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掲載日:2023年1月11日
環境科学国際センター研究課題(化学物質・環境放射能担当/H30~R2)
埼玉県内の水系における放射性物質の実態把握
(化学物質・環境放射能担当:野村、伊藤、茂木、大塚、蓑毛、堀井、竹峰/H30~R2)
平成23年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故により、人工放射性物質が大気中により拡散輸送され、本県の一部地域もその影響を受けた。放出された放射性物質は、大気、土壌、河川水等様々な媒体を通じて環境中を移動し、長期に渡って環境中に残留すると予想されます。
県内の河川水に含まれる放射性物質を把握するためには、現在センターで実施している緊急時の前処理方法を用いた測定の検出下限よりも低い濃度で定量する必要があります。そのため、水試料中の放射性物質を迅速かつ低濃度まで測定できる抽出、前処理方法を確立し、県内河川における放射性物質の実態を明らかにします。また、センター内生態園を対象として、水系における放射性物質の動態を解明します。
令和元年度第2回研究審査会コメント
研究課題
埼玉県内の水系における放射性物質の実態把握
研究審査会コメント
- 福島原発事故で発生したセシウム137の動態は必ずしも十分把握されているわけではなく、緊急性、必要性は極めて高いです。特に、これまでCESS生態圏で調べられてきた経緯もあり、ここでの観測結果の解明、自然の河川への適用はこれまでの研究結果を活かす上でも極めて重要です。
- 県内河川の水質、底質及び水生生物について放射能濃度の実態調査を行い、水系における放射性物質の流出・蓄積状況を評価することを目的としています。このような研究は県内ではほとんど為されていないと思われるので、ぜひ進めていただきたい研究課題です。
- 結果はわかりやすいものでした。得られた結果を他の近県や国のデータと比較して多面的な考察をしたらよいのではないかと思いました。また、埼玉県内でも、西部のほうがより強く汚染物質が初期に飛来したため、西部では特に地域ごとの計測ポイントの増加や、河川等を通じての流出による東部への影響も考察できたら興味深いです。
- 事故以降の生活域周辺での放射性物質の動態については、継続的に市民に対して情報を提供していくことが必要であり、情報の有用性は大きいです。
- 提案されている生態園における調査は、水収支に関して閉鎖系であり、メゾコスムとしての価値が高く、陸-水間の放射性物質の動態研究を行うのに適した舞台であると考えます。適切な研究デザインのもと、精力的に研究を進めることで、他では得られない情報を入手することができる可能性があると考えます。