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掲載日:2022年3月1日
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私たちを取り巻く地球の環境は、日光、大気、水、土と、これらを利用して生存している多様な生物から成り立っている。
野生動植物は、人類の生存の基盤である生態系の基本的構成要素であり、物質の循環やエネルギーの流れを担うとともに、その多様性によって生態系のバランスを維持している。また、食料、衣料、医薬品などの資源として利用されるほか、学術研究、芸術、文化の対象として、さらに生活に潤いや安らぎをもたらす存在として、人類の豊かな生活にとって欠かすことのできない役割を果たしている。
野生動植物の世界は、生態系、個体群、種など様々なレベルで成り立っており、それぞれのレベルでその多様性を保護する必要がある。中でも種は、生態系を構成する基本単位であり、野生動植物の保護を進めるには、種の保護が極めて重要である。
しかし、現在、様々な人間活動による圧迫に起因し、多くの種が絶滅し、また、絶滅のおそれのある種が数多く生じている。種の絶滅は、野生動植物の多様性を低下させ、生態系のバランスを変化させるおそれがあるばかりでなく、人類が享受することができる様々な恩恵を永久に消失させる。現在と将来の人類の豊かな生活を確保するために、人間活動の影響による野生動植物の種の絶滅の防止に緊急に取り組むことが求められている。
国においては、既に、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」に基づいた希少野生動植物保護施策が推進されているところであるが、本県においても、現在、県内に生息・生育している野生動植物を調査しており、これらの結果を踏まえて希少野生動植物保護施策を推進することが大切である。
埼玉県は、東部の低地帯から奥秩父の亜高山帯まで、変化に富んだ地形を有すると共に、原生的な自然環境や武蔵野の雑木林に代表される身近な緑など、多様な自然環境に恵まれ、豊かな生物相をなしている。
しかし、近年の急激な都市化の進展に伴う森林、草地、田畑等の緑地の減少や湿地等の埋め立て、河川、池沼の水質悪化などの環境の変化、過度の捕獲や採取によって、多くの野生動植物に種の絶滅のおそれが生じている。
かつて、湧水のある清流で普通に見られた「県の魚」ムサシトミヨや県内に広く自生していたといわれる「県の花」サクラソウが、現在では人々の保護のもと、非常に限られた場所でしか確認されなくなっているなど、身近に見られた野生動植物も急激にその数を減らしている。
以上の認識に立ち、希少野生動植物の種の保護施策を推進するに当たっての基本的な考え方を次のように定めて、その推進を図るものとする。
今日、野生動植物の種を圧迫している主な要因は、過度の捕獲・採取、人間の生活域の拡大等による生息地又は生育地(以下「生息地等」という。)の消滅や生息・生育環境の悪化などであり、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保護を図るためには、まず、これらの状況を改善することが必要である。
このため、生物学的知見に基づき、希少野生動植物の種の個体の捕獲・採取及び生息地等における行為を規制するなどの措置を講ずる。
また、種を絶滅の危機から救うためには、圧迫要因を除去又は軽減するだけでなく、生物学的知見などに基づき、その個体の生息・生育に適した条件を整備し、個体数の維持・回復を図ることも必要となる。このため、その生息・生育状況や生態的特性を考慮しつつ、餌条件の改善、飼育・栽培下における繁殖など個体の繁殖の促進のための事業を推進する。
さらに、野生動植物の多様性を確保するためにも、野生動植物の生息・生育空間の復元・創造に努めることも必要である。このため、本県が全国に先駆けて実施しているビオトープ創造事業を積極的に展開する。
希少野生動植物の種の保護施策は、生物学的知見などに基づき、時機を失うことなく適切に実施される必要がある。このため、施策の推進に必要な調査研究を積極的に推進する。
以上の施策は、県民、事業者、旅行者及び滞在者(以下「県民等」という。)
並びに市町村の理解や協力の下に、人と野生動植物との共存を図りつつ各主体が協働して推進する必要がある。このため、希少野生動植物の種の保護の重要性に対する県民等の理解を深めるための普及啓発を推進するとともに、施策の推進体制を整備する。
