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掲載日:2023年11月10日

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 歩いて楽しいまちづくりのヒント テキストページ

<セミナー>
<クロストーク>

セミナー

 オープニング

モデレーター 晝田浩一郎

 本日、「実践から学ぶ 歩いて楽しいまちづくりのヒント」といったタイトルで埼玉版スーパー・シティプロジェクトを促進していく企画の一つとして、一般社団法人あるっこの代表理事 並木有咲(なみき・ありさ)さんに来ていただきました。

 歩いて楽しいまちづくりを実践されてきた並木さんの知見や想いを是非共有していただきながら、みんなで「なるほど、こういうまち歩きがあるのか」「こういうことがウォーカブルにつながるのか」みたいなことを一緒に考えていければと考えております。

 本日、株式会社官民連携事業研究所 晝田浩一郎(ひるた・こういちろう)がモデレーターを務めさせていただきます。皆さんよろしくお願いします。

 今日の内容は、御参加できなかった方や改めて見直したいという方のためにレコーディングを取らせていただき、後日、埼玉県のウェブサイト、YouTubeにて動画を公開していく運びとなっております。

 皆さんの顔や名前が出ることはないのですが、レコーディングをさせていただく旨、御承知おきください。また今回は、画面オフ、ミュートでの御参加をお願いいたします。

 埼玉版スーパー・シティプロジェクトを促進するに当たって、第1回のセミナーは7月に「スマート技術活用のヒント」というタイトルで、土屋俊博(つちや・としひろ)さんに「スーパー・シティ」や「スマートシティ」をテーマに語っていただきました。見逃した方やもう1度見たい方は、後ほど御覧いただければと思います。 

 本日は、「ガバメントピッチ」や「埼玉版スーパー・シティプロジェクト」、「ウォーカブルシティ」などに関心のある方にたくさん御参加いただいております。お互いに学びと気づきを共有していければなと思っております。よろしくお願いいたします。

 それでは、早速始めていきましょう。よろしくお願いいたします。

 まず、簡単に、並木さんから自己紹介いただければと思います。一般社団法人あるっこ 代表理事 並木有咲さん、自己紹介を簡単にお願いいたします。

登壇者 並木有咲

 はい、皆さん初めまして。

 一般社団法人あるっこの並木有咲と申します。一般社団法人あるっこは、まち歩きが好きな人を増やすとか、まち歩きを楽しいと感じる人を増やすような取組をしております。

 私自身も歩くのが大好きで、毎日1万歩を目指して歩いていますので、今日はそんな歩くことが好きになるとか、歩きたくなるまちってどういうまちなのか、そういうトピックをお話できればと思っていますので、よろしくお願いします。

モデレーター 晝田浩一郎

 はい、お願いします。

 今日は簡単に、歩くってどういうことか、まず最初に40分ぐらい並木さんから共有していただいて、残り40分ぐらいはクロストークのような形で皆さんからチャットでも御質問等をいただきながら、より“ウォーカブル”や“歩くまち”を深掘りしていければと思います。

 一旦皆さんとの目線を合わせるといった意味で、並木さんがどういうことをやっているのか、参加者たちがどんな想いなのか、といったところを40分程度でシェアしていただきます。

 それでは、よろしくお願いいたします。

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 登壇者自己紹介

登壇者 並木有咲

 はい。皆さん初めまして、一般社団法人あるっこの並木有咲と申します。

 改めて、簡単に自己紹介をさせていただければと思います。

 一般社団法人あるっこは、2022年12月に立ち上げて、もうすぐ1年という団体です。それまでは、任意団体としてまち歩きのイベントを開催したり、SNSを更新したりしていました。歩く楽しさを人に届けるということは、もちろんこれからもやっていきたいと思いますが、そもそも「まちが歩きやすい」とか「歩きたくなるまち」じゃないと、歩く人も歩く楽しさを感じる人も多くは増えていかないよね、という想いがあり、一般社団法人化をして、行政や民間企業と連携して活動を始めています。

 私自身は、埼玉県だとふじみ野市の総合型地域スポーツクラブで学生時代にインターンシップをしたことがありまして、今回はまた御縁を感じるなと思っております。

 団体の説明を簡単にお伝えしていましたが、事業の内容として、まち歩きのイベントを企画運営したり、歩きたくなるまちづくりに関するアドバイス業務を行っていたり、あとはまち歩きを楽しむ視点を届けるということで、SNSとかコミュニティの運営もしております。現在、6人ぐらいで活動している団体でございます。

 今回は「歩いて楽しいまちづくりのヒント」というテーマなので、最近「ウォーカブルシティ」ってよく聞く言葉かなと思いますが、改めて「ウォーカブルシティ」って何だっけ、というお話と、日本や世界で行われている事例を簡単にお話しして、そのあとに、2つ目としてウォーカブルシティの実践や考え方、「歩くことを文化にしていく」その軸の置き方などをお話できたらいいなと思っています。3つ目としては、今までの一般社団法人あるっこの取組も含めて、人の視点で歩きやすいまち、ウォーカブルシティに、居心地が良いまちにしていくために「こういうアプローチ方法があるんじゃないかな」「今後はこういうふうにしていくといいんじゃないかな」みたいなお話をさせていただければと思っております。

 1.ウォーカブルシティとは

 まずは最初に「ウォーカブルシティとは」についてお話をさせていただければと思います。

 「ウォーカブルシティ」はアメリカで生まれた言葉で、直訳すると、歩けるまちといった意味合いがあります。まちなかを人間中心の歩きたくなる空間にしましょうという概念です。

 人口が減って、高齢化してくるという課題は日本中のどこでも共通して持っていると思いますが、例えば、車が使えない世代の方が増えていく中で、「歩いて生活圏内が完結する」、そういうのを目指していきましょうというお話だとか、あとは幹線道路の整備が終わってきて、車の道路整備が終わったから次は人中心の道路整備をしていきましょうですとか、そもそも人が歩くことによって、健康的な効果や経済的な効果、あとは排気ガスの減少など環境問題的にも人が歩くという移動手段や行動はいいよねという視点で、最近はウォーカブルシティが語られることが多くなっていると思います。

 ウォーカブルシティは概念的な話かなと思っているので、ウォーカブルシティを作るに当たってよく聞くキーワードを書きました。「歩いて楽しいまち」ですとか、「居心地が良いまちの空間をつくる」ですとか、あとは「歩いて暮らせるまち」というのが、よく聞くキーワードかなというふうに思っております。

 最近は国土交通省がメッセージを掲げていて、ウォーカブルという言葉を出すときに「『居心地が良く歩きたくなるまちなか』づくり」を一番上に掲げていますが、その中で居心地が良く歩きたくなるまちなかづくりって何ですかというお話が「WEDO(ウィードゥー)」、もしかしたら聞いたことがある方も多いんじゃないかと思いますが、政策メッセージのような意味でこの言葉が使われています。

 「WEDO」の「W」は「Walkable」で居心地が良くて、人中心の空間を作ることによって、まちに出かけたくなる、歩きたくなるという行動が生まれること。

 「E」が「Eye level」、歩行者目線で商店街の1階部分には店舗とか自分が関わっていける交流施設みたいなところがあると、人が見ていて楽しいとかまちに関わりたくなるということ。

 「D」は「Diversity」で、誰か特定の人が固まっていてちょっと行きづらいと思ったりするのではなくて、まちに多種多様な方が共存し合えるような空間とか使い方ができるといいよねという話。

 あと、「O」は「Open」。さっきの話にも通じますが、開かれた空間、これはどちらかというと外の空間を言っていると思いますが、公園とか歩道に芝生や椅子があると、そこにとどまっていたくなる、そこで少し休憩していきたくなる、たまりたくなる空間。

