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掲載日:2022年10月13日
Q 宇田川幸夫 議員(自民)
妊娠・出産・育児の様々な相談にワンストップで対応し、切れ目のない支援を行う子育て世代包括支援センターの設置が始まり、子育ての環境の整備が各地域ごとに進められています。いわゆるネウボラのメニューには、妊婦や母親の相談やサポートを行う産前・産後サポート事業、産後すぐの時期に宿泊型やアウトリーチ型の支援を行う産後ケア事業、産後うつ病の予防を目的とした産後うつケア推進事業などがあります。私も、これまでに地元の助産師の方々やお母さん方と意見交換を3回ほど行わせていただき、実態を聞いた上で質問させていただいています。今回も具体的な御意見を挙げます。
意見交換では、「昼御飯を子供ととれる環境がほしい」との御要望が多かったこともあり、ランチをとりながらにしました。母子含めて50人を超えるランチでした。本当に大変な状況でした。しかし、お母さんたちは同じような子育ての悩みを共有することや、周りを気にせずにランチを食べることができ、楽しく有意義であったとの感想をいただきました。子育ての専門家の方も来ていて、なるほどと思う話がありました。
例えば、お母さんにとって大切なのは体の栄養よりも心の栄養が必要とのことでした。昔は多くの場合、家族や地域で子育てをしてきました。今は一人で子育てをする家庭も多くなり、この状況を現代版の仕組みに合わせていかなくてはならないわけです。つまり、一人で子育てをしなくてはならない環境のお母さんに対して、しっかりとシステムを機能させていくべきです。御存じのように、母子保健事業でスクリーニングがあります。まずは、この部分の強化が必要であります。一人にさせないことが大切です。
私としては、出産後、母子が心身ともに落ち着くのと併せて、子育ての知識、習慣が身に付くまでケアすることが必要と考えます。これは父親にも必要なことであります。育休を取ることだけではなく、産前・産後のお母さんの状況を専門的に理解して、子育ての分担や言ってはいけないキーワード等を認識する必要があると捉えています。また一つの提案として、産後の宿泊を延ばすことです。これは産前からも有効であると思われます。出産後、4日から6日で退院するのではなく、お母さん、お父さんの状況、個々に合わせた対応が必要ではないかということです。
さらに、産院が特に地方ではなくなっていく危機感がある中、産婦人科、助産院の役割を幅広く持たせることも考えていかなくてはなりません。また、自宅で子育てに専念したいお母さんには、産前・産後の母親に寄り添い、日常生活を支えてくれる産前・産後ドゥーラが必要であると考えます。体調を気遣いながら赤ちゃんと向き合い、専門的な知識の中で安心して子育てできる環境づくり、時にはリフレッシュも必要とされているので、産前・産後ドゥーラを活用することは重要であります。周りに知り合いがいない環境で妊娠・出産するお母さんをスクリーニングや産婦人科、助産院等で分かった場合、個々にきめ細かく対応することが必要だと思います。
前述で申し上げたとおり、宿泊型の推奨や産前・産後ドゥーラの育成が必要であり、個々に合ったメニューを幅広く選べるようにすべきと思います。例えば、タクシーチケットや宿泊券の配布、デイサービス、一時預かり等も有効な取組です。ネウボラを推し進めていくのであれば、対応のスピードと精度を上げることが課題と考えます。
そこで、質問させていただきます。現在までの県内のネウボラ設置状況を伺います。併せて、産前・産後ケアの取組状況について保健医療部長に伺います。
妊産婦の方々の支援は、子育て世代包括支援センターにおいて保健師、助産師などの専門職が支援をしていますが、地元の助産所、助産師さんや産前・産後ドゥーラの利用なども考えられます。産前・産後ドゥーラの資格を取るのに40万円ほどかかります。子育てを手助けする制度は、ほかにもあることは承知しています。しかしながら、顔が見えない中で制度を活用するのが不安との声がありました。しかし、専門性があり、顔が見えて分かりやすい制度であれば、少しお金が高くても活用していきたいとの声もありました。
市町村や地域での人口割合の差はありますが、1年で10人のドゥーラを育成することができれば、10年で100人、そのサイクルが確立していけば、地域で子育てをする専門家を養成することが可能となり、一人で子育てをしなくてはならない状況を改善することができると考えます。世界的にも認められている産前・産後ドゥーラの活用など、民間と連携することでより良いサービスの提供をすることができるのではないでしょうか。
そこで、2点目として、産前・産後事業のスキームは基本的には市町村の手挙げ方式であります。しかしながら、民間のきめ細かくやる気のあるサービスを活用することも考えていくべきではないかと考えます。つまり、産業界では補助金等の申請は民間が主体的に行うようになってきており、子育ての環境に対しても民間の手法を取り込むべきと考えることが時流ではないかと思うからです。市町村が事業主体でありますが、民間、県、国といったスキームの制度等を可能な限り選択肢にすべきと考えますが、産前・産後ケアの充実に向けて県では今後どのように取り組んでいくのか、保健医療部長に伺います。
A 関本建二 保健医療部長
まず、県内のネウボラの設置状況についてでございます。
妊娠・出産・育児の様々な相談にワンストップで対応し、切れ目のない支援を行うネウボラにおいて中心的役割を果たす子育て世代包括支援センターは、平成30年度末までに53市町村に87センターが設置されております。
未設置の10の市と町のうち、今年度新たに7市町が設置し、残りの3市町も今年度末までの設置に向けた取組を進めております。
次に産前・産後ケアの取組状況でございます。
妊産婦の不安や悩みについて助産師などが相談支援を行う「産前・産後サポート事業」は6市が実施し、退院直後で特に不安が強い産婦に、宿泊や家庭訪問などで心身のケアや育児を支援する「産後ケア事業」は15の市と町が実施しております。
産後うつの予防と早期発見を目的とした「産後うつケア推進事業」は12市町が実施しており、産後健診の費用を補助する「産後健診推進事業」は、5市町村が実施しております。産前産後ケアを実施している市町村はまだ多いとは言えません。
次に、産前・産後ケアの充実に向けて、今後どのように取り組んでいくのかでございます。
産前・産後ケアは、妊産婦の孤立の予防、安心・安全な出産や子育てを行うために大変重要な事業であり、実施する市町村が増えるよう支援していく必要がございます。
事業の充実を図るためには、民間の力を活用することも重要です。議員のお話にございました「母親に寄り添い日常生活を支える産前産後ドゥーラ」の活用も含め、様々な工夫が考えられます。
県内市町の中には、助産所や医療機関、NPO法人などの民間の力を活用して産後ケアを行っている事例もあります。
事業の利用者は初めてのお子さんを持った方が多く、「心や体の疲れが改善した」「育児相談ができて良かった」といった声が寄せられております。
このような好事例を県内で横展開していく必要があると考えております。
このため、県では平成29年度には14の市と町、平成30年度に20の市と町の子育て世代包括支援センターを訪問し、妊産婦支援の活動状況、地域の現状、課題、今後の方針などについて意見交換を行いました。
また市町村の担当者を対象に、産後うつの早期発見や対応方法、育児不安を持つ母親への対応に関する研修会を、年2回実施しております。
今後も、こうした訪問や研修といった機会を捉えて、産前・産後ケアの必要性や実施市町の取組事例を紹介するなど、市町村における産前・産後ケアの充実に向けて取り組んでまいります。
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