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掲載日:2025年2月6日
「無題」
椎名 紅緒 / SHIINA Benio
社会福祉法人ささの会 多機能型事業所 ぽとふ館
初めてこの作品を見たとき「なんて鮮烈な作品なのだ」と、衝撃を覚えた。
溢れんばかりのパワーを持つ作品だが、意外にも作家の椎名さんはとても穏やかな性格の女性だ。物静かで柔らかい雰囲気の彼女は、筆を持つとグッと表情が変わる。
まず、黄緑と水色のクレヨンを選びとり、白い画用紙にグルグルと描きつけていく。ある程度描いたら次は絵の具の出番だ。
色を付けた筆を、無造作に画用紙に叩きつけていく。画面中央に穴が空いているのは、筆を1 箇所に叩き続けて画用紙がふやけた結果であり、作品に力強さを与えている。
そんな特徴的な技法は、当初筆圧が弱かった椎名さんの特性を考慮して、施設職員が提案したのだそうだ。思いがけずマッチした描き方は、彼女の十八番となっている。
穏やかな性格に反比例するように、彼女の作品は年々筆圧が高く、選ぶ色も多様化している。
激しくエネルギッシュな画面と作者の性格とのギャップ、魅力溢れる彼女の作品に、あなたは何を感じるだろうか。
埼玉大学 教育学部 学校教育教員養成課程 2年
丸子 玲奈