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発表日:2021年8月6日11時
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部局名:環境部
課所名:環境科学国際センター
担当名:土壌・地下水・地盤担当
担当者名:濱元
直通電話番号:0480-73-8368
Email:環境科学国際センター
年間を通じて温度が一定である地中に蓄えられた熱を使う「地中熱エネルギー」は再生可能エネルギーのひとつとして、その活用が期待されています。環境科学国際センターではこれまで地中熱利用システムに関する研究を進めてきましたが、このたび、システム設置に必要な「有効熱伝導率(地中の熱の伝わりやすさ)」の新しい測定方法を開発し、特許を取得しました(熱物性測定装置および熱伝導率の測定装置:特許第6916497号)。この測定方法によって、従来に比べ、簡便な方法で迅速な測定が可能となり、設置コストや調査時間を大幅に抑えることができます。地中熱利用システムの普及をこの技術を利用しながら進めていきます。
地中の温度は気温に比べると年間を通じて安定しているため(埼玉県では15℃前後)、夏は冷熱として、冬は温熱として利用することができます。このような地中の熱エネルギーが「地中熱エネルギー」で、埼玉県でも「大宮警察署」や「ウエスタ川越」などの公共施設や住宅、農業など幅広く利用されています。特に、その一般的な利用方法である地中熱ヒートポンプは、県内で累計120件設置されています(環境省調査)。
地中熱ヒートポンプはクローズド式とオープン式に大別され、クローズド式が主流です。クローズド式は、深さ数十~百メートル程度のボーリング掘削をして、その孔井内にU字状のパイプを挿入し、循環液を流すことで地中の温熱や冷熱をヒートポンプによって適温にし、地上の冷暖房等で利用するという仕組みです(図1)。このような仕組みにより、冷暖房のために必要とする消費電力量を従来の空気熱源ヒートポンプの半分程度まで減らすことができ、温室効果ガス排出の抑制にもつながり、気候変動対策にも有効であると言われています。
図1 地中熱源ヒートポンプ (クローズド式)の概念図
有効熱伝導率は、ボーリング掘削などの孔井を利用し、周囲の地層を加熱し、その温まりやすさを計測することで調べることができます。地中を加熱するための一般的な方法は、孔井内にU字状のパイプを設置し、内部に温水を流す方法(温水循環法)です。これは、孔井内にU字パイプを挿入する必要があることや、測定時間が長時間かかるといった課題があります。
そこで、当センターではこのような課題を解決するための新しい測定方法の開発を進めてきました。今回特許を取得した測定方法は、シート状のヒーターで地中の孔壁を直接温める点が特徴です。シート状のヒーターの内側に風船状のパッカーを取り付け測定時に膨らませることで、ヒーターを孔壁に密着させる仕組みです(図2、図3)。
この方法を活用すれば温水循環法に比べ、設置コストや調査時間を半分程度に抑えられると見込んでいます(従来の方法は、調査コスト約100万円、調査時間は48時間以上が標準的)。
図2 測定装置の概念図 図3 測定方法
地中の熱伝導率を簡単に測定し、地中熱利用コストを削減する特許を取得!(PDF:235KB)