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掲載日:2024年11月18日
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埼玉県では「歯科口腔保健推進計画」に基づいて、幼児期及び学童期のう蝕(むし歯)予防を進めるため、フッ化物洗口によるう蝕予防を実施しようとする施設を対象として、「フッ化物洗口事業」を行っています。
むし歯は、歯の表面のエナメル質が「酸」によって溶ける「脱灰」によって起こります。この「酸」は、歯の汚れ(プラーク)の中にすむ細菌が食べかすに含まれる炭水化物や糖を分解することによってつくられます。歯が「酸」に溶ける「脱灰」がすすんで穴の空いた状態がむし歯です。
「脱灰」は、食事やおやつ、清涼飲料水などを摂っているときなど日常的に発生します。しかし、唾液に含まれるカルシウムやリン酸イオン、重炭酸イオンがこの「酸」を中和させ、歯のエナメル質を修復する「再石灰化」の働きをします。唾液は夜寝ている時は分泌が減少します。特に乳幼児の場合、夜間の母乳や哺乳ビンによる授乳によって口腔内に発酵性糖質が存在する場合はむし歯になりやすい環境になります。このため、むし歯は夜つくられると言われています。
私たちの口の中では、食事のたびに「脱灰」と「再石灰化」が起こり、むし歯の発生を自然のメカニズムで予防しています。しかし、(1)口の中にプラークが多い(2)食事やおやつの回数が多い(3)甘いものをよく食べる(4)唾液の分泌が少ないなど「脱灰」の理由が多いと、むし歯が発生します。
下の図は、「規則正しい食事」をしている場合と、間食や夜食など多い「混合型」の口の中の状態をあらわしています。
参考資料:「飯島洋一・熊谷崇 カリエスコントロール 脱灰と再石灰化のメカニズム 東京医歯薬出版 1999 P11」
むし歯を予防するには、「だらだら食はしない」「よく噛んで唾液の分泌を促す」など日常の食生活に気をつけるとともに、「食べた後はブラッシングなどで口の中をきれいにする」必要があります。
しかし、乳幼児ではどうしても食事やおやつの回数が多くなったり、学童期では塾や部活動などで間食やスポーツ飲料など頻繁に摂ってしまいます。また、通常のブラッシングだけでは歯と歯の隙間や奥歯など歯ブラシがとどかない部分があり、どうしても磨き残しができることがあります。
このため、これらを補うためフッ素を利用した予防が有効といわれています。フッ素は古くから知られたむし歯予防の物質で、細菌の働きを弱め、カルシウムやリン酸イオンを歯のエナメル質に運び「再石灰化」を促進します。フッ素によって回復したエナメル質は、酸に強い耐酸性をもちます。
フッ素を利用した予防法には、
注意したいのはフッ素だけではむし歯予防はできないということです。日常生活で、だらだら食いをすることが多く、かつブラッシングを疎かにし口の中にプラークがたまっていれば、「再石灰化」より「脱灰」の割合が高くなり、フッ素でいくら予防してもむし歯発生のリスクが高くなります。
フッ化物洗口は、永久歯のエナメル質の成熟が進んでいない保育園や幼稚園、及び小学校・中学校の期間に実施するとむし歯予防として大きな効果をもたらし、このうち、4から6歳の幼稚園・保育園での実施は、第一大臼歯のむし歯予防を可能とするため、きわめて重要なう蝕予防対策といわれています。
埼玉県では平成12年度から8020運動推進特別事業の一環として、埼玉県歯科医師会に委託し、この「フッ化物洗口事業」を行っています。
フッ化物洗口事業については資料(PDF:340KB)を御参照ください。
フッ化物洗口実施を希望する幼稚園・保育園、小学校や中学校を対象に、初年度は事業に係る費用(フッ化物洗口液の薬剤、ボトル・歯科医師派遣費用など)を助成し、次年度以降、施設や学校で自主的に事業の継続をしていただいています。