 これらを「『居心地が良く歩きたくなるまちなか』づくり」の中で意識するといいというメッセージが、国土交通省の方で掲げている内容です。

 国土交通省が進めていく中で、もう1つ大事なキーワードとして何度も書かれているのが、「官民の連携」です。居心地が良く歩きたくなるまちなかをつくるためには、行政だけの力では足りなくて、まちに開かれている建物以外の公共空間みたいな意味でのパブリックな空間を持っているのは行政だけじゃなくて民間の場合もあるので、官民が連携して、街路や公園、広場、民間空地を人に開いていくような空間にしていくこと、官民が協力して作ることで、居心地がよく歩きたくなるまちなかを作っていく。

 誰か一人がやるのではなくて、協力することによって多様な人々に出会ったり、そこで「こういうまちにしていきたいよね」ということを話していく中で、交流とかイノベーションが生まれていき、それが実現することで、また共感者がどんどん集まってきて、いろいろな人材や関係人口を引きつけていく好循環が生まれるというお話もされています。

 2020年に、ウォーカブルなまち、居心地が良く歩きたくなるまちなかづくりを進めていく中での法改正がありました。官民連携で計画を策定してビジョンを共有し、それを推進していく「滞在快適性等向上区域」という区域を設定してウォーカブルなまちを推進することによって、補助金がもらえたり、税金の免税があったり、融資を受けられたり、法律の特例とか手続きの簡素化ができますよという取組が国の方で行われています。

 そんな中、いろいろ資料を読み進めていく中で、今、日本で言われているウォーカブルシティのポイントはこの3つなんじゃないかと思っています。

 1つ目が「居心地がよく歩きたくなる魅力的なまちなかづくり」。「LINK&PLACE」を聞いたことがある方はいるでしょうか。  「LINK」は交通で、「PLACE」は空間です。今までは道を整備して「交通が良くなったよね」ということだけ語られたり、「ここの空間おしゃれだよね」ということだけで語られたりしていました。それはそれでいいのですが、その空間と空間の間の交通機関を充実させたり、空間と交通(道)を繋いで、まちなかの道を人中心に再構築しようというポイントです。

 2つ目は「コンパクトでゆとりのあるまちづくり」と書きましたが、都市機能が拡散しているような場所を集約してまちの核をつくり、その中で人中心のコンパクトでゆとりのあるまちづくりをしていくことがいいんじゃないかということです。

 3つ目は「官民連携の取組による『まちなか』づくり」。官とか民とかだけでなく、パブリックスペースのまちなかを官民連携の取組によって人間中心にしていくことでまち全体が変化していくということ、この3つがポイントとして挙げられているんじゃないかと思っております。

 ウォーカブル推進都市というのは、今日御参加いただいている方の中でも推進都市に設定されている方もいらっしゃるのかなと思いますが、国土交通省がウォーカブル推進都市を募集し、それに賛同する自治体が、2019年207団体から2023年9月時点で352団体となっており、埼玉県でもスライド(資料9ページ目)に書いてある自治体が賛同しております。

 ガイドラインも整備されており、結構ボリューミーな知識量ではありますが、ウォーカブルなまちを作っていくために、特にハードの今後ですとか、人を中心にしていくにはどうしたらいいのだろうというような、ヒントとなるガイドブックが整理されているので、もしよかったら見ていただくといいかと思います。私も勉強中でございます。

 あとはウォーカブルに興味がある方は是非読んでいただけたらと、こちらも(資料として)つけさせていただきました。ウォーカブルシティの第一人者の1人でもあるジェフ・スペックさんが書いた「ウォーカブルシティ入門」という本です。その中で「10のステップで作る歩きたくなるまちなか」ということが書いてあるのですが、10のステップの中でもウォーカブルの4つの要素がさらに上位でまとめられていて、「利便性の高い歩行」「安全な歩行」「快適な歩行」「楽しい歩行」、これらを意識すると、ウォーカブルなまちにつながっていくんじゃないかということが書いてありましたので、もしよかったら見てみてください。

 実際に国内で行われているウォーカブルな事例を、2つほど引いてきました。

 御存知の方も多いかと思いますが、愛媛県の松山市、花園町通りというところで行われている事例です。整備前は街路のアーケードがあって少しまちなかが暗かったんですが、そのアーケードを撤去して、さらに片側に3車線あった道路を1車線だけに減らして歩行空間を広げて、お店などもその歩道に開いていくようなイメージで作られているので、統一性があって、人が賑わっているような空間が作られていると思っています。実際に、歩行者の数も2倍ぐらいに増えているし、まちの地価も上がっているということがデータでも見えているようです。

 ウォーカブル都市の事例の2つ目として、これは、これからウォーカブル都市になっていくであろう取組ですが、静岡県の沼津市です。沼津市は2040年に沼津駅が高架化され、さらにスペースが増えていくようなところです。それに向けてどのようにまちを作っていこうかという話の中で、(資料13ページ目の)この一番左の写真の水色のところが、2040年にまちの主な車道になるところで、今、既存にある道路は灰色のところですが、灰色部分は人中心に変えていくので、車が通って利便性を保つところと、その他は人中心の空間にしていくというプランニングを立てていらっしゃいました。

 その中でも、官民両方が取り組むアプローチというのを大切にされています。公共空間の再編成、整備の計画は市が取り組むもので、市が全体で決めたものを民間が取り組めるようにデザインガイドラインをまちのエリアごとに作るなど、例えば「お店のファサードを作ってください」ですとか、デザインガイドラインを整えて市と民間が連携して進んでいます。

 あと、2040年は今から17年後ですが、そこでいきなりまちがガラッと変わるよりは、徐々にまちの人にもまちの未来像を見せるような形で、最近「パークレット」とかって聞いたことある方はいますかね。歩道に隣接する道などを人が滞在できる場所にしていくという意味ですが、簡単に言うと(資料13ページ目の)一番右の写真のような形で、歩道空間に椅子を置いたり芝を敷いたりして、それをキャラバン的にいろいろな道で実験をしていって、将来的には人中心のまちになっていきますよという将来像を見せたりとか、そういう取組もされているようです。

 次は世界の事例で、こちらも聞いたことがある方がいらっしゃるかなと思いますが、パリです。

 自宅から15分圏内で学校とか職場とか買い物とか医療機関、公園とか、街の機能にアクセスできるような都市を目指す政策が行われていて、道路を歩行者空間に変えたり、凱旋門があるシャンゼリゼ通りを月に1回車が通れないようにしたり、学校の前の道路に自動車が入れないようにしたり、一部の道路を除いて車が時速30キロまでしかスピードを出せないようにしていたり、そういうような15分圏内で、歩いたり自転車とかで完結するようなまちなかづくりが行われています。日本も高齢化が進む中で選ばれるまちというのは、こういう歩ける範囲でどれぐらい生活サービスが充実しているかというところになっていくのかなと思います。

 これは(資料15ページ)私がこのあいだ見てきた写真ですけれども、韓国のチョンゲチョンという川です。ここは2005年ぐらいまでこの上に高速道路が走っていて、川を復元させようというので、高速道路を撤廃して、人が歩いて憩えるような空間を作ろうと整備されている場所の事例です。

 実際行ってみると、ウォーカブルだし、車椅子の方とかベビーカーの方はローラブルだし、本当にいろいろな方がくつろげるような歩行者空間ができあがっていて、とても素敵な空間です。韓国に行ったことがある方は分かるかも知れないですが、歩行者の空間が少なく、結構車が猛スピードで走っているのがよく見られるところなので、そういう状況もあってか、ここは本当にすごく人が移動するのもそうだし、滞留するみたいで、人がすごくいるなと思いました。

