産業労働企業委員会視察報告
調査日
令和7年8月25日(月曜日)
調査先
(1)石坂産業株式会社(入間郡三芳町)
(2)ポラスシェアード株式会社(越谷市)
調査の概要
(1)石坂産業株式会社
(AI・IoT活用の取組について)
【調査目的】
■本県の課題
- 県経済が将来にわたり成長・発展を続けていくため、デジタル化や自動化の推進、AI・IоTを活用できる人材の育成・確保を図り、持続可能な産業基盤の強化を進めることが必要である。
■視察先の概要と特色
- 同社は「Zero Waste Design」をビジョンに掲げ、地域と共生する資源循環企業として活躍するとともに、近年では、AI・IoTを活用し、廃棄物処理プラントにロボットや最新システムを導入し、スマートプラントの実現に向けた取組を推進している。
- 人手不足の解消と安全・安心な作業環境を目指し、2020年にNECとの協働を開始し、2022年には、ローカル5GとAIを活用し、プラント内のリアルタイムの可視化や重機の遠隔操縦などの実証実験を実施した。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 「ごみをごみにしない」という創業の理念の下、廃棄物の減量化・再資源化率98%を達成し、さらに、製造業の設計段階の責任にも着目して、持続可能な社会モデルの構築を提言し、社会実装に取り組んでいる。
- 基幹システムのクラウド化により業務効率を大幅に向上するとともに、AIとロボットによる廃棄物の自動選別やローカル5Gの活用により、人手不足の解消や安全性の更なる向上を目指している。
- 20年以上かけて荒廃した里山を再生し、生物多様性を復活させた。また、環境教育プログラムや体験型学習施設を通じて、地域住民や次世代の環境意識向上を促進している。
- 社会的課題であるカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブに対して、業界や地域社会と連携し、DX・GXを融合した取組を進めている。
■質疑応答
Q:外国人労働者の雇用率はどうなっているのか。
A:現在、8か国の社員が働いており、雇用率は約15%である。また、ネパールとの共同プロジェクトも進行中で、環境省の調査事業に採択されている。
Q:業界イメージの改善や、働きやすい環境づくりの工夫は何か。
A:事業改革の際に、業界のロールモデルになることを目指してスタートした。社員一人一人にチャレンジの機会を与えることを大切にしているほか、男女問わず働きやすい環境を目指している。
Q:業務におけるAIの活用範囲と今後の展望を伺う。
A:現状のAIの活用範囲はまだ限定的で、主に機械学習を中心とした技術を使っている。また、生成AIの活用には、一般に慎重な見方もあるが、今後は事務作業も含めて業務全体への適用を目指し、更に効率化を進めていきたいと考えている。
Q:リサイクルが難しい廃棄物については、どのようなプロセスを踏んでいるのか。
A:基本的に全ての廃棄物のリサイクルを目指しているが、現在の技術では、どうしても処理が難しい一部のものは最終処分になる。今後は、更にリサイクル率を向上させ、使用エネルギーを減らしてCO2を削減する両立を目指している。

石坂産業株式会社にて
(2)ポラスシェアード株式会社
(障がい者雇用の取組について)
【調査目的】
■本県の課題
- 少子高齢化や労働人口の減少が進む中、人手不足に対応するため、多様な人材が活躍できる環境を整備し、地域社会や経済の活性化を目指すことが必要である。
■視察先の概要と特色
- 同社は、ポラスグループ全体の障がい者雇用の促進に加え、地域密着企業としての地域貢献を目的として、2015年に設立された特例子会社である。「身体」、「知的」、「精神」の障がいのある従業員が全従業員のうち半数以上を占め、同グループの幅広い業務のサポートを実施している。
- 同社は障がい者雇用において、雇用管理、雇用環境等を改善・工夫した様々な取組を行っており、2024年には、他の事業所のモデルとなる事例を表彰する「障害者雇用職場改善好事例」の優秀賞を受賞している。
【調査内容】
■聞き取り事項
- ポラスグループは27社で構成され、新築住宅の供給から廃材処理、飲食など多岐にわたる事業を展開し地域密着型の経営を実施する中で、特例子会社としてポラスシェアード株式会社を設立した。
- 全国的に障がい者の雇用率が上昇し、特に埼玉県では知的障がい者の雇用が多い中、同社では精神障がい者を積極的に採用し、収益確保と社会的責任の両立を目指している。
- 親会社と同等の評価制度を採用し、障がいを有する社員の特性に合わせたスキル向上の支援やキャリアアップ機会の提供を実施している。
- 持続可能で自立した経営実現のため、事務系だけでなく本業の建築系業務、さらに、RPAやBIMを活用したDX業務を取り込むとともに、新たな業務分野を積極的に開拓している。
■質疑応答
Q:障がい者雇用における苦労やうまくいくためのポイントは何か。
A:採用後に予期しない症状が現れるケースや、事前に把握できなかった症状が発覚したり、診断が変わったりすることもある。採用時には、可能な限り詳細に健康状態や障がいの状況を確認し、適切な配慮を行うよう努めている。
Q:障がい者の採用プロセスは、一般的な採用と比較してどのような違いがあるのか。
A:基本的には変わらない。各人の持つ能力を期待して採用する。ただし、書類選考や面接では、障がいの種類や症状、配慮が必要な点をヒアリングし、また、その時点の体調だけでなく浮き沈みも考慮した上で、どのような業務に適しているかを判断する。
Q:社員間で障がいの状況について共有をどのように行っているのか。
A:本人の自己申告によりどのような障がいがあるか、どのような配慮が必要かを記載する「個人情報シート」を作成し、各社員が状況把握できる仕組みを整備している。
Q:障がいを持つ社員のキャリアアップを図る上で、どのような配慮を行っているのか。
A:問題なく業務を行う社員であっても、環境変化によりストレスを感じるケースもある。一人一人配慮すべきことが全く異なるので、特性に応じた業務配分やキャリア形成を行うとともに、面談などコミュニケーションを重視し、業務内容の調整を行っている。