With You さいたま > センターの概要 > 広報紙 > With You さいたま Vol.61(令和2年3月) > 特集 なくそう!セクシュアル・ハラスメント
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掲載日:2020年3月17日
昨年6月、国際労働機関(ILO)の年次総会で、セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)を含む、仕事の世界における暴力とハラスメントの撤廃に関する条約が採択されました。国際社会が職場でのセクハラ根絶に向けて踏み出す中、日本の取組はどこまで進んでいるのでしょうか。日本のセクハラ対策の歩みから、セクハラのない社会をつくるために必要なことを考えます。
「セクシュアル・ハラスメント」という言葉が新語・流行語大賞新語部門の金賞に選ばれたのは、平成が始まった1989年。それから30年後、米国に端を発したセクハラや性暴力被害を告発する「#Me Too」(「私も」の意)運動が日本にも広がり、平成が終わる2018年に新語・流行語大賞に入賞。同年、行政機関の幹部職員による女性記者に対するセクハラ事案が大きな注目を集めるなど、再びこの問題への社会的関心が高まりました。
セクハラは、1986年に男女雇用機会均等法(以下、均等法)が施行され、女性就業者が増加していく中で浮上してきた深刻な問題でした。1989年、男性上司からの性的な中傷により退職に追い込まれた女性が、セクハラ加害を問う日本で初めての民事裁判を福岡県で起こします。提訴から2年半後の1992年に全面勝訴し、セクハラを行った元上司とともに、環境改善の対策を講じなかった会社にも使用者責任があるとして、損害賠償が命じられました。この裁判をきっかけに、「セクシュアル・ハラスメント」「セクハラ」という言葉は広く社会に浸透し、1997年の均等法改正で、女性への性的嫌がらせを防ぐための、事業主雇用管理上の配慮義務規定が初めて盛り込まれました。2006年の同法改正では、配慮義務は措置義務へと強化され、その対象に男性も含めることとされました。2013年には、均等法の指針(※1)が改正され、同性に対するセクハラも措置の対象となり、2017年には、性的マイノリティも対象に加わりました。
このように職場におけるセクハラ防止の取組は、事業主が対応すべき問題として社会的に認知されてきました。しかし、現在、日本にはセクハラ行為自体を禁止する法規定はありません。
(※1)「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」
2018年度に全国の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に寄せられたセクハラに関する相談件数は7639件、是正指導された事業所は4953件です。
厚生労働省所管の独立行政法人の調査では、25~44歳の女性の約30%に職場でのセクハラ被害の経験がありました。
セクハラの態様(一部抜すい)(複数回答)
容姿や年齢、身体的特徴について話題にされた | 53.9% |
不必要に身体に触れられた | 40.1% |
性的な話や質問をされた | 38.2% |
執拗に2人きりでの食事等に誘われたり、交際を求められたりした | 27.5% |
セクハラに対し拒否や抗議の姿勢を示した結果、降格など業務上の不利益を受けた | 11.4% |
独立行政法人労働政策研究・研修機構「妊娠等を理由とする不利益取扱い及び
セクシュアルハラスメントに関する実態調査」(2016年5月)
この調査結果から、依然として女性が安心して働くことができない職場環境の実態が見えてきます。さらに、セクハラを受けた本人の対応では、「がまんした、特に何もしなった」が63.4%と最も多く、被害を訴えることの難しさがわかります。
世界経済フォーラムが発表した2019年のジェンダー・ギャップ指数(男女格差の国別順位付け)では、日本は153か国中121位。前年の110位から後退し、過去最低となりました。主要7か国でも最下位で、世界基準からみて日本は立ち遅れています。このように男女格差が大きい社会が、人権が守られない、女性が働きにくい職場環境につながっているのではないでしょうか。
国際労働機関(ILO)で採択された仕事の世界における暴力とハラスメントの撤廃に関する条約は、職場での暴力やハラスメントは人権侵害であることを明確にし、その根絶を国際的な共通目標としています。日本でも、これまで法規定の無かったパワー・ハラスメント(パワハラ)(※2)防止が法制化されるなど、条約批准に向けた法整備が進められています。
「#Me Too」運動は、表面化しづらいセクハラ被害を明らかにしました。この運動には、声を上げた被害当事者をひとりにせず、セクハラを許容しない社会を目指そうと声を上げる「#With You」という動きも加わっています。
セクハラは、パワハラやマタニティ・ハラスメント(マタハラ)(※3)など、他のハラスメントとも地続きであり、セクハラが起きる職場は、被害者だけでなく、そこで働く人の人権が守られていない職場だといえます。すべてのハラスメントは個人の問題ではなく、組織や社会の問題です。
「セクハラ」という言葉が広まって30年。雇用形態の多様化や就業する女性の増加などで働く環境は大きく変わりました。性別や立場が違っても、働く個人が対等に尊重されるような社会に変えていくことが、セクハラだけでなく、すべてのハラスメントをなくすことにつながるのではないでしょうか。
(※2)職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させること
(※3)妊娠・出産をきっかけに、職場で嫌がらせをしたり、解雇や雇い止め等の不利益を与えたりすること
セクハラは無自覚に行われることもあります。次のリストで自分の考えや言動を振り返ってみましょう。
いかがでしたか?リストはすべて、セクハラの観点から問題が「ある」に該当します。職場での、このような考え方や言動によって、侮辱と感じたり、傷ついたりする人がいるかもしれないことを十分自覚しましょう。
参考資料: 人事院ホームページ「これってセクシュアル・ハラスメント?~意識度チェック~」より
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