また、これらの施策は、関係者の所有権その他の財産権を尊重し、農林水産業を営む者など県民の生活の安定及び福祉の維持向上に配慮するとともに、県土の保全その他の公益との調整を図りつつ推進する。
(1)県内希少野生動植物種については、その県内における生息・生育状況が、人為の影響により存続に支障を来す事情が生じていると判断される種(亜種又は変種がある種にあっては、その亜種又は変種とする。以下同じ。)で、
次のいずれかに該当するものを選定する。
ア その存続に支障を来す程度に個体数が著しく少ないか、又は著しく減少しつつあり、その存続に支障を来す事情がある種
イ 県内の分布域の相当部分で生息地等が消滅しつつあることにより、その存続に支障を来す事情がある種
ウ 生息地等の生息・生育環境の悪化により、その存続に支障を来す事情がある種
エ 生息地等における過度の捕獲・採取により、その存続に支障を来す事情がある種
(2)県内希少野生動植物種の選定に当たっては、次の事項に留意するものとする。
ア 外来種は、選定しないこと。
イ 従来から県内にごくまれにしか渡来又は回遊しない種は、選定しないこと。
ウ 個体としての識別が容易な大きさ及び形態を有する種を選定すること。
特定県内希少野生動植物種については、1(1)ア、ウ又はエに該当する県内希少野生動植物種で、かつ、県内の分布域が限定されている種を選定する。また、イに該当する種については、その分布域のうち特に重要と認められる区域を限定した上で、特定の区域に生息・生育する種を特定県内希少野生動植物種として選定することとする。
希少野生動植物の種の保護の基本は、その生息地等における個体群の安定した存続を保証することである。このような見地から、県内希少野生動植物種の保護のためその個体の生息・生育環境の保全を図る必要があると認めるときは、希少野生動植物保護区を指定する。
(1)希少野生動植物保護区の指定の方法
希少野生動植物保護区は、県内希少野生動植物種の個々の種ごとに指定する。
(2)希少野生動植物保護区として指定する生息地等の選定方針
複数の生息地等が存在する場合は、個体数、個体数密度、個体群としての健全性などからみてその種の個体が良好に生息・生育している場所、植生、水質、餌条件などからみてその種の個体の生息・生育環境が良好に維持されている場所及び生息地等としての規模が大きな場所について総合的に検討し、希少野生動植物保護区として優先的に指定すべき生息地等を選定する。
生息地等が広域的に分散している種にあっては、主な分布域ごとに主要な生息地等を希少野生動植物保護区に指定するよう努めるものとする。
(3)希少野生動植物保護区の区域の範囲
希少野生動植物保護区の区域は、希少野生動植物保護区の指定に係る県内希少野生動植物種の個体の生息地等及び当該生息地等に隣接する区域であって、そこでの各種行為により当該生息地等の個体の生息・生育に支障が生じることを防止するために一体的に保護を図るべき区域とする。なお、個体の生息地等の区域は、現にその種の個体が生息・生育している区域とするが、鳥類など行動圏が広い動物の場合は、営巣地、重要な採餌地などその種の個体の生息にとって重要な役割を果たしている区域及びその周辺の個体数密度又は個体が観察される頻度が相対的に高い区域とする。
(1)管理地区の指定に当たっての基本的な考え方
管理地区については、希少野生動植物保護区の中で、営巣地、産卵地、重要な採餌地などその種の個体の生息・生育にとって特に重要な区域を指定する。
(2)管理地区において適用される各種の規制に係る区域等の指定の基本的考え方
希少野生動植物保護区及び管理地区の区域の保護に関する指針においては、県内希少野生動植物種の個体の生息・生育のために確保すべき条件とその維持のための環境管理の指針などを明らかにするものとする。
希少野生動植物保護区及び管理地区の指定に当たっては、関係者の所有権その他の財産権を尊重するとともに、農林水産業を営む者等住民の生活の安定及び福祉の維持向上に配慮し、地域の理解と協力が得られるよう適切に対処するものとする。また、県土の保全その他の公益との調整を図りつつ、その指定を行うものとする。この際、土地利用に関する計画との適合及び県土開発に係る諸計画との調整を図りつつ、指定を行うことに留意するものとする。
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