 (資料15ページ)一番右の「まちなかのパラソル」というのは川の話ではなくて、まちなかの信号のところにパラソルが立っていたりとか芝生が敷かれたりしていて、まちの中で少しとどまれる空間がすごく素敵だなと思ったので載せております。

 ここまでが、今どういうふうなことが行われているのかというお話です。

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 2.ウォーカブルシティ実践の考え方

登壇者 並木有咲

 次は実践の考え方ということで、ここから、一般社団法人あるっことしてやっていることにも少し近づいていくようなお話ができたらなと思っています。

 ウォーカブル推進の課題として、今お話ししましたが、結構ハード整備に取り掛かることにハードルがあるなということを感じています。あとは、まず第一歩目として何をしたらいいんだろう、パークレット作ればいいのかなとか、道に椅子を置けばいいのかなとか、何をしたらいいかわからないというところ。それから、実際に作っただけだと作って終わっちゃうので、歩いてもらう人とかウォーカブルシティを体感してもらう人へのアプローチをどうしたらいいんだろうということ。また、そもそもこれをやってどういう効果が得られたのか、という計り方が難しいという課題もあるのかなと思っております。

 そんな課題がある中でウォーカブルシティが目指す先のような話をすると、噛み砕くと、「どんな人も居心地よくまちを回遊している状態」がウォーカブルなんじゃないかなと思っています。つまり、「まちを歩くことが文化となっている状態」かなと思っているので、ここからは実際にまちに人の動きが文化として根付いているような事例からアプローチ方法を考えられないかなと思って、2つほどウォーカブルから離れて事例を挙げさせていただいております。

 私が歩いて楽しいまちとかウォーカブルシティを作るために、歩くが根付くってどういうことなんだろうと話をしたときに、ぱっと思いついた例です。

 今、東京でランナーが走るというと皇居ランかなと思うんですが、なぜ走っている人があんなにいるんだろうというのを振り返ってみようと思います。

 そもそも1964年の東京オリンピックのマラソン競技で、円谷幸吉選手が銅メダルを取ったことでランニングブームが起こっていた中、実は皇居から近い銀座のホステス40人が皇居1周マラソン大会を実施しました。それまでもランニングのイベントはちょいちょいあったみたいですけれども、銀座のホステス40人のマラソン大会が結構インパクトが強く、「皇居1周マラソンって何だ」というのがどんどん噂として広がっていき、マラソンクラブが設立されて皇居ランを開始する団体さんがいたり、今では皇居に多くのランナーが集まるような皇居ランが一般化していったようです。50年ぐらい前ですかね、まちの近くにいたホステスさんが走ったことをきっかけに、「ここで走れるんだ」という気づきを人に与えて、結果的に今、ランナーさんがシャワーを浴びて帰れるようなランニングステーションができたりとか、皇居自体にランナーのルールができたりとか、あとからインフラがついてくる形で、さらに走りやすい環境になっていくというのが皇居ランの事例です。人起点で文化が作られていくというのがあるかなと思っています。

 もう1つの事例が「長崎さるく」。御存じの方もいるかなと思っているんですが、17年ぐらい前ですかね、長崎万博としてまちあるき博覧会の「長崎さるく」が開催をすることになりました。万博で歩くってどういうことって初めて聞いた方は思うかなと思うんですが、一定の期間で市民の方が中心となって街をガイドしていくイベントを、同時多発的にまちでやっていくような万博でして、そこで意識していたことが、市民に、そもそもの長崎さるく、博覧会の仕組み作りをやっていただいたりとか、ガイド役を市民が担ったり、まちの資源と人とを生かしたような博覧会になっていました。

 それをすることによってまちに興味を持つ市民の方が増えたりですとか、実際にまちに関わっていただける人の発掘ですとか、あとはいろいろな人がまちを歩くことでまちが綺麗になったという効果もあったみたいです。多少課題はあると思うんですけれども、今も長崎市におけるまち歩きのブランドとして長崎さるくという概念があり、長崎に観光に行く人が長崎さるくのサービスを通してまち歩きに参加するとか、そういうような流れが生まれています。

 これは長崎の市民性みたいなところで、外から来た人を受け入れるですとか、そういう市民性を生かして、市民が主体となる仕組みを作ることで、まちを歩きながら案内するという文化がまちに残り続けているような事例かなというふうに思っております。

 この2つの事例から考えるウォーカブルシティの考え方をまとめたのですが、おさらいをすると、どんな人も居心地がよくまちを回遊している状態が、まちを歩くことが文化となっている状態として考えると、そのアプローチの1つとして、ハード整備も同時にできたらいいと思うんですけれども、人が歩く、人が回遊する、歩きやすくなり居心地が良くなるということにおいて、何か既にまちで生かせるようなポイントは何だろうというのをちゃんと言語化したりとか、そのまちにあるポテンシャルみたいなものを生かして、そこを起点として歩いてもらうためには、最初は誰に歩き方とかを伝えたらいいんだろう、誰にアプローチしたらいいんだろう、みたいなことを言語化する必要があるのかなと思って、この2つをアプローチ方法として考えています。

 そんな中で、ウォーカブルシティが形成される流れみたいなところを考えたときに、皇居ランのように結果的にいっぱい走る人がいるまちになったとかはあるんですけど、まずは誰に歩いてほしいかとか、このまちのポテンシャル、まちらしい歩行空間とかウォーカブルシティって何だろうというのを、しっかりと、仮説としてでもいいですけど、決めた上で、ハード整備はもちろんなんですけれども、歩く楽しさ、ウォーカブルシティの楽しみ方を知ってもらうことが大切です。結局歩くのは人なので、人側にこういう風に歩くと楽しいよとお伝えしたりとか、人に向けてのアプローチも大切かなというふうに思っています。

 例えばまち歩きを楽しむ視点を伝えるですとか、冒頭でお話した居心地が良い場づくり、パークレット的な場づくりの実験をしたりとかして、それで得られた気付きをまたハードの整備に落としていったりとか、何か相互作用ができるといいなと思います。あとは、人がたくさん回遊するようになるとか、歩くことによってそこにビジネスのチャンスが生まれたりとかもあると思うので、ランニングステーションの事例とかはまさにそうですけど、歩く楽しさを感じる人がまちに増えていくことによって、ハードの整備以外の部分のソフトの、例えば民間企業がウォーカブルに何か寄与するような取組をまちなかで実践をしたりとか、歩き方の普及みたいなものがあるかと思っているので、ハードの整備でお金かかるなとか、計画を実行するまでに時間がかかるなとか、そういう課題もあると思うんですけど、まず人に向けたアプローチをやってみて、結果ソフト・ハードの両面からまち全体がウォーカブルになっていくというような流れができるといいんじゃないかなと思っております。

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 3.人視点で実践する、あるっこの取組

登壇者 並木有咲

 今のお話が、歩くを文化にするという考え方と軸の置き方みたいなお話をしましたが、3つ目として、実際に人視点で実践する私たちの取組の事例とか、今後の展開みたいなお話をさせていただければと思っております。

 先ほどもスライドで出させていただいたウォーカブルシティが形成される流れの中で、特に私たちがやっていきたいと思っているところが、赤で色をつけているところです(資料24ページ)。歩く楽しさを知ってもらう、人側への働きかけをやっていきたいと思っています。ですので、まち歩きを楽しむ視点を伝えるというところを重視して、今やっているような形です。

 最終的にウォーカブルとか居心地が良く歩きたくなるまちなかへ近づいていくための考え方として今考えているのが、まず歩いて楽しいという視点を発信することによって、まちの中で歩く楽しさを実感する人が増えてくる。そうすることによって、もっとここのポイントが歩いて楽しいなというのが出てきたり、もっとこうだったらもっと歩きたくなるのになとか、伸ばすべき点とか課題が見えてくる。それを少しずつ解決していくことによって、居心地が良く歩きたくなるまちなかへと近づいていく流れができていくんじゃないかというふうに思っています。

