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掲載日:2024年10月8日
Q 須賀敬史 議員(自民)
国は、幼児教育・保育の無償化を平成31年10月から実施するとしています。今年6月に閣議決定されたいわゆる骨太の方針では、来年10月に予定されている消費税率の8%から10%への引上げに伴い、少子化対策として幼児教育・保育の無償化の対象者や実施時期などの方向性が示されたところであります。対象範囲は、これまで示していた3歳から5歳までの全ての子供と、0歳から2歳までの住民税非課税世帯の子供についての幼稚園、保育所などの無償化措置に加え、認可外保育施設も新たに対象に加わりました。
無償化は子育て世帯の負担軽減にもなり、少子化対策として期待できるところではあります。一方で、私は幼児教育・保育の無償化により保育需要がますます喚起され、保育所への利用希望者が増加し、保育所の整備と保育士の確保が追い付かなくなるのではないかと危惧しております。とりわけ保育現場の労働条件が過酷になり、保育士が退職する、新たに保育士を目指す方が減ってしまうということになれば、ますます保育士の確保が難しくなります。良質な保育サービスを提供するためには、子供一人一人に対してよりきめ細かい対応ができる保育士の充実が最も重要であり、幼児教育・保育の無償化の前提として、保育士の確保と保育の質の向上は待ったなしの課題であります。
保育士の確保において処遇改善は重要な課題であり、さきの県議会6月定例会において保育士確保と離職防止のための処遇改善を求める決議を行いました。県は、保育士の処遇について近隣自治体との格差是正を国に働き掛けることと併せて、格差解消までの間、市町村に対し賃金補助など積極的な財政支援をすることを強く求めたところであります。
本日の一般質問では、保育士の確保において、この保育士の処遇改善と車の両輪のごとく重要だと考える就職支援や保育の質の向上の観点から質問いたします。
最初に、保育士の確保の観点からは、県は就職支援として保育士養成施設の学生に対して就職資金の貸付けを実施しており、さらに卒業時には就職準備の支度金として20万円を上乗せして貸し付けています。これは貸付けですが、県内保育所に5年間継続して勤務すれば返済が免除される事実上の給付です。また、潜在保育士の復職を進めるため、保育所復帰支援貸付や保育士就職準備金貸付の事業も行っています。これも2年間勤務すれば返済が免除される事実上の給付です。
しかし、就職支援においてより重要なのは、保育士が自信とやりがいを持って働き続け、専門性を高められるよう、夢のある職場環境を整備することです。20万円の就職準備金も働き続けられなければ借金になってしまうのです。就職において職場環境が重要な要素であることはデータでも明らかです。一昨年度、独立行政法人福祉医療機構が全国の保育施設に対してアンケート調査した結果では、新卒者の採用実績がある施設と採用実績のない施設を比較したところ、採用実績のある施設のほうが人事考査や研修の充実、補助が整っていることが示されています。
保育士を目指す若者が、保育の世界で自分の将来を描いていけることこそ重要だと考えています。長く働き続けられる職場環境を整備する上で、保育所の魅力をどう発信できるか、現場の保育士にどのようにキャリアを積ませて育成していくか、働きやすい職場環境をどう整備していくかという施設長の意識改革を進めていくべきではないでしょうか。であるならば、就職準備金などの一時金を本人ではなく施設長に貸し付け、保育所の職場環境の整備や保育所の魅力を高めることに、施設長の裁量で使用できるような貸付事業が効果的ではないでしょうか。現在、保育所の施設長に対する貸付事業があるようですが、平成29年度では県内7件の利用にとどまっています。
そこで、1点目として、保育所の魅力発信のためにこの貸付事業を積極的に活用すべきと考えますが、福祉部長の御所見をお伺いします。
また、この事業以外にも保育士の就職支援として、保育所の魅力発信や施設長の意識改革を行い、保育士の仕事を選んでよかった、この保育所で働いてよかったと思える保育所を増やしていくことも必要だと考えています。2点目として、県はどのような支援ができるのか、福祉部長にお伺いします。
次に、保育の質の向上の観点からです。
