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部局名:教育局教育総務部
課所名:文化財・博物館課
担当名:指定文化財担当
担当者名:町田
内線電話番号:6981
直通電話番号:0488306981
Email:指定文化財担当
埼玉県教育委員会では、埼玉県文化財保護審議会(会長:菊池健策)の答申を受け、3月11日(火曜日)開催の教育委員会において、県指定文化財の新規指定6件、追加指定1件について審議し、これを決定しました。3月14日(金曜日)の県報告示により、正式に指定となります。これにより、県指定有形文化財は計348件、有形民俗文化財は計27件、天然記念物は計90件となり、県指定等文化財の件数は合計740件となります。
種別 | 名称及び員数 |
所有者 |
所有者住所又は所在地 |
有形文化財 |
紺紙金字法華経 8巻 (こんしきんじほけきょう) |
宗教法人 徳性寺 |
加須市大越1984番地 (寄託先:県立歴史と民俗の博物館) |
有形民俗文化財 |
木魂神社の舞台 1棟 (きむすびじんじゃのぶたい) |
宗教法人 木魂神社 |
秩父郡小鹿野町下小鹿野字上津谷木3301番地 |
天然記念物 |
秩父山地のニホンオオカミ標本 毛皮標本 2点 (ちちぶさんちのにほんおおかみひょうほん けがわひょうほん) |
宗教法人 三峰神社 |
秩父市三峰298番地1 |
天然記念物 |
秩父山地のニホンオオカミ標本 頭骨 1点 (ちちぶさんちのにほんおおかみひょうほん とうこつ) |
個人 | 秩父郡長瀞町大字井戸 |
天然記念物 |
秩父山地のニホンオオカミ標本 頭骨 1点 (ちちぶさんちのにほんおおかみひょうほん とうこつ) |
個人 | 比企郡ときがわ町大字西平 |
天然記念物 |
秩父鉱山産鉱物・岩石標本 142点 (ちちぶこうざんさんこうぶつ・がんせきひょうほん) 附 関連資料一式 (つけたり かんれんしりょういっしき) |
埼玉県 |
秩父郡長瀞町大字長瀞1417番地1 (県立自然の博物館) |
種別 | 名称 |
所有者 |
所在地 | 面積 |
天然記念物 |
中川低地の河畔砂丘群 高野砂丘 (なかがわていちのかはんさきゅうぐん たかのさきゅう) |
杉戸町 |
北葛飾郡杉戸町大字下野字山合849番 |
520平方メートル |
加須市大越(おおごえ)に所在する徳性寺(とくしょうじ)は、鎌倉時代初期の武将小山朝政(おやまともまさ)の祈願所とされ、のちに小山義政(よしまさ)が再興したと伝わる真言宗寺院である。本経は、見返(みかえ)し絵に斜め向きの釈迦説法図(しゃかせっぽうず)を小さく配し、法華経の経意絵(きょういえ)を一画面に多数描きこむ特色から、延暦寺蔵紺紙銀字法華経(えんりゃくじぞうこんしぎんじほけきょう)(重要文化財)系統の転写本であることがわかる。経文(きょうもん)の書風や表紙絵の宝相華唐草(ほうそうげからくさ)、見返し絵の山水表現等から、延暦寺本もしくは古い転写本を写したものと考えられ、制作は12世紀半ばから後半と推定される。本系統の写経は、延暦寺本・徳性寺本を含め現在僅かに6件が確認されるのみである。加えて、徳性寺本は法華経8巻の見返し絵8図のうち唯一8図を全て備えており、本系統の法華経写経を研究する上で重要な作品である。現在は、県立歴史と民俗の博物館に寄託され、令和7年3月11日(火曜日)から5月11日(日曜日)まで、美術展示室で展示される。
瓦葺(かわらぶき)の寄棟造(よせむねづく)りで、花道、常設の桟敷(さじき)、二重舞台を備える。老朽化した神楽殿を昭和25年に再建し、地元(下小鹿野津谷木(つやぎ)地区)に伝わる歌舞伎も上演できるような舞台とした。標高320mの山頂部に立地し、高低差を利用して観客席や舞台、楽屋が設けられている。毎年5月3日の木魂神社例大祭において、歌舞伎(小鹿野歌舞伎保存会津谷木部会)と、十六神楽が交互に上演されている。秩父地域の荒川左岸の村々には、江戸時代末から明治時代の養蚕・製糸業が盛んな時期に、競って舞台が建てられた。本件も他の舞台の状況も踏まえて使いやすいように様々な工夫が施されており、地形をうまく利用した舞台として評価できる。
ニホンオオカミは、明治38年(1905)に奈良県で捕獲された個体が最後の記録とされる絶滅種で、残されている標本は非常に少ない。秩父地域周辺の民家には、江戸時代から明治時代にかけて秩父山地で獲られたと伝わる毛皮や頭骨などが、複数残されている。これらは魔除けなどに利用されたもので、秩父地域の風習を伝える民俗資料であるとともに、オオカミを祀る三峯神社に代表される地域の信仰や、人々とオオカミとの結びつきを示す資料でもある。比較的狭い範囲にまとまった数の資料が残されており、今後、絶滅種ニホンオオカミの形態、生態、遺伝情報等の研究が進められる上でも学術上重要な資料。秩父市の毛皮標本は、秩父宮記念三峰山博物館に所蔵、展示公開されている。長瀞町、ときがわ町の頭骨は個人所蔵で、一般には公開されていない。
秩父市中津川(なかつがわ)に位置する秩父鉱山(ちちぶこうざん)は、かつて鉄・銅・亜鉛・鉛・金・マンガンなどの金属鉱物を産出する埼玉県最大の金属鉱山であった。歴史は古く、慶長(けいちょう)13年(1608)には金が採掘された記録があり、その後、発明家や本草学者(ほんぞうがくしゃ)として知られる平賀源内(ひらがげんない)も金鉱脈を探しに訪れた記録がある。本件は、令和4年に株式会社ニッチツから県に寄贈された、鉱物標本134点、岩石標本8点からなるコレクションと、その関連資料である。秩父鉱山最盛期(昭和26~30年頃)に採掘された鉱物が中心で、国内でも第一級の稀有な産状(結晶の質、大きさ等)を示す鉱物標本が多数含まれる。産出した鉱床や産出地点が記録された標本もあり、関係者への聞き取りメモや地質図等も残され、鉱床学・鉱物学上の研究資料としても重要。一部の重要標本は、県立自然の博物館において常設展示されている。令和7年3月8日から6月15日まで開催される特別展「秩父鉱山の面影」では、全ての標本を見学することができる。
県東部の中川低地には、火山灰等に由来する大量の砂が平安時代~室町時代の強い季節風によって吹きためられて形成された「河畔砂丘(かはんさきゅう)」が、利根川の旧河道沿いに点々と分布する。内陸性の砂丘は全国的にも珍しく、また堆積した砂の分析や出土遺物(しゅつどいぶつ)から形成メカニズムや形成年代が明らかになっている点でも学術上重要であり、県では保存状態の良好な5件を天然記念物に指定している。そのうち高野砂丘(たかのさきゅう)は、大落古利根川(おおおとしふるとねがわ)の東側に位置し、長さ2,800m、幅85mの範囲に広がり、八幡神社周辺では砂丘の起伏(比高約7m)や堆積した砂の様子を観察できる。今回の追加指定地は、既指定地の八幡神社から南方に延びる砂丘上に隣接し、地形の保存状態は良好で新たに町有地となったことから、一体として保存すべきものとして追加指定することとなった。