詳しくは、埼玉県歯科医師会事務局事業課まで、お問い合わせください。
電話 048(829)2323 Fax 048(829)2376
A1 フッ素は、地球上に存在する物質で自然界のあらゆるものに存在します。人体を構成する元素としても重要で、特に骨や歯の発育になくてはならないものです。また、私たちが毎日食べる食品で、お茶や紅茶、海草や魚介類、肉や砂糖などに多く含まれます。
A2 永久歯のむし歯予防には、永久歯が生える直前から始めると効果的です。永久歯が生える時期には個人差がありますが、一般的には4歳くらいからフッ化物洗口をはじめることができます。
フッ化物洗口の方法は、7から10mlのフッ化ナトリウムの溶液を口の中に含み、1分間ぶくぶくうがいをするものです。洗口の後、約30分間は飲食やうがいを控えるようにします。
埼玉県が委託事業で実施するフッ化物洗口では、
を昼食後に実施することをすすめています。
また、誤ってフッ化物洗口液を飲まないように、最初は水でぶくぶくうがいの練習をしてから実施しています。
A3 フッ化物洗口液は、全量を誤って飲んでも安全なようにフッ化ナトリウムの濃度がきちんと管理されています。
また、ぶくぶくうがいの後、洗口液をはき出しても全体量の10から15%の液が口の中に残りますが、これは毎日、紅茶を1から2杯飲んだときに摂るフッ素の量と同じ程度です。
A4 フッ素は、Q1で説明したとおり自然界に存在する物質で、過剰な摂取をしない限り害はありません。
しかしながら、フッ素も必要以上に多量に摂取すると次のような害があります。
(1)慢性中毒
慢性中毒には、a.歯とb.骨のフッ素症があります。
a.歯のフッ素症は、顎骨の中で歯が形成される時期に長期間継続して過量のフッ化物が摂取されたときに発現します。フッ化物洗口を4歳で開始したとしても、永久歯の歯冠部はほぼできあがっており、口腔内の残留量が微量であるため歯のフッ素症は発現しません。
b.骨のフッ素症は、8ppm以上のフッ素が入った水道水を20年以上飲み続けた場合に起こる症状です。日本では、水道水へのフッ化物添加(フロリデーション)は行われていません。
(2)急性中毒
急性中毒は嘔吐や腹痛などを起こすことですが、使用する洗口液は誤って飲んでしまっても急性中毒を起こさないようフッ素の量が管理されています。
埼玉県で実施している洗口は週1回法と週2回法ですが、1回あたりのフッ素の量は次のとおりです。
また、フッ素は空腹時には100%吸収されますが、食事でカルシウムなどをとった後は吸収が低下します。
埼玉県では昼食を終え、歯磨きの後に洗口を指導していますので、急性中毒のリスクはより低くなります。
週1回法の場合(小学校・中学校対象)…0.2%のフッ化ナトリウム溶液 約10ccでぶくぶくうがい
フッ化ナトリウムの量(水1リットルあたり)
水1,000cc(1リットル)×0.002(0.2%)=2g=2,000mg
フッ素の量はフッ化ナトリウム1mgあたり約0.455mgなので
2,000mg×0.455=約910mg/1,000cc(1リットル)
洗口につかう量は約10ccなので
910mg÷1,000×10cc=約9.1mg
フッ素による急性中毒が起こるのは体重1kgあたり2mgといわれています。体重20kgのお子さんの場合
2mg×20kg=40mg(急性中毒が起こるフッ素の量)
よって
約9.1mg(1回あたりのフッ素量)<40mg(急性中毒を起こすフッ素の量)
週2回法(対象:保育園・幼稚園4~5才・フッ化ナトリウム0.1%溶液約7ccを使用)を同様に計算すると1回あたりのフッ素の量 3.2mg<30mg(体重15kgの幼児の急性中毒を起こすフッ素の量)
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