 私たちがやっていることとしては、ビジョンとして「まちに散歩文化をつくる」ということをやりたいと思って、ずっと活動をしています。

 本当に人によって、まちを楽しむとかまち歩きを楽しむ視点はいろいろだと思うんですね。歴史が好きで、まちの中で歴史を感じるとわくわくするとか、それよりもまちに住んでいる人の暮らし方を知ることによって、またここに来たくなるという動機が生まれたり、本当にまち歩きを楽しむにはいろいろな視点があると思うので、そのいろいろな視点を伝えながら、まち歩きが好きな人を増やすことによって、健康増進だったりとか、結果的にウォーカブルシティの推進に寄与する活動というのを展開しています。ですので、最初はこういうふうなまちになるといいなとか、もっとこういう人に歩いてほしいとか、そういうところから計画を策定していって、実際にまち歩きをして、ゲーム性が強いまち歩きとか課題解決をメインにしたまち歩きとかいろいろあるんですけれど、それを実践して、アンケートを取ったりしながらフィードバックをしていって、最終的に「コミュニティを作る」になるのか、「まちの施策に落としていく」になるのかはまちまちなんですけれども、ウォーカブルなまちにつながっていくような取組をしています。

 ここからは実際にどういうふうにしているのか、何個か挙げさせていただければと思います。

 今、アクティビティ型と(資料27ページに)書いてありますが、こちらは八重洲と日本橋と京橋を合わせて八日京(はちにちきょう)という呼び方のエリアです。東京駅の八重洲口はどうしても平日のワーカーさんのイメージが強くて、特に若い人が行くようなイメージがないけれども、休日も人に歩いてほしい、ウォーカブルになってほしいという想いがエリアとしてある場所です。

 エリアの資源としては、古美術とか老舗があると思えば、すごい最先端のビルとか新しい飲食店もあるので、そういう古いものと新しいものが融合するまちの魅力みたいなところを歩いてもらう。特に若い方を中心にお伝えして、まち歩きに参加してくださった方が定期的にまちを訪れたり、まちを発信するきっかけを作るみたいなことをやっています。これはアクティビティ型なので、若い方を巻き込むという点で、何かまち歩きのミッションを用意して、チームになって解決したりとか、東京駅八重洲口周辺のエリアで、普段はただ通り過ぎてしまうまちに、何かきっかけとか「こういうものがあるんだ」という気づきをもらっていただけるようなイベントにしています。

 これ(資料28ページ)は埼玉県の横瀬町でやらせていただいたものです。横瀬町は「日本一歩きたくなる町 横瀬」を掲げていて、特に最初は、町外から来た人がまちが楽しいと感じてもらえるものって何かないかなというお話だったので、東京や神奈川に住んでいる20代から50代ぐらいの方にまち歩きに参加していただいて、実際何もまちに対する知識がない状態で歩いてみてどう感じたか、あとはもうちょっとこういうのがあったら歩きたくなるなというのを言語化してもらったりしました。逆にこの右の写真のマップは、まちに住んでいる方に、まちのお気に入りの場所を教えてくださいというふうに言って書いていただいて、実際外から来たまち歩きに参加している方がこれを見て、さらにまちにこんな魅力があったんだというのを知ってもらうような取組をしています。

 あとは、長崎県の対馬市で観光業を営んでいる方と一緒にやらせていただいていたものです。まちの観光ガイド不足が課題としてあり、外から来た人に対してまちの歴史とかを伝えるだけでなく、まちの暮らしとか、まちの人が「ここがお気に入りなんだよね」というまちのものをお伝えすることによって、またまちを歩いてもらうきっかけを作ったりとか、まちに暮らす方が暮らし方を伝えるガイドさんみたいなことができたらいいよねというので、実際にそのガイドさんの候補になるような方に来ていただいて、こういうふうなまち歩きをすると、もっと魅力的なものが見つかりますよねとか、そういう視点で開催した事例になっております。

 次の事例で最後です。

 前回スマートシティの回でお話されていた方と一緒に、千葉県の流山市で開催した事例です。これはコミュニティ型と書いてあるんですけど、まちで挑戦する若者の仲間をつくりたいというお話があって、そのまちで挑戦する若者がまず、まちの課題に目を向けるところをつくる一歩目として、まち歩きを開催した形になっています。実際はまちの方の参加が1だとしたら、外から来た方が2ぐらいの1対2ぐらいの割合で参加されて、3チームに分かれてまちを歩いてもらい、歩いた中で感じたまちの資源とかを、今、(資料30ページに)画像でみんなが笑っている写真があると思うんですけど、そこでペタペタ言語化したものを貼っていただいて、逆にこういうのが課題だとか魅力なもの同士を掛け合わせて、流山でこんなことが挑戦できるんじゃないかなというのを妄想してみたり、そういう取組をしました。

 このまち歩きを開催する上で意識しているポイントは、そもそも、ウォーカブルシティというところは結果的にできていくので、歩いて楽しむポイントをまちの人に伝えていくみたいな方向性からのお話ではあるんですけれども、また歩きたくなってもらうために、まち歩きという手段を通してどういうことを意識しているかというのがこの3つになっています。

 まず1つ目が、「まちとの接点作り」ですね。ただ観光で来るとかではなくて、まちの暮らしに触れることを意識して、何か自分とまちが少し近づいたような感覚ですとか、またここに来たいなと思ってもらう人とのつながりみたいなものを作れるようにしています。

 2つ目が「自分事化」と書いているんですけど、ただ歩いてよかったねとか、ここがなんか楽しかったねで終わりではなく、歩いて楽しい、かっこいいなと思ったポイントをちゃんと自分の言葉で、参加した方に言語化してもらうことで、歩いて楽しいことや課題感が自分事化されて、さらにもっとここが歩きたくなるためにどうしたらいいんだろうとか、そういう課題とそれを行動するきっかけが出てくるかなと思っているので、自分事化していただけるように意識しています。

 3つ目は「新たな気づき」ですね。最初の方で、まち歩きは本当に多種多様な視点があるとお話ししたんですけど、他の人がどういう視点で歩くのかとか、そういうこともシェアすることによって、新しいまち歩きの楽しみ方とか、またこういう視点で歩いてみようと思うようになったりとか、そういうことが促せたらいいなというので、他の人のまち歩きの視点に触れるということも大切にしています。

 最後に、まとめになるんですけれども、ウォーカブルシティは「まちなかを人間中心の歩きたくなる、居心地の良くなる空間にすること」かなと思っています。ウォーカブルシティとか歩いて楽しいまちづくりを推進していく上で、ハードの整備だけを先行するのではなくて、このまちだからできるウォーカブルの姿を言語化したり、まず誰に歩く楽しさを届けるかを作った上で、実験したり歩く楽しさを伝える活動を同時に行って、ハードの取組とか全体の取組に落としていくことができると、効果的なんじゃないかなと思っています。

 最後に宣伝させていただければと思うんですが、そういう形でこれからも、人が歩く楽しさを感じ取れるみたいな軸で、ウォーカブルシティに寄与する取組を行っていきたいと思っています。直近、10月は横浜市の保土ケ谷区さんでやらせていただいたりですとか、あとはまた八重洲・日本橋・京橋で3回目のイベントをやったりとか、あとはこの大洗町でやったりしています。(資料36ページの)右のQRコードに、イベントのイメージとか、チケットを貼ってリンクを貼っているので、もし御興味があれば、見ていただけたらなというふうに思っています。

