困難ケースに関して、市町村を支援するため、弁護士・司法書士・社会福祉士等の専門家との連携を強化することも検討していきたいと思います。権利擁護の分野として、成年後見制度を適切に運用することが必要であるため、法人後見、市民後見を含め研究していきたいと思います。
県は、高齢者虐待の対応に携わる市町村や地域包括支援センター職員に対しスーパーバイズしていく役割を果たし、職員のエンパワメントを引き出せていきたいと考えています。そして、一つでも多くの高齢者虐待被害を防止し、高齢者が人間として尊厳の持てる生活を取り戻せるよう、市町村・地域包括支援センターとともに邁進していきたいと思います。
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