総合統計のいろいろ

1.社会・人口統計体系とは
 社会・人口統計体系は、人口世帯、自然環境、経済基盤、教育、労働、文化、スポーツ、居住など、国民生活全般の実体を示す13分野約4,400項目の地域別統計データを収集・加工し、これを体系的に編成したものです。
国・地方自治体等の各種施策及び地域分析の基礎資料として、提供することを目的とされ昭和51年以降、整備しているものです。
 この体系は、国連で提唱された「SSDS」(System of social and demogoraphic Statistics)を基にしています。
 しかし我が国では、これをさらに都道府県及び市区町村別にデータの整備を行っている点に特色があり、言わば国民生活に関する地域別統計データベースの役割を担ってます。
 ただ、社会人口統計体系の唯一の難点としては、あらゆる分野の統計データを集計しているため、公表までに最低2年程度のブランクが出来てしまい、情報としての新鮮味には乏しくなっていることです。
 しかしながら、俯瞰的に日本という国の見渡すには、最も適したものと言えるでしょう。
 社会・人口統計体系の中から、重要度、使用頻度の高い約600の統計指標を抜粋し、最新データの他、過去5年、10年(例外あり)を時系列にして刊行したものが、 「社会生活統計指標 −都道府県の指標−」です。
同様に、約450の統計指標を抜粋して、都道府県の順位付けをした「統計でみる県のすがた」や、100まで絞り込んで、全国の市区町村別データを掲載した「統計でみる市区町村のすがた」があります。
 これら3書は、全て一般の方もお求めいただくことができますので、興味をお持ちの方は、(財)日本統計協会(TEL03-5332-3151 URL:http://www.jstat.or.jp/index.html)へお問い合わせください。ホームページからは、オンライン販売も御利用になれます。
 
2.新国民生活指標との違い
 よく似た統計体系に、「新国民生活指標」(PLI:People's Life Indicators)があります。  いわゆる「豊かさ指標」と呼ばれるもので、第13次国民生活審議会を経て、当時の経済企画庁(現内閣府)により、平成5年から平成11年まで公表されており、  埼玉県は毎年最下位となることで、よく話題になりました。
 こちらは、住む、費やす、働く、育てる、癒す、遊ぶ、学ぶ、交わるという8つの活動領域を設定し、それらを重層的に捉えるために、安全・安心、公正、自由、快適の4つの生活評価軸を加えて、個人(成人)の視点から生活上の諸相について評価する立場をとっています。
 しかし、この「豊かさ指標」は、日本海側や四国などの人口流出に悩む人口の少ない県が、比較的上位にランクされやすく、逆に流入人口の多い大都市圏を含む府県は下位に留まっているなど、一般的な感覚に合わないこともさることながら、使用されている指標自体が、本当に「豊かさ」を示すものなのか、客観的な根拠に乏しいもの(一部マスコミで揶揄された、「パチンコ店数」など)もあり、多くの問題をはらんでいます。
 特に、同一指標を異なる評価軸で、それぞれプラスとマイナスに分かれて評価する重複指標は、個別指標の単純平均である総合指標にとっては、数値を相殺することになり、指標の除外に等しい結果となっています。
 このように、個々の指標を単純平均したものを、都道府県間の「豊かさ」として、順位付けするのは、かなり乱暴であることが御理解いただけると思います。
 しかしながら、個々の指標を見ると、各都道府県の特性が見えてくるのは事実です。
 他自治体よりも低位の指標を、短所は短所として冷静に見つめることにより、必要な施策が明らかになってくると思います。
 その意味で、中立的に集計されている「社会生活統計指標」は、公共政策の基礎資料として、有意なものと言えるでしょう。
 なお富山県は、総合政策の効果を計る目的として、PLIと同様の指標を用いて、現在も独自に集計を行っております。
 ちなみに余談ですが、万年最下位とされた本県では、平成7年度に(社)社会開発研究所へ「埼玉県『生活の質』指標作成調査」を委託して作成した結果、総合で15位となり、翌年度、県独自で行われた集計結果においては13位となっております。
3.統計データ・ポータルサイト、統計GISプラザ
 さて、最後に総務省統計局ホームページにおいて、本年1月から運用されている、統計データ・ポータルサイト(http://portal.stat.go.jp)、 統計GISプラザ(http://gisplaza.stat.go.jp)の御紹介をしたいと思います。
 統計データ・ポータルサイトは、政府統計データの総合窓口となる各府省の共通サイトとして、運用されています。
 今まで各府省等において分散して提供されていた各種統計データをわかりやすく、効率的に閲覧することができます。
 主な機能としては、各分野の主要な統計指標(約100指標)について、簡易なグラフと数値により、詳細な見取り図とリンクがわかる「統計で見る日本の姿」、統計データについて表作成やグラフ表示ができる「ビジュアル統計データベース」、統計データ全体について、あいまいな検索など、効率的かつ的確な検索機能を利用して、統計データへ案内する「統計データのガイド」等があります。
 次に統計GISプラザですが、デジタル化された地図データと、統計データや位置、空間に関する情報などを、統合的に扱う、地理情報システム(GIS)の仕組みを利用し、統計データマップの作成、設定した地図の集計など、町丁・字レベルの小地域統計データを利用した地域分析が行えるサイトです。
 どちらのサイトもパソコンとインターネット環境さえあれば、誰でも気軽に無料で御利用になれます。
 興味がある方は、ぜひとも両サイトへアクセスして、新しいビジネスの開拓やマーケティングの基礎資料等として、お役立てください。

参考文献等
平成11年度版新国民生活指標(平成11年7月8日 経済企画庁国民生活局)
日経リサーチレポート 1999年第V号(平成11年9月15日 日経リサーチ)
総務省統計局ホームページ
社会生活統計指標−都道府県の指標−2004年(平成16年1月 総務省統計局)
統計データ・ポータルサイト パンフレット(平成16年1月 総務省統計局参事官室)
統計GISプラザ パンフレット(平成16年1月 総務省統計局地理情報室)