 御清聴いただきありがとうございました。

 今後、一般社団法人あるっことしても、人に歩く楽しさを届けるということを軸に、ウォーカブルの取組ですとか、一緒にやっていける方をどんどん探していって、歩いて楽しいということを軸にウォーカブルなまちが日本全体に普及していくといいなと思っておりますので、引き続きよろしくお願いします。ありがとうございました。

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 クロストーク

モデレーター 晝田浩一郎

 並木さんありがとうございました。

 ここからは30分ぐらい、クロストークのような形で、参加者の皆さんにチャットで感想や意見・質問を書いていただきながら、もう少しいろいろなことを深掘りしていければと思っております。

 では、並木さんにいろいろ聞いていければと思います。

 官民連携、自治体との連携もすごく大事だという話が途中であったかと思います。共に創る「共創」について、どの分野でももちろん大事だと思いますが、特にこのまち歩きやウォーカブルの視点で、並木さんとして「やっぱここは大事だよね」、「行政と連携し、こうしたところを一緒になってやっていけると良さそうなんだよね」みたいなこと、その辺りいかがですか。

登壇者 並木有咲

 まち歩きというと、どうしてもサークル的な意味合いが強くて、それがあることも重要だと思いますが、実際にウォーカブルシティをウォーカブルしている方々の行動をしっかりと政策とかハード面に落としていくことが必要だと思っているので、大事にしているポイントとしては、最初に私たちと一緒にやらせていただく方々で、目指す視点や目線感、そんな難しいものじゃなくて、「こういう人にもっと歩いてほしいね」とかでいいんですけど、そういう目標設定を、目線を合わせてお互い歩み寄っていくことが、共創という分野で一番大事なのかなと思っています。なので、自分たちが目指したいことも腹を割ってお話しして、その中で一緒に目標を作っていくというのが、共創において大切なんじゃないかなというふうに思っています。

モデレーター 晝田浩一郎

 「こういう人に歩いてほしいよね」って、いわゆるペルソナみたいな話になってくるのかなと思うんですけど、市外から来てくれた40代ぐらいの御夫婦なんだとか、80代の御夫婦なんだとか、市内で暮らしている子供が生まれたばかりのまだベビーカーを押している家族連れとかシングルファーザー・シングルマザーなんだとか、それぐらいの粒度感というかレイヤー間でも、まず決めてみるみたいな感じなんですかね。

登壇者 並木有咲

 そうですね。あとはどういうポイントを見てほしいとか、そういうことも含めてですね。

モデレーター 晝田浩一郎

 ポイントというのは「歴史好きな人たち向け」とか「自然好きなかた向け」とか「食べ歩きが好きな人」みたいな、そういうことですか。

登壇者 並木有咲

 そうですね。あとは、まちの暮らしに触れるとか、もっと引いたテーマで見ていくような形でもいいんですけど、そういうことを意識しているかなと思います。

モデレーター 晝田浩一郎

 まちの暮らしに触れるっていうのは、確かにありますもんね。

 さっき事例紹介のところで「ローラブル」という言葉が出てきたと思うんですが、「ウォーカブルシティ」とか「まち歩き」っていうと、あるっこも「散歩文化」というところだと思うんですが、とはいえ、自転車であったりとか最近だと電動キックボードとか車椅子の方、ベビーカーの方、いると思います。そうしたウォーカブルとローラブルの親和性であったり、実は一緒なんだよねとか、そこら辺を並木さんの中で、考え方としてどう捉えていますか。

登壇者 並木有咲

 まちなかが居心地良いなって思うことに関しては、一緒かなと思っています。あるっこは、手段としてのまち歩きに絞っているだけであって、居心地がいいから自分で回遊したいと思うようになるところは、ウォーカブルであったり、ローラブルであったり、電動キックボードであったり、回遊する手段はたくさんあっていいのかなというふうに思っています。

モデレーター 晝田浩一郎

 キーワードとしていくつか挙げていただいたかなと思いますが、居心地の良さみたいなところ、外で過ごす、外で時間を使う、その中で居心地がいいから部屋に閉じこもっているんじゃなくてちょっと出かけてみようかなと思える、そんな居心地の良さってことですかね。

登壇者 並木有咲

 そうですね。家の外にも憩える場所があったりとか、定期的に通りたくなる街路樹の、例えばお花が綺麗な場所があったりとか、そういう自分が家の外で「心地いいな」とか「自分の足で出かけたいな」って思うような場所ですかね。身近な。

モデレーター 晝田浩一郎

 回答が重複になっても全然いいかなと思うんですけど、並木さんが考えるまち歩きであったり、歩きたくなるまちっていうのは「こんなことなんだよね」ってありますか。

登壇者 並木有咲

 本当に人の視点によって違うので難しいなって思うんですけど、一番理想的な形だと、さっきも15分圏内のコンパクトなまちというのがあったんですが、15分って大体歩いて1キロぐらいじゃないですか。1キロ圏内に拠点が何個かあって、そこを回遊して楽しめるような場所、さらに拠点にもいろいろな色があって、まちの歴史を感じられる場所もあれば、商業的な賑わいを感じる場所もあるみたいに、まちにいろいろな色があり、楽しめる動線が散りばめられてるようなまちは、歩いていて楽しいなって思います。

モデレーター 晝田浩一郎

 そこの15分圏内、約1キロ圏内のところでというのは、「確かに」と思います。

 もしかしたらここはウォーカブルとは、ずれるかもしれないんですけど、僕は元々愛知県の岡崎市役所の公務員だったので(岡崎市の例を挙げるのですが)、岡崎市ってすごく歴史であったりとかユーチューバーさんで盛り上がっているんですが、実はいろいろな魅力がある。歴史的であったり自然であったり買い物であったりもろもろある中で、なかなか気づけない、発信がされていないところがあると思います。

 あるっことして、並木さんたちがやっている中で、「こういうふうにして見つけていくといいよね」とか、「まちの魅力ってこういうふうに発信していくと伝わるよね」とか、意識しているところって、あったりしますか

登壇者 並木有咲

 いろいろあるんですけど、発信みたいなところでいくと、どこがその人のまち歩きの刺さるポイントかはそれぞれの場所だと思うので、イベントを企画するときは、まちの中にもう既にいる方と、外から初めて来る方と、そのまちに住んでみたい方がうまくミックスされると、それぞれ見るポイントや気になるポイントが違ったりするので、参加者同士で新たな気づき合いができたりすることがあると思っています。

 発信とか、観光地とかで言うと、1つメインのフックがあって、それだけを伝えるのではなくて、「そこに行って、ここも歩くと楽しいよ」みたいにいろいろなポイントを発信していく、点としてまちの魅力を紹介するのではなくて、面として発信して実際に歩き方をお伝えするのが、一番効果的かなと思います。

モデレーター 晝田浩一郎

 「並木さんはここが素敵だと思ったんだ、私は全然その視点がなかったな」とか、「晝田さんはそういうところを見るよね」みたいな会話ができると、そこがより魅力発信につながることになりますね。

登壇者 並木有咲

 そうですね。

モデレーター 晝田浩一郎

 並木さん達があるっことしてやられてきたイベントや取組の中でも、15人とか20人が参加する中で、そういう新たな気づき、学びの共有、魅力の共有みたいなことは結構行われているってことなんですか。

登壇者 並木有咲

 そうですね。まち歩きのイベントをするときは、あんまり私たちもまちに詳しくなりすぎないように気をつけて、ポイントを絞って参加者の方にまちの見方だけを伝えるんですよ。

 例えば、「看板を詳しく見てみると面白いよ」とか、「まちを鳥になった目線で引いて見ると景色として何があるのかなとか発見ができるよ」とかそういうことをお伝えするんですけど、参加者自身に気づいてもらうことを大事にしていて、まち歩きが終わったら、一番印象に残ったポイントとか感想を、参加者全員でシェアしてもらうことは気をつけてやっています。

