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掲載日:2023年1月11日
環境科学国際センター研究課題(自然環境担当/R2~R4)
埼玉県の水田地帯における水生動植物の生息状況に関する基礎的調査研究
(自然環境担当:安野、角田、米倉、王、三輪/R2~R4)
水田は、埼玉県の総面積の約11%を占めており、本県を代表する景観の一つです。水田は、氾濫原等に生息していた動植物の代替生息地として機能するため、多数の絶滅危惧種が生息しています。しかし、圃場整備や農薬使用等の影響により、生息環境の劣化が進んでいる。水田生態系保全を進めるために、まずは県内の水田地帯における希少生物の生息情報の収集が求められます。
本県の水田地帯では、水稲品種や農法の違いにより、田植え時期が5月から7月まで及ぶ。田植え時期が異なれば、種ごとの生活史の違いを反映して、異なる生物群集が形成され、結果として地域レベルでの種多様性向上に寄与すると予想されます。本研究では、県内の水田地帯における希少生物の生息状況を把握するとともに、田植え時期の違いが生物群集に及ぼす影響を明らかにします。
令和元年度第1回研究審査会コメント
研究課題
埼玉県の水田地帯における水生動植物の生息状況に関する基礎的調査研究
研究審査会コメント
- 埼玉県は、本来関東平野の湿地であった場所であるものの、その後、開発が進み、現在は利根川から水をとり荒川へ流下させる仕組みの下にあり、ここでの水田の生態系調査は、歴史的にも極めて重要なものです。特に、センター近郊ではコウノトリの飼育、放鳥に向けた計画が進行中であり、そうした施策を進めていく上でも重要な課題です。
- 水田のような “critical zone”、ないし、動植物と人間との関わりが生態系を左右する緩衝帯のような地域においては、人間側のちょっとした油断が生態系の破壊につながりかねないです。そのような意味で、情報提供をきちんと行うことは有用であると考えます。
- 市民レベルでは、水田の生物相を地域生態系の保全に結び付けて考えることが一般に困難であるように思うため、研究成果や調査手法を今後の出前講座や環境学習に活用し、市民が生物多様性について考える身近な機会としても、この研究が役に立つことが望まれます。
- 田植え時期が水生動物群衆に及ぼす影響の解明については、水の有無や水温など以外にも農薬散布のタイミングをはじめ多くの因子を考慮しないと、有意義な知見に結び付かない懸念があります。3年の研究期間の間にも、調査方法・方針の妥当性を途中で確認し、必要に応じて調査項目の追加等、修正を加える必要があるかもしれません。
- 水田の生態系については情報が少ないと言われており、必要性が高いといえます。また、埼玉県内で多く存在する水田の動植物に関する調査データは、長期的な面からも有用です。
- 田植え時期による生物群集影響調査を行うのであれば、初年度に計画している対象水田数では少ないので、2年、3年目にも同じ地域の水田を対象としてサンプル数を増やすべきで、計画のように異なる地域の水田も対象として加えるのは再考を要すると思います。