以前、私は地元の保育所で1日保育士体験をしました。お昼寝の時間になったとき、担任の保育士が教室の出口の前で、一人一人の子供を抱きしめてからお昼寝の部屋へと送り出していました。子供たちが眠りにつくと、その保育士は数人の子供にだけおでこに手を当てて回っていました。私が子供たちとのスキンシップだと思っていた送り出しの抱き締めで、その保育士は子供の体温を確かめ、気になった子供にだけ手を当てていたことを聞いて、保育士のプロフェッショナルとしての仕事を一端を見た気がしました。
そこで、3点目として、保育の質の向上のために保育士のキャリアアップも重要であり、保育士が社会的に評価されるような環境づくりのために県はどのような支援ができるのか、福祉部長にお伺いします。
保育現場では、保育士が子供たちと関わること以外の準備や片付けなどの雑務にとられる時間が多いといいます。先ほどの私の1日保育士体験でもそのことを感じました。また、キャリアアップのための研修に保育士を派遣したくても、派遣させるだけの人的な余裕がないという現状があります。県は、保育士の業務負担を軽減するための保育補助者の支援を実施していますが、県内7市の利用にとどまっているのが現状です。
そこで、4点目として、保育補助者の積極的な活用のため県はどのような支援ができるのか、福祉部長に御所見をお伺いします。
A 知久清志 福祉部長
まず、保育所の魅力発信のために、施設長に対する貸付事業を積極的に活用すべきについてでございます。
施設長に対する貸付事業としては、現在、保育補助者雇上支援事業がございます。
これは、保育所の施設長に対して、保育補助者の配置を通じて保育士の働きやすい労働環境などに必要な資金の貸付が受けられる国の事業です。
この貸付は、保育補助者が保育士資格を取得した場合に返済が免除されますが、平成28年度から始まった事業であり、まだ十分に活用されておりません。
そこで、活用するための事例のポイントを分かりやすく紹介して他の保育所でも導入できるよう支援してまいります。
次に、保育士の就職支援として、県はどのような支援ができるかについてでございます。
これまで県では、県内の認可保育所などを一同に集めて保育現場で働きたい方に保育の仕事や保育所の魅力をアピールする保育士就職フェアを開催しております。
昨年度は170人の方が参加し、参加者の3割を超える60人の方が県内保育所に就職しております。
また、施設長を対象に、職員の働き方や施設のリスク管理などに関する研修を実施し、選ばれる保育所を目指して意識改革を進めてまいりました。
今年度からはこれに加えて、県内全ての民間保育所にアドバイザーを派遣し、保育士確保の相談に対応するとともに、専門的な労務管理の相談があれば、埼玉県社会保険労務士会につないで支援しております。
さらに、本年8月に開設した人材確保のための専用ホームページにおいて、保育所の方針や力を入れている人材育成の取組など求人票では伝わりにくい保育所の魅力を発信していく予定です。
次に、保育士が社会的に評価されるような環境づくりのために、県はどのような支援ができるかについてでございます。
保育士が社会的に評価されるためには、保育士の専門性を高め、その高い専門性に見合う処遇で報いるという考え方が重要です。
県では昨年度から日本社会事業大学を中心に、県内保育士養成施設と連携した「保育士等キャリアアップ研修事業」を実施しております。
昨年度は3,210人が研修を受講し、「リーダーとして求められる保育士の姿が分かった」など、96%の方から有意であったという評価をいただいております。
引き続き現場の声を踏まえて、より質の高い研修を実施することにより、保育士の専門性を高めてまいります。
次に、保育補助者の積極的な活用のため、県はどのような支援ができるかについてでございます。
保育補助者の活用については、先ほどの施設長に対する貸付制度の他に、補助者を雇用する費用を助成する事業もございます。
保育補助者の配置は保育士の業務負担の軽減につながり、保育士が本来の保育業務に専念できるので、保育の質の向上につながります。
今後も高まり続ける保育ニーズに対応できるよう、市町村説明会において、具体的な利用事例や効果を紹介して積極的な活用を促してまいります。
県といたしましては、保育士の方が働きやすさと働き甲斐の両方を実感できる職場づくりを進めるとともに、研修事業などを通じて保育の質の向上に取り組んでまいります。
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