モデレーター 晝田浩一郎

 最後のまとめのポイントで、自分ごとにしていくっていうところにも繋がるのかなと思うんですけど、やっぱりそこの自分がどう思ったか、他の人がどう思ったかっていうのを共有するみたいなことは、やっぱり大事なんだなって聞きながら感じましたね。

 そうした中で、まずはハード整備ってどうしてもお金も時間もかかる。特に行政の立場からすると、議会対策であったりとか地元住民への理解促進、お金だけじゃない気持ちっていう問題も出てきたりするので、なかなか最後はハード整備まで時間がかかる、計画作りにも時間がかかるっていうところだと思うんですけど、例えば、(このセミナーの参加者からの)質問でもいただいていますけど、オーバーツーリズムでめちゃくちゃ人が来ちゃって、地元住民がもう生活できませんみたいな。分かりやすい例で言えば、京都の清水寺の辺りとかは外国人ばかりで、「日本の風情を楽しみに来たのに」、みたいな声も実はあるっていうのに近いのかなと思うんですけど、例えばこの埼玉でも、小江戸って言われるようなところであったりだとか、そういったところだとやっぱりオーバーツーリズムの問題も出てくるなとか思います。

 答えがあるわけではないし、一緒になって考えなきゃいけない、いろいろな取組を考えていかないといけない、一つの策じゃないというのは分かった上で、そうしたオーバーツーリズムの問題であったりとかメインが1個あるっていうところで、あえてウォーカブルの取組であったりとか、地元住民も観光客も歩いて楽しい居心地の良さみたいなことをやるためには、どういったことが必要になってくるか、何か考える視点・きっかけはありそうですかね。

登壇者 並木有咲

 観光客の方が歩いて楽しいと思うポイントと、住んでいる方が歩いて楽しいと思うポイントはやっぱりちょっと違うなって思うんですよね。観光客の方だったら「小江戸のような雰囲気を感じられる」ですとか、「浴衣を着て歩ける」とかそういうところに歩く楽しさを感じられるかなと思うんですけど、住んでいる方は「広場でくつろげる空間があるからそこに行こう」とか、「ここは買い物するのに便利だから行こう」とか、そういう、どちらかと言えば利便性とか休憩・息抜きみたいなので、ウォーカブルとか居心地の良さを感じると思うので、そういうものを作って整備するだとか、あとは住民同士のネットワークとしてまちの人同士で交流して、話せる環境を作るとか、誰に向けてどういうウォーカブルが必要とされているかを整理して、落としていくといいのかなと思います。

モデレーター 晝田浩一郎

 聞いていて「ああ」と思ったのが、ウォーカブルシティって言うと1つの取組なんですけど、観光客向けのウォーカブルであったり、地元住民向けのウォーカブルであったり、ウォーカブルシティの中にもいろいろな箱があるというか、フェーズというか領域があると考えて、オーバーツーリズムだからこそ、観光客にはメインルートと、脇道ルートみたいなウォーカブルの楽しさだったり、地元住民であれば憩いの場としてウォーカブルっていうような、そうしたことも1つあるかもしれないなと思いました。

 ウォーカブルシティって言葉としては一つですけど、そこにごまかされないというか、いろいろなことがあっていいんだということなのかなと、そんな感じですかね。

登壇者 並木有咲

 そうですね。まちの中でも、機能の「分け」みたいなものはあっていいと思っているので、住まう人も居心地が良いと感じられるウォーカブルみたいに、別立てで考えてもいいのかなと思います。

モデレーター 晝田浩一郎

 確かにそうですね、それぞれっていう形ですよね。それは人もそうですし、地域であったり、エリア的な考え方でもそういうのがあるかもしれないですよね。

 そうした魅力であったり楽しさを、1人1人違うからこそ、気付ける、共有できるという中で、例えばガイド付きのまち歩きみたいなものもあるのかなと思っています。観光ガイドみたいなものに近いのかもしれないんですけど、ここのお城って実はどうのこうのでとか、この通りって昔はとか、そういうガイド付きなまち歩き、美術館とか博物館のような音声ガイドみたいなやつっていうのも1つ、まちの魅力をより楽しむ、まちを歩くための一つ楽しみにつながるかなと思うんですけど、並木さんたちの取組として何かそういうガイドとかっていう取組はどうですかね。

登壇者 並木有咲

 それも、1つの魅力かなとは思っています。

 しかし、実際私たちがガイド的に案内するっていうことは、あえてしないようにしています。というのは、本当にまちを歩いて楽しいと思うポイントは人それぞれなので、何か一つに特化して深掘りするみたいなことは、自分がこれが好きだと気づいた後に、さらにまちがそういうことをやっているところに行ってもらったり自分で調べてもらったりして、さらに興味を深掘りしていって、ガイド的に伝えてもらってみたいにしていけたらいいかなと思っているので。まずは、住んでいる方が「こういうふうにまちで暮らすのが楽しいよ」っていうのを言っていましたよとか、より自分の暮らしに近いまち歩きみたいなのをやろうと思っているので、美術館のようなガイドっていうのは、特に今のところやってはいないんです。

モデレーター 晝田浩一郎

 まずはきっかけと、その後により深く知れるっていう、2段階ですね。まずは広く浅くで「なるほど、私、もしかしたら歴史好きかも」みたいに思ったときに、歴史をより詳しく知れるまち歩きなどの取組がちゃんと用意されているとか、「もう少し自然を感じられるものが好きかも」とか、その次につながるようなものを一緒になって仕掛けていくっていうのが、公民連携、自治体との連携、地元との連携っていうことでも、何か1つ共創のあり方かな。一番上のところでどうのこうのだけじゃなくて、そこから常に、「あそこに興味あるんだったらこっち行ってください」みたいなやつのウォーカブルシティであったりとか、まち歩きの魅力をより深めていくことにつながるかなって、この話を聞いて感じましたね。

 そういう取組みたいなことでも、次へのつなぎみたいなことでも、うまいことやっているまちとか、ここはなんか良さそうだなみたいなところって、並木さんから見てあったりしますか。

登壇者 並木有咲

 さっき紹介した長崎さるくとかの事例は、「まさに」だなと思っています。今も続いている取組ではあるんですけど、まちの暮らしを知れるようなまち歩きが紹介されていれば、まちを詳しくする歴史とか、学ぶっていう視点でのまち歩きも開催されていたり、そのバリエーションみたいなものを通じて、市内の方も参加できますし、あとは観光客の方も参加できるような取組があるので、それはすごく面白いなと思っています。

 あと、長崎さるくの面白いところは、学ぶっていうのに重きを置いたまち歩きと、まちを知るっていうのに重きを置いたまち歩きがあるんですけど、学ぶの方に参加する方は市民の方が多いみたいなんです。知るっていうところは観光客が多くて、学ぶっていうところは市民の方の参加が多いというのは、一つヒントになりそうだなと思っているので、今後も注目していきたいと思っています

モデレーター 晝田浩一郎

 長崎さるく、面白いですね。この長崎万博みたいな大きな取組があったからこそ、みたいなとこもあるんですかね。

登壇者 並木有咲

 そうですね。きっかけとして何をするかというのを考えたときに、町の歴史的資源が意外とたくさんあるというところと、市民の方が割といろいろな歴史的背景も含めて、観光客との交流を受け入れることがまちの人の特徴としてあったので、それを生かして、まちの人がまちの暮らしとか、まちの自分の好きなポイントとかを、歩きながら来てくれた人に伝える取組が行われていったのが、すごく面白い取組だなと思っています。

