危機管理・大規模災害対策特別委員会視察報告
調査日
令和7年1月28日(火曜日)~ 29日(水曜日)
調査先
⑴糸魚川市駅北広場キターレ(新潟県糸魚川市)
⑵富山県防災危機管理センター(富山県富山市)
調査の概要
(1)糸魚川市駅北広場キターレ
(大規模火災への対応について)
【調査目的】
■本県の課題
- あらゆる災害や危機に備えた体制を構築し、県民などの安心・安全を守っていく必要がある。
■視察先の概要と特色
- 糸魚川市駅北大火は、平成28年12月22日に発生し、鎮火に至るまで約30時間にわたった大規模火災である。中心市街地の約4ヘクタールに延焼し、焼損棟数は147棟にのぼる。
- 糸魚川市では、「カタイ絆で よみがえる 笑顔の街道 糸魚川」を合言葉に、未来を担う子どもたちが誇れる糸魚川らしいまちなみの再生と、災害に強い安心・安全な暮らしの再生に取り組んできた。
- 同施設は、にぎわい創出の交流拠点と大火の記憶・教訓を伝える場として整備され、大火の記録を展示するほか、災害発生時には一時的な避難場所として利用できる。また、行政・消防・被災地区の住民などの語り部による体験談や現地視察を組み合わせた視察研修により危機意識の醸成等に取り組んでいる。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 大火後、消火栓の65mmホースを40mm小口径ホースへと変更を進め、誰でも容易に初期消火が行える体制を整備した。初期消火における水の確保も課題となったことから、国内最大級の約200トンの防火水槽を同施設地下に配置している。
- 戸建て再建を断念した被災者の住まいの確保のため、市営住宅を整備した。入居者が亡くなった後は、子育て世帯を優先して入居させることで、地域コミュニティの維持・活性化につながるよう工夫している。
- 糸魚川市消防団では、機能別消防団を積極的に取り入れている。例えば、能登半島地震では、「聴覚障がい者は情報の収集が難しい」との声があったことから、手話の資格を有する者に団員になってもらい、避難所の運営に携わってもらうことにした。
■質疑応答
Q:大火を受けて、消防団での意識や体制について、どのような検証を行っているのか。
A:指導体系を見直し、「早く見つける」「早く消す」「人を集める」ことを重視するようになった。少しでも風があるときは飛び火対策を行うほか、関機関との連携のため、ふだんから交流を深めている。
Q:機能別消防団と通常の消防団について、どのような訓練を行っているのか。
A:機能別の種別に応じた訓練を合同で実施し、顔の見える関係づくりを心掛けている。難しいことをするのではなく、まずは集まって一緒に行うことが重要と考えている。
Q:顔の見える関係づくりを行う上で、どのような工夫があったのか。
A:自主防災組織が機能していること、ふだんから防災に関する意識が高い方が自治会長になっていることで、情報共有が徹底され組織的に活動できたことが一因と考えている。

糸魚川市駅北広場キターレにて
(2)富山県防災危機管理センター
(災害に備えた庁舎整備について)
【調査目的】
■本県の課題
- 災害時の代替施設の在り方や災害に強い県庁舎の再整備が課題となっている。
■視察先の概要と特色
- 10階建ての建物のうち、1階に交流・展示ホール、2階以上に防災・危機管理機能を配置することで設備の耐浸水性を確保している。また、屋上にはヘリポートを備えている。
- 4階には災害時に県職員や関係機関が被害状況等の情報収集や対策立案に必要な調整を行う「災害対策本部室」、「災害対策本部事務局室」が設けられており、平常時は執務室等として使用されている。5階には常設の「災害対策本部員会議室」が設けられている。
- エントランス広場やテラスの整備、県産材や伝統工芸品の活用のほか、2階には県庁内保育所を備えるなど、県民の憩いやにぎわいを創出する防災・危機管理以外の機能も果たしている。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 能登半島地震が発災した際、災害対策本部等を常設で備える同センターがあったことで災害対応が円滑に行えた。
- 発災後、初めての試みとして、企業から受け付けた義援物資情報を県ホームページに掲載し、物資を必要とする市町村から直接企業に連絡を取ってもらう仕組みを構築した。マッチングがうまくいかなかった点もあるが、企業の思いを集約できたことは成果であり、今後に生かしていきたいと考えている。
- 昨年3月には、復旧・復興に向けたロードマップを策定し、おおむね3年間の取組を見える化することで、県民や県内事業者の暮らしや事業活動を後押ししている。。
■質疑応答
Q:能登半島地震では、車での住民避難も多かったとの話があったが、避難に関してどのような課題があると考えているか。
A :約8割が車で避難した現状を踏まえると、徒歩での避難という原則がどこまで通用するかが今後課題となる。特に、高齢者は車での避難がやむを得ない面もあるため、令和7年度には、市町村を交え、徒歩と車の避難の棲み分け等について検証や検討を行う予定である。
Q:震災で被害を受けた家屋の公費解体について、どのような点が課題となっているのか。
A:県独自の状況として、住宅が密集している地域では、隣接する建物でも全壊や半壊など被害状況に差がある。解体する場合はこれらを一括で行わなければならないため、その意見調整に時間を要することがある。
Q:災害対策の本部施設が高層化していると有事の際に移動が大変ではないかとも感じたが、実際にはどうだったのか。
A:災害関係部署は、本部会議室の一つ下の階に配置されているため特段職員の移動等に支障はなかったものの、10階の備蓄倉庫に保管する職員用物資を市町村に提供することになり、その際は運搬作業に若干苦労する点はあった。