モデレーター 晝田浩一郎

 これは長崎県長崎市だと思うんですけど、「長崎さるくにちょっと参加してみるか」みたいな形もより自分ごととして、「なるほど、並木さんが言ってたやつってそういうことか」みたいなことが今も体験できるってことですよね。

登壇者 並木有咲

 そうですね。

モデレーター 晝田浩一郎

 皆さん、今日、全国各地から御参加いただいているので、もしかしたら九州、長崎の方も御参加いただていたりアーカイブで御覧いただいているかもしれないんですが、是非、長崎さるくを体験してみましょうっていうところですけれども。

 一方で、ちょっと難しい質問になってくるかもしれないんですが、まちなかを歩く、例えば長崎市だったりさっきの東京であったりは割と都会、めちゃくちゃ田舎じゃないっていう場所じゃないですか。今日、参加してくれている方であったり、ウォーカブルシティをやっていきたい方の中には、「めちゃくちゃ田舎で人口数千人とか1万人を切るぐらいで、山ばっかりなんだ」とか「田舎でウォーカブルって言ったところで公共交通のバスも何時間に1本みたいな感じで歩くっていうか、歩くしかないみたいなまちなんだ」と思われている自治体の方、地域の方もいらっしゃると思うんですけど、そうした都会ではない、田舎だからこそのまち歩きの楽しみ方みたいなこともあるかなと思います。ここら辺のまちなかと、田舎のまち歩きの作り方、ここの差って並木さんいかがですか。

登壇者 並木有咲

 そうですね、なかなか難しいなと思いますし、私もこれから挑戦していきたいと思っているところではありますが、そのまちにいる人を資源としてウォーカブルを作っていけるかということかなと思っています。特に公共交通とかがあまり発展していなくて、歩くしかないっていう境地になるか、ちょっとの距離でも車で移動するかとなったときに、その道中に歩いてわざわざ会いたい人がいるとか、歩いてわざわざ参加したい何かがあるとか、そういうイベント的なものでもいいですし、まちに開かれている休憩スポット、交流の場みたいのを歩くしかない場所の途中に適切に配置してあげるとか、その配置も少しずつ変えてどこが一番人が集まる場所なのかっていうのを実験したりして、たまりを作るみたいなイメージですかね。

 人発信で交流できるようなたまりを作っていくみたいなところは、公共交通が発展していないところでは重要かなというふうに思っています。

モデレーター 晝田浩一郎

 たまり場みたいなところっていうのはどこかにあるのかなと思うんですけど、イベントを否定してるわけでもマルシェを否定してるわけでも全くなく、それはそれで大事だと思うんですけど、単純に毎週イベントをやりましょう、マルシェをやりましょうとか、毎週何か催しをそこで開催されているっていうことだけでもないんですよね。

登壇者 並木有咲

 非日常性ではなくて、日常的に感じられる自然の変化をわざわざ感じに行けたりとか、そういう座れて家以外の休憩する場所があるとか、そういうことでもいいと思うんですけど、何か拠点性をもう1個、その道中に作るみたいなことは、できるといいんじゃないかなと思っています。

モデレーター 晝田浩一郎

 例えばこういうことかなと思いながら言うので、「そういうことじゃないんですよ」だったら言ってほしいんですけど、例えば、「ここからだとめちゃくちゃ星が綺麗に見えるスポットなんです」とか、「富士山がここから見るとめちゃくちゃ冬だと綺麗に見えるんです」とか、夕日を見るならここのエリアで、ここのベンチからとか、朝日だったらみたいな、そういう日々の自然の変化みたいなことも日常の中のたまり場であったりとか、そういうことにつながっていくっていうイメージですか。

登壇者 並木有咲

 それをちゃんと人にシェアしたりとか、そこで「もっとその場所をより良い場所にしていくためにはどうすればいいんだろう」って考えてくれたら、さらに魅力の向上につながると思うんですけど、このきっかけの種を拠点としてまいていく、それがただ作るだけじゃなくて、官とか民とかが作るっていうよりは、地元の人も参加型で交流しながら作っていくみたいな、自分事化みたいなのができると、よりいいんじゃないかなと思います。

モデレーター 晝田浩一郎

 いいですね、自分事化。もしかしたらある種、半分わがままみたいなところもあるのかなと思っていて、「俺らはここからの太陽を見るのがめちゃくちゃ好きなんだ」みたいなところとか、「ここの自販機がカフェなんだ」みたいな感じの、そうやって言い切っちゃうとか、特にローカルになればなるほど、そういうふうなこともあるのかなと思いながら聞いていました。

 魅力って人それぞれだから、みんなで「ここっておらがまちの魅力だよね、私たちの魅力だよね」って決めるってやり方もあれば、「私、ここ好きなんだよね」って私のまちの推しスポットみたいな感じで言っちゃうっていうのも、魅力を見つける、発見するってことの一つにもつながるってことですよね。

登壇者 並木有咲

 そうですね。

モデレーター 晝田浩一郎

 あるっこさんでもコミュニティ型とか、アクティビティ型みたいなことで「まちの魅力とは」みたいなことを付箋とか使ってワークショップをやられていますけど、そういったところで考えるきっかけ、自分の推しスポットを自分の中から見つけ出す、そんな中で使っている視点であったり問いであったりだとかって、もしあれば共有いただきたいんですけど、ありますか並木さん。

登壇者 並木有咲

 割と純粋で、「一番キュンとしたポイント」を教えてくださいとか、さっき晝田さんが言ってくださった「人におすすめしたい場所や自分の推しの場所はどこですか」とか、そういうような聞き方はしていますね。それを一方的に発言するんじゃなくて、「こういうのもあったよね」っていうのを参加者さん同士で振り返ることによって、「ここも良かった」「ここも良かった」とか、どんどん増えていくような感じがするので、問いはあえてシンプルに「推しはどこですか」とか「人にお薦めしたい場所どこですか」とか、そういうふうにまずは聞いて1回広げて、「もっとこうしたらいいと思う場所」とか、少しずつ問いを難しくしていくというか狭めていく、「改善したい場所はどこですか」とか、「これは人に伝えるためにはどういうふうにしたらいいですか」とか、ちょっと問いを狭めていくみたいなのを意識してやっています。

モデレーター 晝田浩一郎

 いいですね。まずは漠としたところから、少しずつより洗練化させていくみたいなところなんですね。

 このやり方とか、そのまち歩きの視点であったりとか、まちの魅力の視点の発見みたいなところは、いわゆるまちづくりや、ビジネスにも応用が利きそうだな、稼ぐまちっていうところにもつながっていきそうだなって思うんですけど、ずっと語ってきてくれている、いろいろな人がいますもんね、いろいろな視点がありますもんね、みたいなところがまさにキーワードだと思う中で、様々な視点を取りまとめていくであったりとか、様々な視点を一旦プールしていくために並木さんが意識してることってどういうことですか。

登壇者 並木有咲

 まちに落としていくみたいなところで言えば、まちのエリアの中で、機能を少しずつ変えていって交わるポイントを作るとか、そういうところは意識するようにしていますね。1回全てを受け止めるけど、何からやっていくのが一番間口が広いかとか、そういう順位付けのようなところは意識しています。

モデレーター 晝田浩一郎

 一旦受け止める、でも否定はしない。けど優先順位はあるよね、っていうところなんですね。

登壇者 並木有咲

 そうですね。一番広いところを間口として、その要素としてくっついていくようなものもあるかなと思っているので、一旦受け止めた中で共通している部分って何だろうというのを1個深掘りして考えてみて、こういうアプローチをすれば、その受け止めたこれとこれは解決できるんじゃないかとか、落とし込んでいけるんじゃないかとか、そういうちょっと広い視点で見るようにはしています。

モデレーター 晝田浩一郎

 その共通項を見つけ出すっていうのは、ポイントの一つかもしれないですね。

 僕も全国各地でまちづくりであったり、ウォーカブルシティなどに関わっていて、イベント作りもやっている中で、やっぱりまち歩きは楽しいという声があるんですけど、基本的にそういうときに想像するのって、天気がいいとか時期がいいっていうのがあると思うんですよね。暑すぎないとか。なんか雨が降っているとまち歩きを企画していたけど、「どうする、やる?」みたいな感じになっていく中で、「雨だとちょっと嫌だ」とか、「雪が降ってるじゃん」「暑いじゃん」「寒いじゃん」とか、快適な気候とかがある中で、並木さんが考える、でもやっぱり「そういう状況でも散歩って楽しいよね」「そういう状況でもまち歩きって楽しいよね」みたいな、そこって並木さんとしてどう解釈されていますか。

登壇者 並木有咲

 一番は10月の今ぐらいの時期が、まち歩きの楽しさを知ってもらうっていうポイントではいいかなと思います。とはいえ、雨の日やいろいろな天気がある中で、その天気だからこそ楽しめるポイントっていうのもあるし、あとは歩いて楽しいだけじゃなくて歩くことによって、健康的な効果があったりとか環境的な効果があるとか、その楽しさだけじゃない副次的な効果みたいのを実感してもらって実践してもらうというのは、どういう条件であれ、歩くことを積極的にやるっていうのに役立つかなというふうに思っているので、そういうことは直接的ではないですけどお伝えするようにはしていますね。

モデレーター 晝田浩一郎

 なるほど、その掛け合わせみたいなところですね。

 歩く×(かける)ヘルスケアみたいなことなのかなと思うんですけど、最近並木さんが掛け合わせで「これ、ちょっと今後、より展開・展望していけるかな」みたいなことってあったりしましたか。

登壇者 並木有咲

 掛け合わせでいくと、今ちょっと考えているのがウェルビーイング・ウォークみたいなことを考えていて、まちを歩く中で自分がウェルビーイングだなと感じるポイントを言語化してマップ化していくみたいなことができたらいいなと思っています。歩いて「歴史面白かったね」とか、「ここもうちょっと知りたいね」っていうのをもうちょっと広く捉えると、自分がウェルビーイングに感じた瞬間だと思うんですね。なので、ウェルビーイングにも、自分が幸せだけじゃなくて、どういう要素が絡み合って幸せだったのか、「道が広くて環境がすごく広々としていたから気持ち的に幸せになれた」とか、そういう「歴史よかったね」じゃなくて、どういう要素が絡み合ってウェルビーイングだ、自分が心地いいと感じるような場所だったのかっていう言語化していただくようなまち歩きっていうのを、その掛け合わせの一つとして展開していきたいなと思いますね。

モデレーター 晝田浩一郎

 ウェルビーイング、いいですね。なかなかウェルビーイングって概念なところが多いので、僕の捉え方で言うと、「何かいい」っていうところがウェルビーイングなのかなとは捉えているんですけど、何かっていうのをしっかりと言語化できなくても、さっき言ってくれた「私は道が広いとか開放感があると気持ちよくなるんだな、居心地がいいって感じるんだな」「あそこにビルがめちゃくちゃ建ってるよりも木が生えてるといいんだな」とかっていうようなことを、自分で気付けると、自分のお気に入りスポットを見つけるきっかけにも、×(かける)ウェルビーイングだとなっていきそうですね。

登壇者 並木有咲

 おっしゃるとおり、「何かいい」って感じるポイントをちゃんと言語化するということによって、参加してくれた方自身は自分がウェルビーイングに感じる瞬間を言語化できるし、まち側にとっては「何かいい」って感じてもらえるポイントを蓄積することができるので、それを今後のまちづくりに生かしていく流れになっていくといいなと思って、今ちょっと力を入れています。

モデレーター 晝田浩一郎

 そうした中で、自動車とか電車とかバス、タクシーも含めたそういったことを否定するっていうわけではなくて、そこにいわゆるパークアンドライドみたいな考え方で、「ここまでは車で来ようよ」「電車で来ようよ」「ここからは何かいいを見つけに行けるやん」、っていうところなのかなと思うんですけど、このパークアンドライドっていう考え方、自動車などでここまで来て、近くの駐車場に停めて街中を歩きましょう、みたいなところだと思うんですけど、パークアンドライド×まち歩き、ウォーカブルシティみたいなところで、並木さんが思うところであったりとか今考えてるところを、ちょっとシェアいただければと思います。

登壇者 並木有咲

 おっしゃるとおりで、別に車を否定するわけではなくて、歩ける部分とか歩いて楽しめる部分っていうのは積極的に作っていこうよというお話かなと私自身も強く思っています。それこそ山口県山口市とかは、車で市街地に来て、駐車場に停めて、そこから歩行を楽しむみたいな、そういう考え方でウォーカブルシティを作っているまちもあると思っているので、歩きたくなるようなポイントをまちごとにやっぱりしっかり言語化して、それが絶対じゃなくてもいいからそれを実験に移して実践に移していく。その実践がハードからじゃなくて、ちゃんと歩いて楽しいっていう、実際に歩く人側にもその歩くリテラシーじゃないですけど、こういうふうに歩いたら楽しいですよっていうのをお伝えしていくのが大切だと考えています。

 ウォーカブル自体が概念であり、いろいろなエリアとしてのウォーカブルっていうことがあると思うので、自分のまちでこれがまちの特徴だよねっていうのをしっかりと言語化して、そこの特徴を伸ばしていく、特徴に対して歩く人を増やしていくみたいなところを作っていけるといいんじゃないかなというふうに思っています。

モデレーター 晝田浩一郎

 どういう人に歩いてもらいたいのかとかっていうところも含めて、「えい、やー」な部分も出てくるかもしれないけど特徴を作っていくみたいな感じなんですね。

登壇者 並木有咲

 そうですね。作ってみて、誰も使わないものができてしまったとかはありがちかなと思うので、小さく挑戦を積み上げながら、最終的に歩いて楽しむウォーカブルシティみたいなものが、更新され続けていく状態が理想的なんじゃないかなと思います。

モデレーター 晝田浩一郎

 あっという間に時間が来まして、最後のシェアになってくるんですが、今後、埼玉版スーパー・シティプロジェクトに参画している皆さんであったりだとか、自分のところでウォーカブルシティ等々を進めていきたい、そんな自治体、企業、まちづくり団体の方、市民の方、色々な方が御参加、聞いていただいてるのかなと思うんですけど、最後にですね、そういう皆様に並木さんからエールをいただければなと思います。並木さん、お願いします。

登壇者 並木有咲

 本日は本当に聞いていただいてありがとうございます。

 なかなかやっている方にとっては知っている内容も多かったかなと思うんですけれども、改めてウォーカブルについてお話できてよかったなと思っています。

 このウォーカブルシティという考え方は、本当に一つの正解があるものでもなく、ゴールがあるものでもないと思っているので、今のまちがどういう状況なのかをしっかりと言語化したりとか、いろいろなセクター、行政だけじゃなくて民間とか市民の方とかいろいろなセクターと会話しながら言語化していって、今後どういうふうにしたらもっと居心地が良くなるんだろうかというのを、まちにいる皆さんが当事者として持っていくことが必要だと思っています。それなので、ハードだけの整備を進めるのではなくて、歩くということに対するリテラシーの強化みたいなところも同時にしていけるといいのではないかなと思っています。

 私たちはまだまだ発展途中ではあるんですけれども、何かお手伝いできることや質問があれば、御連絡いただければと思っていますので、引き続きよろしくお願いします。(終)

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